たきざわ法律事務所

法定休日と法定外休日の違いは何?厳しい罰則規定についても詳しく解説

この記事を書いた弁護士は…

 

 

 

「休日」は労働者にあたえられた当然の権利であり、最低でも1週間に1回以上はあるもの。

となんとなく認識されている方が大半でしょう。

 

しかし、週休1日制の企業もあれば週休2日制の企業があり、はたまた週休3日制を導入した企業もあるとの話を聞きます。

実際に、週休何日あたえれば良いの?法律的には何日あたえれば足りるの?と思われたことはないでしょうか。

 

労働者にあたえるべき休日には大きく分けて「法定休日」と「法定外休日」の2種類があります。

いずれも「休日」であることに変わりはありませんが、内容がまったく異なります。

万が一、法定休日で定められている以上の休日をあたえなければ、使用者が厳しく罰せられてしまいます。

 

本記事では、法定休日と法定外休日の違いや注意事項、厳しい罰則規定等「休日」に関することを詳しくお伝えしています。

 

この記事を最後まで読めば、正しい休日の知識を知ることができます。

週1日の休日を与えることができなくても当然に4週間で4日以上の休日(変形週休制)を与えれば問題ないとの企業側でのよくある考えは間違いです。

変形週休制にするにも就業規則の定めが必要であり、不十分な就業規則の場合には改正する必要もあります。

休日に関する法律等を知らずに企業ブランドを下げてしまったり、

厳しい罰を受けたりすることがないよう、ぜひ参考にしてください。

 

 

法定休日と法定外休日は何が違う?

 

法定休日と法定外休日の根本的な違いは「法律で定められた休日か否か」です。

 

一般的に土日祝祭日が休日と認識されている方が多いですが、土日祝祭日すべてが法定休日に該当するのか?といえば、そういうわけではありません。

 

法定休日では、1週間で1日以上の休日をあたえなければいけないと定めています。

つまり、週休二日制が法定休日ではありません。

まずは、法定休日と法定外休日の違いについてお伝えします。

 

法定休日は最低限あたえなければいけない休日

 

法定休日とは、その名の通り「法定で定められている休日」です。

では、休日について法律ではどのように定めているのでしょうか?労働基準法を元に見ていきましょう。

 

第三十五条 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。

② 前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。

引用元:e-gov|労働基準法(第35条)

 

法定(労働基準法)では「使用者は労働者に対して毎週1回以上の休日をあたえなければいけない」と定めています。

休日は、その日の0時から23時59分までのことを指すため、原則として1週間に丸1日以上の休日をあたえなければいけません。

これを「法定休日」と言います。

 

もっとも、業務の性質上1週間に1日以上の休日をあたえることが難しいときには、4週間に4日以上の休日をあたえることもできます(変形週休制)

ただ、変形週休制を実施する場合には、就業規則において4週間の起算日を明らかにしておく必要があります。多くの企業の就業規則を見てきましたが、変形週休制を導入したいという企業で、4週間の起算日を明らかにしていない企業が意外に多かったです。そのため、企業において就業規則の見直しが必要になる場合もあるでしょう。

最低でも1週間に1日以上もしくは4週間に4日以上の休日をあたえることを定めたのが「法定休日」と思っておいてください。

 

法定外休日とは「法定休日以外の休日」

 

法定「外」休日とは、その名の通り法定で定められていない休日のことを指します。

労働基準法では、1週間に1日以上の休日をあたえること。

もしくは4週間で4日以上の休日をあたえなければいけないと定めています。

 

つまり、週休二日制を導入している企業であれば、1日分の法定外休日をあたえていることになるでしょう。

1か月の間で祝祭日があれば、その日数分法定外休日を労働者にあたえていることになります。

 

ではなぜ、週休二日制が広く浸透しているのか?といえば、

労働基準法第32条で定められている「1週間の労働時間」が大きく関係しています。

 

労働基準法第32条では「1日の労働時間を8時間、1週間の合計が40時間以内でなければいけない」と定められていることは、

使用者であれば周知の事実です。

単純に1日8時間、月曜日から金曜日までの5日間働いたとすれば【1日8時間✕5日間=40時間】になるため、労働基準法第32条の上限です。

 

つまり、労働基準法第32条の上限で労働者を働かせようと思えば、

かならず法定外休日が発生する仕組みになっているため、週休二日制が広く導入されることになりました。

 

仮に、法定休日に関する法律(労働基準法第35条)に従おうとすれば、

1日の労働時間を6.5時間程度に設定し、週休1日制にすれば問題ありません。

 

なお、最近では「週休3日制」を試験的導入する企業も増えてきています。

法定休日・法定外休日のみで見れば、労働者に対して2日の法定外休日をあたえていることになります。

しかし、実際の労働時間は「10時間✕4日間=40時間」になるため変わりはありません。

 

週休3日制を導入することで、労働基準法第32条に違反するのではないか?との声も聞こえてきていますが、

変形労働時間制を利用したものであるため違法にはなりません。

 

引用元:e-gov|労働基準法(第32条)

 

 

法定休日・法定外休日をあたえなかったときの罰則とは?

 

労働者に休日をあたえなければ、当然厳しい罰則を受けることになるでしょう。

しかし、罰則を受けるのはあくまでも、法定休日のみです。

法定外休日は社内規定等で決定できるため、あたえなかったところで一切の罰則を受けることはありません。

 

ただ、罰則を受けないからと言って、法定外休日に出勤させても良いのか?と言えばそういうわけでもありません。

次に、法定休日や法定外休日をあたえなかったときに起こり得るリスクや罰則、注意事項についてお伝えします。

 

法定休日をあたえなかったときは厳しい罰則を受ける

 

法定休日は法定で最低限あたえることを義務付けられている休日です。

労働者に対して1週間に1日以上(変形週休制を採用している場合には4週間に4日以上)の休日をあたえなければ、労働基準法違反になります。

 

もしも、法定休日をあたえることなく働かせてしまった場合は、使用者に対して「6か月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金」が科されてしまいます。

1回や2回程度、法定休日をあたえなかったとしても、ただちに刑事罰に問われる可能性は低いです。

 

しかし、再三の指導を受けてもなお改善しないときなどは、労働基準法違反として厳しく罰せられることになるでしょう。

 

企業が労働基準法違反として罰せられてしまえば、

刑事罰を受けるのみならず企業ブランドにも大きくキズを付けてしまう結果になるでしょう。

最低でも法定休日の休日をあたえることは徹底してください。

 

引用元:e-gov|労働基準法(第119条)

 

法定外休日を定めなくても罰則はない

 

法定外休日をあたえなかったり社内規定で定めなかったりしても違法にはなりません。

あくまでも、法定で定められている休日「1週間に1日以上もしくは4週間に4日以上」のみで足りるとされています。

 

ただし、1日8時間1週間40時間以内の労働時間を超えても良いわけではありません。

1日の労働時間を8時間に設定しているのであれば、必然的に法定外休日を定めなければいけない計算になります。

 

万が一、1日8時間1週間40時間以内と定められている労働基準法に違反してしまったときは、

同じく使用者が「6か月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金」が科されてしまいます。

 

法定外休日を定めなくても良いけど、1日・1週間の労働時間を超えてはいけない。

このこともしっかり覚えておいてください。

 

法定休日・法定外休日の出勤に対しては36協定が必須

 

法定で定められている休日に労働者を働かせる場合には、36協定の締結をしなければいけません。

もしも、36協定を締結することなく法定休日に働かせたときは、使用者に対して「6か月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金」が科されてしまいます。

 

また、法定休日に労働者を働かせたときには、

休日手当(割増賃金)を支給しなければいけません。

休日手当の割増賃金は最低でも35%です。

その労働者の1日あたりの賃金が15,000円であれば、+4,500円の手当を支給しなければいけません。

 

法定外休日に労働者を働かせた場合には、時間外労働として25%の割増賃金を支払わなければいけません。ただし、法定外休日に支払う割増賃金はあくまでも、1週間での労働時間が40時間を超えているときのみです。

 

たとえば、週休二日制を導入している企業で、1日の労働時間を7時間とすれば【7時間×5日間=35時間】になるため、5時間分については基本給の支払いのみで良いです。

 

法定休日か否か、1週間での労働時間が40時間いないか否かによって、割増賃金が異なるので注意してください。

休日内容 割増率
法定休日 35%
法定外休日 25%(1週間の労働時間が40時間を超えた分のみ)

 

割増賃金の支給をしなかったときも、労働基準法違反になるため「6か月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金」が科されてしまいます。

厳しい罰則規定があるので、法定休日や割増賃金には注意してください。

 

法定休日・法定外休日に曜日は関係ない?

 

就業規則で暦週の起算日を定めていない場合、暦週は通達に倣い「日曜日から土曜日まで」となります(昭和63年1月1日基発第1号)

つまり、法定休日をあたえるのは日曜日から土曜日までの間の1日以上でなければいけません。

 

法定休日や法定外休日に「曜日」が関係あるのか?と悩まれている方は少なくないでしょう。

最後に、法定休日や法定外休日をあたえる際の「曜日」についてお伝えします。

 

法定休日は日曜日もしくは土曜日

 

労働基準法では、法定休日は原則として曜日が関係ありません

多くの企業では就業規則において休日を土曜日及び日曜日としています。

法定休日を日曜日もしくは土曜日に設定しても良いですし、月曜日から金曜日の間で法定休日を定めても良いです。

社内規定で定めていればとくに問題は発生しないでしょう。

 

しかし、法定休日の曜日に関する規定を定めていなかったときは、就業規則において休日を土曜日及び日曜日としている場合、結果的に土曜日もしくは日曜日が法定休日になります。

その理由は、1週間の終わりと始まりが大きく関係しています。

 

労働基準法では「1週間に1回以上の休日をあたえなければいけない」と定められていることは、何度もお伝えしているとおりです。

そして、1週間の始まりは日曜日で終わりが土曜日です。

 

労働者が日曜日に出勤したとすれば、月曜日から土曜日までの間に1日以上の休日をあたえなければいけません。

つまり、休日は月曜日から金曜日でもまったく問題はありません。

 

労働者が日曜日に出勤したときは、就業規則において休日を土曜日及び日曜日としている場合には、次の土曜日が法定休日になるため、

仮に月曜日に休ませて土曜日に出勤させたとしても、休日手当を支給しなければいけません。

何かと煩わしい手続き等が増えてしまうため、前もって法定休日を定めておいたほうが良いでしょう。

 

法定外休日は何曜日でもOK

 

法定で定められた日数以上の休日はあたえるもあたえないも企業側の自由であるため、当然曜日も自由に決定できます。

一般的には、土日祝祭日を休日に定めている企業が多いですが、かならずそうしなければいけないなどの定めはありません。

 

ただし、社内で法定外休日の曜日を定めた以上は、その日に休ませなければ休日手当(割増賃金)が発生するので注意してください。

 

 

まとめ

 

今回は、法定休日と法定外休日の違いや罰則、注意事項についてお伝えしました。

今回お伝えしたことをまとめると下記のとおりです。

 

  • 法定休日は1週間に1日以上もしくは4週間で4日以上の休日のことを言う。法律で定められている休日であり、労働者に最低限あたえなければいけない休日。

  • 法定外休日は法定休日以外の休日のことを言う。絶対にあたえなければいけないなどのルールはない。ただし、1日8時間1週間40時間以内の労働基準法を守ろうとすると、週休二日制は発生し得る。

  • 法定休日・法定外休日時に出勤させる場合は36協定や時間外労働賃金の支給が必須。これに違反すると最大で6か月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金が科されてしまうので要注意。

  • 法定休日以上の休日をあたえなかったときも、労働基準法違反として6か月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金が科されてしまう。法定休日については、曜日まで細かく規定しておいたほうが良い。

法定休日は、法律で定められている「最低限あたえなければいけない休日」であるのに対して、

法定外休日は「法定休日以外の休日」とのことでした。

 

法定休日をあたえなければいけないのは当然ながら、法定外休日は社内規定に応じて自由に決定できます。

しかし、1日8時間1週間40時間以内の基準を守ろうとすれば、週休二日制の導入がわかりやすい仕組みでしょう。

 

法定休日をあたえなければ厳しい罰則を受けることになりますが、法定外休日は自由に決定できます。

そのうえで、一度決定した規定は守らなければいけず、労働者を働かせるときには手当を支給しなければいけません。

今回お伝えしたポイントを押さえつつ、休日に対する考えを深めてみてはどうでしょうか。

 

 

 

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サンカラ

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