たきざわ法律事務所

不動産特定共同事業法を活用した不動産クラウドファンディングのスキームを解説

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不動産特定共同事業法とは、不動産クラウドファンディングなどに代表される「不動産特定共同事業」の健全な発展と投資家保護を主な目的とした法律です。

法律自体は1994年(平成6年)に制定されているものの、2017年(平成29年)と2019年(平成31年)の改正によって不動産クラウドファンディングへの参入ハードルが下がっています。

 

今回は、不動産特定共同事業法にもとづく不動産クラウドファンディングや小規模不動産特定共同事業の概要やスキームについて詳しく解説します。

 

不動産共同事業法とは

 

不動産共同事業法の改正により、不動産クラウドファンディングがより組成しやすくなっています。

はじめに、不動産共同事業法の概要について解説します。

 

不動産共同事業法の概要

 

不動産共同事業法とは、「不動産特定共同事業を営む者について許可等の制度を実施して、その業務の遂行に当たっての責務等を明らかにし、及び事業参加者が受けることのある損害を防止するため必要な措置を講ずることにより、その業務の適正な運営を確保し、もって事業参加者の利益の保護を図るとともに、不動産特定共同事業の健全な発達に寄与することを目的」とする法律です(不動産特定共同事業法1条)。

 

目的規定は長いですが、「不動産特定共同事業の健全な発達」と「事業参加者(投資家)の利益を図ること」の2点が主な目的です。

不動産特定共同事業とは

不動産共同事業法の規制対象となるのは、「不動産特定共同事業を営む者」です。

では、不動産特定共同事業とはどのようなものを指すのでしょうか?

不動産特定共同事業とは、次のいずれかに該当する行為を業として行うものを指します(同2条4項)。

 

なお、それぞれの事業を営むためには許可を受ける必要があり、許可を受けるには資本金などの要件を満たさなければなりません。

 

事業内容 必要な資本金
第1号事業者 「不動産特定共同事業契約」を締結し、契約に基づいて運営される不動産取引から得られる利益等の分配を行う事業 1億円
第2号事業者 「不動産特定共同事業契約」締結の代理または媒介をする事業 1,000万円
第3号事業者 特例事業者の委託を受け、「不動産特定共同事業契約」に基づいて運営される不動産取引に係る業務を行う事業 5,000万円
第4号事業者 特例事業者が当事者となる「不動産特定共同事業契約」締結の代理・媒介をする事業者 1,000万円

 

なお、これらの他に、後ほど解説する「小規模不動産特定共同事業」があります。

小規模不動産特定共同事業は、許可ではなく登録の対象です。

 

不動産特定共同事業契約とは

 

先ほど解説したように、「不動産特定共同事業契約」によって得た収益などを分配したり契約を代理したりする不動産特定共同事業が、不動産共同事業法による規制対象です。

では、不動産特定共同事業契約とはどのような契約を指すのでしょうか?

 

不動産特定共同事業契約とは、次の契約などのうち一定のものを指します(同2条3項)。

 

  • 当事者が出資を行い、その出資による共同の事業としてそのうちの1人または数人の者にその業務の執行を委任して不動産取引を営み、当該不動産取引から生ずる収益の分配を行うことを約する契約(いわゆる「任意組合型」)

  • 当事者の一方が相手方の行う不動産取引のため出資を行い、相手方がその出資された財産により不動産取引を営み、当該不動産取引から生ずる利益の分配を行うことを約する契約(いわゆる「匿名組合型」)

  • 当事者の一方が相手方の行う不動産取引のため自らの共有に属する不動産の賃貸をし、またはその賃貸の委任をし、相手方が当該不動産により不動産取引を営み、当該不動産取引から生ずる収益の分配を行うことを約する契約(いわゆる「賃貸委任契約型」)

  • 外国の法令に基づく契約であって、1から3に相当するもの

  • その他不動産取引から生ずる収益または利益の分配を行うことを約する契約であって一定のもの

 

つまり、出資者から出資をうけてそのお金で不動産取引(売却や賃貸など)を行い、これで得た収益を分配する旨の契約が不動産特定事業契約です。

 

不動産共同事業法と不動産クラウドファンディングの関係

 

クラウドファンディングとは、インターネット上で一般個人から比較的少額な資金を集め、これを元手に事業を実施するスキームです。

そして、不動産クラウドファンディングとは、集めた資金の投資対象が不動産であるクラウドファンディングを指します。

 

不動産クラウドファンディングが成功すれば、事業者はまとまった自己資金がなくとも思い切った不動産投資が可能となります。

一方、個人投資家は一般の不動産投資と異なり何千万円もの資金を投じることなく不動産への投資が可能となり、収益の分配を得ることが可能です。

 

この不動産クラウドファンディングは、不動産共同事業法によって規制されています。

後ほど解説しますが、2017年(平成29年)の改正によって登録制の「小規模不動産特定共同事業」が新設されたほか、書面の電子交付が認められることとなったため、不動産クラウドファンディングを立ち上げるハードルが大きく下がりました。

これにより、不動産クラウドファンディングが多く利用されることとなっています。

 

不動産クラウドファンディングには2種類のスキームが存在する

 

不動産クラウドファンディングには、次の2種類のスキームがあります。

いずれのスキームを組むかによって必要となる許認可や手続き、主に注意すべき法令などが異なります。

そのため、不動産クラウドファンディングの立ち上げを検討している際は、弁護士のサポートを受けながらスキームを検討するようにしてください。

 

最適解を提案します

 

 

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GK-TKスキーム

 

GK-TKスキームとは、合同会社(GK)と匿名組合(TK)を組み合わせた投資スキームです。

「土地」や「建物」といった実物の不動産ではなく、不動産を信託受益権化した有価証券を投資対象とします。

出資持分は有価証券とみなされることから金融商品取引法の規制対象であり、個人投資家向けに販売されることはほとんどありません。

 

不動産特定共同事業によるスキーム

 

不動産特定共同事業によるスキームとは、有価証券化されていない実物の不動産を直接投資対象とするスキームです。

出資持分は有価証券ではないため金融商品取引法の対象とはならず、この記事で主に解説している不動産特定共同事業法によって規制されています。

個人投資家向けに販売されている不動産クラウドファンディングのほとんどは、この仕組みを活用したものです。

「不動産クラウドファンディング」と「不動産小口化」とのスキームの違い

 

不動産クラウドファンディングと似た用語に「不動産小口化」があります。

不動産小口化とは、実物の不動産を小口化して投資を受ける手法です。

 

不動産クラウドファンディングと不動産小口化はまったく別のものを指すわけではありません。

不動産小口化商品のうち、インターネットを用いて投資家を募集するものを不動産クラウドファンディングといいます。

 

改正で誕生した小規模不動産特定共同事業とは

 

不動産特定共同事業法の2017年(平成29年)改正によって、「小規模不動産特定共同事業」が新設されました。

小規模不動産特定共同事業とは、投資家1人あたりの出資額が100万円を超えず、かつ出資総額が1億円を超えない不動産特定共同事業です(同2条6項、不動産特定共同事業法施行令2条)。

 

このような規模の制限を受けることを前提として、従来の許可ではなく登録を受けることで事業を営むことが可能です。

また、登録を受けるために必要となる資本金額も1,000万円とされており、要件も緩和されています。

 

不動産クラウドファンディングは、投資家1人あたりの出資額が100万円を超えず、かつ出資総額が1億円を超えないものが多く、この小規模不動産特定共同事業の登録によって取り組むことができる可能性が高いでしょう。

小規模不動産特定共同事業が誕生したことで、より多くの事業者が不動産クラウドファンディングへ参入しやすくなったといえます。

 

小規模不動産特定共同事業活用のスキーム例

 

国土交通省が公開している「小規模不動産特定共同事業パンフレット」では、小規模不動産特定共同事業の活用スキーム例が掲載されています。

主な活用スキームは次のとおりです。

 

  • 空き店舗をリノベーションした後に賃貸事業を営む

  • 賃貸住宅のリニューアル工事を行った後に賃貸事業を営む

  • 空き地を取得し、新築工事を行った上で売却する

  • オフィスビルを取得し賃貸事業を営む

 

なお、これらの事業を実際に行おうとする際は、不動産特定共同事業法に詳しい弁護士へご相談ください。

似た事例であっても一部の事情や前提条件などが異なれば、スキームを変更すべき必要が生じる可能性があるためです。

 

最適解を提案します

 

 

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空き店舗をリノベーションした後に賃貸事業を営む

 

1つ目は、投資家からの出資をもとに空き店舗の所有者から不動産を取得し、リニューアル工事を行ったうえでテナントに賃貸するスキームです。

 

このスキームでは、まず小規模不動産特定共同事業者が個人投資家や法人投資家などから出資を受けます。

次に、小規模不動産特定共同事業者が、出資を受けた資金を元手に空き店舗などの所有者から不動産を取得してリニューアルをします。

その後、その店舗で事業を営みたい会社へ賃貸して賃料収入を得て、その収入を出資者へ分配する流れです。

 

賃貸住宅のリニューアル工事を行った後に賃貸事業を営む

 

2つ目は、投資家からの出資をもとに賃貸物件を賃借したうえでリニューアル工事を行い、その後入居者に対して転貸するスキームです。

 

このスキームでは、まず小規模不動産特定共同事業者が個人投資家や法人投資家などから出資を受けます。

次に、小規模不動産特定共同事業者が、出資を受けた資金を元手に空室の多いアパートなどを1棟まるごと借り受けます。

 

その後は、借り受けたアパートを修繕するなど、入居者が入りやすいようリニューアルを行い、小規模不動産特定共同事業者が入居者を募って賃貸経営をします。

これにより得た収益からまずアパートの所有者へ賃料を支払い、残った収益を出資者へ分配する流れです。

 

空き地を取得し、新築工事を行った上で売却する

 

3つ目は、投資家から出資を受けた資金をもとに空き地を取得したうえで建物を新築し売却益を得るスキームです。

 

このスキームでは、まず小規模不動産特定共同事業者が個人投資家や法人投資家などから出資を受けます。

次に、小規模不動産特定共同事業者が、出資を受けた資金を元手に空き地を買い、そこに住宅などを建設します。

その後は、完成した住宅などを売却し、この収益を出資者へ分配する流れです。

 

オフィスビルを取得し賃貸事業を営む

 

4つ目は、投資家からの出資をもとにオフィスビルを取得し、賃貸事業を行うスキームです。

 

このスキームでは、まず小規模不動産特定共同事業者が個人投資家や法人投資家などから出資を受けます。

次に、小規模不動産特定共同事業者が、出資を受けた資金を元手にオフィスビルを取得し、入居者を募って賃貸経営を行います。

この賃貸収入を出資者へ分配する流れです。

 

まとめ

 

不動産特定共同事業法にもとづく小規模不動産特定共同事業(不動産クラウドファンディング)概要や主なスキームについて解説しました。

 

小規模不動産特定共同事業を活用することで、まとまった自己資金が用意できなくても不動産運用による収益が得やすくなり、投資家にはもちろんのこと事業者にとってもメリットが少なくありません。

法改正により参入しやすくなっているため、今後新たに小規模不動産特定共同事業へ取り組む事業者も増えてくることでしょう。

 

ただし、小規模不動産特定共同事業の活用には注意点が少なくありません。

そのため、不動産法務に詳しい弁護士のサポートを受けつつ事業スキームを練るようにしてください。

 

たきざわ法律事務所には不動産特定共同事業法に詳しい弁護士が在籍しており、これまでも不動産クラウドファンディングの立ち上げをサポートして参りました。

不動産クラウドファンディングや小規模不動産特定共同事業などへ取り組む際は、ぜひたきざわ法律事務所までお気軽にご相談ください。

 

 

 

 

 

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サンカラ

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