たきざわ法律事務所

会社にとって問題の社員を辞めさせる方法はある?取るべき対策と注意点

この記事を書いた弁護士は…

 

 

 

 

 

 

会社がより良いパフォーマンスを発揮するためには、組織に属するメンバーそれぞれがお互いの能力を補い合い、連携・協力することが大切です。会社での仕事はチームワークなので、うまく連携・協力することができない社員がチームにいると、マイナスのパフォーマンスを与えてしまいます。

 

南カリフォルニア大学教授のクリスティーン・ポラス氏が14,000人を対象に行った調査によれば、すごく仕事ができる社員を一人確保するコストよりも、有害な社員を雇い続けるコストの方が2倍ほど大きかったとのことです。仕事ができる人を雇うことを考えるよりも、有害な社員への適切な対処の方が、会社の経営には重要なのです。

 

今回は、活躍できない社員を退職させたい場合に取れる方法について解説します。

問題のある社員の特徴

問題のある社員

 

問題のある社員とは、会社内での言動や勤務態度などに難がある社員のことです。

 

問題のある社員は、会社の同僚や上司、取引先などといった仕事で関わる人たちとの間で頻繁にトラブルを頻繁に引き起こします。「有害社員」「モンスター社員」「問題社員」などと表現されることもありますが、その言動にはいくつかの特徴があります。ここではその特徴について解説します。

 

職務怠慢

 

任された仕事をまったくせず、ひたすらダラダラしている社員です。働かないおじさんが問題にされたり、会社で1日中ソリティアばかりやっている社員が話題になったりすることがありますが、この職務怠慢の典型的なタイプに当てはまります。

 

仕事をほとんどしていないのに給料は支払われるわけですから、同僚から不公平だと不満の声が上がりますし、自分も手を抜こうと考え始めるスタッフもいることでしょう。

 

攻撃的な言動

 

他の社員に攻撃的な態度を取り、ときにいじめやパワハラに発展する社員です。

 

攻撃的な態度を取る問題社員は、相手の立場や気持ちを配慮せず、自分の考えをぶつけます。パワハラは一般的に上司が行うものですが、何も問題がない上司からパワハラを受けたと主張するケースがあります。

 

このタイプの問題社員の影響により、せっかく採用し育ててきた社員が退職したり、精神的な病気になってしまったりするケースもあります。

 

陰で他人の悪口やゴシップを話す

 

誰しも同僚や上司の陰口を言ったり、会社の悪口を話したりすることはあるでしょう。しかし、度を越して誰かの噂をしたり吹聴してまわったりするのは問題です。

 

同僚との連帯感や人間関係は、仕事の生産性に強く影響することがわかっています。陰で他人の悪口やゴシップを話す問題社員は、職場での人間関係を崩壊させてしまう可能性があります。

 

このタイプの問題社員は、表面上は明るく愛想があり社交性が高いことがあり厄介です。面接での第一印象が良いため、採用の段階で見抜くことは困難でしょう。

 

会社のルールを守らない

 

会社には就業規則という規律があり、出社時間や遅刻や欠勤をするとしても、会社に連絡を入れなければならないことなどが定められています。「無断欠勤や遅刻・早退が多い」などのケースが、会社のルールを守らないということに該当します。

 

また、明文化された規律にとどまらず、同僚とうまく仕事を進めるためには、社会人として常識と考えられるルールやマナーを守ることが求められます。この常識を大きく逸脱した行動を取り続ける社員も、問題社員と考えられます。

 

このような常識を逸脱した例としては、「業務で必要な備品を買うために外出し、長時間帰って来ない」「会社の重要な書類をぞんざいに扱う」「報連相ができない」などのケースが挙げられます。

 

「報連相ができない」などは、一見するとたいしたことがない問題行動だと思われるかもしれません。しかし、上司が把握できないところでミスが生じ対処が遅れることで、会社にとって取り返しのつかない損失につながるケースがあるのです。

 

著しくパフォーマンスが低い

 

著しくパフォーマンスが低いというのは、「能力不足が原因で業務が滞る」ケースです。会社では多くの人材を採用しますから、社内には優れた能力を有する方も在籍する反面で、必要とする能力や業務への適性を持ち合わせない方も抱えることになります。

 

また、著しくパフォーマンスが低いにもかかわらず、自分が能力不足であることに自覚がないことも意外と多いものです。むしろ「自分は大変優秀な人材だ」とさえ思っている社員も少なくありません。

 

そして、上司や同僚からの認識と本人の自己評価にギャップが大きいと、トラブルも起きやすくなると考えられます。

 

同僚へ与える負の影響

問題社員

 

ここまで、問題のある社員の特徴について解説してきました。問題社員は本人が仕事を効率的にしないという特徴だけでなく、真面目に仕事をしている同僚にまで負の影響を与えてしまう恐ろしさがあります。

 

同僚へ与える負の影響には、「また嫌なことが起きるのではないか」と心配になり仕事に使う時間が減る、会社への忠誠心が下がる、仕事のパフォーマンスが下がるなどがあります。中には、「不満を顧客にぶつけてしまった」「仕事を辞めた」というケースもあり、有害な社員に対しできるだけ早く対処することの重要さが良くわかります。

 

問題のある社員への対応策

辞令

 

現在の職場環境では活躍できない問題社員も、なんらかのキッカケで改善する可能性が残されています。また、日本の法律上、会社側は社員を採用した以上、多少問題があったとしても、その能力を活かせるように努力すべきと考えられています。

 

そのため、問題のある社員への対応策を練り、少しでも社内で活躍できるように工夫しなければなりません。ここでは、問題のある社員に対してどのような対応を取るべきなのかについて解説します。

 

業務内容を変更する

 

現在の業務内容を変えることにより、状況を改善することができないか様子をみてみます。まずは配置転換のような部署の変更を伴った業務内容の変更ではなくより負担が少なく取り組めるよう業務のやり方を工夫します。

 

たとえば、これまで指示を「口頭」で行っていた場合、指示の内容は社内のチャットツールを使い「文章」で伝えるように変更するなどが考えられます。問題があるとされる社員に指示を出す担当者を決め、指示系統を一本化するとともに、マニュアルや手順書等で、作業や指示内容を随時確認できるようにしていきましょう。

 

こうすることで、社員が自分自身で、何の業務をしなければならないのか、もしできていないとしたらどの部分なのかが明確に把握できるようにします。

 

業務日報や行動予定表を毎日提出させる

 

業務内容がより明確になったら、次に業務日報や行動予定表を毎日提出させるようにしましょう。

 

会社の決まりとして、社員に日報を書いて提出させているケースは多くあるでしょう。せっかくですから、社員の行動を管理でき、そして社員をフォローできるような内容にしましょう。

 

仕事内容についてより具体的に書いてもらうようにし、上司が進捗状況を確認し、フォローしたり成果を評価したりすることができる日報が望ましいです。行動予定表もセットで提出させることで、その日に何ができなかったのかも明確になります。

 

業務内容が明確であればあるほど、できた点とできなかった点が明確になります。そして、問題のある社員ができなかった点について注意や指導を行ったとしても、業務上必要な指導であることがはっきりとします。

 

配置転換を行う

 

著しくパフォーマンスが低いと考えられる社員やコミュニケーションに問題のある社員についても、安易に改善の余地がないと判断すべきではありません。特に、複数の部署や複数の職種がある会社であれば、問題があるとされている社員を他の部署に配置転換してみましょう。

 

新たな業務にチャレンジさせることで、社員の適性を見る機会を作ることができますし、別の上司、新たな同僚のもとでの就業の機会を得ることができるため、社員にとってもリスタートを切りやすくなります。

 

対応策を取っても改善しない場合は退職勧奨を行う

退職奨励

 

退職勧奨は、社員に自主的に辞めるよう促す方法です。退職勧奨は解雇とは異なり、強制力があるものではなく、会社側からのお願いにすぎません。

 

そのため、最終的に退職するか否かの判断は問題社員の判断に委ねられます。そして社員の自由意思が尊重されるように、会社側が退職勧奨を行ったときには、回答に数日間の猶予期間を設けることが望ましいです。

 

退職勧奨を行う理由

 

退職勧奨と解雇の最も大きな違いは、強制力の有無であり、退職勧奨には強制力はありません。それでも退職勧奨を行う理由は、トラブルを未然に防ぐためです。

 

この他に、解雇の場合は労働基準法等の規則に則って、あらかじめ就業規則に定めておくことや解雇予告等が必要となります。しかし退職勧奨の場合はこのような規制が適用されませんので、ある程度自由に行うことができるのです。

 

そして、一方的な意思表示として行う解雇とは異なり、問題社員の退職にあたって何らかの取決めをしやすいメリットがあります。たとえば、適切な引継ぎを実施させる、会社の備品を返却させるなどといったことを取り決めます。

 

注意および指導を行う

 

問題社員に対する対処法としては、繰り返し注意や指導を行うことが重要です。そして、問題社員に何か変化が生じていないかを繰り返し確認する必要があります。

 

「繰り返し注意や指導を行ったにもかかわらず、改善の見込みがなかった」という事実を積み重ねることで、社員に退職勧奨の申し出に応じてもらいやすくなります。そして、もしその問題社員を解雇するとしても、解雇が適法であると客観的に考えられます。

 

丁寧な注意及び指導を行い、その指導の記録を具体的に残しておくと良いでしょう。

 

面談を実施する

 

繰り返し注意及び指導を行ってきたにもかかわらず、問題社員の言動に何の改善も見られないのであれば、他社で力を発揮してもらうことも考えましょう。問題社員には、会社から退職してもらうことになりますが、面談の場を設け退職勧奨します。

 

面談は他の同僚からは見えない場所で実施をするなど、社員へ配慮することが重要です。面談にあたっては、これまで残してきた注意および指導についての記録や、同僚からのヒアリングを行うなどの準備をしておきましょう。

 

退職勧奨の話し合いでは、会社側の担当者は2名ほどが同席することが望ましいです。会社側の担当者が複数名いることで、後々「言った」「言わない」の水掛け論になるトラブルを防ぐことができます。

 

退職勧奨の一環として面談を行うからには、問題社員に対し何らかの強制を行うものではありません。問題とされている社員の言い分もしっかりと聞き、事態改善の余地がないか考えましょう。

 

それでも折り合わないのであれば、会社側として退職して欲しい旨を伝えます。その場で回答を強要することは避け、後日に改めて時間をとって回答してもらうようにします。面談の時間も長くなり過ぎないように配慮し、数時間に及ぶことのないようにしましょう。

 

退職の合意をする

 

退職勧奨の一環として面談を行い、会社が退職をして欲しいとの申入れ、問題社員がこれに応じることで、退職の合意が得られたと考えられます。退職の合意が得られたならば、問題とされている社員退職届を提出してもらい受理します。

 

会社と社員が合意して退職するのであれば、退職の意思表示は口頭でも有効です。しかし、退職は会社と社員との雇用契約を終了させることであり、大きな法的効果を発生させる行為です。後々争いとなることを避け、証拠の一つとするために書面で行うべきと考えられます。

 

また、退職届は社員本人が作成したことを明らかにできるよう、署名欄は本人に自筆してもらうと良いでしょう。

 

退職の手続きを行う

 

会社からみて問題社員であったとしても、円満退職を目指しましょう。退職予定日を決め、残っている年次有給休暇の取扱いや、退職金の額についても確認します。

 

特に、退職勧奨によって社員に退職してもらうケースでは、退職金の額を上乗せすることも多いため確認が必要です。

 

これ以外には、退職証明書や離職証明書の準備が必要であるなど通常の社員が退職するケースと特に変わりません。ただし、年次有給休暇が残っていない場合、すぐに退職することが多く、退職までのスケジュールがタイトになりやすいため注意が必要です。

 

問題の社員を辞めさせる「解雇」の手続き

解雇通知書

 

 

解雇は、最終的な手段です。問題行動に対しての注意、業務指導の徹底、場合によっては懲戒処分を課すなどの対応を行った後に検討しましょう。

 

該当する解雇事由を確認する

 

解雇にはいくつかの種類があります。問題社員を解雇するケースであれば、「懲戒解雇」または「普通解雇」のどちらかになります。

 

「懲戒解雇」とは、社員が極めて悪質な規律違反や非行を行ったときに行うもので、懲戒処分のうち最も重い処分です。問題社員の言動が、暴行、傷害、脅迫などを伴うパワハラ行為であり、会社からの指導および懲戒処分を受けても改まらない場合などが該当します。

 

懲戒処分を行うには、就業規則にあらかじめ処分を行う旨を記載しておく必要があります。そのため、就業規則に記載のない事由での解雇は認められません。

 

問題社員を解雇するケースでもう一つ考えられるのは、「普通解雇」による解雇です。普通解雇は社員に原因があるときに行う解雇であり、使用者から一方的に問題社員との労働契約を解除します。

 

たとえば、勤務成績の不良や職務の怠慢、協調性の欠如などが該当し、社員に改善の見込みがない場合に普通解雇を行うことができます。普通解雇によって社員を解雇するときにも、基本的には就業規則にあらかじめ記載された解雇事由以外での解雇はできないと考えておくべきです。

 

これらのことから、問題社員を解雇する場合には、自社の就業規則を確認し解雇事由に該当するかどうかを確認しなければなりません。

 

適切な解雇の手順を踏む

 

ここまでの解説と重複する部分もありますが、重要なところですのでもう一度確認しながら解雇の手順を解説します。

 

まず、何度か口頭で注意や指導をして様子を見ます。このとき、問題社員の言い分にも耳を傾けてください。それでも改善が見られないようであれば、指導の内容を記録し、始末書を提出させて様子を見ます。こういう記録が書面で残っていることで、会社側が十分な指導を行ったことの証拠となります。

 

それでも改善が見られないようであれば、解雇以外の懲戒処分を行います。なお、就業規則にない懲戒処分はできません。

 

退職勧奨も、解雇に踏み切る前に実施しておきます。ただし、退職勧奨はお願いです。早い段階での退職勧奨を避け、解雇が視野に入るタイミングで交渉するのがベストでしょう。

 

これらのすべての対処を行ったにもかかわらず、問題社員に改善が見られないときに、解雇が可能になります。

 

弁護士などの専門家の活用する

 

退職に関する事項はトラブルになることが多く、解雇に該当するかどうかの判断は難しいものです。不当解雇となってしまうリスクを避けるためにも、弁護士に相談することをおすすめします。

 

正当な手続きを経て解雇を実施したとしても、社員から不当解雇であると訴えられるリスクは残ります。問題社員への対応は早期に弁護士と進め、問題社員には会社側には弁護士がついていることを伝えましょう。

 

このように伝えることで、問題社員に対し、会社の対応が法律上適切な対応だと認識してもらうことができ、不当に訴えられるリスクを低減させることができるでしょう。

 

最適解を提案します

 

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まとめ

 

現在の職場環境では、活躍できない問題社員が社内にいると、その社員一人だけの問題にとどまらず、同僚にまで負の影響を与えることがあります。そのため、問題社員について早めに対処することが会社の経営には重要です。

 

業務内容の変更を行うことで注意や指導を効果的なものとし、必要に応じて配置転換を行うなど社員が活躍できるよう工夫を続けます。それでも問題社員には自社で活躍する道がないのであれば、退職勧奨や解雇を実施し、別の会社で社員が能力を発揮できることを期待しましょう。

 

問題社員への対処は、単に解雇すれば良いという単純な問題ではありません。企業と、問題があるとされた社員の双方にできるだけ納得がいくよう話を進めることが重要です。

 

本件を始めとした労務トラブルは、企業経営に大きく影響しかねない重要な問題です。もちろん裁判になってからの対応も可能ですが、当事務所としては裁判を起こさない「予防」が最重要だと考えております。

 

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