たきざわ法律事務所

【2023】私道のみに面した土地を買う際の注意点は?弁護士がわかりやすく解説

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道には、公道と私道が存在します。このうち、私道とは一般個人や企業が持っている土地であり、トラブルの原因となることも少なくありません。

 

では、購入を検討している土地が私道のみに面している場合、どのような点に注意すれば良いのでしょうか?今回は、私道のみに面した土地を買う際の注意点や購入前に確認しておくべき点などについてくわしく解説します。

 

私道とは

 

私道とは、一般個人や一般企業などが所有している道です。では、私道と公道は、どのように異なるのでしょうか?また、ある道が私道か公道であるかは、どのように見分ければ良いのでしょうか?それぞれ解説します。

 

公道との違い

 

公道とは、国や都道府県、市区町村など、「公」が所有している道です。公道であれば、その修繕や管理についても所有者である国や地方公共団体が行い、これにかかる費用も国や地方公共団体が負担します。

 

一方、私道であれば、その修繕や管理は所有者である個人などが行い、これに要する費用もその所有者が負担します。また、私道であれば、たとえばライフラインの引き込みのためにその道の掘削が必要となった際の通知先も、その所有者である個人などです。

 

私道と公道の見分け方

 

ある道が私道であるか公道であるかは、どのように見分ければ良いのでしょうか?見分け方は次のとおりです。

 

現地で見分けることは困難

 

一般的には、車通りの多い道や幹線道路であれば、公道であることが多いでしょう。一方、奥が行き止まりとなった道などその道の使用者が非常に限定的である場合には、私道である可能性があります。

 

また、「この先私道につき通り抜け禁止」などの看板があれば、私道である可能性が高いでしょう。ただし、これらはあくまで推測に過ぎず、その道が私道であるか公道であるかを現地で確実に見分けることは困難です。

 

通常は仲介する不動産会社が教えてくれる

 

土地を購入しようとしている場合、その土地が面する道が私道であるか公道であるかは、通常、仲介をする不動産会社が教えてくれます。

 

そのため、不動産会社の仲介を受けて土地を購入するのであれば、自分で道路の所有者を調べる必要はないことが多いでしょう。

 

全部事項証明書を取得すればより確実

 

前面道路が私道であるかどうかより確実に知るためには、最寄りの法務局へ出向いて、全部事項証明書(登記簿謄本)を取得すると良いです。

 

全部事項証明書には土地の所有者の情報が記載されているため、道である土地の全部事項証明書を取得することで、この道の所有者を知ることができます。つまり、全部事項証明書に記載されている所有者が「国」や「〇〇県」、「〇〇市」などではなく一般個人や一般企業であれば、その道は私道であるということです。

 

なお、公道であればそもそも土地に地番が付されておらず、全部事項証明書が取得できないことも少なくありません。そのため、全部事項証明書を取得する前に法務局で公図(土地の位置や形状を示す地図)を取得し、該当の道に地番が付されているかどうかを確認したうえで、全部事項証明書を取得することをおすすめします。

 

公図を取得して、その道である土地にそもそも地番が付されていない場合には、その道は私道ではありません。

 

私道のみに面した土地を買う前に確認すべきこと

 

私道のみに面した土地を買う前には、どのような点を確認するべきでしょうか?確認しておくべき事項は次のとおりです。

 

所有が誰の所有であるか

 

土地が面している道が私道であれば、その道の所有者を必ず確認しておきましょう。主なパターンは、次の3つです。

 

  1. 購入する土地とセットで私道が売買される(つまり、自分が私道の所有者になる)
  2. 他者の所有である
  3. 購入する土地とセットで私道の共有持分が売買される(つまり、自分が他者とともに私道の共有者となる)

 

このうち「1」や「3」であれば、今後、私道の負担金や管理費の支出が必要となります。一方「2」であれば管理費などの負担はないものの、通行やインフラ引き込みのための掘削でトラブルとありリスクがあるでしょう。

 

私道を通行する根拠は何か

 

土地が唯一面している土地が私道であれば、その道を通らなければ日常生活を送ることができません。そのため、必ず通行の根拠を確認しておきましょう。私道を通行できる根拠は、主に次のとおりです。

 

自分が所有者である

 

私道の所有者が自分である場合や、自分が私道の共有者となる場合には、これを根拠に私道を通行することが可能です。この場合には、通行に関する問題は生じないでしょう。

 

建築基準法上の位置指定道路などである

 

他者が所有する私道であっても、建築基準法上の位置指定道路などとして指定を受けていれば、これを根拠に通行することが可能です。この場合には、公道を同じように、誰でも通行することができます。

 

なお、私道のみに面した土地であり、その私道が建築基準法上の道路でないのであれば、そもそもその土地上に新たに建物を建てることはできません。

 

囲繞地(袋地)通行権が発生している

 

囲繞地(袋地)通行権(公道に至るための他の土地の通行権)とは、公道に接していない土地の所有者が公道に出るために、他の土地を通行する権利です。

 

この場合には再建築が不可である可能性が高いため、通行権以上にこの点を理解しておかなければなりません。

 

通行地役権が設定されている

 

地役権とは、ある土地(「要役地」といいます)の便益のために、別のある土地(「承役地」といいます)を利用する権利です。このうち、特に通行に特化した便益を提供するものを、「通行地役権」といいます。

 

通行地役権は登記されることも少なくないため、通行の権利が通行地役権であれば、全部事項証明書で登記の有無を確認しておくと良いでしょう。なお、通行地役権は土地に付着した権利義務であるため、土地の所有者が変わってもそのまま引き継がれます。

 

私道所有者との契約がある

 

私道を通行する根拠が、私道所有者との契約である場合もあります。ただし、契約は他の通行根拠とは異なり、原則として契約当事者のみにしか適用されません。

 

そのため、いくらその土地の元所有者が私道所有者との契約によって私道を通行できていたとしても、新たにその土地を購入した者が再度契約を結べるとは限らない点に注意が必要です。

 

接道義務を満たしているか

 

私道のみに面した土地を購入する際には、接道義務にも注意しなければなりません。接道義務とは、土地が建築基準法で認められた一定の道路に2m以上接していなければ、その土地に建物を建築することができないとされる規定です。

 

つまり、購入しようとしている土地が2m以上接する唯一の土地が私道である場合、これが建築基準法上の道路でなければ、その土地上に新たに建物を建てることができないということです。

 

なお、建築基準法上の道路は原則として幅員4m以上でなければならず、仮に現在の幅員が4m未満であれば、新たに建物を建てる際に土地を後退(セットバック)しなければなりません。

 

セットバックについて理解しないまま前面道路が4m未満である土地を購入した場合、希望する広さの建物が建てられない可能性があることには注意が必要です。

 

私道にまつわるトラブルは発生していないか

 

私道のみに面した土地を購入する際には、その私道についてトラブルが発生していないかどうか、あらかじめ確認しておいた方が良いでしょう。すでにトラブルが発生している場合や、トラブルが頻発している場合には、土地の購入後にトラブルへ巻き込まれる可能性が高くなるためです。

 

 

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私道のみに面した土地でよくあるトラブル

 

私道のみに面した土地では、どのようなトラブルが起こり得るのでしょうか?主なトラブルは次のとおりです。

 

その私道が他者の所有である場合

 

土地が面している私道が他者の所有であれば、次のトラブルなどが生じる可能性があります。

 

ある日突然私道の通行を禁じられる

 

私道所有者から、ある日突然通行を禁じられたり、高額な通行料を請求されたりするリスクがあります。また、徒歩での移動のみが許可されて、自動車での通行は禁じるなどとされる可能性もあるでしょう。

 

なお、仮に通行権が認められている場合であっても、通行を妨害するために置かれたものを勝手に移動させれば損害賠償請求の対象となる可能性もあり、慎重に対処しなければなりません。

 

所有者が傍若無人な利用をしている

 

たとえ私道であっても、建築基準法上の道路であれば、一般公衆による通行を受忍しなければなりません。しかし、私道所有者が「自分の土地だから自分が好きに使って良いはずだ」などと誤解することで、傍若無人な利用をする場合があります。たとえば、私道上に常に自家用車を駐車したり、鉢植えを置いたりするなどです。

インフラ引き込みのための掘削許可が得られない

 

土地上に建物を建築する際には、水道やガスなどのライフラインを引き込む必要が生じます。そして、私道との位置関係によっては、ライフラインを引き込むために私道を掘削する必要が生じるでしょう。

 

このような際に、私道所有者から掘削の許可が得られず、建築が進まないリスクがあります。

 

なお、令和5年(2023年)4月1日に施行された改正民法により、ライフライン引き込みのための掘削に関する規定が整備されました。これにより、ライフライン引き込みのための掘削には私道所有者の承諾や承諾料の支払いは不要となり、事前の通知と損害が生じた場合の償金の支払いで対応できることとなっています。

 

ただし、私道所有者が法改正を知らない可能性も高いため、トラブルを防止するためには、可能な限り丁寧な説明をして事前の承諾を得たうえで掘削を行った方が良いでしょう。

 

その私道が自分と他者との共有である場合

 

その私道が自分と他者との共有である場合には、次のトラブルが発生する可能性があります。

 

管理などの方針がまとまらない

 

共有である私道について方針を決めるためには、次の合意が必要となります。

 

  • 保存:各共有者が単独で可能

  • 管理:各共有者の持分の価格に従って過半数で決する

  • 変更:共有者全員の同意が必要

 

どのような行為が「管理」でありどのような行為が「変更」にあたるのかは、「その形状又は効用の著しい変更を伴う」かどうかで決まります。

 

たとえば、砂利敷きの私道をアスファルト舗装する行為などは、形状や効用が著しく変化するわけではないため、「管理」にあたる可能性が高いでしょう。

 

しかし、これらの方針がスムーズに決まるとは限りません。たとえば、共有者の一部はアスファルト舗装をしたいと考える一方で、他の共有者が費用負担を避けたいことから、砂利敷きのままで良いと主張する可能性もあります。

 

つまり、他者と私道を共有するということは、何か大きな決め事をする際に、その都度他の共有者との話し合いが必要になるということです。仮に話し合いがスムーズにまとまっても、これを煩雑に感じる場合も多いでしょう。

 

共有者の一部が所在不明

 

所有者不明土地が社会問題となっている昨今、私道の共有者が所在不明となるリスクも決して低いものではありません。共有者が所在不明となれば、その共有者が負担すべき管理費の支払いが受けられなくなるでしょう。また、「管理」や「変更」をするにあたって、同意を得ることができなくなります。

 

私道のみに面した土地で私道所有者とトラブルになったら

 

私道のみに面した土地で、私道所有者とトラブルになってしまったら、どのように対処すれば良いのでしょうか?基本的な対応方法は次のとおりです。

 

まずは誠実に話し合う

 

私道所有者とのトラブルは、まずは誠実な話し合いで解決を図ることをおすすめします。なぜなら、私道所有者は近隣住民であることも多く、仮に大きなトラブルに発展してしまえば、その後気まずい思いをする可能性があるためです。

 

お互いに誠実に話し合うことで、私道所有者の本音が見えるかもしれません。たとえば、私道所有者が突如通行を妨げたことには、通行者によるゴミの放置に長年悩まされてきたなどの事情が存在する場合もあるでしょう。

 

このような事情がわかれば、今後の適切な対応を約束することで解決が図れる可能性があります。場合によっては、町内会長など第三者の立ち会いも検討すると良いでしょう。

 

市区町村の道路課などへ相談する

 

私道が建築基準法上の道路である場合には、市区町村の道路課などへ相談することで、解決が図れる可能性もあります。

 

たとえば、私道所有者が建築基準法上の道路となっている私道の通行を妨げている場合などには、市区町村へ相談してみることも一つの手でしょう。

 

弁護士に相談する

 

当事者同士での解決が難しい場合には、土地にまつわるトラブルに詳しい弁護士へ相談してください。弁護士へ相談して依頼をすることで、弁護士が相手方と代理で交渉をしたり、法律上必要となる手続きを代わりに行ったりすることが可能になります。

 

相手方としても訴訟までは望んでいないことも多く、弁護士が代理で交渉することで、解決できる可能性が高くなるでしょう。また、仮に訴訟などへと発展した場合でも、弁護士に依頼していれば落ち着いて対応することが可能となります。

 

 

最適解を提案します

 

 

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まとめ

 

私道に関するトラブルは少なくありません。また、仮に最終的には訴訟などで解決ができるとしても、そもそもトラブルになることや日々のストレスを避けたい場合もあるでしょう。

 

そのため、私道のみに面した土地を購入するかどうかは、あらかじめ弁護士へ相談してしっかりとリスクを把握したうえで、慎重に決断することをおすすめします。

 

また、これまで解決を諦めていたトラブルも、令和5年(2023年)4月1日に施行される改正によって解決が図れるかもしれません。長年トラブルに悩まされてきた場合であっても、改めて弁護士へ相談することをおすすめします。

 

たきざわ法律事務所では、私道など土地にまつわるトラブル解決やトラブル予防に力を入れています。私道に面した土地を購入するにあたってあらかじめリスクを把握したい場合や、私道に関してトラブルとなってしまっている場合などには、たきざわ法律事務所までお気軽にご相談ください。

 

 

 

 

 

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