たきざわ法律事務所

クリエイティブ・コモンズライセンス違反事件

はじめに

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(以下、CCライセンス)が付された写真をライセンス条件に違反して利用した行為が著作権侵害にあたるか、あたるとして損害賠償請求が認められるかどうかが争われた訴訟(以下、「本件」)で、東京地方裁判所は著作権侵害及び損害賠償請求権を肯定する判決を言い渡しました。

本コラムでは、本件について解説します。

判決文URL:https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/092/091092_hanrei.pdf

 

CCライセンスとは

他人の著作物をコピーしたり、ネットにアップする際には、権利保護期間が切れていたり制限規定が適用される場合を除き、利用許諾等の権利処理が必要です。

参考:著作物を利用するための手続き(利用許諾と権利譲渡)

 

利用許諾は一般的には契約によって行われるのが通常ですが、作品の権利者が広く一般公衆に向けて利用許諾の意思表示を一方的に行うパブリックライセンスという形態もあります。CCライセンスもその一つであり、クリエイティブ・コモンズ・ジャパンによると、以下のように記載されています。

CCライセンスとはインターネット時代のための新しい著作権ルールで、作品を公開する作者が「この条件を守れば私の作品を自由に使って構いません。」という意思表示をするためのツールです。

CCライセンスを利用することで、作者は著作権を保持したまま作品を自由に流通させることができ、受け手はライセンス条件の範囲内で再配布やリミックスなどをすることができます。

クリエイティブ・コモンズ・ジャパン「クリエイティブ・コモンズ・ライセンスとは」https://creativecommons.jp/licenses/

CCライセンスには、以下のような種類があり、作品の権利者が自身の判断でライセンス範囲を設定することができます。

CC BY 表示 作者の作品のクレジット(氏名、作品タイトル等)を表示することを条件に、改変・営利目的での二次利用も可
CC BY-SA 表示-継承 作者の作品のクレジットを表示し、改変時には同一ライセンスで公開することを条件に、営利目的での二次利用可
CC BY-ND 表示-改変禁止 作者の作品のクレジットを表示し、かつ改変しないことを条件に、営利目的での利用可
CC BY-NC 表示-非営利 作者の作品のクレジットを表示し、かつ非営利であることを条件に、改変・再配布可
CC BY-NC-SA 表示-非営利-継承 以下の条件で、改変・再配布可

・作者の作品のクレジット表示

・非営利限定

・改変時には同一ライセンスで公開

CC BY-NC-ND 表示-非営利-改変禁止 以下の条件で、再配布可

・作者の作品のクレジット表示

・非営利限定

・改変禁止

※クリエイティブコモンズジャパン「クリエイティブ・コモンズ・ライセンスとは」https://creativecommons.jp/licenses/を基に筆者が作成

 

なお、NC(非営利)はあくまでCCライセンス上の制限であって、営利目的での許諾を作品の権利者から個別に受けることは可能です。また、著作権法の権利制限規定とCCライセンスの内容が抵触する場合には、権利制限規定が優先されます(正確には権利制限規定に影響しない旨が規定されています)。仮に対象がNCの作品であっても権利制限規定上の「引用」に該当するのであれば営利目的でも利用できます。

CCライセンスは、WikipediaやFlickrで広く採用されています。本件は、CC BY-SAのライセンス(以下、「BY-SAライセンス」)が問題になりました。

事案の概要

  • 原告

スウェーデンの写真家。

 

  • 被告

起業家養成セミナーの運営・開催及びコンサルティング等を行う会社。

 

本件は、原告が、著作者名等を表示すること等を条件に無償での利用を許諾するCCライセンス(BY-SAライセンス)を付して自身が撮影した写真(以下、「本件写真」)を写真共有サイトに投稿したところ、被告が、原告の氏名等を表示せずに自身の運営するウェブサイトの記事に掲載したことについて、不法行為に基づく損害賠償として、複製権及び公衆送信権侵害によるライセンス料相当額、氏名表示権侵害による慰謝料及び弁護士費用並びに遅延損害金を請求した事案です。

 

 

争点

  • 被告に対する損害賠償請求権の存否(前提として著作権侵害の有無を含む)
  • 損害額

裁判所の判断

被告に対する損害賠償請求権の存否(前提として著作権侵害の有無を含む)

まず、裁判所は、以下の趣旨を述べ、公衆送信権及び氏名表示権の侵害を肯定しました。

  • 原告は、本件写真について著作者の氏名や作品タイトルを表示することを条件として、その利用を許諾した。
  • 条件が満たされなかった場合には、利用を許諾していない。
  • 本件では、著作者の氏名や作品タイトルを表示せずに本件写真が公衆送信されており、許諾範囲外として公衆送信権の侵害に該当する。
  • 本件写真の公衆への提示にあたり著作者の氏名も表示されていないため、氏名表示権侵害に該当する。

次に、損害賠償請求権の存否については、原告が損害賠償請求権を放棄したり原告に損害賠償請求権が発生しないといえるような事情もないとして、公衆送信権及び氏名表示権侵害についての損害賠償請求権を肯定しました。

 

損害額

損害額としては以下が認められています。

  • 公衆送信権侵害損害額(114条3項に基づくライセンス料相当額):1万円
  • 氏名表示権侵害(慰謝料):3万円
  • 弁護士費用相当額:1万円

 

本件のポイント

本件のポイントは、「CCライセンスに違反する法定利用行為は著作権侵害に該当する」と判断された点です。一般的に、契約に基づく利用許諾の場合において、許諾の範囲外の法定利用行為は原則として著作権侵害に該当するとされており、契約の場合と同じ結論になっているといえるでしょう。

なお、被告のウェブサイトにおいて実際に本件写真が掲載されたのは、記事一覧ページでのとある記事のアイキャッチ画像(サムネイル画像に近いものと思われます)としてでした。一般的に、アイキャッチ画像が並ぶ記事一覧ページでは写真の著作者名や作品タイトルまでは表示しないケースが多いかと思います(実際の記事内では画像の著作者名や作品タイトルをちゃんと明示しているケースはよくみかけます)。このような記事一覧ページでアイキャッチ画像としてCCライセンスの画像を利用する場合には、注意が必要かと思います。

 

さいごに

本コラムでは、CCライセンスが付された写真をライセンス条件に違反して利用した事例について解説しました。CCライセンスの場合には、CCライセンス自体がシンプルで分かりやすい点、画像サイトにCCライセンスである旨が明示されているケースが多い点から、CCライセンス違反になるケース自体は少ないと思いますので、本件は珍しい事例かもしれません。

ただ、類似の事例として、画像ストックサイトにある画像を利用する際に、画像ストックサイトの利用条件をちゃんと確認していなかったが故に著作権侵害をしてしまったケースはよくあるかと思います。画像ストックサイトにある画像を利用する場合には、必ず画像サイトの利用規約を事前に確認しましょう。