【2022】創業支援の融資制度とは?利用するメリットと活用のポイント
創業時には、まだその事業から得られる収入が少ない一方で、事業を軌道に乗せるための支出が多く必要となります。そのため、創業時に良いスタートダッシュを切るためには、効率の良い資金調達が一つの重要なカギとなるでしょう。
創業時に活用したい資金調達方法の代表的なものとして、融資が挙げられます。創業時にのみ活用できる優遇された融資制度も存在するため、そのような制度をうまく活用していくことが重要です。今回は、創業を支援している融資制度をまとめて紹介します。
創業を支援している融資制度
創業を支援している融資制度は、主に次の3つに分類することができます。ここでは、それぞれの融資支援制度について、概要を解説していきましょう。
日本政策金融公庫の融資制度
日本政策金融公庫は、一般の金融機関が行う金融を補完する役割を持つ、政府系の金融機関です。
創業間もない事業者はまだ信用が育っておらず、民間の金融機関から融資を受けることは容易ではありません。こうした背景から、日本政策金融公庫では、創業時や創業間もない事業者を対象に積極的な融資を行っています。
創業時の融資としては、まず日本政策金融公庫からの融資を検討すると良いでしょう。日本政策金融公庫が行っている具体的な融資制度については、後ほど詳しく解説します。
なお、日本政策金融公庫はメインバンクとなることはできず、通常の銀行のように預金をすることもできません。
信用保証協会の融資制度
信用保証協会とは、金融機関から受ける融資を保証してくれる団体です。
金融機関が創業間もない事業者への融資に足踏みをする理由は、その事業者の信用が未知数であり、行った融資をきちんと返済してくれるかどうかがわからないためです。そこで、万が一事業者が融資を返済できなくなった場合であっても信用保証協会が事業者に代わって金融機関に返済してくれるとなれば、金融機関は安心して融資を受けることが可能となります。これが、信用保証協会の役割です。
信用保証協会では、創業予定者や創業後5年未満の者を対象とした創業関連保証制度を設けています。この制度では、最大3,500万円までの融資を、無担保で100%保証してもらうことが可能です。
創業期には、このような保証制度の利用もぜひ検討すると良いでしょう。なお、信用保証協会の保証を受けるには、通常の金利に上乗せをして保証料を支払わなければなりません。
また、信用保証協会が金融機関への借入金返済を肩代わりした場合には、事業者は信用保証協会に対して、引き続き借入金を返済していくこととなります。
自治体独自の融資制度
創業をする自治体によっては、自治体独自の融資制度を設けている場合があります。
たとえば、東京都では創業計画中の個人や創業した日から5年未満である中小企業者などを対象に、最大3,500万円を融資する「東京都中小企業制度融資『創業』」を設けています。
この制度では、東京都と東京信用保証協会、金融機関が連携して、それぞれ次の役割を担っています。
金融機関:東京都の定めた条件で運転資金や設備資金の融資を行う
東京信用保証協会:利用者が金融機関から融資を受ける際にその債務を保証する
東京都:利用者が東京信用保証協会に支払う信用保証料の補助や、金融機関に対する貸付原資の預託などを行う
創業をする都道府県や市区町村によっては、このような独自の制度を設けている場合があります。創業する地の制度をあらかじめ確認しておくと良いでしょう。
創業支援を目的とした日本政策金融公庫の2つの融資制度
日本政策金融公庫では、創業を支援する取り組みを多く行っています。中でも、創業時にぜひ活用を検討したい融資制度としては、次の2つがあります。
新規開業資金
新規開業資金とは、新たに事業を始める人や事業開始後おおむね7年以内の人を対象に、最大7,200万円(うち運転資金4,800万円)を融資する制度です。
利息は原則として基準利率ですが、女性や35歳未満の人または55歳以上の人、Uターンなどにより地方で新たに事業を始める人など一定の要件に該当する場合には、特別利率の適用を受けることができます。
さらに、融資後に利益率や雇用に関する一定の目標を達成した場合に利率を0.2%引下げる、「創業後目標達成型金利」も設けられています。
新創業融資制度
新創業融資制度とは、新たに事業を始める人や事業開始後税務申告を2期終えていない人を対象に、最大3,000万円(うち運転資金1,500万円)を融資する制度です。
新創業融資制度には、自己資金の要件があります。そのため、次のいずれかに該当する人は、原則として創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できることが必要となります。
これから新たに事業を始める人
事業開始後税務申告を1期終えていない人
ただし、現在の勤務先と同じ業種の事業を始める場合などには、自己資金の要件が緩和されます。新創業融資制度では、原則として担保や保証人が不要で融資を受けられる点が大きな特徴です。
参照元:創業時支援 – 日本政策金融公庫
創業時に支援のある融資制度を使うメリット
創業時に支援のある融資制度を活用するメリットとしては、主に次の3点が挙げられます。
まとまった資金を事業に活用できる
創業時にはまず、事業を早期に軌道へ乗せることが最も重要となります。そのためには、開発費や広告宣伝費など多くの費用が必要になることでしょう。
しかし、創業期には多くの売上が見込めない場合が多いため、売上金からすべての費用をまかなっていては事業を軌道に乗せるまでに多大な時間がかかってしまいかねません。
創業時に融資を活用してまとまった資金を得ることで、事業へ必要な資金を投入することが可能となり、事業の成長スピードを早めることが可能となります。
創業する事業をブラッシュアップするきっかけとなる
創業融資を申し込む際には、事業計画書や資金繰り表などの提出を求められることが通常です。そして、事業計画書などに書かれた事業の見通しが甘かったりさほど収益性が見込めなかったりすれば、融資を受けることは困難でしょう。
そのため、融資審査を通過する可能性を高めるためには、事業計画をブラッシュアップしなければなりません。この過程を経ることにより、事業計画がより精度の高いものとなり、結果的に事業のより早い成長へとつながります。
融資を受けるまでのこのような過程も、創業時に融資を活用することのメリットの一つといえるでしょう。
金融機関との信頼構築のきっかけになる
創業間もない時期にはまだ信用が育っていないため、金融機関から信用保証協会の保証を付さない融資(「プロパー融資」といいます)を受けることは困難です。しかし、創業支援制度を使って保証協会の保証付き融資などを受け、それをきちんと期限までに返済していくことを繰り返すことで、金融機関との信頼関係が構築されます。
期限までの返済に加え、試算表や資金繰り表などを定期的に金融機関へ提出することにより、さらに信頼関係が強まることとなるでしょう。
創業支援融資の申し込みを専門家へ依頼するメリット
創業支援融資は、事業者自ら申し込みをする他、申し込みのサポートを専門家へ依頼することも可能です。では、創業支援融資の申し込みについて専門家のサポートを受けることには、どのようなメリットがあるのでしょうか?
ここでは、代表的なメリットを5つ紹介します。
事業に対して客観的なアドバイスを受けられる
専門家から融資申し込みのサポートを受けるにあたっては、事業に対して客観的なアドバイスをもらうことが可能となります。先ほどお伝えしたように、融資申し込みにあたっては、事業計画書などのつくり込みが不可欠です。
融資審査を通過する可能性を高めるためには、事業計画書を専門家とともにブラッシュアップする必要性が生じるため、その過程において専門家から事業に対するアドバイスを受けられるでしょう。
時間と労力の短縮につながる
自社のみで融資の申し込みを行う場合には、その準備において多大な時間や労力が必要となります。また、創業間もない時期には融資申し込みを専門に行う部署などは存在しないことが一般的であり、創業者自身が直接書類の作成などを担わざるを得ないでしょう。
創業当初にはやるべきことも多く、創業者の時間は大変貴重なものです。専門家へサポートを依頼することで、創業者自身が融資申し込みにかける時間や労力を削減することが可能となります。
最新の情報を教えてもらえる
融資のサポートを行っている専門家は、創業融資制度などに関する最新情報にアンテナを張っていることでしょう。そのため、専門家から融資制度などに関する最新情報を教えてもらうことが可能となります。
融資が通る可能性が高くなる
自分で融資審査を申し込んだ際には、金融機関が求める書類を不備なく揃えることができず、審査開始までに時間がかかってしまったり、融資が通らなかったりするリスクが高くなります。
一方で、専門家へ融資の申し込みサポートを依頼した場合には、金融機関が求める書類を不備なく作成し、揃えてくれます。
また、専門家は、融資審査において金融機関が特に重視するポイントを熟知していることが通常です。そのため、融資の申し込みにあたっては、金融機関が知りたいポイントを踏まえて申し込み書類などを作成してくれることでしょう。
そのため、専門家のサポートを受けることにより、融資審査に通過する可能性を高めることが可能となります。
補助金や助成金など他の資金調達についてもアドバイスをもらえる
創業融資の支援を行っている専門家であれば、同じく創業時に活用されることの多い補助金や助成金など他の制度についても詳しいことが一般的です。
補助金も助成金も、国から返済不要な資金を受け取ることができる制度です。補助金と助成金に明確な線引きはありませんが、助成金は雇用や人の育成などに関わるものが多く厚生労働省が所轄するものが大半である一方で、補助金には政策によってさまざまなものが存在します。
補助金は永続的なものではなくその年によって公募状況が変わりますが、2022年現在であれば、次の補助金は創業期にも利用することが可能です。
小規模事業者持続化補助金
ものづくり補助金
融資と併せて補助金や助成金を活用することで、より資金に余裕を持って創業期の経営をすることが可能となるでしょう。
ただし、一般的に補助金は要件を満たして申し込んだからといって必ず受け取れるものではなく、その後多数の応募の中から採択されなければ受け取ることはできません。また、補助金や助成金は原則として事業実施後の後払いであるため、いったんは自己資金やつなぎ融資で取り組みを実施する必要があります。
このように、補助金や助成金の活用には注意点も少なくありませんが、融資の申し込みサポートを専門家へ依頼した場合には、これら補助金や助成金の活用についてのアドバイスを受けられる可能性が高いでしょう。
また、実際に補助金などへの応募をサポートしてくれる場合も少なくありません。
まとめ
創業時にまとまった資金を得て事業の成長スピードを加速させるためには、融資はぜひ活用したい資金調達方法の一つです。創業時や創業間もない時期にのみ活用できる融資制度も存在しますので、ぜひ融資獲得にチャレンジしてみると良いでしょう。
しかし、創業間もない忙しい時期に自社のみで融資申し込みを行うことは容易ではありません。片手間で作成をした申込書では、審査に通過できない可能性も高いでしょう。
創業を支援する融資制度の活用をご検討の際には、ぜひたきざわ法律事務所までご相談ください。たきざわ法律事務所では、融資の申し込みサポートなど、創業間もない企業の支援を積極的に行っております。