たきざわ法律事務所

【2024】不動産で相続対策する方法は?なぜ相続対策になる?弁護士がわかりやすく解説

この記事を書いた弁護士は…

 

 

 

 

相続対策では、しばしば不動産が活用されます。

では、不動産を使った基本の相続対策としては、どのようなものが挙げられるでしょうか?また、不動産が相続対策になる理由は、どのような点になるのでしょうか?

今回は、不動産を使った相続対策について詳しく解説します。

 

不動産を使った基本の相続対策

 

不動産を使った基本の相続対策は、自己の預貯金などを活用して不動産を取得するものです。

中でも主流なのは、自己が有している土地に、自己の預貯金を投じたり借入金を活用したりしてアパートを建築し、建築したアパートの各部屋を他者に貸し出す方法です。

サブリースを行う事業者がアパートを一括で借り上げ、サブリース会社が入居者に転貸する形態をとることもあります。

 

不動産の購入が相続対策になる理由

 

不動産の購入が、なぜ相続対策になるのでしょうか?

ここでは、不動産の購入が相続対策になるとされる主な理由を4つ解説します。

 

預貯金を不動産に換えれば相続税評価額が下がるから

 

相続税の計算にあたっては各遺産を評価することとなりますが、不動産の相続税評価額は時価(実勢価格)よりも低くなることが一般的です。

 

1億円の預貯金は、相続税を計算する際、原則として1億円で評価されます。

一方で、1億円で購入した不動産が1億円と評価されることは稀であり、多くは1億円よりも低くなります。

なぜなら、相続税の計算をする際に土地は実際の売却相場などで評価されるのではなく、土地は「路線価方式」や「倍率方式」などで評価するのが原則であり、これらは時価の8割程度となることが多いためです。

また、建物は固定資産税を課す際の評価額である「固定資産税評価額」をベースに相続税評価額を算定しますが、これも時価より相当程度低くなることが一般的です。

 

賃貸不動産の相続税評価額は自用よりもさらに低くなるから

 

他者に賃貸している不動産は、たとえ所有者であっても自由に使うことができません。

そのため、賃貸している不動産の評価額は、自用の場合の評価額よりもさらに低くなります。

そこで、単に不動産を購入するだけではなく取得した不動産を他者に賃貸することで、相続税評価額をさらに引き下げることが可能となります。

 

建物部分は年々減価するから

 

建物部分の評価額は、建築した時点から年々減少します。

これを「減価」と呼びます。

そのため、購入から時間が経てば経つほど、建物の相続税評価額はさらに低くなります。

 

小規模宅地等の特例が活用できる可能性があるから

 

小規模宅地等の特例とは、相続税を計算する際に、一定の要件を満たすことで、土地を5割減または8割減で評価することができる特例です。

小規模宅地等の特例は亡くなった人(「被相続人」といいます)の自宅敷地や被相続人の事業の用に供していた敷地などに適用することが多いものの、賃貸アパートの敷地など貸付事業用に供していた宅地についても適用を受ける余地があります。

これにより、さらに評価額を引き下げることが可能です。

 

ただし、小規模宅地等の特例は被相続人が有していたすべての宅地等に対して適用を受けられるわけではなく、トータルでの限度面積が設けられており、それを越える部分については通常の評価方法で相続税評価額を計算します。

そのため、実際に適用を受ける際は、どの宅地等について適用を受けるのか、税理士などの専門家へ相談したうえでご検討ください。

 

相続対策で不動産投資をするリスク

 

相続対策を目的として不動産投資をする際は、リスクも理解したうえで行うことをおすすめします。

ここでは、主なリスクを4つ解説します。

 

経営がうまくいかず資産が目減りする可能性がある

 

1つ目は、経営がうまくいかないと、資産が目減りする可能性があることです。

 

不動産投資は「投資」というものの、不動産を活用した経営の一種です。

そのため、投資先の不動産を見誤ったり必要以上にコストをかけすぎたりすれば、想定したように入居者が見つからなかったり想定したより安い家賃しか得られなかったりして、資産が目減りするおそれがあります。

たとえ相続税が安くなったとしても、経営に失敗し資産を大きく減らすこととなれば、本末転倒でしょう。

 

想定よりもランニングコストがかかり借金返済に苦慮する可能性がある

 

2つ目は、想定よりもランニングコストがかかり、借金の返済に苦慮する可能性があることです。

 

相続対策としての不動産投資には、借金を伴うことが少なくありません。

もちろん、当初は、得られる賃料で借金が返済できるように設計することでしょう。

しかし、不動産経営は想定どおりに進むことばかりではありません。

家賃を滞納する入居者がいたり設備の故障が頻発したりして、予想以上にコストがかさむ可能性があります。

その結果、借入金の返済に苦慮することとなるおそれがあります。

 

入居者トラブルに巻き込まれるおそれがある

 

3つ目は、入居者トラブルに巻き込まれる可能性があることです。

 

主な入居者トラブルは、家賃の滞納です。

家賃を滞納する入居者にそのまま物件を貸しておくわけにはいかず、家賃の督促や契約解除などの法的措置を取る必要が生じます。

中には好戦的な入居者もおり、入居者とのトラブル解決に心理的な負担を感じてしまう可能性もあるでしょう。

 

相続争いの元となる可能性がある

 

4つ目は、相続争いの原因となる可能性があることです。

 

相続の場面において、もっとも分けやすい財産は預貯金です。

一方、遺産の大半を不動産が占める場合は、遺産分割で苦慮することとなりかねません。

たとえば、相続人が長男と二男の2人である場合において、被相続人の遺産が時価8,000万円相当のアパートと時価2,000万円相当の自宅不動産、1,000万円程度の預貯金である場合、これらを均等に分けることは困難でしょう。

このように、預貯金を不動産に変えてしまうことで、遺産が分けづらくなり相続争いの原因となるおそれがあります。

 

相続対策として不動産を購入する際の注意点

 

相続対策として不動産を購入する際は、どのような点に注意する必要があるでしょうか?ここでは、主な注意点を3つ解説します。

 

不動産投資は事業であると認識する

 

先ほど解説したように、不動産投資は事業の一つです。

このことを認識せず、株式投資や投資信託の購入などと同じようなイメージで不動産を購入すれば、想定より手間がかかったり思ったように収入が上げられなかったりして後悔することにもなりかねません。

相続対策が主な目的であるとしても、資産が目減りしてしまえば本末転倒でしょう。

 

そのため、不動産投資は事業であることを認識し、そのプランで本当に収益が出るのかどうかを十分に検証したり、起き得るリスクを洗い出したりしたうえで投資することが適切であるかどうかを検討しておくことが必要です。

 

専門家に相談する

 

不動産投資は独断で決めるのではなく、あらかじめ弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

なぜなら、不動産投資のリスクを自分で正しく想定することは容易ではないためです。

 

特に、不動産会社が一括で借り上げる「サブリース」では、契約条項に反して途中で賃料を減らされるトラブルなどが実際に頻発しています。

投資用不動産の購入やこの不動産にまつわる契約においては、消費者契約法の適用がある「消費者」に該当しない可能性があることから、一般消費者としての契約と比較して自己責任の側面がより強くなることに注意しなければなりません。

そのため、無理に自分だけでリスクを想定しようとするのではなく、専門家に相談するとよいでしょう。

 

なお、アパート経営などをしていく中で、今後問題が発生する可能性もあります。

そのため、相談できる専門家をあらかじめ見つけておくと、いざというときにスムーズです。

 

最適解を提案します

 

 

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可能な限り家族と相談する

 

相続対策として不動産を購入する際は、あらかじめ家族にも相談しておくことをおすすめします。

なぜなら、自身が「できるだけ相続税が安くなる方がよいだろう」と考えていても、家族は賃貸経営をしたり借金を背負ったりするくらいなら、相続税が高くなる方がよいと考えているかもしれません。

このようなミスマッチを防ぐため、あらかじめ家族で話し合っておくとよいでしょう。

 

不動産購入以外に検討したい主な相続対策

 

相続対策には、不動産の購入以外にもさまざまな方法があります。

最後に、不動産購入以外の主な相続対策を紹介します。

自身に合った対策を漏れなく講じるため、相続対策をご検討の際は、あらかじめ弁護士などの専門家へご相談ください。

 

遺言書の作成

 

1つ目は、遺言書の作成です。

 

遺言書とは、死後の遺産の配分などについて、生前に決めておく書類です。

有効な遺言書を残しておくことで、相続争いを防ぎやすくなる効果が期待できます。

なぜなら、遺言書を作成してすべての遺産について承継者を決めておくことで、相続発生後に相続人同士で遺産分けの話し合い(「遺産分割協議」といいます)をする必要がなくなるためです。

 

ただし、子どもや配偶者など一部の相続人には最低限の取り分である「遺留分」があり、これを侵害するとトラブルの原因となるおそれがあります。

そのため、遺言書を作成する際は、遺留分に配慮するなどさまざまな点に注意しなければなりません。

問題のない有効な遺言書を自分で作成することは容易ではないため、作成にあたっては弁護士などの専門家のサポートを受けることをおすすめします。

 

最適解を提案します

 

 

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生前贈与

 

2つ目は、生前贈与です。

生前贈与で少しずつ財産を減らしていくことで、相続税を減らす効果が期待できます。

 

ただし、一度にまとまった額の財産を贈与した場合は多額の贈与税がかかる可能性があるため、生前贈与をすることが得策であるかどうか、あらかじめ専門家に相談をすることをおすすめします。

 

もっとも、相続が発生する前一定期間内に相続人など一部の者に対してした贈与は相続税の計算にあたって持ち戻されて、相続税の課税価格に贈与を受けた財産の贈与の時の価額が加算されることになっているため、節税の効果がない場合があることに注意が必要です。

2024年(令和5年)1月1日施行の税制改正により、経過措置はあるものの、相続、遺贈や相続時精算課税による贈与により財産を取得した人が、その相続などにより取得した財産に加算する贈与財産(令和6年1月1日以後の暦年課税による贈与に限ります。)の範囲が、相続開始前3年以内から相続開始前7年以内に延長されています。そのため、生前贈与を使った節税はできるだけ早くから始める必要があります。

 

生命保険の活用

 

3つ目は、生命保険の活用です。

 

受取人が指定された生命保険金は受取人固有の財産であり、相続が起きた後、他の相続人の同意を得ることなく支払いを受けることができます。

そのため、相続発生直後の資金需要に対応しやすいといえます。

 

また、生命保険金には独自の非課税枠があり、相続人が受け取った生命保険金は合計「500万円×法定相続人の数」までが非課税となります。

そのため、相続税節税策としての活用も可能です。

 

さらに、生命保険は遺留分対策として活用することも可能です。

ただし、この点については注意点も少なくないため、あらかじめ弁護士へご相談ください。

 

最適解を提案します

 

 

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まとめ

 

不動産の活用が相続対策になる理由と、不動産を活用した相続対策の注意点などについて解説しました。

アパート建築など不動産を活用することで、相続税を大きく引き下げられる可能性があります。

 

しかし、不動産投資は事業の一種であり、成功させるためには入念なリサーチやコスト削減などの努力が必要です。

単なる節税策や投資商品の一つという認識だけで不動産投資に参入すると、大切な資産が大きく目減りして後悔する事態となりかねません。

また、入居者トラブルなどに煩わされる可能性もあるでしょう。

 

想定外のリスクが生じる事態を避けるため、不動産を活用して相続対策をする際は、弁護士などの専門家へあらかじめ相談することをおすすめします。

また、家族の考え方とのミスマッチを避けるため、あらかじめ家族とも相談しておくことをおすすめします。

 

たきざわ法律事務所では不動産法務に力を入れており、相続対策としての不動産活用についてもアドバイスやサポートをすることが可能です。

また、遺言書の作成など、他の相続対策についても支援しています。

相続対策として不動産の活用をご検討の際は、たきざわ法律事務所までお気軽にご相談ください。

 

 

 

 

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