たきざわ法律事務所

【2023年改正】土地所有者と連絡がつかない場合の買取方法とは?

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これまで、仮に買いたい土地があったとしてもその土地の所有者と連絡がつかない場合には、その土地の購入は困難でした。しかし、所有者不明土地の増加が社会問題となっている中で所有者と連絡がつかない土地を購入する手だてがなければ、活用できない土地がどんどん増えていってしまいます。

 

そこで、改正により新たな制度が誕生しました。改正法の施行後は、所有者と連絡のつかない土地であっても買い取れる可能性が高くなります。

 

今回は、改正法を踏まえ、所有者と連絡がつかない土地の売買方法についてくわしく解説します。

 

土地所有者と連絡がつかない理由

 

土地所有者の氏名と住所は法務局に登記されており、その土地の全部事項証明書(登記簿謄本)を取ることで誰でも見ることが可能です。そのため、本来は買いたい土地の全部事項証明書を取れば所有者の住所と氏名が分かるため、そこへ文書を送ったり訪ねて行ったりすることで、買い取りの交渉を始めることができます。

 

しかし、その場所へ訪ねて行ってもその土地の所有者が住んでいなければ、交渉を進めることができません。このような土地を、「所有者不明土地」といいます。

 

では、なぜそのような事態が生じるのでしょうか?主な理由は、次のとおりです。

 

住所変更登記がされていないため

 

1つ目の原因は、土地所有者が引っ越しをしたにもかかわらず、住所変更の登記をしなかったことです。この場合には、全部事項証明書を取っても引っ越し前の住所が掲載されたままであるため、そこを訪ねても所有者は住んでいません。

 

これまで、住所変更の登記は義務ではなかったため、このようなケースが散見されました。

 

なお、不動産登記法の改正により、今後は引越し後2年以内の住所変更登記が義務化されます。この改正は、遅くとも令和8年(2026年)4月28日までに施行される予定です。

 

また、本人からの申出があった場合に限定されるものの、法務局側が定期的に住基ネットに照会をして職権で住所変更登記を行う制度の導入も予定されています。そのため、今後は住所変更登記がなされないまま放置されるケースは減っていくことでしょう。

 

相続登記がされていないため

 

2つ目の原因は、土地の所有者が亡くなったにもかかわらず、相続登記がされなかったことです。この場合には登記上の名義人が既にこの世に存在しませんので、連絡を取ることはできません。

 

相続登記とは、故人名義の不動産を、相続人などの名義へと変える手続きです。この相続登記もこれまで義務ではなく、期限も設けられていませんでした。

 

こちらも不動産登記法の改正で、不動産の相続を知ってから3年以内の登記が義務化されることとなっています。この改正の施行日は、令和6年(2024年)4月1日です。

 

土地所有者と連絡を取る方法

空地

 

ある土地を買いたいと考えた場合、その土地の所有者と連絡を取るためにはどうすれば良いのでしょうか。基本の方法は次のとおりです。

 

全部事項証明書の所有者を確認する

 

まず、その土地の全部事項証明書を取得します。全部事項証明書は、全国どこの法務局からでも、誰でも取得することが可能です。

 

全部事項証明書には土地所有者の住所と氏名が載っていますので、原則としてここへ文書を送ることなどで連絡を取ることができるでしょう。

 

相続人を調査する

 

全部事項証明書に記載の住所に所有者が住んでいない場合には、周囲への聞き込みなどを行います。そのうえで、土地所有者がすでに亡くなったような情報があった場合には、その土地の権利を引き継いだ相続人を探さなければなりません。

 

相続人が1人でも見つかった場合には、その相続人に土地を買いたい旨の話を持ちかけるとよいでしょう。

 

ただし、相続人間で遺産分けの話し合い(「遺産分割協議」といいます)が済んでいない場合には、相続人の1人のみでは土地全体を売ることができません。そのため、他の相続人と遺産分割協議をしてもらうことが先決です。

 

一部の相続人の居場所が分からず遺産分割協議が進められない場合には、戸籍謄本などを調査して、居場所のわからない相続人の現住所を調べるところから始める必要があります。

 

一方、相続人が1人も見つからない場合には、買取業者様のみでの対応は困難でしょう。なぜなら、戸籍は重要な個人情報であり、単に土地を買いたいという理由のみでは取得することができないためです。

 

一方、土地所有者にお金を貸していたなど正当な理由があれば取得することができます。いずれの場合も、土地の所有者調査に行き詰ってしまったら、弁護士までご相談ください。適法に対処する方法がないかどうか、検討致します。

 

 

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土地所有者の全員と連絡がつかない場合の対応方法

 

土地所有者の全員と連絡がつかない場合としては、次のケースなどが考えられます。

 

  • 単独所有者である名義人が行方不明である

  • 相続人が誰もいない名義人が死亡したまま、手続きが放置されている

  • 単独所有者が死亡して相続が発生したが、相続人の誰とも連絡が取れない

 

このような場合にはどのように対応すれば良いのでしょうか。主な対応方法は、次の2パターンです。

 

不在者財産管理人制度を活用する

 

1つ目の方法は、不在者財産管理人制度を活用することです。不在者財産管理人制度とは、行方不明である人の財産を代わりに管理する人を、家庭裁判所に選任してもらう制度です。

 

不在者財産管理人は、必要に応じて、不在者が所有している不動産の売却をすることも可能です。ただし、不在者財産管理人を選任してもらうよう裁判所に申立てができる人は、不在者の配偶者や一定の関係がある親族、債権者などに限定されています。

 

そのため、この制度の利用は、不在者の親族などから協力を得られることが大前提です。親族などの協力が得られない場合や所有者がまったく分からない場合などには、制度を利用することができません。

 

また、不在者財産管理人は、不在者の財産を包括的に管理する立場である点にも注意が必要です。特定の土地など、一部の財産のみを選択して管理する制度ではありません。

 

土地・建物に特化した財産管理制度を活用する

 

土地・建物に特化した財産管理制度は改正で新たに誕生した制度であり、令和5年(2023年)4月1日に施行される予定です。

 

この制度は主に2つに分かれていますが、そのうちの1つに「所有者不明土地・建物管理制度」があります。この制度は、利害関係人が地方裁判所に申し立てることにより、土地や建物の管理者を選任してもらうことができる制度です。

 

管理人は裁判所の許可を得ることにより、所有者不明土地の売却をすることもできます。

 

この制度は、対象としたい土地や建物のみを単体で管理する制度です。不在者の財産を包括的に管理するものではありませんので、不在者財産管理人制度より活用しやすいといえるでしょう。

 

また、所有者がまったく分からない場合であっても、活用することが可能です。この制度ができたことで、土地・建物の効率的かつ適切な管理の実現が期待されています。

 

制度利用の要件

 

この制度を利用するための主な要件は、次のとおりです。

 

  • 1. 調査を尽くしても所有者または所有者の所在を知ることができないこと

  • 2. 管理状況等に照らし管理人による管理の必要性があること

 

なお、ここで求められる調査は状況によって異なるものの、たとえば次のような調査です。

 

  • 登記名義人が自然人である場合:登記簿、住民票上の住所、戸籍等を調査

  • 登記名義人が法人である場合:法人登記簿上の主たる事務所の存否のほか、代表者の法人登記簿上・住民票上の住所等を調査

手続きの流れ

土地・建物に特化した財産管理制度を活用するための流れは、主に次のとおりです。

 

  • 1. 裁判所に申し立てる:利害関係人から、不動産所在地の地方裁判所へ申し立てます

  • 2. 異議届出期間の公告:1か月以上の期間を定めて公告されます

  • 3. 管理人の選任と管理命令の発令:事案に応じて、弁護士や司法書士、土地家屋調査士などが選任されます。管理人が選任されたら、その旨が公示されます

 

なお、選任された管理人が対象の土地や建物を売却した場合には、その売却対価は供託され、公告がなされます。売却により管理すべき財産がなくなったなど管理を継続する必要がなくなった場合には、管理人の職務が終了します。

 

土地所有者の一部と連絡がつかない場合の対応方法

裁判所

 

土地所有者の一部と連絡がつかなくなるケースとしては、次の場合などが考えられます。

 

  • 共有で不動産を購入したが、一部の人が行方不明である

  • 名義人が亡くなり相続が起きているが、相続人の一部が行方不明である

 

土地所有者の一部と連絡がつかない場合にとり得る主な対処方法は、次のとおりです。

なお、いずれも改正により新たに誕生した制度であり、令和5年(2023年)4月1日に施行されます。

 

所在等不明共有者の不動産の持分の取得制度を利用する

 

所在等不明共有者の不動産の持分の取得制度とは、裁判所の決定を得ることにより、他の共有者が、所在等不明共有者(氏名さえ分からない者を含む)の不動産の持分を取得することができる制度です。

 

共有者の一部と連絡が取れない場合の対応方法としては、これまでも判決による共有物分

割の制度は存在しました。

 

しかし、すべての共有者を当事者として訴えを提起しなければならないなど、手続きの負担は軽いものではありません。また、共有者の氏名などさえ分からない場合には、判決による共有物分割は不可能でした。

 

そこで、新たに誕生したのが所在等不明共有者の不動産の持分の取得制度です。この制度を使うことで、これまでよりも比較的負担の軽い手続きで、所在不明となっている共有者の持分を、他の共有者が取得できるようになります。

制度利用の要件

 

この制度を利用するための要件は、申立人において登記簿や住民票等の調査など必要な調査をしたうえで、対象者が所在不明であることを裁判所に認められることです。

 

なお、名義人が亡くなったことによって共有となっている遺産共有の場合には、相続開始から10年を経過していなければこの制度を使うことができません。

 

手続きの流れ

 

この制度を活用するための手続きの流れは、主に次のとおりです。

 

  • 1. 裁判所に申し立てる:その不動産の共有者から、不動産所在地の地方裁判所へ申し立てます

  • 2. 異議届出期間等の公告:3か月以上の期間を定めた公告と、登記簿上の共有者への通知がなされます

  • 3. 供託:不在者の共有持分を取得する対価を供託します。具体的な金額は裁判所が決めます

  • 4. 取得の裁判:申立人が不在者の持分を取得します

 

所在等不明共有者の不動産の持分の譲渡制度を利用する

 

所在等不明共有者の不動産の持分の譲渡制度とは、不在者が所有している共有持分をいったん他の共有者が取得するのではなく、不在者の持分を含めてまとめて第三者へ売却する制度です。

 

裁判所の決定によって、申立てをした共有者に、所在等不明共有者の不動産の持分を譲渡する権限を付与する制度となっています。そのため、不在者の共有持分を含めて不動産を売却したい場合には、1つ上の「所在等不明共有者の不動産の持分の取得制度」ではなく、こちらを活用することとなるでしょう。

 

制度利用の要件

 

この制度を利用するための主な要件は、次のとおりです。

 

  • 申立人において登記簿や住民票等の調査など必要な調査をしたうえで、対象者が所在不明であることを裁判所に認められること

  • 不在者以外の共有者全員で、不動産全体を譲渡すること

  • 名義人が亡くなったことによって共有となっている遺産共有の場合には、相続開始から10年を経過していること

 

なお、裁判で譲渡が許可された場合には、その後2か月以内に売買契約等の譲渡行為をしなければなりません。

 

手続きの流れ

 

この制度を活用するための手続きの流れは、主に次のとおりです。

 

    1. 裁判所に申し立てる:その不動産の共有者から、不動産所在地の地方裁判所へ申し立てます
    2. 異議届出期間等の公告:3か月以上の期間を定めた公告がなされます
    3. 供託:不動産の時価相当額を不在者の持分に按分した額を供託します。具体的な金額は売却予定額をもとに考慮されます
    4. 譲渡権限付与の裁判:不在者の持分を譲渡する権限を、申立人に付与する裁判がなされます

 

その後、不在者以外の共有者全員で、対象の不動産全体を売却することになります。

 

まとめ

 

土地所有者と連絡がつかない場合、これまではその土地を売買することなどは困難でした。改正によりさまざまな制度ができたことにより、所有者不明土地の売却が順次進んでいくものと思われます。

 

特に、一部の相続人が行方不明であることにより塩漬け状態となっていた土地や、相続人ではない親族はいるものの相続人が行方不明である状態の土地など親族側に協力者が確保できるケースでは、手続きが進んでいくことでしょう。

 

しかし、これらの手続きはいずれも法的な対応が必要であり、親族や不動産業者様が独自に行うことは容易ではありません。土地所有者と連絡がつかずお困りのご親族様や、ご親族様から相談を受けた不動産業者様は、ぜひたきざわ法律事務所までお気軽にご相談ください。

 

たきざわ法律事務所には不動産法務にくわしい弁護士が在籍しており、特に所有者不明土地問題に力を入れております。制度の施行は令和5年(2023年)以降ですが、お早めにご相談いただくことで、あらかじめ準備をしたり道筋を立てたりすることが可能となるでしょう。

 

 

 

 

 

 

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サンカラ

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