たきざわ法律事務所

キャラクタープリントケーキと著作権

 

1.はじめに

先日、人気アニメ「鬼滅の刃」のキャラクターのイラストが描かれたケーキを販売したとして、著作権法違反の疑いで東京都渋谷区に住む自営業の女性が書類送検されたとの報道がありました。

 

NHK首都圏ナビもっとニュース『「鬼滅の刃」ケーキ 1万円超で無許可販売 自営業者を書類送検』

https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20211111c.html

 

「鬼滅の刃」のコピー品を巡っては、各地で商標法違反や著作権法違反容疑で摘発される事例が相次いでいますが(こちらのコラム もご参照下さい)、本件で摘発されたのはキャラクターが描かれたケーキ(以下、「キャラクターケーキ」)だったこともあり、「類似のサービスを行なっているケーキ店は他にもあるのに何故?」といった意見や「セーフとアウトの線引きが分からない」との意見が聞かれました。

では、何故今回に限って著作権法違反の容疑で送検される事態となったのでしょうか?

 

本コラムでは、本件行為の違法性の解説をするとともに、摘発に至った理由を考察していきたいと思います。

 

2.本件行為の違法性について

上記報道によると、東京都渋谷区在住の自営業の女性は、去年12月から今年3月にかけて、「鬼滅の刃」のキャラクターのチョコレートで飾りつけがされたケーキを、SNSを通じて男女4人に無許可で販売した疑いがもたれているとのことです。キャラクターケーキに描かれたイラストは、事前に客から好きな鬼滅の刃のキャラクター画像をメールで送信してもらい、それを反転印刷して、そこにシートを乗せてチョコレートペンでなぞって色付けをしたものだといいます。販売価格は、1つでおよそ1万5000円で、今年6月までの2年間の売り上げは、およそ400万円とみられるということです。

 

以下では、上記報道の内容に基づいて、本件行為の違法性(著作権侵害が成立するか否か)を検討していきます。

一般に、著作権侵害は、下記フローにしたがって判断されます。この中でも、次の①③④が重要な論点となります。(今回は②の要件は満たす前提で検討します。)

 

①権利の目的となる著作物か

権利の目的となる著作物とは、(a)著作権法2条1項1号で定義される著作物のうち、(b)著作権法6条各号(我が国の著作権法で保護を受ける著作物)に該当するものであって、かつ、(c)著作権法13条(権利の目的とならない著作物)に該当しない著作物を指します。裁判では、特に(a)の「著作権法2条1項1号で定義される著作物であるかどうか(著作物性)」が争点となります。

キャラクターの著作物性についていえば、キャラクターそのものは、性格や外見等を組み合わせた抽象的な概念に過ぎないため、著作権法2条1項1号で定義される著作物に該当しませんが、そのキャラクターが漫画やアニメ等において具体的な図柄として表現されたもの(キャラクターイラスト・絵)であれば著作物に該当します。

本件における鬼滅の刃のキャラクターイラストも、当然著作物に該当することになります。

 

③支分権の対象となるものか

支分権の対象となるには、(A)依拠性と(B)同一性・類似性の2つの要件が課されます(詳しくは、こちらのコラム をご参照下さい。)。

 (A)依拠性

キャラクターケーキと呼ばれるものの多くは、人気アニメや漫画等の登場キャラクターをベースに作られるものなので、依拠性は認められる可能性が高いです。

本件においても、客からメールで受け取った鬼滅の刃のキャラクター画像を反転印刷して利用しているので依拠性が認められると思われます。

 (B)同一性・類似性

「同一性・類似性」については、両作品を比較して、被疑侵害者の作品から著作権者の作品の「表現上の本質的特徴を直接感得できるか否か」によって判断がなされます(最判H13.6.28「江差追分事件」)。「表現上の本質的特徴を直接感得」することは、一般に、「創作的表現の共通性」の有無により評価されます。両作品を比較して、参考にしたキャラクターイラストの創作的な表現が、キャラクターケーキに描かれたイラストに再現されていれば「同一又は類似」となり、再現されていなければ「非類似」となります。

本件においては、ケーキにキャラクターを描く方法として、事前に客から受け取った鬼滅の刃のキャラクター画像を反転印刷し、そこにシートを乗せてチョコレートペンでなぞって色付けをする方法がとられています。参考にした鬼滅の刃のキャラクターイラストの創作的な表現が、キャラクターケーキに描かれたイラスト中に再現されているといえる可能性が高く、キャラクターケーキに描かれたイラストは鬼滅の刃のキャラクターイラストと同一であるといえると思われます。

④権利制限規定に非該当か

著作権法では、支分権の対象となる場合でも一定の権利制限規定の要件を満たすことで著作権侵害を回避することができます。(詳しくは、こちらのコラム をご参照下さい。)。

本件に関係する権利制限規定としては、個人的に又は家庭内等の“閉鎖的範囲内”で著作物を使用する目的である場合、例外的に著作権者からの許可なく複製又は翻案をすることができる「私的使用のための複製又は翻案」が検討できます(著作権法30条1項・47条の6第1項1号)。例えば、お子さんの誕生日に、親御さんがキャラクターケーキを作ってプレゼントする場合が該当します。ただ、本件のようにキャラクターケーキのオーダーを受けてケーキを製作し販売する場合は、私的使用の範囲内の行為とは言い難いため、これらの適用はないものと思われます。

 

以上の検討結果から、キャラクターケーキに描かれたイラストは人気アニメ鬼滅の刃のキャラクターイラストと同一であり、無許可でのキャラクターケーキの製作・販売する行為は私的使用のための複製ともいえないため、著作権侵害が成立する可能性が高いと思われます。

 

3.摘発に至った理由について

しかし、本件に限らず、キャラクターケーキは街のケーキ店でも公然と販売されていますし、これらのケーキの画像をSNSに掲載して宣伝する店も見受けられます。

 

では、これらの行為は著作権法上問題とならないのでしょうか?

 

ひとくちに、キャラクターケーキといってもプリントによるものであったり、手書きによるものであったり、その描かれ方は様々です。プリントによるものであれば、検討するまでもないのですが、手書きの場合は、著作権侵害の可否の検討が必要となるケースが考えられます。とはいえ、店で実際に売られているケーキという点でいえば、キャラクターケーキに描かれたイラストが参考にしたキャラクターイラストと全く似ても似つかないものが描かれているということは考えにくいので、通常は両キャラクターイラスト間で同一性・類似性が認められるものと思われます。したがって、街のケーキ店が、キャラクターケーキを無許可で製作・販売しているとすれば、著作権(複製権又は翻案権・譲渡権)を侵害している可能性が高いと考えられます。また、ケーキ店がそのケーキの画像をSNSに掲載して宣伝しているとすれば、それも著作権(公衆送信権)の侵害となるでしょう。

なお、これに関して言えば、営利目的のない、例えば一個人が趣味でキャラクターケーキを作り、その画像をSNSに掲載するような場合であっても同様のことがいえるので注意が必要です。

ただ、コンテンツホルダー(権利者)側からみると、すべての行為に法的措置を行うのは現実的ではない状況ですので、実際は法的措置がほとんど取られていない状況(一種の黙認状態)であると思われます。

 

本件で摘発に至った理由としては、筆者個人は以下のような事情があったのではないかと推測します。(あくまで筆者個人の見解であり、実際の事情とは異なる可能性がある点をご留意ください。)

 

  • 本件に限らず、「鬼滅の刃」のキャラクターを無断で利用した行為が日本中で頻発しいること
  • 無断利用行為に対してコンテンツホルダー側からの法的措置が積極的であること(むしろ、法的措置を取らざるを得ない程、無断利用行為が頻発している、ともいえるかもしれません。)
  • 本件は、キャラクターケーキ販売者がSNSを利用して広く営利的な宣伝をしていたこと
  • キャラクターケーキ1つの値段がおよそ1万5000円と非常に高額であり、キャラクターケーキ販売者は2年間でおよそ400万円の高い売上をあげていたこと
  • 二次創作といった著作権法的に微妙な内容ではなく、本件は著作権侵害であることがほぼ明白であったこと
  • 民事で一件一件対応するより、刑事事件化し各種報道されることで、同様のキャラクターケーキ販売者を間接的に抑止できると考えたため

 

 

4.さいごに

本コラムでは、キャラクターケーキを無許可で製作・販売して著作権侵害で書類送検された事例について、著作権法の観点から解説しました。

キャラクターケーキの無許可販売は、今回の「鬼滅の刃」以外のキャラクターであっても同様の法的リスクのある行為になります。コンテンツホルダー側で本件と同じような事例でお困りの場合には、是非弁護士等の専門家に相談することをおすすめします。