たきざわ法律事務所

他人の著作物を許諾がなくても利用できる場合とは?

この記事を書いた弁護士は…

 

 

 

1.  はじめに

著作権者は著作物の利用に関し、独占的な権利(著作権)をもっているため、ある著作物を利用するためには、原則としてその著作物の著作権者から許諾を得る必要があります。

しかし、あらゆる利用について許諾が必要であるとすると、ときには著作物の公正で円滑な利用に支障を生じることがあり、文化の発展に寄与するという法目的(1条)にも反することになりかねません。

そこで、著作権法では一定の「例外的な」場合に著作権を制限して、著作権者に許諾を得ることなく利用できることを定めています。これを「権利制限規定」といい、日本の著作権法では以下の表に記載された権利制限規定(30条〜47条の7)がおかれています(コラム執筆時点)。

本コラムでは、このうち私たちの日常生活やビジネスシーンに関わりの深いものをピックアップし、今回を含めた3回で解説していこうと思います。

 

表 著作権が制限されるケース

第1回目の今回は、権利制限規定の中でも最も私たちにとって身近な著作物の「私的使用のための複製」について解説します。

 

2.  私的使用のための複製(30条1項柱書)

著作物の私的使用のための複製については、著作権法30条に規定されています(以下参照)。

すなわち、本規定を適用するには次の①②の両要件を満たす必要があります。

私的使用を目的としたものであること

「私的使用」とは、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内における使用をいい、私的使用を目的としたものであれば、著作物の種類を問わず公表されたものか否かをも問わず、その複製が認められます。

ここで、「個人的」とは、仕事上での使用等を除き、その著作物を使用する者自身が自らの使用のために著作物を複製する行為をいい、「家庭的」とは親、子、兄弟等の範囲内においてそれら家族の使用のためにその家族を構成する者の一人がその著作物を複製する行為をいいます。

一方、「その他これに準ずる限られた範囲内」については、明確な基準はないものの、複製する者の属するグループのメンバー相互間に強い個人的結合関係のあることが必要であるとされています(例:親密な特定少数の友人等)。

その使用をする者が著作物を複製すること

つぎに、その著作物を使用する者自らが複製をすることが必要となります。

ただし、使用する本人との関係で補助的な立場にある者が本人に代わって複製する場合は、実質的に使用者本人による複製と同視し得ると解されるので、例外的に本要件を満たすとされています。

 

以上のことから、私的使用のための複製(30条1項柱書)と認められるものと認められないものとを判別すると下記図のようになります。

3.  私的使用のための複製の例外(30条1項各号)

ただし、これにもさらに例外があり、次の例外その1〜4のいずれかに該当する場合は、たとえそれが「私的使用目的」であっても著作権者の許諾なしに複製することはできません。

例外その1:公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器を用いて複製するとき(30条1項1号)

要するに、誰でも使える機器(公衆用自動複製機器)を使って著作物等を複製すれば、私的使用目的であっても複製権侵害になるということです。

例を挙げるとすれば、店頭に設置されているダビング機を使用して音楽CDを複製する場合がそれに該当します。

一方で、コンビニ等に設置されているコピー機(文献複写機器)については、契約処理の体制が整っていないことを理由に、経過措置として当分の間、公衆用自動複製機器から除外されています(附則5条の2)。

そのため、一般的によく行われているコンビニのコピー機を使用したコピーについては、私的使用目的であれば適法となります。

例外その2:技術的保護手段(コピーガード・プロテクション、アクセスコントロール等)の回避により可能となった複製を、その事実を知りながら行うとき(30条1項2号)

コピーガード・プロテクション、アクセスコントロール等が施されている著作物(例:DVDやブルーレイディスク等) については、自らがそれを回避し、複製した場合のほか、第三者が回避した場合であっても、その事実を知りながら複製すれば、私的使用目的であっても複製権侵害となります。

例外その3:著作権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行うとき(30条1項3号)

違法なインターネット配信による音楽、映像を違法と知りながら録音・録画すれば私的使用目的であっても複製権侵害となります。

例えば、動画共有サイトに無断投稿されているアーティストの曲やMV、テレビ番組、アニメ等を無断投稿であることを知りながらダウンロードする場合が該当します。

例外その4:著作権を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の複製(録音又は録画を除く)を、その事実を知りながら行うとき(30条1項4号)

こちらは、例外その3(30条1項3号)と対を成す規定で、令和2年著作権法改正により新設されました。

例外その3は、侵害コンテンツの中でも特に音楽・映像分野に特化した規定であるのに対し、新設された30条1項4号は、その対象を著作物全般(漫画・書籍・論文・コンピュータプログラム等)に拡大した規定となっています。

つまり、違法なインターネット配信による著作物全般(30条1項3号に該当するものは除く)について、それを違法と知りながら複製すれば私的使用目的であっても複製権侵害となります。

なお、こちらはさらに細かい要件が課されているので、詳しくは改正著作権法(ダウンロード違法化)を参照ください。

 

4.  私的使用のための翻案等(47条の6)

私的使用のための複製の時と同様に、個人的に又は家庭内等の“閉鎖的範囲内”で使用する目的であれば、翻訳、編曲、変形、翻案もすることができます(47条の6)。なお、著作権の権利制限規定の範囲内での改変行為であっても、著作者人格権(主に同一性保持権)の侵害まで回避されるわけではありませんので注意が必要です。(50条)

 

5.  さいごに

本コラムでは、著作権の権利制限規定のうち「私的使用のための複製」について解説しました。日常生活でよく使われる規定である一方で、「私的使用のための複製」の範囲は皆さんがイメージするよりも狭いものであることは理解しておく必要はあるかと思います。直近で法改正されている部分でもありますので、合わせて理解しておくことをおすすめします。