たきざわ法律事務所

【2024】私道の掘削承諾料の相場は?弁護士がわかりやすく解説

この記事を書いた弁護士は…

 

 

 

 

他者が所有する私道を掘削しようとする場合、これまでは、掘削承諾料の支払いが必要となることが一般的でした。

 

では、私道の掘削承諾料に、相場はあるのでしょうか?また、私道の掘削をしたい場合、どのような手順で進めればよいのでしょうか?

 

今回は、令和5年4月に施行された改正民法の内容を踏まえ、私道の掘削承諾や掘削したい場合の流れなどについて弁護士がくわしく解説します。

 

私道の掘削承諾料とは

 

上下水道やガスなどの生活インフラを引き込むにあたって、他人の有する私道を掘削する必要が生じることがあります。たとえ私道であっても、他者が所有する土地である以上、無断で掘削することはできません。

 

そこで、私道を掘削するための承諾を取り付けるため、私道所有者に対して支払う金銭が私道掘削料です。

 

この私道掘削料に、決まった相場はありません。一般的には数万円から数十万円程度ですが、さらに高額な承諾料が必要となることもあります。

 

ただし、後ほど解説するとおり、民法の改正によってインフラを引き込むための私道掘削が権利として明文化され、私道所有者の承諾は不要となりました。そのため、掘削による損害を償うための「償金」の支払いは今後も必要となる一方で、掘削承諾料の支払いは原則として不要となっています。

 

私道とは

 

そもそも、私道とはどのようなものを指すのでしょうか?ここでは、私道の概要や公道との違いなどについて解説します。

 

私道と公道の違い

 

私道であるか公道であるかは、その道の所有者によって分類されます。

 

国や都道府県、市区町村などが有する道は公道です。公道の管理や修繕はその所有者である市区町村などが行い、掘削をする必要がある際はその所有者である市区町村などに許可を申請することとなります。

 

一方、私道とは、国や地方公共団体以外が所有する道路です。一般個人が所有者である場合のほか、民間企業や民間団体が所有者であることもあります。私道は、その管理や修繕も、原則としてその所有者である個人や企業が行います。

 

公道であるか私道であるかを外部から見極めることは困難であり、ある道が私道であるかどうかを知るためには、その土地の全部事項証明書(登記簿謄本)を取得しなければなりません。ただし、幹線道路など車通りの多い道は、公道であることが多いでしょう。

 

一方、奥が行き止まりとなっていたり「コ」の字型となっていたりしてその道沿いの住民しか通行しないような形状の道であれば、私道である可能性があります。また、通り抜けができる道であっても私道である可能性はゼロではないため、不動産を購入する際はあらかじめ前面道路の所有者を確認しておくことをおすすめします。

 

通行権のある私道は掘削権もある?

 

道の形状をしていても、私道はその所有者の財産です。そのため、原則として、他者が所有する私道を自由に通行することはできません。

 

たとえば、比較的古い大きめの家などでは母屋と離れの間に道があることがありますが、道の形であるからといってまったく関係のない人がその道を通れるわけではないと考えると、イメージしやすいでしょう。

 

一方で、建築基準法上の道路に指定されている場合などには、私道であっても、他者が自由に通行できます。建築基準法上、一定以上の道路に間口が2メートル以上接していない土地には新たに建物を建てることができません。

 

そこで、私道を建築基準法上の道路とみなす取り扱いを受けることで、その道沿いへの建築が可能となります。このような指定を受けている私道であれば、他者の通行が可能です。

 

また、ほかにも所有者との契約によって通行が許可されているケースや、通行地役権の設定などにより通行できる場合などがあります。しかし、私道の通行権と掘削権はイコールではありません。

 

建築基準法上の道路への指定や契約などによって通行が許されている土地であるからといって、自由に掘削できるわけではないということです。通行の問題と掘削の問題は分けて考える必要があるため、混同しないようご注意ください。

 

【改正】私道の掘削承諾に関する改正ポイント

 

令和5年4月に施行された改正で、私道の掘削についてはどのような改正がされたのでしょうか?ここでは、私道にまつわる改正ポイントを2つ解説します。

 

インフラ引き込みのための掘削権が明文化された

 

改正によって、インフラを引き込むために他者が所有する土地を掘削することが、権利であることが明文化されました(民法213条の2)。条文では、次のように記載されています。

 

  • 土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる

 

つまり、インフラを引き込むために必要があるときは、他者の土地を掘削することができるほか、配管などを継続的に他者の所有する土地に埋設することができるということです。

 

権利であることが明文化されたとともに、インフラの設置などをする際は、その所有者に対して「通知」すべきことが明記されました。そのため、インフラを引き込むにあたって私道所有者の「承諾」は不要である一方で、私道所有者に「通知」することは必要です。

 

なお、設備の設置などをする場所や方法は、その土地の所有者にとってもっとも損害が少ない場所と方法を選ばなければなりません。インフラ引き込みが権利であるからといって、他者の私道をどこでも自由に掘削できるわけではないためご注意ください。

 

一定の「償金」の支払いが必要なことが明文化された

 

改正によって、インフラを引き込むために他者の土地を掘削する際は、償金の支払いが必要であることが明文化されました。

 

掘削などにより一時的に発生する損害に対する償金は、原則として一括払いです。一方で、継続的に他者の土地を使用する必要がある場合は、償金を1年ごとの定期払いとすることもできます。

 

償金の額は、それぞれ次のとおりと解されています。

 

  • 掘削などにより一時的に発生する損害:実損額

  • 継続的に設備を使用する対価:設備設置部分の使用料相当額

 

なお、法務省民事局が公表している資料によれば、「導管などの設備を地下に設置し、地上の利用自体は制限しないケースでは、損害が認められないことがあると考えられる」とされています。そのため、地上の利用を制限していないにもかかわらず継続的な償金の支払いを求められた場合には、これを拒否できる可能性があるでしょう。

 

また、同じ資料で「他の土地の所有者等から設備の設置を承諾することに対するいわゆる承諾料を求められても、応ずる義務はない」との記載もあり、改正によって掘削承諾料の支払いが不要となったことが明記されています。

 

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改正後に私道掘削を進める流れ

 

改正後、他者が所有する私道の掘削をする必要が生じた場合は、どのように進めればよいのでしょうか?ここでは、進め方の一例を紹介します。

 

私道所有者に通知をする

 

私道の掘削をする際は、掘削をする前に所有者に通知しなければなりません。通知をする時期について、明文の規定はありません。

 

しかし、先ほど紹介した法務省民事局が公表している資料によれば、「その目的・場所・方法に鑑みて設備設置使用権の行使に対する準備をするに足りる合理的な期間を置く必要」があるとしたうえで「事案によるが、2週間~1か月程度」と付記されており、これが1つの目安となるでしょう。

 

通知の方法に制限はなく、口頭であっても構いません。ただし、「言った・言わない」の齟齬を避けるため、書面で通知することをおすすめします。

 

また、後から「聞いていない」と言われるリスクをより確実に回避するため、通知書の控えに署名を受けたり、内容証明郵便で通知したりすることも検討するとよいでしょう。通知をすべき所有者が所在不明である場合は通知に代わる公示が必要となるため、弁護士へご相談ください。

 

必要な償金について話し合う

 

次に、償金についての話し合いを行います。償金について一律の相場があるわけではなく、掘削の範囲や態様、期間などによって変動します。

 

そのため、あらかじめ弁護士などへ相談してそのケースにおける償金の適正額を把握したうえで、交渉に臨むことをおすすめします。償金についての交渉がまとまったら、覚書などを交わしておくとよいでしょう。

 

必要に応じて承諾書を取り付ける

 

先ほど解説したとおり、民法の改正によって掘削の承諾を得ることは不要となりました。そのため、法律上は通知さえして適正な償金を支払えば問題ありません。

 

ただし、実務上はまだ住宅ローンの審査や工事の施行にあたって、掘削承諾書が求められることもあります。そのため、可能であれば、掘削承諾書にサインや捺印をもらっておくとよいでしょう。償金についての覚え書きを、掘削承諾と兼ねることも検討できます。

 

承諾書があることで、あとから「通知など受けていない」などと主張されるリスクを避けることにもつながります。

 

私道の掘削承諾料や償金の相場について弁護士へ相談したほうがよいケース

 

最後に、私道の掘削承諾料や償金の相場などについて、特に弁護士へ相談したほうがよいケースを3つ解説します。

 

私道所有者が所在不明である場合

 

1つ目は、私道所有者が所在不明である場合です。

 

私道所有者が所在不明である場合、私道の所有者に対して直接掘削の通知をすることができません。この場合には、公示による意思表示で足りるとされています(同98条)。

 

ただし、単に引っ越しただけである場合や電話番号が変わっただけである場合などには、所在不明とはいえません。所在不明というためには、現地や不動産登記簿、住民票などの公的記録を調査してもなお所在が判明しないことが必要です。

 

この判断を自分で行うことは容易ではなく、安易な判断で直接の通知をすることなく掘削した場合にはトラブルに発展するおそれがあります。そのため、あらかじめ弁護士へ相談することをおすすめします。

 

私道所有者が相場以上に高額な掘削承諾料や償金を求めている場合

 

2つ目は、高額な掘削承諾料や償金を請求されている場合です。

 

掘削にあたっては、私道所有者に対して適切な償金を支払う必要があります。とはいえ、私道所有者の言い値で支払う義務があるわけではありません。

 

弁護士が代理で交渉することで適正額へと減額できる可能性があるため、言い値で支払ってしまう前に弁護士へご相談ください。

 

私道所有者が掘削を妨害する場合

 

3つ目は、私道所有者が掘削を妨害している場合です。

 

たとえば、掘削が必要な箇所に私物を置き、これを移動させなければ掘削ができない状態とすることなどが考えられます。この場合であっても、勝手に相手の私物を移動させることは避けるべきです。

 

なぜなら、日本の法律ではこのような自力救済は禁止されており、勝手に私物を異動させて万が一破損をさせようものなら、相手から損害賠償請求などがなされてさらなるトラブルに発展する可能性があるためです。私道の所有者が掘削を妨害している場合には自分で対応しようとせず、弁護士へご相談ください。

 

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まとめ

 

私道の掘削について、改正後のポイントを踏まえて解説しました。

 

民法の改正により、インフラを引き込むための私道の掘削が権利であることが明文化されています。そのため、改正後は私道の所有者から承諾を得たり承諾料を支払ったりする必要はなく、通知をするだけで構いません。

 

ただし、一定の償金を支払う必要があるほか、掘削を妨害されている場合は自力での救済はできないため、注意しましょう。

 

たきざわ法律事務所は不動産法務に力を入れており、私道の掘削や承諾料にまつわるトラブルについても多くの解決実績があります。相場を超える法外な掘削承諾料や償金を請求されてお困りの際や、私道所有者が掘削を妨害している場合、私道所有者が所在不明である場合などには、たきざわ法律事務所までご相談ください。

 

 

 

 

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