【2023】共有持分での相続を避けるべき理由は?リスク・解消法を弁護士がわかりやすく解説

共有持分での相続を避けるべき理由

相続の場面で、不動産の共有が遺産分割の選択肢にあがることもあるでしょう。

しかし、共有持分での相続は、できる限り避けるべきです。

では、それはなぜでしょうか?

今回は、共有持分での相続を避けるべき理由や共有を解消する方法などについて詳しく解説します。

目次

遺産に不動産がある場合の相続4パターン

遺産に不動産がある場合、これを分けるにはどのようなパターンがあるのでしょうか?

はじめに、不動産の相続方法を4つ解説します。

  • 現物分割
  • 換価分割
  • 代償分割
  • 共有分割

現物分割

原則でありもっともシンプルな方法は、現物分割です。

現物分割とは、取得者ごとに遺産を割り振る方法です。

たとえば、「長男がA土地とB建物を相続し、二男がC土地とD銀行の預金を相続し、長女がE銀行の預金を相続する」場合がこれに該当します。

ただし、ちょうど良い配分で現物分割ができる形で遺産が残っているケースは、さほど多くありません。

換価分割

換価分割とは、遺産である不動産を売却し、その売却によって得た対価を分ける方法です。

不動産のままでは遺産を平等に分けることが難しく、また相続人のなかに今後その不動産を使用する相続人がいない場合などに選択されます。

たとえば、「唯一の遺産であるA土地を売却し、これによって得た対価3,000万円を、長男と二男、長女が1,000万円ずつ受け取る」場合などがこれに該当します。

なお、換価分割では売却に要する費用についても負担者を決める必要があるほか、相続人間で売却条件をある程度統一する必要があるなど、実務上は難しい問題をはらみます。

たとえば、長男は「2,500万円でよいから早期に売りたい」と考えている一方で、二男や長女が「時間がかかっても良いから3,000万円以下では売りたくない」と考えているなど意見がまとまらない場合は、売却を進めることが困難となります。

代償分割

代償分割とは、一部の相続人が不動産を取得する代わりに、その相続人から他の相続人に対して一定の金額を支払う分割方法です。

たとえば、「唯一の遺産である評価額3,000万円相当のA土地を長男が相続し、長男のポケットマネーから二男と長女にそれぞれ1,000万円を支払う」場合などがこれに該当します。

代償分割は、実際によく行われている分割方法の1つです。

主な遺産が不動産しかなく、その不動産を一部の相続人(例の場合は、長男)が取得したい場合は、代償分割が有力な選択肢となるでしょう。

ただし、不動産の取得を希望する相続人(例の場合は、長男)に代償金を支払えるだけの資力がない場合、代償分割を選択することは困難です。

共有分割

共有分割とは、相続人同士で不動産を共有する相続方法です。

たとえば、遺産がA土地しかない場合において、このA土地を長男、二男、長女で3分の1ずつの共有とする場合などがこれに該当します。

不動産の共有分割はおすすめできません。

その理由は次で解説します。

不動産の共有持分を相続するリスク

不動産を共有分割し、共有持分を相続することにはどのようなリスクがあるのでしょうか?

ここでは、主なリスクを4つを解説します。

  • 事あるごとに他の共有者との合意が必要となる
  • 他の共有者と連絡が取れなくなるおそれがある
  • 共有持分だけを高値で売ることは難しい
  • 共有者にも相続が起きるとさらに縁遠い相手との共有となる

事あるごとに他の共有者との合意が必要となる

不動産を共有する場合、事あるごとに他の共有者との合意や話し合いが必要となります。

共有している不動産は、次のように意思決定をすべきこととされています。

  • 保存行為(軽微な修繕など):各共有者が単独で可能
  • 管理行為(大規模修繕や短期の賃貸など):共有持分の過半数の合意が必要
  • 変更行為(不動産全体の売却やリノベーション、長期の賃貸など):共有者全員の合意が必要

そのため、合意がまとまらず大規模修繕などができなくなり、不動産が管理不全に陥る可能性が否定できません。

また、売却や賃貸をしようにも他の共有者との合意がまとまらず、好機を逃すおそれもあります。

他の共有者と連絡が取れなくなるおそれがある

先ほど解説したように、不動産を共有すると、事あるごとに他の共有者と話し合いや合意をしなければなりません。

そのため、他の共有者と連絡が取れなくなると、合意形成ができなくなる可能性があります。

たとえ今はスムーズに連絡が取れたとしても、今後状況が変わったりいずれ相続人も高齢化して認知症となったりする可能性もあるため、将来を見据えてリスクを検討する必要があります。

共有持分だけを高値で売ることは難しい

法律上、不動産の共有持分のみを売ることもできます。

たとえば、ある不動産が長男、二男、長女の3人で3分の1ずつ共有している場合において、長男が自身の有する3分の1部分のみを他者に売ることができるということです。

ただし、この3分の1の共有持分を購入した人は、今後二男や長女と不動産を共有することとなり、せっかく購入した不動産を自由に使うことができません。

そのため、共有持分のみを高値で売ることは難しく、相場の半額以下となるケースがほとんどです。

また、一般個人が共有持分のみを買うことは想定しづらく、多くは共有持分の買い取りを専門的に行う事業者が買い手となるでしょう。

そのような事業者が共有持分を買い取ると、その後他の共有者がその事業者から、強引に買い取りを迫られる可能性があります。

共有者にも相続が起きるとさらに縁遠い相手との共有となる

不動産の共有者が亡くなると、その共有持分が次世代へと相続されます。

つまり、ある不動産を長男、二男、長女の3人で3分の1ずつ共有していた場合において、長男が亡くなると、長男の共有持分を相続した長男の妻や子が共有者になるということです。

このように、共有者に相続が起きると共有者が拡がっていき、合意形成がさらに困難となる可能性が高くなります。

相続した共有持分を解消する方法

相続によってすでに不動産を共有としてしまった場合は、早期に共有状態の解消を目指すことをおすすめします。

では、不動産の共有状態を解消するにはどのような方法があるのでしょうか?

ここでは、ある不動産が長男、二男、長女の3名による共有となっている場合において、長男が共有状態の解消を望んでいることを前提に解説します。

  • 自分の共有持分のみを売却する
  • 共有者全員で不動産を売却する
  • 他の共有者の持分を買い取る
  • 他の共有者に持分を売却する

自分の共有持分のみを売却する

1つ目は、長男が自身の共有持分のみを第三者に売却する方法です。

これにより、長男は共有関係から離脱することが可能となります。

先ほど解説したように、共有持分のみを第三者に売却することは可能です。

ただし、その場合は売却先が限られるほか、売却価格が非常に安くなります。

共有者全員で不動産を売却する

2つ目は、共有者全員で協力し、第三者に不動産を売却する方法です。

この場合、不動産を相場相当の価格で売却することができます。

ただし、他の共有者と売却に関する意見をまとめる必要があり、他の共有者との関係が良くない場合は意見がまとまらず難航するおそれがあります。

他の共有者の持分を買い取る

3つ目は、長男が二男や長女の持分を買い取る方法です。

二男と長女の共有持分を取得することができれば、不動産は長男の単独所有となります。

長男がその不動産の所有を続けたい場合は、この方法を目指すこととなるでしょう。

この場合は、売却価格の交渉が最大のポイントとなります。

長男に二男や長女の共有持分を買い取れるだけの資力がない場合、この方法をとることはできません。

他の共有者に持分を売却する

4つ目は、長男が二男または長女に、自身の有する共有持分を売却する方法です。

他の共有者に売却する方が、共有持分だけを第三者に売却する場合と比較して良い条件で売れる可能性が高くなります。

二男や長女としても、長男に代わって共有持分買取業者が共有者となる事態は避けたいと考える可能性が高く、買い取りの打診に応じる可能性が高いでしょう。

二男や長女がこの不動産を手放したくないと考えている場合は、この方法が有力な選択肢となります。

売却価格の交渉がまとまらず、話し合いが難航する可能性は否定できません。

共有持分解消の進め方

共有持分の解消を進めたい場合、どのように進めればよいのでしょうか?

ここでは、ある不動産が長男、二男、長女の3名による共有となっている場合において、長男が二男と長女の共有持分を買い取ることによる共有の解消を望んでいることを前提として解説します。

  • 当事者間で話し合う
  • 弁護士に相談する
  • 共有物分割請求調停を行う
  • 共有物分割請求訴訟を提起する

当事者間で話し合う

共有解消を望む場合は、当事者間で誠実に話し合います。

他の共有者は、いきなり共有持分を買い取りたいといわれると、何か裏があるのではと勘ぐり身構えてしまうかもしれません。

そのため、共有を解消したいと考える理由や、共有し続けることで今後お互いに生じ得るリスク、きちんと対価を支払うつもりがあることなどを丁寧に伝えると良いでしょう。

一方的に希望を押し付けるのではなく、二男や長女の言い分にも耳を傾けることがポイントです。

弁護士に相談する

二男や長女が話し合いに応じない場合や頑なに売ろうとしない場合、相場と比較して高すぎる対価を要求していて話し合いがまとまらない場合などは、共有不動産に関する法令に詳しい弁護士へ相談します。

弁護士へ相談することで、よい交渉の糸口が見つかる可能性があるためです。

弁護士へ依頼する場合は、弁護士に代理で交渉してもらうことも可能となります。

訴訟などにまでもつれ込むことを避けたいと考える人は多く、弁護士が代理することで交渉がまとまる可能性が高くなります。

共有物分割請求調停を行う

弁護士が代理してもなお交渉がまとまらない場合は、共有物分割請求調停を申し立てます。

共有物分割請求調停とは、共有解消について裁判所で行う話し合いです。

調停委員が当事者双方から交互に意見を聞く形で、話し合いが進行します。

双方がともに合意すると調停が成立し、合意内容が法的な拘束力を有します。

共有物分割請求訴訟を提起する

調停を経てもなお意見がまとまらない場合は、共有物分割請求訴訟へと移行します。

共有物分割請求訴訟とは、共有状態を解消する方法について、裁判所に結論を下してもらう手続きです。

共有物分割請求訴訟を提起すると、何らかの形で共有状態の解消は可能となります。

ただし、必ずしも申立人(長男)の希望どおりの判決が下るとは限りません。

長男としては、裁判所が「二男と長女は長男に対し、〇円の対価で不動産の共有持分を売り渡せ」などの結論が下ることを望むことでしょう。

しかし、状況や二男などの主張によっては、これとは反対に「長男と長女が二男に共有持分を売り渡すべき」との判決が下る可能性や、「不動産全体を競売にかけてその対価を3人で分ける」などの判決が下る可能性もあります。

当然ながら、自分の望んだ結論が出なかったことを理由に、訴訟をなかったことにすることはできません。

そのため、共有物分割請求訴訟を提起する際は、共有不動産に詳しい弁護士へ相談し、裁判所が下す判断について十分に予想しておく必要があります。

まとめ

共有持分の不動産は、相続を機に誕生することが少なくありません。

中には、相続の場面でうまく話し合いがまとまらず、不動産を安易に共有してしまうこともあると思います。

しかし、不動産の共有持分は、トラブルの原因となることが少なくありません。

たとえば、事あるごとに他の共有者との合意が必要となるものの、他の共有者と意見がまとまらず管理不全に陥ることなどが挙げられます。

そのため、相続で不動産を共有することは、可能な限り避けた方が良いでしょう。

すでに共有持分を有している場合は、早期に解消へ向けた対策を練るようにしてください。

たきざわ法律事務所には、不動産の共有問題に詳しい弁護士が在籍しており、これまでも多くの案件で共有解消をサポートしてきました。

不動産の共有持分でお困りの際や相続で不動産を共有しようか迷っている場合は、たきざわ法律事務所までお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

大手企業法務事務所にて勤務後たきざわ法律事務所を開設。多くの企業が抱える、①不動産案件(不動産事業者・不動産オーナー向け)、②労務トラブル、③IT・知財(著作権・不正競争防止法等)を専門とする。「攻めの法務戦略」により企業の利益を最大化するリーガルサービスを提供する。「堅苦しい」「フットワークが重い」そんな弁護士のイメージを根本から崩し、企業経営に寄り添った提案をすることをモットーとする。不動産オーナー、不動産事業者向けのYouTubeチャンネル「不動産価値向上チャンネル」にて情報配信も行う。

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