X(旧Twitter)で誹謗中傷されたら?法的措置の内容や対応手順を弁護士がわかりやすく解説
X(旧Twitter)はしばしば、誹謗中傷の舞台となります。自身が誹謗中傷を受けたり、他者が誹謗中傷を受けている投稿を目撃したりした経験のある人も少なくないでしょう。
では、X(旧Twitter)で誹謗中傷の被害に遭ったら、どのように対応すればよいのでしょうか?また、X(旧Twitter)での誹謗中傷に対しては、どのような法的措置がとり得るのでしょうか?
今回は、X(旧Twitter)での誹謗中傷についてくわしく解説します。なお、Twitterは2023年7月に「X」へと名称が変更されていますが、この記事では読みやすさを重視して、以後の本文では「Twitter」と表記します。
目次
X(旧Twitter)での誹謗中傷にとり得る法的措置のメニュー
はじめに、Twitterでなされた誹謗中傷に対してとり得る法的措置をまとめて紹介します。
削除請求
1つ目は、削除請求です。
削除請求とは、Twitterになされた投稿を削除するよう、Twitter運営社に対して求めることです。投稿された誹謗中傷の内容によっては、その投稿が他者の目に触れる機会をできるだけ減らしたいと考えるでしょう。その際は、削除請求が選択肢の一つとなります。
削除請求は、原則としてTwitter上に設置されたフォームから行います。Twitter運営社が投稿の内容を確認し、削除ポリシーに沿って削除するか否かを判断します。Twitterから削除請求をしても削除に応じてもらえない場合には、裁判所に削除の仮処分を申し立てます。
発信者情報開示請求
2つ目は、発信者情報開示請求です。
発信者情報開示請求とは、投稿者の情報を開示するようTwitterなどに求めることです。発信者情報開示請求はこれだけで完結するものではなく、次で解説する損害賠償請求や刑事告訴の前段階として行うものです。
Twitterが舞台となった誹謗中傷では、相手が誰であるのか分からないことが少なくありません。しかし、相手が誰か分からなければ、損害賠償請求や刑事告訴が困難です。そこで、これらの法的措置をとる前に、発信者情報開示請求をして投稿者を特定するステップを踏みます。
発信者情報開示請求は、次の2段階で行うことが原則です。
- Twitter運営社に対して、投稿のIPアドレスやタイムスタンプの情報開示を請求する
- 1で開示された情報をもとに、投稿者が接続に使ったプロバイダ(KDDIやSoftbankなど)に対して、契約者の住所や氏名などの情報開示を請求する
とはいえ、Twitter運営社や接続プロバイダに対して直接開示を求めても、開示を受けられる可能性はほとんどありません。そこで、裁判上の手続きで開示を求めることとなります。
なお、2022年10月に施行された改正プロバイダ制限責任法により、1と2の手続きをまとめて行える「発信者情報開示命令」が創設されました。これにより、手続きの負担軽減と時間の短縮が期待されます。
しかし、発信者情報開示命令は万能ではなく、従来の発信者情報開示請求が適切な場合もあります。いずれの措置が適しているかは状況によって異なるため、弁護士へ相談したうえで適した手続きを選択してください。
損害賠償請求
3つ目は、損害賠償請求です。
損害賠償請求とは、相手の不法行為(Twitterへの誹謗中傷投稿)によって生じた損害を金銭で支払うよう、相手に対して求めることです。誹謗中傷で認められる損害賠償請求は具体的な損害などによって異なるため、一律に金額が決まっているものではありません。
一般的には、一個人への誹謗中傷よりも、店舗や医院、著名人などへの誹謗中傷で営業上の損害が生じた場合の方が、損害賠償の適正額が高額となる傾向にあります。
刑事告訴
4つ目は、刑事告訴です。
刑事告訴とは、警察などの捜査機関に対して犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める意思表示です。Twitterでの誹謗中傷は、刑法上の次の罪などに該当する可能性があります。
名誉毀損罪(刑法230条)
侮辱罪(同231条)
信用毀損及び業務妨害罪(同233条)
脅迫罪(同222条)
これらのうち、名誉毀損罪と侮辱罪は親告罪であり、被害者からの告訴がなければ犯人を起訴すること(刑事裁判にかけること)ができません。また、他の罪に該当し得る場合でも、よほど過激な投稿などでない限り、捜査機関が独自に捜査し起訴する可能性は低いでしょう。
そのため、犯人の処罰を求めたい場合は、原則として刑事告訴が必要です。
X(旧Twitter)で誹謗中傷された場合の対応手順
Twitterで誹謗中傷されたら、どのような手順で対応すればよいのでしょうか?ここでは、一般的な対応手順について解説します。
X(旧Twitter)で誹謗中傷をされた証拠を残す
Twitterで誹謗中傷されていることに気付いたら、その場ですぐに証拠を残します。なぜなら、証拠を保全しないうちに投稿が消えてしまえば、誹謗中傷の証拠がなくなり法的措置が困難となるためです。
Twitterでの誹謗中傷の証拠は、スクリーンショットの撮影で残すことが一般的です。スクリーンショットは、次の情報などが掲載されるように撮影してください。
誹謗中傷投稿の内容
誹謗中傷投稿と関連する前後の投稿
誹謗中傷投稿がされた日時
誹謗中傷投稿の固有URL
なお、スマートフォンからの撮影ではURLが不完全となりやすいため、パソコンからの撮影をおすすめします。
誹謗中傷問題に強い弁護士に相談する
Twitterでの誹謗中傷の証拠を残したら、誹謗中傷問題に強い弁護士にできるだけ早く相談してください。早期の相談をおすすめしているのは、Twitterやプロバイダでのログの保存期間は3か月から6か月程度とされており、この期間内に手続きをする必要があるためです。
ログが消えてしまうと、発信者情報の開示を受けることはできなくなります。
法的措置のメニューを検討する
弁護士へ相談したうえで、具体的な法的措置のメニューを検討します。たとえば、発信者情報開示請求をしたうえで損害賠償請求だけをするのか、損害賠償請求と刑事告訴を両方行うのかなどです。
発信者情報開示請求をする
次に、発信者情報開示請求を行います。投稿者が特定できるまでには、数か月程度を要することが一般的です。具体的なスケジュールについては、依頼先の弁護士へご確認ください。
(民事上の責任を問う場合)損害賠償請求をする
民事上の責任を問う場合、投稿者が特定できたら、損害賠償請求を行います。
損害賠償請求はいきなり裁判を申し立てるのではなく、まずは弁護士から内容証明郵便を送るなどして行うことが一般的です。この時点で相手が謝罪し、請求額を支払った場合は示談の成立となります。
一方、相手が請求を無視したり開き直った態度を見せるなど不誠実な態度を取ったりする場合は、裁判上での損害賠償請求へと移行します。裁判で損害賠償請求額が確定したにも関わらず相手方がこれを期限までに支払わなかった場合は、強制執行が可能となります。
(刑事上の責任を問う場合)刑事告訴をする
刑事上の責任を問う場合、投稿者が特定できたら、刑事告訴を行います。
刑事告訴が受理されると、必要に応じて犯人が逮捕されます。その後は、警察や検察で事件が捜査され、起訴か不起訴(刑事裁判にかけないことであり、事実上の無罪放免)かが決まります。
起訴されると刑事裁判が開始され、有罪・無罪や具体的な量刑などが決まるという流れです。
X(旧Twitter)で誹謗中傷された場合に避けるべき対応
Twitterで誹謗中傷された場合、避けた方がよい対応も存在します。ここでは、Twitterで誹謗中傷の被害に遭った場合に避けるべき対応を5つ解説します。
相手に直接言い返す
Twitterで誹謗中傷された場合、相手に直接言い返すことはおすすめできません。直接言い返せば火に油を注いだ状態となり、誹謗中傷がエスカレートするおそれがあるためです。
相手の悪口を書き込む
Twitterで誹謗中傷された場合、相手の悪口を書き込むことはおすすめできません。相手の悪口を書くなどの「仕返し」をしてしまえば、法的措置をとるにあたって不利となる可能性があるためです。また、相手方から損害賠償請求や刑事告訴などの法的措置をとられるおそれも生じます。
焦って削除請求をする
Twitterで誹謗中傷された場合、焦って削除請求をすることはおすすめできません。削除請求が認められて問題の投稿が消えてしまうと、誹謗中傷の証拠がなくなってしまうためです。
削除請求をする場合は、スクリーンショットで投稿の証拠を残し、証拠に漏れがないことを弁護士に確認してもらったうえで行ってください。
対応に長期間悩む
Twitterで誹謗中傷された場合、対応に長期間悩むことはおすすめできません。先ほど解説したように、ログは永久に保存されるわけではなく、一定の期間が経過すると消えてしまうためです。
ログが消えてしまうと、発信者情報開示請求をしても相手を特定することはできなくなります。Twitterでの誹謗中傷への法的措置は、時間との勝負でもあると知っておきましょう。
自分で対応しようとして長時間調べる
Twitterで誹謗中傷された場合、何とか自分で対応しようとして発信者情報開示請求などの方法を長時間自分で調べることはおすすめできません。
発信者情報開示請求は、所定の様式を形式的に埋めれば良いようなものではありません。申立てをして開示が相当であると認めてもらうためには、法律や裁判手続きに関する正しい理解が不可欠です。
無理に自分で対応しようとした結果、開示が認められなかったりログの保存期間を過ぎてしまったりすれば、本末転倒でしょう。
X(旧Twitter)で誹謗中傷された場合の対応ポイント
最後に、Twitterで誹謗中傷された場合の対応のポイントを、2つ解説します。
できるだけ早期に取り掛かる
1つ目は、Twitterで誹謗中傷をされたらできるだけ早期に対応にとりかかることです。
繰り返しお伝えしているとおり、Twitterでなされた誹謗中傷への法的措置は、時間との勝負であるといっても過言ではありません。ログの保存期間内に発信者の情報開示が相当であると裁判所に判断されるか、裁判所からログの消去禁止命令を出してもらうかしなければ、投稿者の特定が困難となります。
そのため、誹謗中傷されていることに気付いたら、その日や翌日には弁護士にコンタクトをとるなど速やかに対応してください。
まずは弁護士に相談する
2つ目は、1人で長期間悩むのではなく、まずは弁護士へ相談することです。
誹謗中傷をされた場合、その内容で法的措置が可能かどうか、そのケースでどの程度の損害賠償請求が可能なのかなど、わからないことが少なくないと思います。
これを自分で調べようにも、答えが出ないことが少なくありません。悩んでいるうちに時間が経過し、ログ保存期間内の対応が困難となる事態は避けたいことでしょう。
誹謗中傷への法的措置の可否などを、自分で判断することは困難です。そのため、最終的に法的措置をとる・とらない、その弁護士に対応を依頼する・しないに関わらず、まずは弁護士へ相談することをおすすめします。
弁護士へ相談することでそのケースにおける法的措置の可否などが想定でき、今後の見通しが立てやすくなります。
まとめ
Twitterで誹謗中傷された場合にとり得る法的措置の内容や、対応の流れなどを解説しました。
Twitterでの誹謗中傷には、損害賠償請求や刑事告訴などの法的措置が検討できます。また、投稿者を特定するため、これらに先立って発信者情報開示請求をすることが原則です。
Twitterで誹謗中傷の被害に遭ったら、できるだけ早期に弁護士へご相談ください。弁護士へ相談することで、その状況での法的措置の可否など、今後の見通しが立てやすくなります。
たきざわ法律事務所ではインターネット上での誹謗中傷トラブルへの法的措置に力を入れております。個人様はもちろん、医院や歯科などへの誹謗中傷に関して多くの解決実績があります。
Twitterで誹謗中傷をされてお困りの際は、たきざわ法律事務所まで、まずはお気軽にご相談ください。