即日退職は原則認められない!例外的に認められる事例も紹介
「即日退職を求められたらどうすれば良いのか?」使用者としては、難しい問題かもしれません。
雇用期間の定めがない労働者が即日退職を求めてきても、原則として応じる必要はありません。
労働者が退職するためには「退職を申し出た日から14日間経過」しなければいけないことになっています。
今回は、即日退職が認められない理由や例外的に認められる事例、即日退職を求めてきた労働者への対応などをお伝えしています。
ぜひ参考にしてください。
目次
正社員の即日退職は原則認められない
自社で雇用する社員が「即日退職」を求めてきても、原則として応じる必要はありません。
労働者が一方的に即日退職を告げ、出勤してこなかったときは「違法行為」として労働者に対して損害賠償請求ができます。
本来、使用者(企業等)と労働者は「労働契約」によって成立しています。
労働契約とは「使用者が労働者に対して賃金を支払うことを条件とし、労働者は使用者に対して労働を提供する」ことを言います。
- 労働者→使用者に使用されて、労働を提供
- 使用者→労働者へ対して労働の対価を金銭で支払う
つまり、労働者が即日退職をして出勤してこないことがあれば、債務不履行(無断欠勤)として、実際に受けた損害賠償請求が可能となるでしょう。
ただし、使用者は実際に受けた損害や因果関係を自ら立証しなければいけません。
実際には、損害や因果関係を立証できないケースも多く、使用者側が泣き寝入りする事例も多くあります。
また、即日退職した労働者に対する腹立たしさから、無理やり会社に生じた損害を構成して訴訟を提起した結果、当該訴訟が不当訴訟に該当すると認定された裁判例もあります。
まずは、正社員(雇用期間の定めがない労働者)の労働契約について、もう少し詳しく見ていきましょう。
退職の申し出から2週間経過すれば退職可能
労働者が「退職の申し出をした日から2週間」経過すれば退職が認められます。
たとえば労働者が1月1日に退職の申し出をしたときは、同年1月14日に労働契約が終了します。
労働者が退職を申し出てから2週間経過したときは労働契約が終了するため、仮に労働者が出勤してこなくても損害賠償等の請求はできません。
また、労働契約の終了は労働者からの一方的な行為であっても成立します。
民法では、使用者が労働者を一方的に解雇する行為を規制する法律はありますが、労働者が一方的に退職する行為を規制する法律はありません。
つまり、退職の申し出から14日間経過すれば、使用者の合意なく一方的に退職ができます。
少し複雑なので、これまでお伝えしたことをまとめると下記のとおり。
- 退職の申し出から2週間経過すれば一方的な退職でも認められる
- 即日退職を含む2週間以内の一方的な退職は「無断欠勤」となり、実際に受けた分の損害賠償請求できる
- 使用者が一方的に解雇することは認められないが、労働者が一方的に退職することは認められる
年次有給休暇を利用すれば実質的な即日退職が認められる
労働者から14日分の年次有給休暇の取得を求められたときは(正常な運営を妨げるときを除いて)、応じなければいけません。
年次有給休暇の取得は労働者の当然の権利であって、この権利行使を使用者が止めてしまうことは許されません。
つまり、退職の申し出の日から14日間すべて年次有給休暇を消化したとすれば「即日欠勤」が可能となり、そのまま14日経過後に退職が認められます。
ただし、年次有給休暇はあくまでも企業に勤めている状態が続いているため「退職」とは言えません。
実質的な形式であっても即日退職を求める方は、有給休暇の消化を求めてくるでしょう。
引き継ぎ等の依頼をするときはあくまでも使用者からの「お願い」でしかありません。
労働者とよく話し合いをして、出勤や引き継ぎを依頼してください。
年次有給休暇の取得を求めてきた労働者に対して、
出勤を求めることは(正常な運営を妨げるときを除いて)原則、許されませんので注意してください。
正当な理由なしに「欠勤」を認める必要はない
退職するまでは使用者と労働契約を締結している労働者です。
病欠での欠勤や身内に不幸があったなど、正当な理由がなければ欠勤を認める必要はありません。
何度かお伝えしていることですが、労働者が一方的に退職を告げて即日退職をする行為は、労働者の違法行為です。
労働者は、賃金を得る代わりに労働を提供するよう、労働契約によって定められています。
もしも、労働者が労働を提供しなければ「債務不履行」として、使用者側が被った損害を労働者に請求できます。
しかし「即日退職」ではなく「14日後に退職するから、それまでの期間欠勤させてください」と言われたときはどうしたら良いのか?と、疑問に思う方も多いでしょう。
使用者が認めるか否かは自由ですが「かならず認める必要はない」と思っておけば大丈夫です。
ただし、目には見えない精神的な病気を抱えている方もいるかもしれません。
診断書の提出を求めるのは良いですが、労働者が病欠を申し出てきたときに、その事実を否定して欠勤を認めないことは許されないので注意してください。
有期雇用・アルバイト(パート)は扱いが異なる
先にお伝えした即日退職の話はすべて「雇用期間の定めがない労働者」を対象としています。
有期雇用として契約を締結している方や、雇用期間の定めはないけどアルバイト(パート)従業員として働いてくれている労働者であれば、少し扱いが異なります。
有期雇用(期間の定めがある雇用形態の人)の方は原則として契約期間中の退職は認められません。
有期労働者が14日前に退職を申し出たところで(やむを得ない事由等を除いて)、退職を認める必要はありません。
もっとも、下記の条件を満たしていれば、即日退職が可能です。
- 1年以上の勤務実績がある
- やむを得ない事由がある
- 会社側から即日退職の合意を得られる
アルバイト(パート)従業員の方は、雇用期間の定めがあるか否かで対応が分かれます。
雇用期間の定めがない雇用契約であれば、正社員と同様の扱いを受けます。一方で、雇用期間の定めがある雇用契約であれば、有期雇用としての扱いを受けます。
雇用期間の定めがない雇用契約であれば、たとえアルバイトであっても一方的な即日退職を認める必要はありません。
最低でも14日間の期間を経て、退職が成立します。なお、アルバイトの方に対しても、条件次第では年次有給休暇の付与が求められます。
年次有給休暇の消化をアルバイトから求められたときは、原則拒否できませんので注意してください。
即日退職が認められる3つの事例
雇用形態に関わらず、下記の3ついずれかに該当するときは即日退職が認められます。
- 会社と労働者の間で合意を得られたとき
- やむを得ない事由に該当するとき
- 会社側の「非」が原因で即日退職を希望されたとき
それぞれの事例について詳しく見ていきましょう。
事例①:会社と労働者の間で合意を得られたとき
労働者が即日退職の希望を告げ、会社側が合意すれば当然、即日退職が認められます。
「退職の申し出から14日間は退職できない」というルールは、会社側の引き継ぎや人材確保などの猶予期間として設定されているものです。
つまり、会社側が同意さえすれば一切のトラブルなく、即日退職が可能となるでしょう。
なお、補足ではありますが会社の規定で「退職は1か月以上前に申し出が必要」などと明記していても、法律上必ずしも有効になりません。
あくまでも、法律上は「14日間」です。この期間が経過すれば、就業規則で「退職は1か月以上前に申し出が必要」と明記してあっても、退職が認められる可能性があります。
事例②:やむを得ない事由に該当するとき
やむを得ないと認められる事由に該当するときは、即日退職が認められます。
やむを得ない事由に該当する一般的なケースは下記のとおり。
- 家族の病気等で介護が必要
- 本人の傷病(業務内外問わず)
上記はあくまでも一般的な例であって、状況に応じて「やむを得ない事由」に該当するケースは多々あるでしょう。
労働者から即日退職を求められたときは、やむを得ない事由に該当するか否か?を判断してください。
もし、すぐに判断を出すことが難しいのであれば一旦、欠勤扱いにして即日退職を保留することも提案してください。
事例③:会社側の「非」が認められるとき
ハラスメント等会社側に「非」があるときは、即日退職が認められます。
ハラスメント以外にも、長時間労働や人間関係の問題(いじめ等)があるときは、当然即日退職を認めざるを得ません。
会社側に非があるにも関わらず、退職を認めずに出勤を強要したり退職させなかったりすれば「在職強要」に該当する恐れがあります。
在職強要は立派な違法行為なので、絶対に行わないでください。
労働者が即日退職を求めてきたときに注意すべき2つのこと
労働者が即日退職を申し出たのであれば「突然」のことで驚かれていることでしょう。
今日退職希望を告げられて、今日中に退職をしたい。
何を無茶苦茶なことを言っているのか?そう思うのは当然です。
もしも労働者が即日退職を求めてきたのであれば、下記2つのことに注意してください。
- 実質的即日退職と即日退職の違いについて
- トラブル回避のために労働者とよく話し合う
以上のことについて、詳しくお伝えします。
注意点①:「実質的即日退職」と「即日退職」の違いを理解し、従業員に伝える
「退職」とはその会社(職)から退き、労働契約を終了させる行為を言います。
法律で禁止されている行為は「退職の申し出から14日以内の退職」です。
つまり「実質的な即日退職」が禁止ではないということ。
実質的な即日退職とは、退職の申し出から14日間、年次有給休暇もしくは欠勤をして、退職までの待機期間を待つことを言います。
「退職」ではありませんが、14日間は会社に行かなくても良いため「実質的に」退職していることと同じです。
この2つの違いをよく理解し、混同しないように注意してください。
注意点②:トラブルを回避するために労働者と話し合う
労働者から即日退職の申し出があったときは、よく話し合ってください。
使用者側の一方的な意見を述べるのではなく、労働者の意見に耳を傾けることも大切です。
そのうえで、即日退職は違法であることや原則として認められないこと、最悪の場合は損害賠償請求をされることなどを伝えると良いでしょう。
中にはこの行為が「在職強要」にあたるのではないか?と考える方もいますが、それはありません。
なぜなら、事実を伝えて当然の権利(14日前に退職申し出を行うこと)行使をしているためです。
在職強要にあたるための行為は「脅し」で在職を強要したときです。
上記のようなケースでは脅しには該当せず、事実をそのまま告げているに過ぎません。
まずは労働者とよく話し合って、使用者ともどもどうするのかを決定すると良いでしょう。
まとめ
今回は「即日退職」についてお伝えしました。
お伝えしたことをまとめると下記のとおりです。
- 即日退職は原則認められない
- 退職の申し出から14日間経過したときは、退職を認めざるを得ない
- 正当な理由なしに欠勤や無断欠勤を繰り返していると、損害賠償請求が可能
- 損害賠償請求をするときは、使用者が実際に受けた損害を立証しなければいけない
- 即日退職が例外的に認められる事例は「使用者・労働者双方で合意が得られたとき」「やむを得ない事由があるとき」「会社側に非があるとき」
- 即日退職でトラブルを回避するためには準備と知識がとても大切
雇用期間の定めがない正社員やアルバイト(パート)等の方は、原則として即日退職が認められません。
最低でも退職を申し出た日から14日間経過しなければ、債務不履行となる恐れがあります。
使用者は即日退職を告げられても応じる必要はなく、当然、労務の提供を受ける権利を有しています。
万が一、労働者が一方的に欠勤を繰り返すのであれば、損害賠償請求も視野に入れて良いでしょう。
ただし、14日間の経過後は使用者が労働者を引き止めることもできませんし、即日退職を認められる事例にあるときは認めざるを得ません。
今回お伝えしたように「即日退職=絶対にダメ」ではなく、ケースバイケースで判断されます。
余程の事情がない限りは、労働者が即日退職を求めてきたときは、認めてあげたほうがトラブル回避になるでしょう。
今後、即日退職を申し出た社員に対しては、今回お伝えしたことを参考にしてください。
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