不動産の「共有持分」とは?取り扱いとよくあるトラブルを弁護士がわかりやすく解説

共有持分

不動産の共有持分は、トラブルの原因となることが少なくありません。

では、具体的にどのような問題に発展する可能性があるのでしょうか?また、そもそもなぜ不動産の共有持分が生じるのでしょうか?

今回は、不動産の共有持分にまつわるトラブルや対処法などについて詳しく解説します。

目次

不動産の共有持分とは

不動産の共有持ち分とは、不動産に対して複数の所有者がそれぞれ持つ権利の割合のことです。土地や建物などの不動産は1人で所有することもできるほか、複数人で所有することも可能です。

たとえば、ある土地をA氏1人で所有している場合、これはA氏による単独所有です。この土地を使うことはもちろん売ったり貸したりすることも、他の法令に反しない限りA氏が独断で行うことが可能です。

一方で、ある土地をA氏、B氏、C氏の3人で同額ずつお金を出し合って買った場合、これはこの3社による共有になります。

勘違いされがちこととして、この土地が300㎡であるとして、共有とはA氏、B氏、C氏がそれぞれ100㎡部分を有しているということではありません。それぞれが3分の1ずつの共有持分を持っているのであれば、それぞれが3分の1ずつの割合でこの土地全体を使うことが可能です。100㎡ずつ持っているというよりは、300㎡の土地全体を1年のうち3分の1ずつの日数だけ自由に使えるイメージの方が近いでしょう。

また、不動産が共有の場合、A氏の独断でこの土地全体を他社に売ったり勝手に造成してコンクリート敷きにしたりすることなどはできません。

不動産が共有持分となる主な理由

そもそもなぜ不動産の共有持分が生まれるのでしょうか?不動産が共有となる主な原因は次のとおりです。

  • 不動産の共同購入
  • 不動産の共有持分の贈与
  • 相続

不動産の共同購入

1つ目は、不動産の共同購入です。A氏とB氏が半額ずつお金を出し合って土地を買った場合、この土地はA氏とB氏がそれぞれ2分の1の共有持分を有することとなります。

共同購入は夫婦や親子などで多なうことが多いものの、稀に友人同士で行う場合もあります。また私道を、その私道沿いの土地の所有者が共有しているケースも存在します。

不動産の共有持分の贈与

2つ目は、共有持分の贈与です。ある人が単独で不動産を持っている場合、この不動産の持分をすべて贈与することもできますが、たとえば2分の1の共有持分のみを贈与することも可能です。

たとえば、自宅の建物が夫の単独所有となっていたところ、建物の2分の1にあたる共有持分のみを妻に贈与する場合などが考えられます。

相続

3つ目は、相続によるものです。

たとえば、土地を単独で持っていた父が亡くなり、相続人が長男、二男、長女の3人である場合、相続と同時にそれぞれがいったん3分の1ずつの共有持分を有します。しかし、これでは使い勝手が悪いため、実際には「土地は長男が相続し、B銀行の預金は二男が相続し、C銀行の預金は長女が相続する」などのように遺産分割をすることが一般的です。

しかし、父の遺産がその土地しかない場合、平等に遺産を分けることは困難です。土地を長男が相続する代わり、長男がその評価額の3分の1ずつを二男と長女に支払うという方法もありますが、長男にそれだけの資金がなければ困難でしょう。このような場合に、苦肉の策としてこの土地を3人の共有とする場合があります。

また、そもそも遺産分割協議自体を行わず土地を父名義のままで放置した結果、潜在的に長男、二男、長女の共有となっているようなケースも少なくありません。

共有持分の不動産の取り扱い

共有持分となっている不動産はどのように取り扱えば良いのでしょうか?基本的なルールは次のとおりです。

  • 不動産の利用
  • 不動産の保存行為
  • 不動産の管理行為
  • 不動産の変更行為
  • 自分の共有持分のみの売却

なお、ここではその不動産をA氏、B氏、C氏がそれぞれ3分の1ずつの共有持分を有している前提で解説します。

不動産の利用

自身が共有持分しか有していない不動産である場合も、各共有者は不動産の全体を使用することが可能です。

ただし、共有物を使用する共有者は別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対して自己の持分を超える使用の対価を償還しなければなりません。つまり、A氏がその不動産に居住するなど単独で使用している場合、原則としてB氏とC氏に使用料を支払う必要があるということです。

不動産の保存行為

保存行為は、各共有者が単独で行うことが可能です。保存行為とは、たとえば共有物である建物の修繕などを指します。

不動産の管理行為

管理行為には、共有持分の過半数を有する共有者の同意が必要です。例の場合において、A氏が管理行為をするには、少なくともB氏かC氏いずれかの同意を得なければなりません。

管理行為には、一定期間(建物であれば3年)を超えない期間の賃貸借設定などが該当します。また、変更行為のうち軽微なものも、過半数で決することができる管理行為に該当することとされました。

管理行為と変更行為の線引きは明白でなく、迷う場合も多いでしょう。その際には、あらかじめ弁護士へご相談ください。

不動産の変更行為

変更行為をするには、共有者全員による同意が必要です。変更行為とは、その形状や効用の著しい変更を伴う行為を指します。

たとえば、一定期間(建物であれば3年)を超える期間の賃貸借設定や不動産への担保設定などがこれに該当すると考えられます。

自分の共有持分のみの売却

原則として、A氏が勝手にB氏やC氏の共有持分を売ることはできません。不動産全体を売る場合、全員が協力して行うことが必要です。

一方、A氏が所有する3分の1のみの共有持分を売ることは、A氏の独断で行うことができます。

不動産が共有持分で起き得る主なトラブル

不動産の共有持分のみを有している場合には、どのようなトラブルが起きる可能性があるのでしょうか?主なトラブルは、次のとおりです。

  • 共有者の意見がまとまらず売却などができない
  • 共有者の一部が行方不明で売却などができない
  • 共有者が亡くなり権利関係がさらに複雑化する

引き続き不動産をA氏、B氏、C氏がそれぞれ3分の1ずつの共有持分を有している前提で解説します。

なお、いずれの場合であっても、弁護士へ相談することで解決できる可能性があります。共有持分に関するトラブルでお困りの際には、たきざわ法律事務所までご相談ください。

共有者の意見がまとまらず売却などができない

先ほど解説したように、不動産のうちA氏の共有持分のみを売却する場合、A氏が単独で行うことが可能です。しかし、この買い手は購入後不動産をB氏やC氏との共有となることになるため、買い手が自由に不動産を使えるわけではありません。

そのため、共有持分のみの売却では不動産全体を売却する場合と比べ、売却対価が低くなりやすいでしょう。しかし、いくらA氏やB氏が不動産全体を売りたくても、C氏が同意しなければ不動産全体を売ることはできません。また、共有している建物を、3年を超える長期にわたって貸そうにも、C氏が同意しなければ貸すことも困難です。

このように、共有者間の意見がまとまらず、売却や賃貸などができなくなる可能性があります。

共有者の一部が行方不明で売却などができない

共有者の一部が行方不明となると、行方不明となった共有者からは変更行為や管理行為に関する同意を取り付けることができません。その結果、売りことや貸すことなどが困難となる可能性があります。

共有者が亡くなり権利関係がさらに複雑化する

共有者が亡くなって相続が発生すると、さらに共有者が増え権利関係が複雑化します。共有者が増えれば増えるほど、管理行為や変更行為の同意を取り付けるハードルは高くなるでしょう。

そのため、特に兄弟や友人、知人などと共有している不動産や先代名義のままで放置をした不動産がある場合には、共有の解消へ向けて早期に検討することをおすすめします。

不動産の共有持分トラブルが起きた場合の対処法

不動産の共有持分に関するトラブルが発生した場合には、どのように対処すればよいのでしょうか?基本的な対処方法は次のとおりです。

  • 共有持分の解消を検討する
  • 弁護士へ相談する

共有持分の解消を検討する

夫婦間や親子間での共有の場合、相続の場面で解消できる可能性が高いでしょう。

一方で、子がいる兄弟姉妹や友人、知人などとの共有は、自動的に解消されることはありません。解消されるどころか、相続によって縁遠い人へと共有者が拡がってしまい、ますます解消が困難となる可能性があります。

そのため、共有持分でトラブルとなっている場合や将来のトラブルを避けたい場合には、共有を解消する方向で検討するとよいでしょう。

共有を解消する方法は、たとえば次のものなどです。

  • 共有者の持分を買い取る
  • 共有者に自分の持分を譲渡する
  • 共有者とともに共有不動産を売却する

当事者間での解消が難しい場合には、裁判で解決する方法もあります。

弁護士へ相談する

不動産の共有持分でトラブルが発生している場合や、今後のトラブル予防のために共有状態を解消したいと検討している場合などには、早期に弁護士へ相談することをおすすめします。弁護士が相手と交渉をしたり裁判手続きを代理したりすることで、共有持分に関するトラブル解決をサポートします。

なお、2023年4月に施行された改正民法により、特に共有者が不明な場合の共有解消がしやすくなっています。そのため、以前は解決が難しかった場合でも、改正後の法律に照らせば解決が図れるかもしれません。

まとめ

不動産の共有持分は、共同購入や相続などが原因で発生します。しかし、共有となっている不動産は自由に売ったり貸したりすることができません。

また、時間が経つと共有者に相続が起き、権利関係がさらに複雑化する恐れがあります。そのため、兄弟姉妹や友人、知人などと共有している不動産がある場合や先代名義のまま放置している不動産がある場合は、早めに対処しておく必要があるでしょう。

なお、2023年4月に施行された改正民法により、共有に関するトラブルが解決しやすくなりました。これまで諦めていた場合であっても、改正されたことで解説が可能となっているかもしれません。

たきざわ法律事務所では、共有持分の解消など不動産にまつわるトラブル解決に力を入れています。不動産の共有持分でお困りの際には、お早めにたきざわ法律事務所までご相談ください。

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この記事を書いた人

大手企業法務事務所にて勤務後たきざわ法律事務所を開設。多くの企業が抱える、①不動産案件(不動産事業者・不動産オーナー向け)、②労務トラブル、③IT・知財(著作権・不正競争防止法等)を専門とする。「攻めの法務戦略」により企業の利益を最大化するリーガルサービスを提供する。「堅苦しい」「フットワークが重い」そんな弁護士のイメージを根本から崩し、企業経営に寄り添った提案をすることをモットーとする。不動産オーナー、不動産事業者向けのYouTubeチャンネル「不動産価値向上チャンネル」にて情報配信も行う。

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