たきざわ法律事務所

【2022】不動産広告で守るべきルールは?注意すべき規約を弁護士がわかりやすく解説

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不動産広告をするにあたっては、さまざまな規制をクリアしなければなりません。不動産の実態とは大きく異なる広告や、実際には販売していない不動産を掲載するいわゆる「おとり広告」などが横行してしまえば、安心して不動産取引をすることができなくなってしまうためです。

 

では、不動産を広告する際には、どのような規定に注意すればよいのでしょうか?今回は、不動産広告で知っておくべき規定をまとめて解説します。

 

不動産広告で遵守すべきルール

 

不動産広告をするにあたって、遵守すべき主なルールは、主に次の3つです。詳細な内容は後ほど解説しますので、ここではそれぞれの制度の概要と違反時のペナルティを見ていきましょう。

 

宅地建物取引業法

 

宅地建物取引業法(「宅建業法」と略されます)とは、宅建業の免許制度や、宅建業者が遵守すべきルールなどを定めた法律です。宅建業者が守るべきルールの一つとして、広告についても定められています。

 

宅建業法による広告規制に違反した場合の罰則は、違反者に対して6か月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金またはこれらの併科、これとは別で法人に対しても100万円以下の罰金です。

 

また、宅建免許を受けている都道府県知事などから業務改善の指示がなされる可能性があるほか、業務停止命令が下される可能性もあります。

 

景品表示法

 

景品表示法(「景表法」と略されます)とは、商品やサービスの品質や内容、価格などを偽って表示を行うことなどを禁じる法律です。

 

景表法は商品やサービス全般を対象とした法律であり、不動産取引のみを対象としたものではありません。しかし、不動産取引も特に除外されておらず、景表法の対象です。

 

景表法に違反して違法な広告をした場合には、内閣総理大臣から広告の差し止めなどを命じられる可能性があります。さらにこの命令にも違反をすれば、2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの併科の対象となります。

 

また、これとは別途、違法な広告による売上額の100分の3に相当する課徴金の支払いが命じられる可能性もあります。

 

不動産の公正競争規約

 

不動産の公正競争規約とは、公正取引委員会と消費者庁長官の認定を受けたうえで不動産業界団体が自主的に定める、不動産広告に関するルールです。

 

この規約を定めて運用する不動産公正取引協議会は全国9地区(北海道、東北地区、首都圏、東海、北陸、近畿地区、中国地区、四国地区、九州)に分かれており、不動産業者は任意で加盟します。

 

仮に違反をした場合には、協議会より500万円以下の違約金を課される可能性があるとすることで、実効性が確保されています。また、一定の場合には、主要なポータルサイトへの広告掲載が最低1ヶ月間停止されます。

 

なお、公正競争規約は任意の加入団体が定めたルールであるため、この規約の対象となるのは、協議会に加入している不動産業者のみです。しかし、加入してない不動産業者についても、公正取引委員会が不当性を判断する際にはこの規約が参酌されることとされています。

 

そのため、協議会への非加入企業も、規約の概要は知っておいた方が良いでしょう。

 

不動産広告に関する「宅地建物取引業法」の主な規制

 

ここからは、上で紹介したそれぞれの規定について、規制される広告の内容を解説します。宅地建物取引業法による広告に関する規制は、次のとおりです。

 

誇大広告等の禁止

 

宅建業者は、その業務に関する広告にあたり、次の表示をすることが禁じられています。

 

  • 著しく事実に相違する表示

  • 実際のものよりも著しく優良であり、もしくは有利であると人を誤認させるような表示

 

また、これらの対象となるのは、その広告に係る宅地または建物のうち、次の内容などです。

 

  • 所在

  • 規模

  • 形質

  • 現在もしくは将来の利用の制限

  • 環境

  • 交通その他の利便

  • 代金

 

事実と異なる表示や優良(有利)誤認させ得る表示などについて、広く禁じられています。

 

広告の開始時期の制限

 

不動産業者が広告をするのは、次のタイミング以後でなければなりません。

 

  • 宅地造成前の場合:都市計画法上の許可など必要な許可が出た後

  • 建築工事の完了前の場合:建築基準法上の許可など必要な許可が出た後

 

実際に宅地の造成が可能かどうかや、建物の建築が可能であるかどうかは、必要な許可が下りない限り確約することができないためです。

 

取引態様の明示

 

不動産業者が広告をする際には、自己の立ち位置(取引態様)を明示しなければなりません。取引態様とは、次のような事項です。

 

  • 自己が契約の当事者となって売買などをする

  • 自己が代理人として売買などをする

  • 自己が媒介して売買などをする

不動産広告に関する「景品表示法」の主な規制

 

景品表示法における主な広告規制のうち、不動産広告で注意すべき主な規制は、次のとおりです。

 

優良誤認の禁止

 

景表法で禁じられている優良誤認とは、次のような表示を指します。

 

  • 1. 商品やサービスを実際のものよりも著しく優良であると示す表示

  • 2. 商品やサービスを、事実に相違して他社商品や他社サービスよりも著しく優良であると示す表示

 

消費者庁のホームページには、上の「1」と「2」の例として、次のものが挙げられています。

 

  • 1. 1の例:カシミヤ混用率が80%程度のセーターに「カシミヤ100%」と表示した場合

  • 2. 2の例:「この技術を用いた商品は日本で当社のものだけ」と表示していたが、実際は競争業者も同じ技術を用いた商品を販売していた場合

 

不動産広告でいえば、たとえば実際には築10年であるにもかかわらず「新築物件」と記すことなどがこれに該当するでしょう。

 

有利誤認の禁止

 

景表法で禁じられている有利誤認とは、次のような表示を指します。

 

  • 1. 取引条件について、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示

  • 2. 取引条件について、競争業者のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示

 

消費者庁のホームページには、上の「1」と「2」の例として、次のものが挙げられています。

 

  • 1. 1の例:当選者の100人だけが割安料金で契約できる旨表示していたが、実際には、応募者全員を当選とし、全員に同じ料金で契約させていた場合

  • 2. 2の例:「他社商品の2倍の内容量です」と表示していたが、実際には他社と同程度の内容量にすぎなかった場合

 

おとり公告の禁止

 

不動産広告でしばしば問題となるのが、「おとり広告」です。

 

おとり広告とは、実際には販売できない土地や建物などを、あたかも販売中であるように見せかけた広告のことです。一般的には、広告の相手方の多くが魅力的であると感じるような物件が、おとり広告に使われることが多いでしょう。

 

しかし、顧客がその物件を目当てに問い合わせをしたり店舗を訪れたりしても、その物件の購入などをすることはできません。その物件への問い合わせなどをきっかけに、顧客との接点を持つことなどを目的として行われます。

 

このような「おとり広告」は、景表法で禁止されています。

 

 

最適解を提案します

 

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不動産広告に関する「不動産の公正競争規約」の主な規制

 

不動産の公正競争規約で設けられている不動産広告に関する規制は、次のとおりです。なお、非常に多くの規制が設けられていますので、ここでは主なもののみを紹介しています。

 

広告表示の開始時期の制限

 

不動産の公正競争規約では、広告表示の開始時期について次のように定められています。

 

  • 未完成の建物(マンション・一戸建て):建築確認の取得など必要な許可が下りてから

  • 開発許可が必要な未完成の宅地:開発許可など必要な許可が下りてから

 

なお、たとえ「販売予定」や「販売予告」などと表示したとしても、これらの許可がおりる前に広告をすることはできません。

 

必要な表示事項

 

必要な表示事項とは、次の媒体に広告を掲載する際に、必ず表示すべきとされる項目です。

 

  • インターネット広告

  • チラシ(新聞折込、投げ込みなど)

  • 新聞

  • 雑誌

  • パンフレット等

 

これらの媒体に不動産広告を掲載する場合においては、原則として7ポイント以上の大きさの明瞭な文字で、取引内容に合わせて、必要な事項を表示しなければなりません。

 

たとえば、新築分譲マンションの場合、表示すべき事項は次のとおりです。

 

 

広告内容に合わせて、必要な事項の表示をしましょう。一方、テレビ広告やラジオ広告、現地に掲示する看板などは、これらの表示規制の対象外とされています。

 

表示基準

 

広告によって表示方法がバラバラでは、広告の相手方にとって比較が困難となってしまうでしょう。そこで、不動産の公正競争規約では、表示基準が設けられています。

 

主な表示基準は、次のとおりです。

 

  • 面積:メートル法により表示し、「坪」を単位とした面積のみを表示することは不可。畳1枚の広さは1.62㎡以上の広さがあるという意味で用いる

  • 各種施設までの距離や所要時間:道路距離や所要時間を表示するときは、起点と着点を明示して表示する。徒歩による所要時間は道路距離80mにつき1分間とし、小数点以下は切り上げる

  • 写真・絵図:宅地や建物の写真は、取引するものの写真を用いて表示する。見取図、完成図又は完成予想図は、その旨を明示する。物件周囲の状況について表示するときは、現況に反する表示をしない

  • 価格・賃料:住宅の価格については、原則として1戸あたりの税込価格とし、電気、上下水道、都市ガス供給施設のための費用等を含む

 

表示する際には公正競争規約を確認し、これに反する独自のルールで表記してしまうことのないよう注意しましょう。

 

2022年9月1日に施行された不動産の公正競争規約改正ポイント

 

不動産の公正競争規約が改正され、2022年9月1日から施行されました。この改正により変わった主な規定は、次のとおりです。

 

強化された規定

 

改正により強化された主な規定は、次のとおりです。

 

販売戸数が2以上である分譲物件の表示方法の改訂

 

分譲地などの販売戸数が2以上である場合、駅からの距離はまとまった分譲地のうちどこの土地から計測するのかで異なります。特に、大規模分譲の場合には、駅からもっとも近い土地と駅からもっとも多い土地とで、所要時間が大きく異なる場合も多いでしょう。

 

そこで、駅などの対象施設からもっとも近い住戸(区画)からの所要時間などに加え、対象施設からもっとも遠い住戸(区画)からの所要時間なども表示すべきこととされました。

 

公共交通機関の所要時間などの表示方法の改訂

 

同じ地点へ電車やバスなどで移動する場合であっても、通勤ラッシュ時とそれ以外とで所要時間が異なることも多いでしょう。

 

そこで、従来は原則として平常時の所要時間を記載のうえ、通勤ラッシュ時の所要時間が平常時を著しく超えるときは、通勤ラッシュ時の所要時間を併記することとされていました。

 

今回の改訂により原則と例外が逆転し、原則として通勤ラッシュ時の所要時間を記載することとされました。これに、平常時の所要時間を併記することが可能です。

 

また、乗り換えを要するときは、乗り換えに要するおおよその時間を含めて所要時間を表示することとされました。

 

緩和された規定

 

改正により緩和された主な規定は、次のとおりです。

 

物件名称の使用基準

 

物件が海(海岸)や湖沼、河川の岸、堤防から直線で300m以内にあれば、これらの名称も使用できることとなりました。

 

また、街道の名称は物件がその街道に面していないと使用できないこととされていたところ、直線で50m以内であれば使用できることとなっています。

 

未完成の新築住宅等の外観写真

 

建物が未完成等の場合には、その建物の外観写真を撮影して掲載することはできません。そこで、このような場合には、取引する建物と「規模、形質及び外観が同一の他の建物の外観写真」に限って表示を認めていました。

 

改正により、同一でなかったとしても、次の条件を満たす写真であれば掲載可能とされています。

 

  • 取引する建物を施工する者が過去に施工した建物であること

  • 構造、階数、仕様が同一であること

  • 規模、形状、色等が類似していること

 

ただし、この場合には「施工例 ※取引する建物とは、外壁、屋根開口部等の形状が異なります」などと明記し、取引対象の建物であると誤認されるような表記をしてはなりません。

 

まとめ

 

不動産広告には、本文で解説をしたとおり、さまざまな規制が存在します。仮に違反をしてしまえばペナルティの対象となるほか、企業の信用が低下してしまいかねません。

 

不動産の広告をする際には広告のルールをよく理解したうえで、適法かつ公正に行いましょう。

 

しかし、ある広告表現が適法かどうか、判断に迷う場合もあるでしょう。そのような際には、弁護士への相談がおすすめです。

 

たきざわ法律事務所は、不動産業者様のリーガルサポートに力を入れております。自社の広告表示が違法となっていないかどうか確認したい際や、不動産広告に関してトラブルとなってしまった際などには、ぜひたきざわ法律事務所までご相談ください。

 

 

 

 

 

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サンカラ

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