【2025】私道掘削の承諾トラブルの回避方法は?弁護士がわかりやすく解説
建物の新築などにあたっては、水道管やガス管などのインフラの引き込みが必要となります。インフラ引き込みでは土地の掘削工事が必要となることが多く、配管の位置や道路の権利関係によっては、他者が所有する私道を掘削すべき場合も生じます。この場合、私道の掘削承諾に関して、トラブルとなる可能性があります。
では、私道の掘削承諾にまつわるトラブルとは、どのようなトラブルなのでしょうか?また、私道の掘削承諾に関してトラブルが生じた場合、どのように対処すれば良いのでしょうか?今回は、2023年4月に施行された民法改正を踏まえ、私道の掘削承諾トラブルの概要やトラブル発生時の対処法、トラブルの予防策などについて弁護士がくわしく解説します。
なお、当事務所(たきざわ法律事務所)は不動産法務に強みを有しており、私道掘削承諾にまつわるトラブルについても豊富な解決実績を有しています。私道の掘削承諾トラブルでお困りの際は、たきざわ法律事務所までお気軽にご相談ください。
目次
そもそも「私道」とは?
そもそも、「私道」とはどのような道を指すのでしょうか?まずは、公道と私道それぞれの概要を解説します。
公道とは
公道とは、国や都道府県、市区町村などが所有する道路のことです。公道の管理や補修などは、所有者である都道府県などが行います。
公道であるか私道であるかは現地を見ただけで分かるものではないものの、多くの車が往来する幹線道路や多くの人が通行する道路などは公道である可能性が高いでしょう。
私道とは
私道とは、一般個人や民間企業などが所有者である道のことです。管理や修繕なども、原則としてその所有者である私人が行います。
私道には、登記上は道路がパズルのように切り分けられおり、それぞれをその道沿いの土地の所有者が単独で所有する「相互持合型」と、私道全体をその道沿いの土地の所有者が共有する「共同所有型」が存在します。
先ほど解説したように、現地を見ただけで私道であるか公道であるかを判断するのは困難です。しかし、奥が行き止まりになっておりその道の両端に家を建てている数軒の家の住人しか使わない道路や、「コ」の字型になっておりその道沿いに家を建てている人しか使わないような道路であれば、私道である可能性があるでしょう。
自身の所有する土地であれば、自身がその土地の上にプランターを置いたり、通行止めにしたりすることなども自由であるはずです。しかし、私道の場合には、必ずしも所有者が自由に処分したり通行止めにしたりできるとは限りません。建築基準法の規定により、建物を建てる際には原則として敷地が幅4m以上の道路に2m以上接している必要があり、私道によってこの要件を満たす場合にはその私道が「位置指定道路」に指定されます。この位置指定道路である場合には、たとえ私道であっても無断で通行止めにすることなどはできません。
その一方で、他者が自由に通行できる位置指定道路であっても掘削までが自由なわけではなく、掘削をするには他の私道と同じく、私道所有者に通知などをする必要があります。
私道の掘削承諾トラブルとは?
民法改正前
2023年4月、民法の改正法が施行されました。
インフラ引き込みのための掘削について民法に特に規定はなく、他者の財産である私道を掘削する以上は、承諾が得られなければ掘削が困難とされていました。そのため、私道の所有者から掘削の承諾を得られないトラブルや、承諾と引き換えに高額な掘削料の支払いを求められるトラブルが散見されました。
民法改正後
改正後の民法には、ガスや水道などのインフラを引き込む目的で他者の土地を使用する権利が明文化されました(民法213条の2)。そのため、改正後はインフラ引き込みのための私道掘削について、所有者の承諾を得る必要はありません。
ただし、その場所や方法は私道所有者にとってもっとも損害が少ないものを選ぶ必要があるほか、設置の目的や方法、日時などを私道所有者などに通知する必要があります。また、他者の土地に設備を設置する場合には必要に応じて償金を支払わなければなりません。
そこで、償金支払いの有無や金額について私道所有者と合意ができず、トラブルに発展する可能性があります。
私道の掘削承諾トラブルを回避するポイント
私道の掘削承諾にまつわるトラブルに巻き込まれる事態は、誰しも避けたいことかと思います。ここでは、私道の掘削承諾にまつわるトラブルを回避するポイントを3つ解説します。
- 土地の購入前にインフラ引き込みで掘削を要する道路の権利関係を確認する
- 土地の売買契約締結前に私道掘削の承諾を取り付ける
- 民法改正後も無断での掘削は避ける
土地の購入前にインフラ引き込みで掘削を要する道路の権利関係を確認する
1つ目は、土地を購入する前に、インフラ引き込みにあたって掘削が必要となる道路の所有者を確認しておくことです。
掘削が必要となる土地が公道である場合、このようなトラブルは生じません。一方で、私道である場合、少なくとも掘削にあたって通知などが必要となるためです。
道路の所有者は、その道路の全部事項証明書(登記簿謄本)を法務局で取得することで分かります。全部事項証明書にはその土地の所有者が掲載されており、この欄に「〇〇県」や「〇〇市」などと記載があれば公道である一方で、所有者欄に個人名や民間企業名が記載されていれば、私道であるということです。なお、公道(国道)の場合には、そもそも登記自体がない場合もあります。
土地の売買契約締結前に私道掘削の承諾を取り付ける
2つ目は、土地の売買契約を締結する前に、私道所有者から掘削の承諾を取り付けておくことです。
全部事項証明書を確認した結果、掘削が必要な道路が私道であることがわかったら、その土地を購入する前に掘削の承諾を取り付けることをおすすめします。この段階でスムーズに承諾を取り付けられない場合は、その土地を購入したところでトラブルに発展するのが目に見えるためです。この場合には、土地の購入を見送ることを含めて検討すべきでしょう。
民法改正後も無断での掘削は避ける
3つ目は、民法の改正後も無断での掘削は避けることです。
先ほど解説したように、民法改正後は承諾ではなく「通知」でよいこととされました。しかし、改正後も、可能な限り事前に承諾を得ることをおすすめします。なぜなら、私道所有者が必ずしも民法改正を理解しているとは限らず、「〇月〇日に掘削します」と一方的に通知すれば相手の怒りを買ってしまい、今後の近所付き合いに支障が出るおそれがあるためです。
また、相手の反感を買えば高額な償金を請求され、トラブルに発展しかねません。そのため、通知だけで済ませるのは最終手段であると考え、可能な限り事前の承諾を試み、相手の都合にも配慮したうえで掘削日などを検討すると良いでしょう。

私道の掘削承諾トラブルが生じた場合の対応
私道の掘削承諾に関してトラブルが生じてしまった場合、どのように対処すれば良いのでしょうか?ここでは、基本の対処方法を順を追って解説します。
- 弁護士に相談する
- 補償金額を提示して当事者間で話し合う
- 弁護士が代理で交渉する
- 掘削の通知をした記録を残して掘削を行う
弁護士に相談する
私道の掘削承諾に関してトラブルが生じたら、まずは不動産法務に強い弁護士へ相談することをおすすめします。弁護士へ相談することで、そのケースにおける具体的な対処法やそのケースにおける適正な賞金額などについてアドバイスが受けられ、その後の対応の見通しが立てられるためです。
私道の掘削承諾トラブルにくわしい弁護士をお探しの際は、たきざわ法律事務所までお気軽にご相談ください。たきざわ法律事務所は不動産法務に力を入れており、指導の掘削承諾トラブルについても豊富な解決実績を有しています。
補償金額を提示して当事者間で話し合う
弁護士へ相談したうえで、そのケースにおいて相当であると考える償金の額を提示して、当事者間で話し合います。
弁護士が代理で交渉することもできるものの、私道の所有者は近隣に住んでいる人であることも多く、できるだけ穏便に解決したい場合も多いでしょう。そのため、相手がすでに弁護士を立てている場合や交渉に身の危険を感じる場合など一定のケースを除き、まずは当事者間で交渉することをおすすめします。
弁護士が代理で交渉する
当事者間で交渉をしても解決に至らない場合には、弁護士が代理で交渉をしたり、改正により本来は通知のみでよくなったことなどを説明したりします。これにより、相手の態度が軟化すれば、掘削の承諾を取り付けて償金を支払います。
掘削の通知をした記録を残して掘削を行う
弁護士が代理で交渉をしてもなお理解が得られない場合には、改正後の民法の規定に従って相手に通知を行い、通知した方法や日時において私道の掘削を実行します。本来は承諾を得る必要はなく、必要な通知のみをすれば掘削ができるためです。
なお、償金の支払いが必要となりそうであるものの適正金が気に関する意見の食い違いなどから相手方が受領を拒否する場合には、適正であると考える金額を法務局に供託することが検討できます。
私道の掘削承諾トラブルでお困りの際はたきざわ法律事務所へご相談ください
私道の掘削承諾トラブルでお困りの際は、たきざわ法律事務所までご相談ください。最後に、当事務所の主な特長を4つ紹介します。
- 不動産法務に強い
- フットワークが軽い
- 難しい言葉を使わない
- 状況に応じた最適な解決策を提案する
不動産法務に強い
たきざわ法律事務所は不動産法務に力を入れており、多くの不動産オーナー様からご相談・ご依頼いただいています。私道の掘削承諾にまつわるトラブルについても豊富な解決実績を有しているため、安心してお任せいただけます。
フットワークが軽い
たきざわ法律事務所の弁護士は比較的年齢が若いこともあり、フットワークの軽さを自負しています。「夜しか相談できない」「できるだけすぐに相談したい」などのご要望にも可能な限りお応えするため、ご希望がある際はお気軽にお伝えください。
難しい言葉を使わない
弁護士へ相談する際、「難しい言葉を並べられて、理解できないかもしれない」と不安に感じる場合もあるようです。たきざわ法律事務所はできるだけ難しい言葉を使わずにサポートするため、そのような心配は要りません。
状況に応じた最適な解決策を提案する
私道の掘削承諾トラブルの最適な解決策は、状況によって異なります。たきざわ法律事務所は決まった型に当てはめて解決をはかるのではなく、1件1件の状況やクライアント様のご希望と真摯に向き合い、そのケースにおける最適な解決策を提案します。
その結果、多くのご相談者様・ご依頼者様から、「相談してよかった」「依頼してよかった」との有り難い声をいただいています。
まとめ
民法改正前後における私道の掘削承諾トラブルについて概要を紹介するとともに、私道掘削承諾トラブルを回避する対策や指導の掘削承諾でトラブルに発展した場合の対応などを解説しました。
2023年4月に施行された改正民法により、インフラ引き込みのための私道掘削が権利であることが明文化されました。改正後は、インフラを引き込むための掘削について私道所有者に承諾を得る必要はなくなり、事前の通知だけでよいこととされています。
しかし、私道所有者が民法の改正内容を理解しているとは限らないため、無用なトラブルを避けるためには、民法改正後であっても可能な限り承諾を取り付けた方が良いでしょう。私道所有者は近隣に居住していることも多く、丁寧に承諾を得ることで良好な近隣関係を築きやすくなります。
一方で、私道掘削の承諾に関してトラブルが生じた際には、早期に弁護士へ相談するのがおすすめです。弁護士へ相談することで、そのケースにおける償金の要否や適正額、その後の対応の進め方などが把握でき、対応方針を定めやすくなります。
たきざわ法律事務所は不動産法務に力を入れており、私道の掘削承諾トラブルについても豊富な解決実績を有しています。指導の掘削承諾に関してトラブルが生じてお困りの際は、たきざわ法律事務所までお気軽にご相談ください。


