【2024】薬機法に違反するとどうなる?罰則は?違反事例や対策を弁護士がわかりやすく解説
医薬品や化粧品、健康食品などを取り扱う企業にとって、薬機法はもっとも重要な法律の一つです。また、薬機法違反を避けるためには、企業から広告やPRを請け負う代理店やインフルエンサーも規制内容を理解しておかなければなりません。
では、薬機法とはどのような法律なのでしょうか?また、薬機法に違反するのは、どのようなケースなのでしょうか。今回は、薬機法の概要や違反するケース、薬機法違反による罰則などについて弁護士がくわしく解説します。
薬機法とは
薬機法の正式名称は、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」です。以前は「薬事法」との名称であったところ、2014年に施行された改正により名称が変わりました。改正後は、「薬機法(やっきほう)」と略されることが一般的です。
薬機法では、主に次のものの取り扱いが規制対象とされており、これらをまとめて「医薬品等」と呼んでいます。
医薬品
医薬部外品
化粧品
医療機器
再生医療等製品
薬機法では、これら医薬品等の品質・有効性・安全性の確保や、これらの使用による保健衛生上の危害の発生・拡大の防止のために必要な規制を設けています(薬機法1条)。
薬機法違反となる主なケース
薬機法違反となるケースは、主に3つに分類されます。ここでは、それぞれの薬機法違反について概要を解説します。
無許可・無登録営業
1つ目は、無許可・無登録営業です。
仮に、誰もが自由に医薬品や化粧品を製造したり販売したりできるとなれば、健康被害が生じる可能性が高いでしょう。短期的な利益獲得を目指して人体に有害な物質が混入されるおそれがあるほか、劣悪な環境で製造されるかもしれません。また、十分な知識がないまま医薬品などを販売すれば、処方を誤り甚大な健康被害が続出するおそれもあります。
そこで、薬機法では一定の営業について許可制や登録制を設けています。薬機法において許可が必要とされる営業は次のとおりです。
薬局の開設(同4条1項)
医薬品・医薬部外品・化粧品の製造・販売(同12条1項)
医療機器・体外診断用医薬品の製造・販売(同23条の2 1項)
再生医療等製品の製造・販売(同23条の20 1項)
再生医療等製品の製造(同23条の22 1項)
医薬品の販売(同24条1項)
高度管理医療機器等の販売・貸与(同39条1項)
医療機器の修理(同40条の2 1項)
再生医療等製品の販売(同40条の5 1項)
また、次の営業をするためには、登録を受けなければなりません。
医療機器・体外診断用医薬品の製造(同23条の2の3 1項)
許可や登録が必要である営業を無許可・無登録で行った場合や、虚偽の申請により許可や登録を受けた場合などには、薬機法違反となります。
広告規制違反
2つ目は、広告規制違反です。
医薬品等について自由に広告ができるとなれば、過激な広告が出稿されるおそれなどが生じます。その結果、医薬品等が意図しない方法で使われるなど、公衆衛生が悪化する事態となりかねません。
そこで、薬機法では広告規制を設けています。薬機法で禁止される広告は、次のとおりです(同66条、67条、68条)。
虚偽や誇大な広告
堕胎の暗示やわいせつ表現などによる広告
特定疾病用の医薬品等に関する一般向け広告
未承認医薬品等に関する広告
厚生労働省の通知により、薬機法上の広告には、次の要件を満たすものはすべて該当するとされています。
- 顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確であること
- 特定医薬品等の商品名が明らかにされていること
- 一般人が認知できる状態であること
広告媒体に制限はなく、テレビコマーシャルや新聞折り込みなどはもちろん、インターネット広告やSNS広告、PR記事などであっても広告に該当し得ることがわかります。
なお、この広告規制に関する規定対象は、「何人も」とされている点に注意しなければなりません。「何人も」とは「すべての人は」という意味であり、医薬品等の製造や販売をする事業者はもちろん、広告代理店やSNSの運用代行者、インフルエンサーなども規制対象に含まれるということです。
たとえば、化粧品のPRを依頼されたインフルエンサーが誇大な表現を使えば、薬機法違反として罰則の対象になります。
取り扱いに関する違反
3つ目は、取り扱いに関する違反です。
薬機法では、医薬品等の取り扱いについてさまざまなルールを設けています。主な規制内容は、次のとおりです。
処方箋医薬品の販売:医師・歯科医師・獣医師から処方箋の交付を受けていない者への一定の医薬品販売の原則禁止(同49条)
直接の容器等の記載事項:医薬品の直接の容器等に所定事項を記載すべきであることや、所定事項を記載すべきでないこと(同50条から53条)
違反医薬品の販売・授与等の禁止:薬機法の規制に違反する医薬品の販売禁止(同55条、56条)
これらの規定に違反した場合は、薬機法違反となります。
薬機法に違反するとどうなる?
薬機法に違反した場合、どのような事態が生じるのでしょうか。ここでは、薬機法に違反した場合に生じ得る事態について、まとめて解説します。
行政処分の対象となる
薬機法に違反すると、行政処分の対象となります。行政処分とは、警察や検察ではなく、行政庁が下す処分です。具体的には、改善命令や措置命令、営業停止処分、許可の取消処分などが挙げられます。
違反の内容が重大である場合は営業停止が命じられたり許可が取り消されたりすることがあり、営業の継続が困難なものとなりかねません。実際の影響は刑事罰以上のものとなる可能性もあるため、万が一改善命令や措置命令が出されたら即座に対応すべきでしょう。
課徴金納付命令が出される
薬機法に違反すると、違反の内容により課徴金納付命令の対象となります(同75条の5の2)。
課徴金納付命令とは、違反行為によって得た売上の一部を国庫へ納付させる行政処分です。
違反行為による売上が非常に大きい場合、罰則の適用などと天秤にかけて違反行為をするおそれがあるでしょう。そこで、違反行為のさらなる抑止力とする目的で、課徴金制度が導入されています。
薬機法において課徴金納付命令の対象となるのは、誇大広告等の禁止規定に違反した場合です。この規制に違反した場合、違反行為(「課徴金対象行為」といいます)をした期間(「課徴金対象期間」といいます)に取引をした課徴金対象行為に係る医薬品等の対価の合計額の4.5%相当の課徴金納付命令が出されます。
なお、長期(3年以上)に渡って違反行為をしていた場合には、違反行為の期間の末日から遡って3年間が課徴金対象期間となります(同2項)。また、この式で計算した課徴金の額が225万円未満であるときは、課徴金納付命令の対象外となります(同4項)。
たとえば、課徴金対象期間における課徴金対象行為に係る医薬品等の売上が10億円である場合、課徴金の額は4,500万円です。4.5%を乗じるのは「粗利益」などではなく「売上」である点にご注意ください。
罰則が適用される
薬機法に違反した場合、刑事罰の適用対象となります。薬機法違反による主な刑事罰は、それぞれ次のとおりです。
無許可営業・業務停止処分期間中の営業:3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、または併科(同84条)
無登録営業:1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、または併科(同86条1項)
広告規制違反:2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、または併科(同85条)
違反医薬品の販売:2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金または併科(同85条3号)
また、法人の業務遂行にあたって薬機法違反をした場合には、行為者が罰せられるほか、法人も罰金刑の対象となります。法人への罰金刑は非常に重く設定されており、たとえば無許可営業の場合における法人の罰金刑は「1億円以下」です(同90条)。
薬機法違反を避けるための主な対策
薬機法違反を避けるには、どのような対策を講じればよいのでしょうか?ここでは、違反を避けるための主な対策を3つ紹介します。
薬機法やガイドラインを読み込んで理解する
1つ目は、薬機法や公表されているガイドラインなどを読み込み、内容を理解することです。「何が違反となるのか」「何をしなければならないのか」を理解しておくことで、知らずに薬機法に抵触する事態を抑止できます。
また、法令だけを読んでも、具体的に何をすべきか判断できない場合もあるでしょう。その際は、ガイドラインを併せて確認することで、より具体的なイメージが湧きやすくなります。
広告審査を厳しく行う
2つ目は、広告審査を厳しく行うことです。
広告審査とは、企業が広告を出稿する前に、その広告に法令違反やコンプライアンス違反がないかなどの視点で行う事前チェックです。法令やガイドラインなどに照らし合わせて明らかに「黒」である表現は広告審査で弾く一方で、グレーである場合には判断に迷うことでしょう。
薬機法違反を避けるためには、グレーな表現も出稿しないなど、広告審査を厳しめに行うべきといえます。
相談先の弁護士を確保する
3つ目は、相談先の弁護士を確保しておくことです。
顧問契約を締結するなど薬機法にくわしい弁護士へすぐに相談できる体制を確保しておくことで、無理に自社で判断すべき事態を避けることが可能となります。その結果、判断ミスにより薬機法違反となる事態を避けやすくなります。
また、弁護士へ相談することで広告表現についても理解不足から過度に保守的である必要性から解放され、薬機法違反を避けつつもより攻めた表現がしやすくなるでしょう。
薬機法違反を防ぐ対策はたきざわ法律事務所へお任せください
薬機法違反を防ぐ対策を講じたい事業者様は、たきざわ法律事務所までご相談ください。最後に、たきざわ法律事務所の主な特長を4つ紹介します。
医師などからの相談に特化している
たきざわ法律事務所は、医師や医院のほか、化粧品や健康食品を取り扱う企業からのご相談に特化しています。そのため、薬機法に関することはもちろん、いわゆるカスタマーハラスメントや誹謗中傷、スタッフトラブル、不動産投資にまつわるリーガルサポートまで広く対応が可能です。
フットワークの軽さを自負している
たきざわ法律事務所は、フットワークの軽さを自負しています。早期の対応をご希望の際にも、お気軽にご連絡ください。
また、「夜しか連絡できない」「相談したことを周囲に知られたくない」など、個別事情に応じた対応も可能です。
個々のご依頼者様にとって最良のサポートを検討する
たきざわ法律事務所ではご依頼内容を決まった型に当てはめるのではなく、個々のご依頼者様ごとに最良の解決策をご提案します。そのため、より納得のいく解決をはかることが可能です。
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たきざわ法律事務所では、ご相談者様やご依頼者様などから「相談してよかった」、「依頼してよかった」との満足のお声を多く頂戴しています。これは、一人ひとりのご依頼者様と真摯に向き合い、解決に向けて尽力を重ねている結果であると自負しています。企業経営を円滑に進めるパートナーとして、ぜひたきざわ法律事務所までご相談ください。
まとめ
薬機法の概要や薬機法違反となる主なケース、薬機法に違反しないための対策などを解説しました。
薬機法は、保健衛生の向上を図ることを目的とする法律です。この目的を達成するため、医薬品等の取り扱いに関する許可制度・登録制度を設けているほか、広告規制などさまざまなルールを定めています。
薬機法に違反すると罰則の適用対象となるほか、許認可が取り消されたり課徴金納付の対象となったりする可能性があり、甚大な影響が生じかねません。薬機法に違反しないよう規制内容を理解したうえで、迷った際には弁護士へ相談することをおすすめします。
たきざわ法律事務所では薬機法にまつわるご相談への対応経験が豊富であり、お困りの内容に応じて最適なサポートを提案しています。薬機法違反を避けたい事業者様は、たきざわ法律事務所までお気軽にご相談ください。