【2023】空き家買取とは?利用のメリット・デメリットと注意点を弁護士がわかりやすく解説
相続などで空き家を所有することとなってしまい、困っている方も少なくないでしょう。そのような際には、「空き家買取」が選択肢の一つとなります。
「空き家買取」とは、空き家を不動産会社に仲介してもらうのではなく、不動産会社に空き家を直接買い取ってもらう仕組みのことです。では、空き家買取を利用するメリットやデメリットは、どのような点にあるのでしょうか?
今回は、空き家買取を利用するメリット・デメリットや空き家買取に向いた物件、空き家買取の利用で失敗しないためのポイントなどについて、弁護士がくわしく解説します。
目次
「空き家買取」とは
「空き家買取」とは、空き家とその敷地を、不動産会社に直接買い取ってもらう仕組みのことです。不動産会社によっては、空き家の買い取りや再生に力を入れていることがあります。
そのような不動産会社と条件面で折り合いがつけば、空き家をそのままの状態で買い取ってもらうことも可能となります。
仲介との違い
空き家買取と仲介との最大の違いは、不動産会社がその空き家を所有することになるかどうかです。
空き家などの不動産を売る際には、自分で買い手を見つけても構いません。たとえば、空き家の隣地の所有者に、土地を空き家ごと買い取ってもらえないか打診することなどが考えられます。また、「この不動産を買いたい」と、相手から申し入れられる場合もあるかもしれません。
しかし、そのような特殊なケースでない限り、不動産の買い手を自分で見つけることは容易ではないでしょう。また、仮に自分で相手方を見つけても、プロが介在しない取引ではトラブルとなるリスクもあります。
そのため、不動産を売りたいと考えた際には、買い手を見つけてもらうことや契約をまとめてもらうことを、不動産会社に依頼することが一般的です。これが、不動産売買の「仲介」です。
一方、空き家買取は不動産会社が別の買い手を見つけるのではなく、不動産会社が自ら買主となって、空き家の所有者になります。
空き家買取をしてもらうメリット
空き家の所有者が仲介ではなく、「空き家買取」としてもらうことにはどのようなメリットがあるのでしょうか?主なメリットは、次のとおりです。
仲介手数料が不要
不動産会社に空き家売買の仲介を依頼した場合、買い手との契約段階で、不動産会社に仲介手数料の支払いが必要となります。仲介手数料の上限額は売却額によって異なっており、それぞれ次のとおりです。
売却額が400万円超の場合:売却額×3%+6万円(+消費税)
売却額が200万円超400万円以下の場合:売却額×4%+2万円(+消費税)
売却額が200万円以下の場合:売却額×5%(+消費税)
たとえば、空き家とその敷地を、仲介により500万円で売った場合の仲介手数料は、税別22万円(500万円×4%+2万円)です。一方、不動産会社が直接空き家を買い取る場合には、仲介手数料がかかりません。
スピーディー
一般的に、敷地上に空き家がある状態のままでは、更地よりも買い手を見つけにくいといえます。空き家をそのまま活用しようにも、空き家が買い手の望んだとおりの間取りである可能性は低いためです。また、購入後に空き家を壊して別の物件を建築しようにも、解体に手間や費用がかかります。
一方、空き家買取を積極的に行う不動産業者であれば、購入後の空き家の取扱いについてノウハウがあることが多いでしょう。そのため、多少状態の悪い空き家であっても、スピーディーに買い取ってもらえる可能性が高くなります。
契約不適合責任免責されることが多い
契約不適合責任とは、契約書に記載のない何らかの不具合が生じた場合、買い手から売り手に対して追及される責任のことです。たとえば、代金を減額するよう請求されたり、補修するよう請求されたりする可能性があります。
しかし、築年数の経った空き家であれば、まったく不具合のないケースの方が稀でしょう。
契約不適合責任を追及されないためには、不具合の内容をすべて確認したうえで契約内容として織り込む必要があり、これは非常に大変です。
一方、不動産のプロである不動産会社に空き家を買い取ってもらう場合には、契約不適合責任が免責されることが多いでしょう。
周囲に気付かれにくい
不動産売却の仲介を依頼した場合、不動産会社としては買い手を見つけるために尽力することになります。そのため、仲介する不動産会社のホームページなどに物件を掲載するなど、できるだけ多くの人の目に触れるようにしてくれることでしょう。
しかし、このことで買い手が見つかりやすくなる半面、物件を売りに出していることが周囲に知られやすくなります。ホームページなどに売り手の氏名などまでは掲載されないものの、建物の外観や大まかな地名などから、特定されてしまう可能性があるためです。
一方、空き家買取の場合には不動産会社が広く買い手を募る必要はないため、周囲に知られにくいといえます。
「空き家買取」をしてもらうデメリット
空き家買取をしてもらうことには、次のようなデメリットや注意点も存在します。
買い取り額が低くなりやすい
空き家買取の場合には、一般的に、買い取り額が仲介による売却よりも低くなる傾向にあります。そのため、通常の仲介でも売れるような立地のよい物件であれば、仲介での売却とよく比較検討した方が良いでしょう。
必ず買い取ってもらえるとは限らない
空き家買取を積極的に行っている不動産会社であるからといって、必ず空き家を買い取ってもらえるわけではありません。空き家の状態や立地などによっては、買い取ってもらえない可能性も十分にあり得ます。
そのため、不動産会社に問い合わせる前から「いざとなったら空き家買取を利用すれば良い」などと高を括ることは、避けた方が良いでしょう。
「空き家買取」を利用する流れ
空き家買取を利用するためには、どのような流れを踏めば良いのでしょうか?主な流れは、次のとおりです。
空き家買取業者へ相談する
空き家買取を検討している場合には、まず空き家買取をしている不動産会社に相談しましょう。そのうえで、買い取りが可能な物件であるかどうかなど、大まかな方向性を確認します。
空き家を査定してもらう
次に、空き家を実際に査定してもらいます。可能であれば、1社のみではなく、複数の不動産会社に査定してもらうと良いでしょう。
売買契約を締結する
査定価格や契約内容に納得ができたら、売買契約を締結します。契約締結時には、買い取り価格はもちろん、売り手が負う義務やどのような状態で引き渡せば良いのかなどについてよく確認することおすすめします。
契約内容の理解に不安がある場合には、あらかじめ弁護士へ相談すると良いでしょう。
物件を引き渡す
契約で取り決めた引き渡し日に、物件を引き渡します。併せて、売買金額の支払いや、名義変更が行われます。
名義変更をする司法書士は、不動産会社側が手配することが一般的でしょう。これで、空き家の買取は完了です。
「空き家買取」に向いている物件
仲介ではなく、不動産会社による空き家買取の活用が向いているのは、どのような物件なのでしょうか?一般的に、次のような物件は、空き家買取の方が適している可能性があります。
築古物件
空き家が築古物件である場合には、空き家買取を検討すると良いでしょう。なぜなら、文化的価値が認められる建物などでない限り、古い物件をそのまま購入する買い手を見つけることは、容易ではないためです。
空き家買取を利用しない場合には、売却にあたって自ら解体して更地にする必要が生じる可能性が高いでしょう。
事故やトラブルのあった物件
事故やトラブルのあった物件では、仲介で通常の買い手を見つけることは容易ではありません。そのような物件は、一般的に、敬遠されてしまう可能性が高いためです。
そのため、空き家買取を検討すると良いでしょう。
所有者が複数人いる物件
所有者が複数いる物件では、共有者全員が足並みをそろえて売却することが困難なケースも多いでしょう。法律上は自身の共有持分のみを売却することも可能である一方で、現実的には、共有持分のみの買い手を見つけることは容易ではありません。
一方、空き家買取であれば、共有持分のみであっても買い取ってもらえる可能性があります。ただし、この対応をしているかどうかは不動産会社によって異なりますので、あらかじめ確認しておくと良いでしょう。
遠方にある物件
空き家が遠方にある場合には、空き家買取が有力な選択肢となります。空き家を放置していれば倒壊などのおそれがあるため、たびたび足を運んで状態確認やメンテナンスをしなければなりません。
また、仲介で買い手を見つけるためには、買い手が「欲しい」と考えてくれる程度に良い状態を保つことも必要です。しかし、空き家が遠方であれば、頻繁に出向けないことも多いでしょう。
空き家買取を利用して空き家を不動産会社に買い取ってもらえれば、以後自分でメンテナンスなどに出向く必要はなくなります。
空き家買取後の主な活用方法
空き家買取を行う不動産会社は、空き家を買い取った後、どのような活用をするのでしょうか?空き家の主な活用方法は、次のとおりです。これは、今後空き家買取への参入を検討している不動産会社にとっても参考になるでしょう。
リノベーションをして自分(自社)で活用する
1つ目は、空き家をリノベーションして、自社で活用することです。たとえば、自社の事務所として活用するほか、リノベーション実績を広告するためのモデルハウスとしたり、カフェなど別事業を展開したりすることなども考えられます。
更地にして自分(自社)で活用する
空き家を買い取った後、不動産会社が更地にして活用する場合もあります。たとえば、駐車場として活用したり、別の建物を建てて活用したりすることなどが考えられるでしょう。
リノベーションをして転売する
買い取った空き家を不動産会社がリノベーションをしたうえで、転売するケースもあります。リノベーションをして間取りを変更したり古くなった設備を更新したりすることで、買い手が見つかりやすくなる可能性があるためです。
更地にして転売する
空き家を解体して更地にしたうえで転売することも、選択肢の一つとなります。住宅地などとして需要が高い地域などである場合には、この方法が取られることも多いでしょう。
賃貸する
買い取った空き家を賃貸することも、選択肢の一つとなります。空き家の状態によってそのまま賃貸する場合もあれば、リノベーションなどをしたうえで賃貸する場合もあります。
住居用として賃貸することや、いわゆる「古民家カフェ」などとして賃貸することなどもあるでしょう。
「空き家買取」の利用で失敗しないために
空き家買取の利用で失敗しないためには、どのような点に注意すれば良いのでしょうか?主な注意点は、次のとおりです。
仲介とよく比較する
1つ目の注意点は、仲介とよく比較することです。先ほど解説したように、空き家買取の場合には、仲介よりも売却価格が低くなることが少なくありません。
そのため、はじめから空き家買取の利用に絞ってしまうのではなく、仲介も視野に入れて適した方法を広く検討することをおすすめします。
複数の買い取り業者から見積もりを取る
空き家買取による買い取り価格は、不動産会社によって大きく異なる場合もあります。そのため、空き家買取を利用する際には1社のみとやり取りをするのではなく、2社以上から相見積もりを取得すると良いでしょう。
土地の相場を調べておく
空き家買取を依頼する際には、周辺の土地の価格を調べておくと良いでしょう。土地のおおまかな相場を調べておくことで、提示された買い取り価格が適正かどうか、判断しやすくなるためです。
なお、空き家とその敷地とを合わせた買い取り価格は、単純に「空き家の価格+敷地の価格」とはならず、むしろ空き家があることで買い取り額が下がることもあります。なぜなら、空き家の利用価値が低い場合には、空き家を取り壊して土地のみを活用する可能性があるためです。
この場合には、その後不動産会社が支出することになる解体工事にかかる費用分だけ、土地の相場よりも買い取り額が低くなることになるでしょう。
契約締結前に弁護士へ相談する
空き家買取を利用する際には、不動産会社の側で契約書の案を作成することが一般的です。
しかし、不動産の売買に慣れている人でなければ、提示された契約書の内容が適正かどうか、また契約内容にリスクはないかどうかなど、判断が難しいことでしょう。そのような際には、ぜひ契約締結の前に弁護士へご相談ください。
弁護士へあらかじめ相談することで、契約のリスクなどを把握でき、安心して契約締結に臨むことが可能となります。また、空き家買取の利用で万が一トラブルに発展した場合であっても、落ち着いて対応することが可能となるでしょう。
まとめ
空き家買取とは、不動産会社が直接空き家を買い取る制度です。仲介とは異なり仲介手数料がかからず、通常の仲介よりもスピーディーに空き家を手放しやすい点などにメリットがあります。
不動産会社によっては空き家の買い取りに力を入れている場合がありますので、空き家の取扱いに困っている際には活用を検討すると良いでしょう。
また、不動産会社が空き家の買い取りに力を入れることで、取り扱う不動産に幅を持たせることが可能となります。これから空き家買い取りに注力したい場合には、不動産法務にくわしい弁護士へ相談の上、ビジネスモデルを構築していくと良いでしょう。
たきざわ法律事務所では、不動産法務に力を入れております。空き家買取にまつわるトラブルでお困りの際や、今後空き家買い取りに力を入れていくうえで法的なリスクを把握しておきたいという不動産会社様などは、ぜひたきざわ法律事務所までご相談ください。