夫の不倫による「慰謝料」の相場はいくら?金額を決める主な要素を弁護士が解説
夫に不倫をされた場合、夫や不倫相手への慰謝料請求が可能です。
夫の不倫によって認められる慰謝料は、どの程度の金額なのでしょうか?また、不倫慰謝料の額はどのような要素に左右されるのでしょうか?
今回は、夫に不倫をされた場合の慰謝料請求について、弁護士がくわしく解説します。
目次
夫の不倫による慰謝料額の目安
慰謝料とは、相手の不法行為によって生じた精神的苦痛を慰謝するために請求する金銭です。夫の不倫による慰謝料に決まった相場はなく、算定方法などが法令で明確に定められているものでもありません。一般的には、50万から300万円程度となることが多いでしょう。
ただし、不倫による慰謝料の額は、後ほど解説するとおり、さまざまな要素によって変動し得るものです。実際のケースにおける具体的な慰謝料の適正額を知りたい場合には、弁護士へご相談ください。
夫の不倫で慰謝料請求をする流れ
不倫をした夫に対して慰謝料請求をする場合、どのような流れとなるのでしょうか?ここでは、慰謝料請求の一般的な流れを解説します。
不倫の証拠を確保する
はじめに、不倫の証拠を確保します。いくら疑わしかったとしても確実な証拠がなければ、夫が不倫を否定した場合に慰謝料請求が困難となるためです。
慰謝料を請求できるのは、基本的に不貞行為(性的関係を伴う不倫)の場合です。
そのため、路上で手をつないでいる写真や、2人で食事をしている写真などだけでは、十分な証拠とはいえません。性的関係があることを示すLINEのやり取りやラブホテルに出入りする写真などがあるとより確実でしょう。証拠の確保についてお困りの際は、弁護士へご相談ください。
弁護士へ相談する
証拠の確保と並行して、弁護士へ相談します。弁護士にはそれぞれ得意とする分野があるため、夫婦問題や男女トラブルに強い弁護士を選んで相談するとよいでしょう。
弁護士へ相談することで、具体的にどのように請求や交渉を進めるべきかが理解しやすくなります。また、そのケースにおける適正な慰謝料額も、把握しやすくなります。
さらに、対応を依頼した場合には夫との交渉や裁判手続きなども代理してもらえるため、安心です。
夫や不倫相手に直接慰謝料を請求する
弁護士との打ち合わせ内容を踏まえ、夫や不倫相手に慰謝料を請求します。この時点で相手が請求に応じれば、裁判所の関与を受けるまでもなく解決となります。
なお、妻からの請求に応じない場合であっても、弁護士が代理で請求することで支払いに応じる可能性があります。なぜなら、弁護士から請求することは請求に応じなければ調停や訴訟に移行するとのメッセージともなり、相手方が調停などへの移行を避けたいと考える場合には、弁護士からの請求に応じることとなるためです。
調停で慰謝料を請求する
慰謝料請求に応じない場合には、調停での解決をはかることができます(なお、調停をやらずに訴訟をすることも可能です)。
調停とは、調停委員の立会いのもと、家庭裁判所で行う話し合いです。話し合いといっても、相手方と顔を合わせて直接意見をぶつけ合うものではありません。調停委員が双方から交互に意見を聞き意見を調整する形で、話し合いが進行します。
調停が1回の期日だけで終わることは稀であり、1ヶ月スパンで数回の期日が開かれることが一般的です。調停を経るなかで双方の意見がまとまれば、その時点で調停が終結します。
反対に、これ以上調停を続けても合意が得られる見込みがないと判断された場合にも調停は終結し、訴訟での解決へ移行することとなります。
訴訟で慰謝料を請求する
当事者間で協議が出来ない場合や、調停で合意が得られない場合、訴訟で裁判所が慰謝料の可否や金額を決定します。
判決が下ったら、判決の送達から2週間以内に限り控訴が可能です。この控訴可能期間内に両当事者がいずれも控訴しなければ、その時点で判決が確定します。
なお、夫側が慰謝料を支払うべきとの判決が出たにもかかわらず期限までに慰謝料が支払われない場合は、強制執行の対象となります。
夫の不倫による慰謝料額を左右する主な要素
夫の不倫による慰謝料額は、一律ではありません。では、不倫の慰謝料額はどのような要素に左右されるのでしょうか?ここでは、夫の不倫による慰謝料額を左右する主な要素について、概要を解説します。
不倫が原因で離婚に至ったか否か
1つ目は、夫の不倫が原因で離婚に至ったか否かです。
一般的には、離婚に至らなかった場合と比較して、離婚に至った場合のほうが慰謝料が高くなる傾向にあります。
夫の不倫以前の夫婦関係
2つ目は、夫の不倫以前の夫婦関係です。
これまでの夫婦関係が良好であった方がこれを破綻させた責任が重いと考えられ、不倫による慰謝料が高くなる傾向にあります。反対に、夫が不倫をする以前から夫婦関係が破綻していた場合には、慰謝料請求ができない可能性があります。
婚姻期間の長さ
3つ目は、婚姻期間の長さです。
夫婦の婚姻期間が長かった方が、慰謝料が高額となる傾向にあります。これまで積み上げてきた長年の信頼関係を破壊した場合、より責任が重いと考えられるためです。
不倫の回数・期間
4つ目は、不倫の回数や期間です。
不倫の期間が長く回数も多い方が、慰謝料が高くなる傾向にあります。長期に及ぶ頻繁な不倫行為は、より悪質性が高いと考えられるためです。
夫婦間の子どもの有無
5つ目は、夫婦間の子どもの有無です。
子どもがいない場合と比較して、未成年の子どもがいる方が慰謝料が高くなる傾向にあります。未成年の子どもがいる状態で夫婦関係を破綻させた責任は、より重いと考えられるためです。
夫の不倫で慰謝料請求をする際の注意点
夫の不倫で慰謝料請求をする際は、どのような点に注意する必要があるのでしょうか?ここでは、主な注意点を3つ紹介します。
不倫の慰謝料請求には証拠が必要である
先ほども触れたように、不倫を理由として慰謝料請求をするには、不倫(不貞行為)の証拠が必要です。証拠が乏しいと、夫が不倫を否定した場合に、裁判での慰謝料請求が認められる可能性が低くなるためです。
そのため、妻が不倫に気付いていることを夫に悟られる前に、証拠を集めておくことをおすすめします。不倫に気付いていることを悟られれば夫側が警戒し、不倫の証拠を集めづらくなるかもしれません。
慰謝料額は年収に比例しない
夫の年収が高い場合、不倫によって請求できる慰謝料も高くなると考えるかもしれません。
しかし、不倫の慰謝料は夫側の年収で決まるわけではありません。先ほど解説したように、夫の年収よりも、不倫の期間や回数、婚姻期間の長さなどの悪質性のほうが重視される傾向にあります。
とはいえ、実際には夫の年収が高い場合、交渉段階で高額な慰謝料請求に応じてもらえる可能性もあるでしょう。調停や訴訟となれば、平日の日中に多くの時間を割く必要が生じます。これを避けるため、妻側の言い値で請求に応じる可能性があるためです。
具体的な請求額や交渉の進め方は状況によって異なるため、あらかじめ弁護士へご相談ください。
慰謝料請求には時効がある
不倫の慰謝料請求には、時効があります。不倫の慰謝料請求の時効は、不倫の事実および不倫相手を知ってから3年、不倫行為があった時点から20年です。時効を過ぎると原則として慰謝料請求ができなくなるため、慰謝料請求は早めに取り掛かることをおすすめします。
離婚に至った場合に慰謝料のほかに請求し得る金銭
夫の不倫が原因で離婚に至った場合、慰謝料のほかにどのような金銭が請求できるのでしょうか?ここでは、夫側に請求し得る主な金銭を紹介します。実際に離婚をする際は、必要な請求を漏らさないようあらかじめ弁護士へご相談ください。
財産分与
1つ目は、財産分与です。財産分与とは、離婚に伴い、婚姻期間中に夫婦の協力で積み上がった夫婦の潜在的な共有財産を原則として2分の1ずつ清算することです。
たとえば、夫がメインで外部からの収入を得ており、妻が長年専業主婦であった場合、家の財産のほとんどが夫名義であることも少なくないでしょう。このような場合に、原則として夫の財産の2分の1相当額について妻が分与を受けることが可能です。
ただし、財産分与の対象となるのは婚姻期間中に積み上がったものだけであり、婚姻前から有していた財産は対象となりません。また、夫婦の協力で得た財産が対象となるため、たとえば夫や妻が父母などからの相続で受け取った財産なども対象外です。
なお、財産分与は不倫のペナルティではありません。そのため、妻の方が収入が多かった場合などには、妻から夫に財産分与をすべき場合もあり得ます。
養育費
2つ目は、養育費です。養育費とは、未成年の子どもの監護や教育に要する費用です。
未成年の子どもがいる状態で離婚をした場合、親権者とならなかった側の親が親権者となった側の親に対して、定期的に養育費を支払うこととなります。
養育費の目安額は、子どもの人数や双方の年収によって算定できます。お困りの際は、弁護士へご相談ください。
なお、養育費も不倫のペナルティではありません。そのため、仮に夫が親権者となった場合には、妻から夫へ定期的に養育費を支払うこととなります。
別居から離婚成立までの期間の婚姻費用
3つ目は、別居から離婚が成立するまでの間の婚姻費用です。
夫婦には相互に扶助義務(お互いに生活を支え合う義務)があり、配偶者には自身と同じ生活水準を維持させる必要があります。そのため、夫の不倫が発覚し正式に離婚が成立するまで別居していた場合には、収入の多い側からもう一方に対して、別居期間中の婚姻費用(婚姻生活を維持するための生活費)を支払う必要があります。
なお、婚姻費用が請求できるのは夫婦である期間のみであり、正式に離婚が成立すれば以後は請求できません。そのため、仮に妻側の収入が乏しく今後の生活に不安がある場合には、離婚をした夫と当面の間は離婚せず、別居して婚姻費用を受け取り続けることも有力な選択肢となります。
夫も不倫で慰謝料請求をご検討の際はたきざわ法律事務所へご相談ください
夫に不倫され慰謝料請求をご検討の際には、たきざわ法律事務所へご相談ください。最後に、たきざわ法律事務所の主な特長を3つ紹介します。
難しい言葉を使わずアドバイスする
たきざわ法律事務所は、できるだけ難しい言葉を使うことなくアドバイスを行います。そのため、「相談したけど、難しい用語を並べられて理解できなかった」という事態を避けることが可能です。
状況に応じて最適な解決策を提案する
夫に不倫をされた場合、妻にとって最良の選択は、妻が「どうしたいのか」という想いや収入などの状況によって異なります。
離婚をして慰謝料請求をすることが得策である場合もあれば、別居をして婚姻費用を請求し続けるほうが得策である場合もあるでしょう。たきざわ法律事務所ではご相談者様の想いや状況に寄り添い、最適な解決策をご提案します。
フットワークの軽さを自負している
たきざわ法律事務所では、フットワークの軽さを自負しています。
夫の不倫にまつわるご相談では、相談できる時間が限られることも多いでしょう。「急いで相談したい」「夜間しか相談できない」などできる限りご要望に応じますので、ご希望がある際はお気軽にお申し出ください。
まとめ
夫に不倫をされた場合の慰謝料請求について解説しました。
夫に不倫をされた場合、夫や不倫相手への慰謝料請求が検討できます。ただし、慰謝料請求を成功させるには、不貞行為に関する証拠がなければなりません。また、慰謝料の額は夫の年収に比例するわけではないことにも、注意が必要です。
夫の不倫に気付いた際、その場の勢いで慰謝料請求や離婚を突きつければ、準備不足から後悔する事態となりかねません。夫の不倫に気付いたら、不倫に気付いていることを夫側に悟られないよう注意しつつ、まずは弁護士へ相談することをおすすめします。
たきざわ法律事務所では男女トラブルの解決に力を入れており、夫に不倫による慰謝料請求についても多くのサポート実績があります。夫に不倫され慰謝料請求をご検討の際は、たきざわ法律事務所までお気軽にご相談ください。