【2024】共有物分割請求とは?請求方法と流れを弁護士がわかりやすく解説

共有持分の分割請求

共有となっている不動産を単独所有とするためには、原則として、共有物分割請求が必要となります。

では、共有物分割請求とは、どのような請求なのでしょうか?また、不動産の共有状態を解消する方法には、どのようなものがあるのでしょうか?

今回は、共有物分割請求についてくわしく解説します。

目次

共有物分割請求とは

共有物分割請求とは、共有状態となっている不動産の共有状態を解消する手続きです。

不動産は誰か一人が所有者である「単有」のほか、複数人が所有権を有する「共有」となる場合があります。不動産が共有となる理由はさまざまですが、代表的な理由は、複数人で資金を出し合っての購入や相続などです。

しかし、後ほど解説するとおり、共有状態となっている不動産は使い勝手がよくありません。そこで、特に不便を感じている共有者が発案し、共有状態の解消を目指すこととなります。

とはいえ、共有状態の解消は、一部の共有者が望んだだけで簡単にできるものではありません。そのため、他の共有者との合意をまとめることや、裁判での解決などが必要となります。

不動産が共有状態となっていることのデメリット

不動産が共有状態となっている場合、どのようなデメリットが生じるのでしょうか?ここでは、共有不動産の主なデメリットを3つ解説します。

他の共有者に原則として使用の対価を支払う必要がある

1つ目は、その不動産を一部の共有者が使用している場合、原則として他の共有者に対して使用の対価を払い続ける必要があることです。

共有不動産は本来、「各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる」ものです(民法249条1項)。これは、たとえば300㎡の不動産を3人が3分の1ずつの割合で共有している場合に、各共有者が100㎡ずつ使えるということではありません。それよりは、1年のうち4か月ずつ交替で使える権利を有しているイメージです。

とはいえ、実際に共有物を「その持分に応じた使用をする」ことは、現実的でないことが多いでしょう。たとえば、3人の共有者のうち1人だけがその不動産に居住しているケースなども少なくありません。

そのような場合は、「共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う」とされています(同2項)。つまり、3分の1の持分しか有していないにもかかわらずその不動産に居住して単独で使用している場合などには、他の共有者に対価を支払う必要があるということです。

ただし、「別段の合意がある場合を除き」と規定されているため、共有者間で対価を発生させない合意があったと考えられる場合などには、対価を支払う必要はありません。共有者間での対価の支払いについてお困りの際は、弁護士へご相談ください。

売却や賃貸の際に他の共有者の同意が必要となる

2つ目は、売却や賃貸などをする際に、他の共有者の同意が必要となることです。

共有不動産は、共有者の一部だけの判断で全体を売却したり、全体を賃貸したりすることができません。不動産全体を処分するなど「処分行為」をするためには共有者全員の同意が必要となるほか、不動産全体を短期間だけ賃貸する場合でも共有持分の過半数を有する者による同意が必要となります。

同意が得られなければ、原則として、これらの行為を行うことはできません(共有者の一部が所在不明であることによって同意を得られない場合など、裁判手続きで解決できる場合もあります)。

また、修繕などの「保存行為」は各共有者が単独で行えるものの、費用の負担についてトラブルが生じるおそれもあります。

共有者が死亡すると権利関係がさらに複雑となる

3つ目は、共有者が死亡して代替わりが起きると、権利関係がさらに複雑となることです。

たとえばある不動産を長男と二男とで共有している場合、長男が亡くなると、長男の持分は長男の子どもや妻に相続されます。二男が亡くなった場合にも、同様の事態が生じます。

これを繰り返すことで共有者同士の関係性が遠くなっていき、売却などの合意をまとめたり共有物分割請求をしたりすることがさらに困難となるおそれがあります。

共有物分割請求の方法と流れ

共有物分割請求は、どのような流れで進めればよいのでしょうか?ここでは、一般的な流れを解説します。

当事者間で話し合う

共有物分割請求は、まず当事者間での話し合いによって行うことが原則です。この時点で話し合いがまとまれば、裁判所を介すことなく解決ができます。

合意が得られたら、「言った・言わない」のトラブルを避けるため、早期に書面を交わしておきましょう。直接話し合うことが難しい場合でも、弁護士が代理で交渉することで合意がまとまる場合もあります。

共有物分割調停を申し立てる

当事者間で共有解消の話し合いがまとまらない場合は、裁判所での話し合いに移行します。この裁判所での話し合いを、「共有物分割調停」といいます。

話し合いといっても当事者が直接対峙するのではなく、裁判所の調停委員が意見を調整する形で進行するものです。ただし、調停は裁判所が結論を下すものではなく、調停を成立させるには当事者間による合意が必要です。

共有物分割請求は、訴訟の前に必ず調停をすべきという「調停前置主義」はとられていません。そのため、調停によって解決できる見込みがないのであれば、はじめから訴訟を申し立てることも可能です。

共有物分割請求訴訟を申し立てる

当事者間での話し合いや調停で解決ができない場合は、最終手段である共有物分割請求訴訟を申し立てます。共有物分割請求訴訟とは、諸般の事情を考慮したうえで、裁判所が結論を下す手続きです。

裁判所が下した結論に不服がある場合は、判決書の送達を受けてから2週間以内に控訴を提起しなければなりません。この期間内に誰も控訴を提起しなければ、その時点で判決が確定し、当事者全員が判決に縛られることとなります。

ここで注意が必要なのは、裁判所が申立人(訴訟を提起した人)が望んだ判決を下すとは限らないということです。

たとえば、ABCの3名で共有している不動産について、Aが今後この不動産全体を単独で使用するために、BとCの持分の買い取りによる共有物分割を希望して訴訟を提起したとします。この場合であっても、裁判所がさまざまな事情を考慮した結果として、「不動産全体を売却して、金銭を分ける」との判決が下される可能性もあるということです。

必ずしも申立人の希望が通るわけではないことには注意が必要です。

不動産の共有状態を解消する主な方法

不動産の共有状態を解消するには、どのような方法があるのでしょうか?ここでは、ある不動産をABCの3名が3分の1ずつの割合で共有している場合を前提に、主な共有解消方法を解説します。

共有者全員で不動産を売却して金銭を分ける(換価分割)

1つ目は、換価分割です。換価分割とは、不動産全体を売却(換価)したうえで、これにより得た金銭を共有持分に応じて分ける方法です。

たとえば、共有不動産全体を3,000万円で売却し、ABCがそれぞれ1,000万円を取得する場合などがこれに該当します。共有者が誰もこの不動産の取得を希望しない場合や、不動産の取得を希望する共有者はいるもののその者が価格賠償ができるだけの資産を有していない場合などには、換価分割が有力な選択肢となります。

他の共有者に金銭を払って解決する(価格賠償)

2つ目は、価格賠償です。価格賠償とは、一部の共有者が他の共有者の持分を買い取ることで、共有を解消する方法です。

たとえば、Aがこの不動産を自身の単独所有としたい場合において、Aが対価を支払うことで、BとCの共有持分を買い取る場合がこれに該当します。今後もその不動産を所有したい共有者がいる場合は、この方法による解決を目指すこととなるでしょう。

価格賠償では、買取価格の額について交渉がまとまらない場合があります。買取価格の交渉がまとまらずお困りの際は、どの程度の価格を提示すべきかわからない場合などには、あらかじめ弁護士へご相談ください。

現物を切り分ける(現物分割)

3つ目は、現物分割です。

現物分割とは、1つの不動産を複数の不動産に切り分けて、それぞれを単独所有とする方法です。たとえば、共有となっている不動産が600㎡の土地である場合に、これを200㎡ずつの3筆に分けたうえで、分筆後の土地をABCがそれぞれ単独で所有する場合などがこれに該当します。

ただし、現物分割はどのような不動産であってもできるわけではありません。共有不動産が一般的な一戸建て住宅やマンションの1室である場合、これを3つに切り分けることは現実的ではないでしょう。また、土地であっても十分な広さがない場合や、もともと道路に接している間口が狭い場合には、分筆してしまうと使用や売却が難しくなってしまいます。

共有物分割請求を弁護士に依頼するメリット

共有物分割請求は、弁護士に依頼して行うのがおすすめです。最後に、共有物分割請求を弁護士に依頼する主なメリットを3つ解説します。

法的に妥当な落としどころを知ったうえで交渉に臨める

弁護士に相談することで、具体的な状況に応じた妥当な落としどころを把握したうえで、交渉に臨むことが可能となります。自分で相手方と交渉する場合、どのような条件を提示するのが妥当であるのか、判断に迷う場合が少なくないでしょう。

たとえば相手方の共有持分を買い取りたい場合、あまりに低い金額を提示すれば、相手方が気分を害し態度を硬化させてしまうかもしれません。反対に、よくわからないままに相場より高い金額を提示すれば、交渉がまとまってから後悔するおそれがあります。

あらかじめ弁護士へ相談することで、「仮に裁判にまでもつれ込んだらどのような結果となりそうか」という妥当なラインを知ったうえで、交渉を進めることが可能となります。

代理で交渉をしてもらえる

弁護士に依頼した場合は、共有物分割に関する交渉を任せることが可能となります。

相手方との関係性などによっては、直接交渉することを避けたい場合もあるでしょう。また、自分で交渉しようにもどのように話をすればよいかわからない場合も少なくないと思います。

さらに、相手に丸め込まれてしまうリスクや、せっかく交渉が成立したものの書面を交わしていなかったことで後から「言った・言わない」のトラブルになるリスクなども否定できません。

弁護士へ依頼した場合、自分で直接相手方と交渉する必要がなくなるほか、交渉を有利に進めやすくなります。また、その都度書面を取り交わすなど必要な証拠を残すため、後から交渉成立を反故にされる事態も最小限に抑えられます。

調停や訴訟に移行しても安心して対応を任せられる

先ほど解説したとおり、当事者間での交渉がまとまらない場合は、調停や訴訟へ移行することとなります。しかし、自分で調停や訴訟を行うことに不安を感じる場合も少なくないでしょう。

弁護士へ依頼した場合は、調停や訴訟の対応まで任せることができるため安心です。また、平日の日中に時間をとって調停や訴訟のために割くべき時間を、最小限に抑えることも可能となります。

まとめ

共有物分割請求について解説しました。

共有物分割請求とは、共有状態を解消するために、他の共有者に対して行う請求です。共有物分割請求は裁判外で行うこともできますが、当事者間での交渉で解決できない場合には、調停や訴訟へ移行することとなります。

不動産の共有状態の解消を、自分で進めることは容易ではありません。そのため、共有物分割請求をしたい際は、不動産法務に強い弁護士へまず相談をしたうえで、具体的な進め方を検討することをおすすめします。

たきざわ法律事務所では、共有物分割請求のサポートに力を入れています。共有状態を解消したい場合や、他の共有者から共有物分割請求をされてお困りの際などには、たきざわ法律事務所までお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

大手企業法務事務所にて勤務後たきざわ法律事務所を開設。多くの企業が抱える、①不動産案件(不動産事業者・不動産オーナー向け)、②労務トラブル、③IT・知財(著作権・不正競争防止法等)を専門とする。「攻めの法務戦略」により企業の利益を最大化するリーガルサービスを提供する。「堅苦しい」「フットワークが重い」そんな弁護士のイメージを根本から崩し、企業経営に寄り添った提案をすることをモットーとする。不動産オーナー、不動産事業者向けのYouTubeチャンネル「不動産価値向上チャンネル」にて情報配信も行う。

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