【2023】メタバースでのNFT活用事例とは?活用時の注意点を弁護士がわかりやすく解説
メタバースやNFTが話題となっており、これをビジネスに取り入れる企業も増加しています。これらを自社のビジネスへ上手く取り入れることで、企業活動にとってプラスとなるかもしれません。
では、メタバース上でNFTを活用した事例には、どのようなものがあるのでしょうか?今回は、メタバースやNFTの活用事例を紹介すると共に、これらをビジネスに取り入れるメリットや注意点などについて詳しく解説します。
目次
メタバースとNFTとの関係性
メタバースとNFTは、同列に語られることも少なくありません。しかし、両者はまったく異なるものです。はじめに、それぞれの用語を整理しておきましょう。
メタバースとは
メタバースは「meta(超越)」と「universe(世界)」を組み合わせたことばであり、インターネット上に構築されている三次元の仮想空間を指します。
仮想空間上でアバターを介して他のユーザーとリアルタイムで交流することができるほか、イベントを楽しんだり買い物をしたりすることも可能です。
NFTとは
NFTは「Non-Fungible Token」の略称であり、「非代替性トークン」などと訳されます。
NFTの最大の特徴は、その名称どおり「非代替性(代わりが効かないこと)」です。まず、現実世界に存在する絵画は、これとまったく同じコピーを作ることはできません。いくら精巧に模写をしたり印刷機を使用して転載したりしても、それは似て非なるものでしょう。
一方、インターネット上に存在する絵はデータであるため、コピーによってまったく同じものを簡単に、しかも大量に生み出すことが可能です。これが、インターネット上のアート作品に価値がつきにくい理由の一つとなっていました。せっかく大金を出してアート作品を購入しても、コピーが簡単に出回ってしまえば自分が正規の購入者であるとの証明が難しいうえ、転売も困難であるためです。
そこで活用されているのが、NFTです。たとえば、インターネット上のアート作品をNFT化することでその作品のデータに刻印が付された状態となり、その作品に唯一無二性が生まれます。
そして、たとえこの作品を表面上コピーしたとしても、NFTまでをコピーすることはできません。そのため、正規の購入者は自分が正規の購入者であると容易に証明することが可能となるほか、転売もしやすくなります。
メタバースとNFTとの関係性とは
メタバース上では、アイテムなどの売買が頻繁に行われています。そしてメタバース上で売買されるものは、実態のない「データ」にほかなりません。そのため、メタバース上では、アイテムなどがNFT化したうえで販売されています。
メタバース上でのNFT活用事例
メタバース上での主なNFT活用事例は次のとおりです。
メタバース上でNFTアイテムの売買
メタバース上では、しばしばNFTアイテムの売買が行われています。たとえば、メタバース上で使用するアバターをNFT化して販売したり、アバターが着用するアイテムをNFT化して販売したりすることなどが考えられます。
メタバース上にある土地の売買
メタバースでは、メタバース上にある仮想の「土地」を売買することが可能です。メタバース上で土地を所有することで、その土地上でイベントを開催したり、その土地を貸して収益を得たりすることが可能となります。
現実世界と同様にメタバース上での土地には限りがあり、土地の売買を証明するためにNFTが活用されています。
NFTアイテムをメタバース上のアバターが着用
購入したNFTアイテムは転売することができるほか、自身のアバターに着用させることも可能です。最近では、著名なデザイナーやメーカーがNFT化したファッションアイテムを販売するケースもあります。
NFTアートをメタバース上に展示
購入したNFTアート作品を、メタバース上に展示することも可能です。中には、NFTアート作品を取り揃えた美術館をメタバース上で運営するケースもあるようです。
企業がメタバースやNFTをビジネスに取り入れるメリット
企業がビジネスにメタバースやNFTを取り入れることには、どのようなメリットがあるのでしょうか?メリットは企業のアイデアや自社の既存ビジネスとの相性などにより無限大ですが、主に挙げられるものは次のとおりです。
新たなビジネスアイデアが生まれやすい
メタバースやNFTは、まだまだ新しいツールです。これを既存ビジネスと組み合わせたりまったく別の発想をしたりすることで、新たなビジネスのアイデアが生まれやすくなります。
特に、一見メタバースやNFTと距離の遠そうなビジネスであればあるほど斬新なビジネスアイデアが生まれ、新たな収入源などとなるかもしれません。
新たな顧客層にアピールしやすい
企業がメタバースやNFTを活用することで、これまで接点を持つことが難しかった新たな顧客層にアピールできる可能性があります。
たとえば、最近では若年層を中心にテレビを所有していない人も少なからず存在し、テレビコマーシャルを打っても、一部の層には認知してもらうことが困難です。そのような場合であっても、メタバース内でイベントを開催したりうまくNFTを取り入れて話題となったりすることで、アピールできる可能性があるでしょう。
また、そもそも大衆に向けてコマーシャルを打つことが必ずしも良策ではない商材の中には、メタバース等を活用することで対象とする顧客層に効果的にアプローチできる可能性があります。
先鋭的な企業であるとのイメージが持たれやすい
メタバースやNFTに対して先鋭的であるとのイメージを持つ人は少なくないでしょう。企業がこれらの新しい仕組みをビジネスに取り入れることで、新たな取り組みに対して積極的な企業であるとの印象を与えることにつながります。
特に、「古い業界」や「堅い業界」とのイメージのある企業がメタバースやNFTを活用すると、より効果的かもしれません。
地域を問わずに取引や雇用ができる
ビジネスにメタバースやNFTを取り入れることで、地域を問わずに取引がしやすくなります。たとえば、メタバース上でアイテムやアバターを販売するなどの取り組みであれば、海外に在住する日本語を解さない人であっても、顧客となる可能性があるでしょう。
また、メタバースはバーチャルオフィスとして活用する道もあります。たとえメタバース上で顧客との取引まではしなかったとしても、バーチャルオフィスを導入することで地域を問わず優秀な人材を採用しやすくなるほか、多様な働き方のできる企業であるとしてアピールすることも可能となるでしょう。
感染症などに左右されにくい
2023年には新型コロナが5類に移行され、騒動はいったん落ち着いています。しかし、今後また未曽有の感染症が発生しないなどとは、誰も断言できるものではありません。また、交通の遮断など別の理由によって、普段通りのビジネスが展開できなくなる可能性もあるでしょう。
企業としては今後起こり得るさまざまな事態を想定し、可能な限り事業が継続できる道を探ることが必要です。そこで、メタバースを舞台としたビジネスの柱を一つ持っておくことで、感染症などに左右されずビジネスを継続しやすくなります。
メタバースやNFTをビジネスに取り入れる際の注意点・ポイント
メタバースやNFTをビジネス取り入れる際には、どのような点に注意すれば良いのでしょうか?主な注意点やポイントは次のとおりです。
著作権についてよく理解しておく
著作権とは、著作物を保護するための権利です。著作権の保護を受けるためには登録などは必要なく、創作した時点から著作権の対象となります。
著作権の対象となる著作物の範囲は非常に広く、思想や感情を創作的に表現した文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するものであれば著作権の対象です。市販されている漫画や小説などが著作権の対象となることはもちろん、一般人が創作したイラストや一般人が撮影した写真なども著作権の対象となります。
また、創作者がSNSでイラストなどを公表したからといって、著作権を放棄したことなどにはなりません。そのため、たとえばSNSで偶然見かけた他者の写真をNFT化して販売したり他者のイラストを転載したアバター用のTシャツを無断でメタバース上にて販売したりした場合などには、著作権侵害にあたる可能性が高いでしょう。
著作権については、誤解も少なくありません。NFTやメタバースをビジネスで活用する際には著作権について十分に理解したうえで、不明点がある場合には弁護士へ相談することをおすすめします。
法令違反とならないよう弁護士に相談する
メタバースやNFTをビジネスに取り入れる際には、法令違反に注意することが必要です。
たとえば、有償で法律相談を受けたり法的な紛争を仲裁したりすることは弁護士の独占業務であり、弁護士以外の者が行うことはできません。これはメタバース上であっても同様であり、たとえば弁護士ではない者がNFTを対価としてメタバース上で法律相談を展開した場合などには、弁護士法違反となる可能性が高いでしょう。このように、思いついた業務が他の法令に違反している可能性があります。
また、許認可を得て営む一部の業種のなかには所定の営業所に所定の資格を持った人を常駐させる義務が課されているものもあり、バーチャルオフィスとすることでこのような義務に違反するリスクもあるでしょう。
思わぬ法令違反を避けるため、メタバースやNFTを活用した新たなビジネスに取り組む際にはあらかじめ弁護士へ相談し、法令違反の有無やリスクを確認しておくことをおすすめします。
目的を明確にしたうえで取り組む
NFTやメタバースを取り入れたからといって、必ずしも自社の知名度が向上したり自社の収益が上がったりするとは限りません。これらはあくまでもツールであり、はじめに何らかの目的があることを前提に、その目的を達成する手段として取り入れるべきです。
NFTやメタバースをビジネスに取り入れること自体が目的となってしまっては本末転倒となりかねないほか、思ったように成果が上がらずがっかりしてしまうかもしれません。また、目的が不明確であれば、投機的なNFTに手を出してしまい大きな損失を被るリスクもあります。
詐欺などから身を守るリテラシーを身につける
NFTにまつわる詐欺は、少なくありません。たとえば、偽物のNFTを売りつけるものや、希少なNFT(希少なため、転売価値が高い)との触れ込みで販売したNFTを多量に販売するものなどが考えられます。今後も、新たな詐欺が無数に生まれる可能性があるでしょう。
そのため、メタバースやNFTを活用する際には、詐欺などから身を守るリテラシーを身につけなければなりません。最大の防御は、投機的な(転売益を得ることを目的とした)NFTの購入には手を出さないことです。
メタバースやNFTの集客力を過信しない
メタバースやNFTは魔法のツールではなく、これらを活用したからといって必ずしも集客ができるとは限りません。これらを使って知名度を上げたり認知度を向上させたりしている企業は単にこれらを活用するのみではなく、自社の商材との相乗効果を検討したりマーケティングに取り組んだりしていることが一般的です。
メタバースやNFTをうまく活用することで、新たな収益源となったり新たな顧客層にアプローチできたりする可能性はあるものの、過信するのは避けた方が良いでしょう。
まとめ
メタバース上でのNFT活用事例を紹介すると共に、これらをビジネスに取り入れるメリットなどについて解説しました。
しかし、メタバースやNFTについては法整備が追いついているとは言い難く、ビジネスを展開するうえで新たなトラブルが発生する可能性もがあります。特に、著作権については十分に理解し、留意する必要があるでしょう。
また、メタバースやNFTは集客を向上させる魔法ではなく、あくまでも新たなツールでしかありません。集客力を過信するのではなく、自社ビジネスとの相性や相乗効果を十分に検討したうえで取り入れることをおすすめします。
たきざわ法律事務所は、インターネット法務に力を入れています。メタバースやNFTをビジネスに取り入れるにあたってリーガルサポートが必要な際や、メタバースやNFTにまつわるトラブルでお困りの際には、たきざわ法律事務所までお気軽にお問い合わせください。