【2023】不特法に基づく不動産クラウドファンディングとは?
2023年現在、不特法(不動産特定共同事業法)に基づくクラウドファンディングが多く組成されています。
これは、不特法が改正されて不動産クラウドファンディングへの参入がしやすくなったことによるものです。
では、不特法に基づく不動産クラウドファンディングとはどのようなものを指すのでしょうか?
今回は、不特法に基づく不動産クラウドファンディングについて詳しく解説します。
目次
不動産特定共同事業法(不特法)とは?
不特法(正式名称は「不動産特定共同事業法」)とは、「不動産特定共同事業」の健全な発達に寄与することを目的として、事業参加者の利益の保護を図る法律です。
この目的を達成するため、許可などの制度を実施して、その業務の遂行にあたっての責務などを明らかにしています。
不動産特定共同事業法(不特法)による3つの不動産特定共同事業
不特法で規制対象となっている「不動産特定共同事業」とは、次のいずれかに該当する「不動産特定共同事業契約」において生ずる収益を投資家に分配するものや、この契約の媒介などを業として行うものなどを指します。
不動産特定共同事業契約の概要は、それぞれ次のとおりです。
任意組合型
任意組合型とは、「各当事者が出資を行い、その出資による共同の事業として、そのうちの1人又は数人の者にその業務の執行を委任して不動産取引を営み、当該不動産取引から生ずる収益の分配を行うことを約する契約」を指します(不特法2条3項1号)。
つまり、任意組合(民法上の組合)を立ち上げてこの任意組合が不動産に出資を行い、これにより得た収益を組合員(投資家)に分配する物が該当します。
任意組合とは、複数の個人や法人が出資を行い、特定の事業を共同で運営することを目的とする契約です。
任意組合には法人格がなく、任意組合名義で不動産を所有することはできません。
そのため、投資対象である不動産の名義は各出資者となります。
匿名組合型
匿名組合型とは、「当事者の一方が相手方の行う不動産取引のため出資を行い、相手方がその出資された財産により不動産取引を営み、当該不動産取引から生ずる利益の分配を行うことを約する契約」を指します(同2号)。
つまり、当事者の一方が相手方の営業のために出資し、その営業から生ずる利益を分配することを約することでその効力を生ずる契約です。
匿名組合型の場合は投資対象である不動産の名義は事業者となり、不動産取引において出資者(投資家)の氏名が表に出ることはありません。
賃貸委任契約型
賃貸委任契約型とは、「当事者の一方が相手方の行う不動産取引のため自らの共有に属する不動産の賃貸をし、またはその賃貸の委任をし、相手方が当該不動産により不動産取引を営み、当該不動産取引から生ずる収益の分配を行うことを約する契約」を指します(同3号)。
つまり、出資者(投資家)がお金を出し合って購入した不動産を事業者に賃貸し、事業者がこれを他者へ転貸するなどして収益を上げる事業形態です。
賃貸委任契約型の場合、投資対象である不動産の名義は出資者となります。
不動産特定共同事業法(不特法)の最近の改正
不特法の最近の改正のうち、不動産クラウドファンディングに関連する主な項目は、次のとおりです。
これらの改正により、不動産クラウドファンディングへの新規参入がしやすくなりました。
平成29年(2017年)の改正ポイント
2017年の改正によって、「小規模不動産特定共同事業」が創設されました。
小規模不動産特定共同事業とは、投資家1人あたりの出資額が100万円を超えず、かつ出資総額が1億円を超えない不動産特定共同事業契約を行う事業です(同2条6項、不動産特定共同事業法施行令2条)。
小規模不動産特定共同事業は従来の許可制ではなく、登録制(5年ごとの更新制)とされています。
また、資本金要件も「1,000万円以上」へと緩和されており、この点でも参入へのハードルが低くなりました。
2017年の改正ではこれと併せて、契約の成立前の書面や成立時の書面をデジタルで交付することも認められました。
これにより、手続きがオンラインで完結させることが可能となり、インターネットで投資を募ることが多い不動産クラウドファンディングが立ち上げやすくなっています。
平成31年(2019年)の改正ポイント
2019年の改正では、直前3期分の計算書類の提出ができない場合であっても一定の要件を満たすことで不動産クラウドファンディングへの新規参入が認められるよう、規定が整備されました。
不動産特定共同事業登録を申請するには、直前3期分の決算書類の提出が必要であるところ、設立から3期を経過していない場合はこれを提出することができません。
この場合の取り扱いについて言及がなかったことから、設立後3期を経過していない事業者は事実上参入することができませんでした。
改正により、設立から3期を経ていない法人であっても不動産クラウドファンディングに参入することが可能となっています。
不動産特定共同事業法(不特法)と不動産クラウドファンディングの関係
不当法と不動産クラウドファンディングとはどのように関係するのでしょうか?
順を追って解説します。
不動産クラウドファンディングとは
不動産クラウドファンディングとは、投資家から集めた資金で不動産を購入してその不動産を運用し、これによって得た収益を投資家に分配する事業のうち、インターネット上で小口の投資を集める手法を指します。
不動産クラウドファンディングには少額で投資できるものが多く、投資家は数万円程度から出資できるものも少なくありません。
不特法の改正で不動産クラウドファンディングへ参入しやすくなった
不動産クラウドファンディングには、実物の不動産ではなく不動産を信託受益権化した有価証券を投資対象とするもの(通称「GK-TKスキーム」)と、不特法に基づくものが存在します。
このうち、GK-TKスキームは金融商品取引法の規制対象であることから参入のハードルが高く、個人投資家向けに販売されることはほとんどありません。
一方、不特法に基づく不動産クラウドファンディングは、先ほど解説をした一連の改正によって参入しやすくなりました。
そのため、今後は不特法の「小規模不動産特定共同事業」への参入がますます増加することが予想されます。
不動産特定共同事業法(不特法)の規定によるクラウドファンディングを立ち上げる流れ
不特法に基づくクラウドファンディングを立ち上げたい場合、どのような手順で進めればよいでしょうか?
不動産クラウドファンディングに参入するまでの基本的な流れは、次のとおりです。
不特法について正しく理解する
はじめに、不特法について正しく理解する必要があります。
不特法に基づく不動産クラウドファンディングを行う以上、この法律が事業運営上のルールとなるためです。
不特法の理解には法律の条文を読み込むほか、国土交通省が公表している資料やガイドラインを読み込むことをおすすめします。
なお、弁護士へサポートを依頼する場合は、必ずしもすべての規定を自社で理解する必要まではなく、自社では基本的な事項についてのみ理解をしたうえで適宜弁護士に相談する形をとることも1つの手です。
立ち上げたいクラウドファンディングの青写真を検討する
不特法の概要を理解したら、これを踏まえて立ち上げたい不動産クラウドファンディングの青写真を検討します。
この段階では、少なくとも次の点について検討しておくことをおすすめします。
投資対象とする不動産をどう探すか
投資家はどう探すか
どの程度の規模の物件を取り扱いたいか(小規模不動産特定共同事業では投資家から受けることができる出資の合計額は1億円以下であるため、この範囲に収まるか)
投資か1人あたりから募りたい出資額(小規模不動産特定共同事業では投資家1人あたりの出資額は原則として100万円以下であるため、この範囲に収まるか)
不特法に強い弁護士へ相談する
事業の青写真が描けたら、これを元に不特法に詳しい弁護士へ相談します。
不特法を専門としている弁護士は、さほど多くないでしょう。
そのため、相談先は弁護士であれば誰でもよいわけではなく、不特法に基づくクラウドファンディングの立ち上げを実際にサポートした経験のある弁護士を探して相談することをおすすめします。
必要な登録や許可を申請する
弁護士へ相談して描いた青写真を実現するために必要となる登録や許可を確認したら、書類を取りまとめて申請します。
また、相談内容を踏まえ、登録で済む内容へとクラウドファンディングの事業計画を変更することも1つの手です。
相談先の弁護士によってはこれらの申請手続きも代行してもらえるため、サポート範囲をあらかじめ確認しておくとよいでしょう。
まとめ
ここ数年に渡る不特法の改正により、不特法に基づく不動産クラウドファンディングへの参入がしやすくなりました。
とはいえ、行いたい事業によって必要な許可や登録が異なるなど、不動産クラウドファンディングの立ち上げには注意点が少なくありません。
そのため、不特法に基づく不動産クラウドファンディングへの参入を希望する場合は、この法律に詳しい弁護士へ早期にご相談ください。
たきざわ法律事務所は、不動産クラウドファンディングの立ち上げサポートに力を入れている数少ない弁護士事務所です。
不動産クラウドファンディングへの参入をご検討の際は、たきざわ法律事務所までお気軽にご相談ください。