一戸建ての近隣トラブルの事例や解決策とは?知っておきたい予防方法
せっかく手に入れた一戸建てのマイホームで近隣住民とトラブルになってしまうことは、誰しも避けたい事態ではないでしょうか?今回は、一戸建て住宅で起きうる近隣トラブルを紹介するとともに、近隣トラブルになってしまった場合の対応法や予防策などについて詳しく解説します。
目次
一戸建てで起きうる近隣トラブルの例
一戸建てはマンションとは異なり、隣家と密着はしていないことが多いでしょう。そのため、マンションよりもトラブルが起きづらいと考えるかもしれません。
しかし、一戸建ては一戸建てであるがゆえのトラブルに発展する可能性があります。はじめに、近隣トラブルのうち一戸建て住宅でも起きやすいものを8つ紹介します。
境界線に関するトラブル
一戸建てに特有の近隣トラブルとして、土地の境界線にまつわるものが挙げられます。具体的には、隣家との境界があいまいなって主張が食い違っていたり、隣家の塀や生垣が本来の境界から越境していたりするケースなどがあるでしょう。
また、民法の規定(234条)により建物を築造するには、境界線から50センチメートル以上の距離を保たなければならないとされているものの、境界線ギリギリに勝手に小屋を建てるなどしていて問題となるケースもあります。
車のマナーに関するトラブル
一戸建て住宅では、車を保有している場合が少なくありません。その場合、車のマナーに関してトラブルに発展する場合があります。
車に関する代表的なトラブルとしては、出入りや通行に支障が出る場所に隣家の住人や隣家の関係者が無断で駐車をしているケースなどです。
自分や家族は自宅の駐車場内にきちんと駐車をしていても来客がマナーを守っていないことも考えられますので、近隣の迷惑にならないようお互いに注意すべきでしょう。
ペットの飼育に関するトラブル
一戸建て住宅では、ペットを飼育する場合も多いでしょう。その場合には、ペットに関してトラブルになる場合があります。
ペットにまつわる代表的なトラブルとしては、犬の鳴き声による騒音などです。また、放し飼いの猫が頻繁に隣家の庭へ侵入して庭を荒らしたり糞尿をまき散らしたりすることがトラブルの原因となる可能性もあります。
ペットは大切な家族の一員ですが、近隣の迷惑とならないよう、飼い方やしつけには配慮するべきでしょう。
騒音トラブル
一戸建てであればマンションなどの集合住宅と比べ、一般的には家屋内での音は周囲に響きにくいといえます。しかし、大きな楽器の音などは聞こえる可能性がありますので、演奏する時間帯に注意をしたり、防音対策を取ったりといった配慮は必要となるでしょう。
また、屋外での声は響く場合もありますので、庭やベランダで楽しむ際には時間帯や声の大きさなどに注意が必要です。
なお、一般的に、年配の方は就寝時間が早い傾向にあります。配慮する時間帯はご自身の生活スタイルのみで検討するのではなく、近隣住民の属性を踏まえて検討すべきでしょう。
庭木の落ち葉や越境に関するトラブル
一戸建て住宅では、庭にご自身好みの樹木を植えることができる点も楽しみの一つです。しかし、隣家との境界付近の樹木は、枝の越境や落ち葉などがトラブルの原因となる可能性があります。
樹木を植える際には植える場所に注意をし、枝が越境しないよう剪定をする必要があるでしょう。また、落葉樹かどうかも検討をしたうえで樹木の種類を検討することも一つです。
においに関するトラブル
たとえば、近隣にいわゆるゴミ屋敷がある場合には、においや害虫などで平穏な生活を妨げられることにもなりかねません。一戸建て住宅を購入する前に近隣を見回り、ゴミ屋敷のような住宅がないかどうかを確認しておくと良いでしょう。
また、一戸建て住宅では庭でのBBQなども醍醐味の一つです。しかし、隣家との距離や風向きによっては、においや煙が近隣の迷惑となる可能性があるため、配慮が必要となります。
特に、近隣住宅が外に洗濯物を干しているにもかかわらず頻繁にBBQなどを行えば、トラブルとなる可能性があるため注意が必要です。
ゴミやタバコのポイ捨てに関するトラブル
近隣住民も使用する道路にゴミやタバコのポイ捨てをすれば、トラブルの原因となる可能性があります。道でポイ捨てする人や、ましてや自身の住居近くでポイ捨てする人は多くはないと思いますが、来客などがこのような行為をする可能性もありますので、注意しましょう。
嫌がらせなど人間関係に関するトラブル
一戸建て住宅を購入すれば、引っ越しをすることは困難です。そのため、近隣住民はある程度固定されてしまうでしょう。
中には、人間関係の悪化などから嫌がらせを受けるなどのトラブルになる可能性も否定できません。嫌がらせの内容によっては、平穏な生活に支障をきたす可能性もあるため、深刻な問題の一つです。
近隣トラブルが一戸建てで起きてしまったら?取るべき対応
一戸建て住宅での近隣トラブルは、今後も関係せざるを得ない人が相手となることが多いことが大きな特徴です。一戸建て住宅の購入にはローンを組んでいることが多く、また売却をしようにも購入時と同程度の価格で売れる可能性は高くないゆえに、引っ越しが容易ではないためです。
それでは、万が一一戸建て住宅で近隣トラブルが起きてしまったら、どのように対応すれば良いのでしょうか?
近隣住民とよく話し合いをする
近隣トラブルにおいてはまず、近隣住民との関係性を悪化させることなく問題を解決する方法を探りましょう。そのため、まずは近隣住民とよく話し合うことが重要です。
1対1での話し合いに不安がある場合には、家族に同席をしてもらうと良いでしょう。トラブルの態様によっては他の近隣住民に立ち会ってもらうことも一つです。
近隣トラブルは、双方がお互いに少しずつ譲歩をすることで解決ができるケースが少なくありません。一方の主張のみを無理に通そうとするのではなく、お互いに双方の言い分を聞き、解決へと歩み寄ることが大切です。
専門家や専門機関へ相談する
双方の話し合いによっては解決が難しい案件である場合には、専門家や専門機関へ相談しましょう。近隣トラブルの相談先の候補は、後ほど解説します。
調停で話し合う
当事者同士での解決が難しい場合には、調停で話し合うことで妥協点を探ります。調停とは、調停委員の立ち合いのもと、裁判所で行う話し合いのことです。
あくまでも話し合いの場である以上、裁判所や調停委員が決断を下すわけではありません。
訴訟で解決する
調停でも解決が難しい場合には、訴訟にて解決をすることになります。訴訟では裁判所が双方の言い分を聞いたうえで、法的な視点から裁判所が決断を下します。
近隣トラブルが一戸建てで起きた場合は誰に相談すれば良い?
当事者間の円満な話し合いではトラブルの解決が難しそうな場合には、専門家や専門機関に相談しましょう。近隣トラブルに関する相談先の候補は、次のとおりです。
市区町村役場
近隣トラブルを相談する候補の一つに、お住まいの地域の市区町村役場が挙げられます。
市区町村によって「生活課」など名称は異なりますが、相談ができる課を設けている場合が多いでしょう。どこの課へ相談すべきかわからない場合には、総合受付に聞くと案内をしてもらえます。
ゴミ屋敷や騒音、ゴミの出し方のマナーなどの問題であれば、市区町村役場が直接対応してくれる可能性があります。
町内会や自治会
お住まいの地域に町内会や自治会があれば、こちらへ相談してみることも一つです。当事者間の話し合いに立ち会うなどして、解決へ導いてくれる場合もあるでしょう。
ただし、町内会や自治会がどのような役割を担っているのかは地域によって異なります。希望する内容の相談が可能かどうか、あらかじめ町内会や自治会に問い合わせてみると良いでしょう。
また、地域の役員が持ち回りであることもあり、トラブルの相手方と近しい人が役員となっている可能性がある点にも注意が必要です。
警察
明らかに相手方に問題があるような場合には、警察も相談先候補の一つです。警察へ相談することで、相手方へ警告してもらうことが期待できるほか、周囲をパトロールしてくれる可能性も期待できます。
警察で対応が可能かどうかの判断に迷ったら、まずは警察相談専用電話である「#9110」へ相談してください。
なお、今すぐ警察官が駆けつけるべき緊急の事件や事故などの妨げとならないよう、緊急時以外には110番への電話は避けましょう。
弁護士
相手方とのトラブルへ法的に対処がしたい場合には、弁護士へ相談してください。相手方との話し合いに弁護士が同席することにより、法的な解決へ導くことが可能となります。
弁護士から内容証明郵便を送ってもらうことも効果的でしょう。内容証明郵便とは、いつ、誰から誰にどのような内容の郵便が送られたのかという記録が残る郵便です。記録が残るため、のちの裁判において確かに迷惑行為の差し止めを請求していたとの証拠となります。
また、通常は内容証明郵便など受け取り慣れていない人が多いため、弁護士からの内容証明郵便が届いた時点で迷惑行為の抑止力となる効果も期待できます。
話し合いや内容証明郵便で解決ができない場合であっても、弁護士は調停や訴訟における心強い味方となります。
一戸建ての近隣トラブルに関する法律の考え方
一戸建ての近隣トラブルについて、法律の考え方は次のようになっています。
境界線は境界標を入れて解決する
土地の境界線について争いがある場合には、境界標を入れて土地の境界を明確にすることで、解決をすることが可能です。
古い境界標が朽ちて喪失してしまっていたり、境界標が土に埋まるなどして行方不明となってしまっていたりする場合がありますので、こちらを改めて設置したり見えなくなっている境界標を掘り出したりすることで、問題を解決します。
境界から越境しているものがあれば、越境している側の住民が越境物を撤去しましょう。境界に関する双方の主張が食い違うなど争いがある場合には、境界問題相談センターや訴訟での解決を図ることとなります。
明らかな問題行為は近隣住民であっても違法
明らかな問題行為であれば、たとえ近隣トラブルとはいえ違法となります。明らかな問題行為とは、たとえば次のようなものです。
庭に置いてある物が盗まれている
自宅の庭の水道から隣家住民が水を盗んでいる
わざと車にキズをつけられている
車や外壁に落書きをされている
このような明らかな問題行為があれば、内容によっては刑法上の罪に問うことができるほか、損害賠償請求などが認められる可能性が高いでしょう。
騒音やにおいは度を越えたら違法となる「受忍限度論」
近隣トラブルの多くは上で記載をしたような明らかな問題行為とまではいえず、迷惑行為の範疇である場合が多いでしょう。たとえば、騒音を立てていたり、においが気になるといったりした場合などです。
この場合、法的な解決を図る際の一般的な考え方に、「受忍限度論」があります。受忍限度論とは、その事案についての具体的な事情を総合的に考慮して、被害が社会生活上受忍すべき限度を超えている場合にはじめて違法であるとされる考え方です。
たとえば、騒音に関していえば、どの程度の音をうるさいと感じるかどうかは人によって異なります。人によっては、日中に外で少し子供が遊ぶ声さえもうるさいと感じる場合もあるでしょう。
しかし、ある人がうるさいと感じたからといってすべて法的に問題があるとされてしまえば、健全な社会生活を送ることはできません。ここで登場する考え方が、受忍限度論です。
つまり、ある人がうるさいと感じるかどうかではなく、その音の大きさや時間帯などが社会通念上、我慢の限度を超えているかどうかで違法性が判断されるということです。社会通念上我慢の限度を超えているかどうかは騒音規制法など法令上の規制のほか、さまざまな事情を考慮して総合的に判断されます。
近隣トラブルを防ぐために一戸建て購入前にすべき対策
せっかく一戸建ての住宅を買ったにもかかわらず、近隣トラブルに遭ってしまう事態はできるだけ避けたいことでしょう。最後に、一戸建て購入前にできる対策を3つ紹介します。
境界標の有無など境界の状態をよく確認する
一戸建て住宅やその敷地を購入する際には、境界標の有無など境界の状態をよく確認しておきましょう。
境界があいまいとなっている場合のほか、すでに隣家の塀が境界標を超えている場合や隣家の樹木が管理されておらず越境している場合、隣家の住民が購入予定の土地に私物を置いている場合などには、購入後にトラブルとなる危険性があります。
このような物件の購入は、避けた方が無難でしょう。
購入前に時間を変えて何度か現地へ出向く
最近はインターネットが普及しており、現地へ出向かずともある程度現地の様子を知ることが可能です。しかし、一戸建て住宅やその敷地を購入するにあたっては、必ず時間帯を変えて何度か現地へ出向くべきでしょう。
その際には、上で解説をした境界付近の様子や騒音の有無、周囲にゴミ屋敷など近くに住むことに抵抗を感じる物件がないかどうかなど、つぶさに確認してください。現地へ直接出向くことで、その場所の雰囲気を知ることができます。
購入前に近隣住民と挨拶や話をする
購入後の近隣トラブルを防ぐため、購入前に近隣住民と話をする機会を持つことをおすすめします。近隣住民に購入検討者であることを告げたうえで挨拶をし、付近の様子などを聞いてみると良いでしょう。
近隣住民の人柄に直接触れる機会となるほか、問題のある住民の有無や既に発生している近隣トラブルの有無などの情報が得られるかもしれません。
まとめ
せっかく夢の一戸建てを購入したにもかかわらず、近隣トラブルになるような事態は誰しも避けたいことでしょう。あらかじめ現地を見まわり、トラブルがありそうな土地の購入は避けたほうが無難です。
しかし、事前の見まわりですべての状況がわかるとは限りません。あらかじめ注意をしていても、住んでからトラブルに巻き込まれてしまう場合もあることでしょう。
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