【2022】スタートアップが融資を受ける方法は?ポイントと注意点
スタートアップ企業にとって、思い描く事業を実現し、軌道に乗せるまでのスタートダッシュが非常に重要となります。
そして、スタートアップ企業がよいスタートダッシュを切るためには、まとまった資金の調達が欠かせません。
この記事では、スタートアップ企業でも受けやすい融資制度を紹介するとともに、融資を受ける際のポイントなどについて詳しく解説します。
目次
スタートアップと融資の現状
スタートアップは創業して間もないため、まだ信用が育っていません。
そのため、民間の金融機関からプロパーで融資を受けることは容易ではないでしょう。
しかし、スタートアップであるからこそ受けられる融資制度が多数存在します。
金利などが優遇されているものも存在するため、創業期だからこそ受けられる融資制度を最大限活用すると良いでしょう。
スタートアップでも受けやすい融資は?
スタートアップ企業であっても受けやすい融資制度は、多数存在します。ここでは、そのうち代表的なものを解説します。
日本政策金融公庫の融資制度
日本政策金融公庫とは、民間金融機関の役割を補完する目的で存在する政府系の金融機関です。金融機関とはいっても預金をすることはできず、メインバンクとなってもらうこともできません。
日本政策金融公庫では、民間の金融機関が融資しづらい、スタートアップ企業などへの融資制度を多数設けています。具体的な融資制度は、次のとおりです。
新規開業資金
新規開業資金とは、新たに事業を始める人や事業開始後おおむね7年以内の事業者を対象に、最大7,200万円(うち運転資金4,800万円)を融資する制度です。
利率は原則として基準利率ですが、Uターン等により地方で新たに事業を始める場合や技術やノウハウに新規性があると認められる場合など一定の場合には、特別金利の適用を受けることができます。
新創業融資制度
新創業融資制度とは、新たに事業を始める人や事業開始後税務申告を2期終えていない事業者を対象に、最大3,000万円(うち運転資金1,500万円)を融資する制度です。
ただし、一定の場合には創業資金総額の10分の1以上の自己資金があることなどの要件を満たさなければなりません。担保や保証人が原則として不要である点が、この制度の大きな特徴です。
女性、若者/シニア起業家支援資金(国民生活事業)
国民生活事業の女性、若者/シニア起業家支援資金とは、新たに事業を始める人または事業開始後おおむね7年以内の事業者のうち、次のいずれかに該当する人を対象に、最大7,200万円(うち運転資金4,800万円)を融資する制度です。
女性
35歳未満の人
55歳以上の人
原則として、基準利率よりも低い特別金利が適用されます。
女性、若者/シニア起業家支援資金(中小企業事業)
中小企業事業の女性、若者/シニア起業家支援資金とは、新たに事業を始める人または事業開始後おおむね7年以内の事業者のうち、次のいずれかに該当する人を対象に、直接貸付で最大7億2,000万円(うち運転資金2億5,000万円)、代理貸付で最大1億2,000万円を融資する制度です。
女性
35歳未満の人
55歳以上の人
2億7,000万円までは、原則として基準利率よりも低い特別金利が適用されます。
自治体の融資制度
スタートアップが創業する自治体によっては、自治体独自の融資制度を設けている場合があります。たとえば、東京都では創業した日から5年未満である中小企業者などに対して、最大3,500万円の融資をする制度を設けています。
このような自治体独自の融資制度がある場合がありますので、創業地の自治体の制度を確認しておくと良いでしょう。
信用保証協会からの保証付き融資
信用保証協会とは、金融機関からの借入金を企業が返済できなくなった場合に、借入金のうち一定割合までを代わりに返済してくれる機関です。信用保証協会が保証をしてくれることで金融機関は比較的安心して融資をすることが可能となることから、スタートアップ企業であっても融資が受けやすくなります。
ただし、信用保証協会の保証料が上乗せされることから、通常よりも利率が高くなります。スタートアップ企業が民間の金融機関から融資を受ける場合には、よほど担保が潤沢であるなど一定の場合を除き、信用保証協会の保証をつけることが融資の条件となることが一般的です。
信用保証協会の保証付き融資に対して、信用保証協会の保証を付けない融資のことを「プロパー融資」といいます。
親族などから融資
スタートアップの融資先として、親族も一つの選択肢となるでしょう。親族であれば、事業計画を精査することなく、返済期限もあいまいなままに融資をしてくれる場合もあるかと思います。
しかし、安易に親族から融資を受けることはおすすめできません。なぜなら、親族からの融資であればどうしても甘えが出てしまいがちであり、借入金であるとの意識が働きにくくなるためです。
また、仮に返済ができなくなった場合には、親族との関係に亀裂が生じてしまいかねません。仮に親族から融資を受ける場合には、金融機関からの借り入れと同様にきちんと返済期日を定め、約束をした期日に返済するべきであるといえます。
スタートアップが融資を受けるメリットは多い
スタートアップが融資により資金調達をすることには、多くのメリットが存在します。
主なメリットは、次の4点です。
事業計画とより深く向き合うことができる
融資を受ける際、ほとんどの場合で事業計画の提出が必要となります。その事業計画は、今後事業を成長させて返済資金が問題なく確保できることを説明できるものでなければなりません。
また、たとえ数字の見栄えが良いものであったとしても、実現性が薄いと判断されればその点が指摘される可能性が高いでしょう。そのため、融資を受けるにあたっては、事業計画とより真剣に向き合う必要が生じます。
事業計画の作り込みには手間がかかります。しかし、しっかりと向き合って作成をした事業計画は、以後の経営の羅針盤となることでしょう。
返済が必要なことで事業成長へより本気で取り組める
融資を受ける以上は、その後利息とともに返済をしていかなければなりません。創業間もない時期では、返済を負担に感じる場合もあるでしょう。
しかし、約束どおりに返済をしていかなければならないとのプレッシャーがかかることで、事業の成長へ向けてより真剣に取り組めるという側面も期待できます。
専門家の助言を受けるきっかけとなる
スタートアップが融資を受けるに際しては、専門家のサポートを受けることが少なくありません。そのため、創業時の融資は、専門家から事業計画などについてアドバイスを受けるきっかけとなります。
専門家から適切な助言を受けることで、より事業の成功へと近づくことでしょう。
金融機関と信頼関係を築くきっかけとなる
金融機関との信頼関係は、一朝一夕で築けるものではありません。スタートアップ企業では、まだ金融機関との信頼が築けていない場合が大半です。
しかし、信用保証協会の保証付き融資を受けるなどして金融機関との接点を持ち、その後きちんと期日どおりに返済をしていくことで、信用が積みあがります。また、返済中も最新の事業計画などを定期的に提出することで、金融機関へアピールすることが可能です。
金融機関との信頼関係が構築できれば、将来的にプロパー融資を受けられる可能性が高まるでしょう。
スタートアップが融資を受ける際の注意点・ポイント
スタートアップ企業が融資を申し込む場合には、次のポイントを押さえておきましょう。
自己資金はどの程度か
スタートアップ企業が融資を受ける際には、自己資金がどの程度あるのかが一つのポイントとなります。
自己資金が必ずしも潤沢でなければならないわけではありません。しかし、自己資金の額は、事業に向けての本気度をはかる一つの材料となります。
そのため、ほとんど自己資金がなく大半を融資で賄おうとする場合と比較すると、ある程度まとまった自己資金がある場合の方が融資を受けやすく、融資の条件も良くなりやすいといえるでしょう。
事業計画は現実的で融資の返済が可能な内容か
スタートアップ企業への融資では、事業計画の内容がより重視されます。
融資を行う金融機関にとって最大の関心ごとは、その企業が今後本当に貸したお金を返済してくれるのかという点です。しかし、スタートアップでは過去の実績がないため、過去の返済実績や業績などから判断することはできません。
そのため、きちんと返済資金の確保ができる事業計画を立てているのか、その事業計画は絵に描いた餅ではなく本当に実現できるのかなどの観点から、事業計画がつぶさに確認されることとなります。
過去の経験や職歴と始める事業との関連性
スタートアップが融資を受ける際には、これから行おうとする事業と過去の経歴との関連性もポイントの一つとなります。
もちろん、必ずしも業界経験者でなければ成功できないわけではありません。しかし、一般的にはやはり、まったく未経験の分野での起業よりも、ある程度の土地勘がある分野での起業のほうが成功する確率は高いといえるでしょう。
未経験分野での開業であるからといって融資が受けられないわけではありませんが、その場合にはなぜその分野での起業をするのか、金融機関によく説明をする必要があります。
スタートアップが融資以外で資金を調達する方法
スタートアップが資金調達をする方法として、融資以外には次の方法が存在します。資金調達を行う際には、さまざまな選択肢の中から自社に合った方法を選択しましょう。
資金調達の方法を一つに絞る必要はなく、適宜組み合わせて利用することも可能です。
ベンチャーキャピタルや個人投資家へ株式を交付して調達する
将来的に株式を上場させたいと希望する場合などには、ベンチャーキャピタルや個人投資家からの出資が選択肢の一つとなります。ベンチャーキャピタルや個人投資家から資金調達をする場合には、資金提供の見返りとして企業の普通株式を交付しなければならないことが一般的です。
ベンチャーキャピタルや個人投資家は、出資先の企業を成長させ、上場させたり他社に買収させたりしたタイミングで株式を売却し、利益を得ることを主な目的としているためです。
株式を保有されることになるため、企業経営に口を出され自由に経営できなくなる点がデメリットといえます。しかし、その反面として経営についてアドバイスがもらえる点や必要な取引先などを紹介してくれることがある点などは、大きなメリットです。
そのため、ベンチャーキャピタルや個人投資家との相性が非常に重要となります。
出資を受けることを検討する場合には、事前によく考え方のすり合わせをおこない、納得ができた場合にのみ出資を受けるようにしましょう。
補助金や助成金で調達する
補助金と助成金はいずれも、国などから返済不要な資金を受け取ることができる制度です。補助金と助成金とに明確な区別があるわけではありません。
しかし、助成金の多くは人材雇用や人材育成にかかる費用を助成対象としており、厚生労働省が管轄しているものが大半です。また、要件を満たして申請をすれば受け取ることができるものが多く、通年で募集されていることが多いといえます。
一方、補助金の目的や管轄する省庁は、その補助金によってさまざまです。助成金よりも政策の色が出やすく、世相を反映したものが多いといえるでしょう。
また、補助金の多くは要件を満たして申請し、さらに採択がされなければ交付を受けることはできません。公募期間が通年ではなく、短期間であるものが多いことも特徴です。
いずれであっても、スタートアップが返済不要なまとまった資金を得ることができれば大きな強みとなるため、要件を満たすものがあれば申請すると良いでしょう。
クラウドファンディングで調達する
クラウドファンディングとは、主に一般個人から、インターネットを通じて小口の資金を集める資金調達方法です。
ただし、一般的に営利事業とクラウドファンディングとの相性は良いとはいえません。クラウドファンディングが成立しやすいのは、社会的な課題を解決するプロジェクトである場合や、一般個人にわかりやすい革新的な商品やサービスを制作するプロジェクトである場合などです。
クラウドファンディングを資金調達に活用する場合には、資金が集まらず資金調達ができない可能性も踏まえ、あくまでも補助的な位置づけとして活用すると良いでしょう。
まとめ
スタートアップ企業は、企業を成長させるために多くの資金が必要となります。
いきなりプロパーの融資を受けることは容易ではないものの、スタートアップであっても活用しやすい融資制度はいくつか存在します。自社に合った融資制度を活用すると良いでしょう。
どの融資制度を受ければ良いかの判断が難しい場合や、融資申し込みのサポートをご希望の場合には、ぜひたきざわ法律事務所までお気軽にご相談ください。当法律事務所では、融資など、スタートアップ企業の資金調達サポートを行っております。