仲介手数料と不動産仲介、囲い込みや無料・半額の仕組み、注意点を解説
仲介手数料は、どのようなときに発生するのか?
仲介手数料には、消費税が掛かるのか?
仲介手数料で行う業務の範囲は?など、
仲介手数料について疑問に思う点は多くあります。
また、引渡し前に解約したら?仲介手数料半額・無料ってどんな仕組み?、も気になるところです。
この記事では、仲介手数料について解説します。
不動産売買仲介手数料とは?
まず、不動産売買仲介手数料とは何なのかを解説します。
仲介手数料とは
仲介手数料は、不動産取引にて仲介業者を入れて売買した時に発生します。
例えば、不動産を売りたい人と不動産を買いたい人が、共に不動産業者ではない素人であった場合です。
一般的に不動産売買では、契約手続き、住宅ローンの手続き、登記の手続きなど専門性が高い手続きが多くあります。
売買で動くお金も高額であるので、素人同士で取引を成立させるのは至難の業です。
また、売主が不動産業者である場合にも、買主を探すために仲介業者を入れることもあります。
そこで、双方の間に入り取引のサポートをするのが、仲介業者です。
仲介業者は、物件の販売、重要事項・契約書の作成、契約行為、住宅ローンの取次ぎ、登記の手配、引き渡し手続きなど、取引に必要な手続きをサポートします。
このように、仲介業者が入ることで、不動産売買が円滑に進み、無事に取引が成立します。
取引成立の際に双方から支払われるのが、仲介手数料になります。
仲介手数料は、営業活動に対する成功報酬
仲介手数料は、取引が成立した場合のみ、双方から支払われます。
つまり、仲介手数料は取引の成果に対する成功報酬です。
例えば、仲介業者に売却の依頼が来たが、3か月経過しても売買が成立していないとします。
このとき売主が、売却依頼自体を取り下げたら、仲介手数料の支払いはなく、当然仲介業者には一銭もお金が入りません。
したがって、仲介業者が売却のために要した広告費や人件費が、回収できないことになります。
売り物件を担当したら、自社内で買主をつけて成約させる、若しくは購入検討者を他社に紹介してもらい成約させる。
そうすることで、仲介手数料を得ることができるのです。
仲介手数料は唯一の収入
仲介業者にとって、仲介手数料は唯一の収入源です。
せっかく売り物件があったものの、取引を成立させられずに手放してしまうのは非常に勿体ないのです。
また、売り物件を取得したら必ず仲介手数料を取得したいと思うのが仲介業者です。
したがって、取引の形態は専任媒介契約にすることが多いです。
この契約形態は、売り物件の紹介を媒介契約した1社のみに限定できます。
また、取引成立時には必ず仲介手数料を取得できるので、仲介業者としては大きなメリットです。
仲介手数料が入る目途があれば、先行的にインターネットや新聞広告などに宣伝費をかけることができます。
宣伝の効果で集客しやすくなり、早期に契約が纏まる可能性があります。
したがって、売主にとしてもメリットは大きく、早期売却による精神的な安心感や、値下げすることなく希望に近い金額で売却できる可能性も高いのです。
仲介手数料には消費税が掛かる
仲介手数料には、一般的に消費税が掛かります。
消費税は、基準期間(課税期間の前々年度)の課税売上高が1,000万円を超えたら、課税事業者となり消費税を納めることになります。
「課税売上高」とは、土地取引など非課税取引を除いた売上高のことで、「課税期間」とは消費税を申告するために計算する期間のことです。
一般的に法人の場合には、決算から翌年の決算まで、つまり一事業年度を指します(個人事業主の場合は、1月から12月までとなります)。
よって、仲介業者は一般的に課税事業者であるので、仲介手数料には消費税10%が掛かります。
契約後の代行費用も含む
仲介手数料は、物件を売買させた成功報酬となるので、
不動産売買に関わる業務(査定・レインズ登録・宣伝、集客・販売・契約・引き渡し)が全て含まれることになります。
他に、引き渡しまでに必要な各種取次や代行費用等も仲介手数料に含まれます。
- 各手続きの売主買主の日程調整
- 重要事項説明書、契約書の作成
- 住宅ローンの斡旋と必要書類の提出
- 境界確定のための測量費(一戸建て・土地の売買のみ)
- 建物状況診断の為のインスペクション費用
- 登記に関する費用(売主・・抵当権抹消 買主・・所有権移転、抵当権設定)
- 固定資産税の精算、管理費・修繕費の精算(買主)
仲介手数料の上限や算出式は
仲介手数料は、宅建業法により上限があります。
その算出式を紹介します。
成約価格200万円以下 | 成約価格×5% |
成約価格200万円超400万円以下 | 成約価格×4% |
成約価格400万円超 | 成約価格×3% |
(例)成約価格2,000万円の場合の、仲介手数料は?
成約価格200万円以下までの部分 | 200万円×5%=10万円 |
成約価格200万円超400万円以下の部分 | 200万円×4%=8万円 |
成約価格400万円超の部分 | 1,600万円×3%=48万円 |
即ち、全て足すと66万円。
ここに消費税を加えると726,000円が、仲介手数料となります。
しかし、いちいちこの計算式で行うのは面倒です。
また、成約価格が400万円以下は稀であるので、成約価格400万円超の場合の速算式を解説します。
仲介手数料の3%+6万円とは
一般的によく見る仲介手数料の算出式は、成約価格400万円超の場合の速算式です。
つまり、不動産の成約金額で一般的に400万円以下の場合は少ないので、こちらの速算式が用いられています。
尚、後につく6万円の意味は、200万円までの部分5%の内2%(=5%-3%)分が含まれていないので、
その分の4万円と、200万円以上400万円以下の部分の4%の内1%(=4%-3%)分が含まれていないので、その分の2万円となります。
400万円超の成約価格の場合、400万円以下の部分に変わりがなく、常に6万円が加算されます。
仲介手数料を値引きする場合もある
仲介手数料には上限があり、これ以上に設定すると宅建業法違反となります。
ただ、仲介手数料については減額する仲介業者もいます。
特に、都心部の不動産においては、価格が数億円程度する物件も多くあります。
仮に、仲介手数料を上限で設定すると数百万となり高額ですので、仲介案件を獲得するために減額して提案する業者も多いです。
また、仲介手数料を上限金額で提示し、買付交渉時に値引き枠として利用することもあります。
不動産仲介は都心が儲かる
仲介手数料は、成約価格が高いほど多くなります。
したがって、一般的に不動産価格が高い都市部で取引をした方が、儲かります。
反対に、郊外や田舎など不動産価格が安い物件を成約しても儲かりません。
不動産仲介の営業マンなら、都心物件の方が断然おいしいわけです。
仲介手数料の法改正
先述のように仲介手数料は、立地により1件分の金額が大きく異なります。
そこで、2018年1月1日より、成約価格400万円以下の仲介手数料が改定されています。
それは「400万円以下の成約価格の場合に、売主からの仲介手数料は最大18万円」となっています。
これにより、成約価格が300万円の仲介手数料は、従来14万円でした。
しかし、今回の改定で従来の14万円の手数料に加えて、調査費用などの必要経費を盛り込み、最大で18万円まで受け取れるようになっています。
改定された背景は、地方都市での空き家住宅等の取引活性化です。
地方都市の空き家は元々価格が安く、仲介手数料を受け取っても、仲介業者として赤字になることが多くあり、取引事態が敬遠されるケースがありました。
今回の、手数料の改定により、従来方式の手数料に加えて実費費用を受け取れるようになり、今後の空き家等の不動産取引が活性化すると思われます。
仲介手数料は、どのタイミングで支払いを受ける
仲介手数料の貰い方は、仲介会社により異なります。
理論的には、仲介が成功したとき(売買契約が締結された時)に仲介手数料全額の請求権が発生しますが、
他方で、売買の決済前(つまり代金を取得する前)に仲介手数料の支払いを求められるのは依頼者としても厳しいところがあります。
そのため、多くの媒介契約書では売買契約時に仲介手数料の半金を貰い、引き渡し完了後に残りの半金を貰うケースや、
引渡完了時に全額を貰うケースが多いです。
仲介手数料と囲い込み
ここからは、仲介手数料と一部仲介業者で行われている囲い込みについて解説します。
囲い込みとは何か
囲い込みとは、仲介手数料を売主と買主、双方から貰ういわゆる両手取引を狙うために行われる手法です。
売り物件の情報は一般的に、レインズに登録され日本全国の仲介業者が閲覧できる仕組みになっています。
他の仲介業者が、売り物件を見て買主を紹介出来そうな場合には、売り物件を持つ仲介業者に連絡し、物件見学や契約ができます。
しかし、この場合売り物件を持つ仲介業者にとっては、せっかく両手取引ができるチャンスであるのに、
他の仲介業者が連れてきた顧客で契約してしまうと、買主分の仲介手数料が入らなくなります。
そのため、売り物件を持つ仲介業者は、その紹介を拒むことがあるのです。
これが「囲い込み」です。
囲い込みの問題点
囲い込みの問題点は、売主の機会損失です。
売主としては、仲介業者の手数料が両手であろうと片手であろうと関係ありません。
早期に希望額で売却できることを望んでいます。
仲介業者が故意に断ることで、売却の機会が失われていることが一番の問題点です。
両手取引と片手取引
両手取引とは、仲介業者が売主・買主双方から所定の仲介手数料を受け取ることです。
片手取引とは、売主か買主どちらか一方のみから仲介手数料を受け取ることになります。
不動産業者が両手取引を狙う理由
両手取引を狙う理由は、ズバリ仲介手数料を多く貰えるからです。
仮に片手取引であれば、仲介手数料は当然に両手取引時の半分です。
一回の取引にて片手取引の2倍となる、仲介手数料を受けられる両手取引は、仲介業者としてはおいしいパターンなのです。
また、仲介手数料は仲介業者の唯一の収入であることから、できるだけ多く手数料が欲しいという側面も勿論あります。
囲い込みを行う業者の特長
囲い込みは、意外にも大手と言われる仲介業者で行われています。
大手仲介業者は、会社の規模が大きく、店舗運営等の固定費や、宣伝費用、人件費等が莫大であるので、仲介手数料はなるべく多くとりたいところです。
大手仲介業者の店舗によっては、片手取引禁止と徹底しているところもあり、囲い込みの悪い慣例は今でも当たり前のように行われています。
仲介手数料半額や無料の仕組み
ここからは、一部中小の仲介業者や新規参入の仲介業者で行われている、仲介手数料の半額や無料の仕組みについて解説します。
半額・無料の仕組み
半額の場合は、従来貰える仲介手数料を50%引きにしています。
400万超の物件価格の場合、3%の仲介手数料のところ1.5%にするということです。
無料の場合は、どちらか一方の仲介手数料をなくし、一方は正規の仲介手数料を受け取ります。
一般的に、仲介業者は売り物件が欲しいので、売主分を無料に、買主から正規の仲介手数料を受け取ります。
つまり無料の場合、形態としては両手取引ができるのですが、あえて片手取引の形態にしています。
また、不動産業者が売主の物件で、自社で売却活動している(つまり仲介業者入れていない)場合に、その業者が「仲介手数料無料」と宣伝しているケースも散見されます。
仲介業者を入れていないので仲介手数料がかからないのは当たり前ですが、買主にお得感を与えるためにそのような宣伝をしているケースも多いです。
あえて片手取引を狙い契約数を増やす
仲介手数料の無料の場合は、あえて片手取引を狙っていることもあります。
無料にするのは売主側のことが多いです。
理由は、仲介営業にとって売り物件を取ることはけっこう大変なのです。
仲介手数料の無料は、売り手にとって大きなメリットであることから、興味を持つ人は多いでしょう。
売り物件を獲得できれば、買い手を探すのみとなります。
あえて片手取引を狙うことで、売り物件を獲得しやすくし、取引件数増を狙っています。
顧客のメリット・デメリット
顧客のメリットは、仲介手数料を安く抑える、若しくは無料にできるので、中古不動産売買で一番掛かる費用を削減できます。
もちろん、提供するサービスは正規で仲介手数料を支払った場合と同様であるので、間違いなくお得です。
デメリットは、無料の仲介業者に売却を依頼した場合に、囲い込みがあることです。
なぜかというと、無料の業者の場合、買主から必ず仲介手数料を貰わないと収入がないからです。
不動産業者のメリット・デメリット
不動産業者のメリットは、取引件数の増加です。
仲介手数料半額・無料は、顧客にとって間違いなく魅力です。
よって顧客からの問い合わせが増え、取引獲得件数も増えるでしょう。
反対にデメリットは、薄利多売方式になるため、件数が増えた分業務も増えます。
不動産の契約は細かい書類や、大きなお金の動きもあるためミスが発生するリスクが増えます。
仲介手数料注意点
ここからは、仲介手数料の注意点について解説します。
契約後に解約になった場合
売買契約後、引渡し前までに解約になったらどうなるのでしょうか?基本的に、仲介業者に落ち度がない場合には、仲介手数料は請求できるとされています。
請求できるケースは、手付解除、契約違反による解除などです。
また、仲介手数料を請求できないケースは、融資利用特約による解除、停止条件による解除、引渡し前の滅失・毀損による解除などです。
仲介手数料に相場はあるのか
仲介手数料に相場はありませんが、都心部では価格が高いので仲介手数料を減額するケースも多いです。
仲介手数料の値引き交渉がきたら
仲介業社の方針にもよりますが、成約できる見込みがあるのであれば、10%~20%程度の値引きに応じるケースが多いように見受けられます。
但し、半額や無料のケースなど、当初より仲介手数料を下げている業社の場合、応じるケースは少ないでしょう。
まとめ
仲介手数料は、仲介業者にとって唯一の収入です。
仲介手数料には上限がありますが、地域や仲介会社によって貰う金額は違うようです。
また、仲介手数料の業務の範囲は、どの仲介業者でも違いはありません。
尚、囲い込み等の悪しき習慣も引き続き健在しています。
仲介業者が仲介手数料に執着するがあまり、顧客の意向や希望をないがしろにするような、営業行為がないように努めて欲しいと思います。
不動産は当事務所にもよく寄せられる相談ですが、法制度やメリットデメリットなど、知っておくべき事項が多い分野です。まずは当事務所のメルマガに登録をし、情報を集められる体制をお作りください。
また、不動産トラブルでお困りの場合、不明点がある場合は、当事務所までお問い合わせください。訴訟対応はもちろん、訴訟前の対応や訴訟を起こさないための体制づくりのサポートをいたします。