空き家買取のメリットは?流れや不動産業者選びまでを解説
日本の空き家増加や放置が大きな問題となっています。
放置し続けると、固定資産税の負担増加や建物の倒壊、空き巣など様々なリスクがあります。
そこで不動産を売却したいが「何をすればよいのかわからない」という方もいると思います。
ここでは、空き家の売却方法や空き家買取というサービス、買取のメリット、不動産業者選びまでを詳しく解説します。
目次
1.空き家買取とは?
「空き家買取」とは、不動産業者に直接物件を買取りしてもらうことです。
売主と条件が合えば、不動産屋がすぐに買取りします。
最終的にはリフォームなどで付加価値をつけ、再販売を行うことがほとんどです。
相場以上の高値で売却することを目指します。
「買取」と「仲介」の違い
空き家買取以外にも不動産屋が「仲介」して売却する方法もあります。
一般的には、仲介業者に依頼し家を購入してくれる個人を探してもらいます。
このときに不動産の価格査定も行い、購入希望者がいれば媒介契約を結んで買主に直接売却します。
つまり、不動産屋が間に入り、個人間の売買をお手伝いするのが「仲介」、不動産業者が直接買取るのが「買取」です。
すべての不動産屋が買取り業務を行っているわけではありません。
不動産買取の専門業者も多くあります。
そもそも「空家」とは?
2015年5月26日に「空家等対策特別措置法」が施行され「空家等」の定義が2条1項に規定されてます。
「空家等」とは、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。)をいう。
ただし、国又は地方公共団体が所有し、又は管理するものを除く。
(空家等対策特別措置法2条1項)
市町村長は、空家等の所在及び当該空家等の所有者等を把握するため、
市町村職員又はその委任した者(建築士や土地家屋調査士など)に立ち入り調査をさせることができます。
立入調査を拒み、妨げ、又は忌避した者は、20万円以下の過料に処せられます。
「特定空家等」とは?
空家等対策特別措置法2条では「特定空家等」の要件が規定されています。
- 放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
市町村長は、特定空家等の所有者等に対して必要な措置を取るよう助言、指導できますが、
改善されない場合は、勧告、命令を行なうことができます。
勧告、命令にも従わない場合は、行政代執行法による措置を実施することができます。
また、「特定空家等」に指定されると、
固定資産税(最大6分の1)及び都市計画税(最大3分の1)の課税標準の特例措置が適用されなくなります。
「空き家買取」の種類
不動産の買取には「即時買取」と「買取保証」があります。
「即時買取」
不動産会社が物件の買主となり、即時に買取を行うことを指します。すぐに買い取ってもらいたい方に最適です。
「買取保証」
一定期間に物件の販売活動を行い、それでも売れなかった場合に不動産会社が買取を行う方法です。
買取が保証されているので、売れなかった場合の不安が解消されます。
空き家の売却方法
大きく分けて3つの売却方法があります。
古家付き土地で売却する
古家付き土地は、古い建物をそのままにした状態で土地とともに売却する方法です。
古家は、経済価値のない建物を指します。
取り壊し費用がかからない、固定資産税を節約できるといった特徴があります。
古家付き土地の購入後にリフォームやリノベーションすれば、まだまだ住める物件もあります。
更地にして売却する
古家を解体し、更地にした状態で売却する方法です。
解体費用がかかりますが、老朽化が進み、耐震性が低くなっているケースなどに適しています。
倉庫、駐車場、トランクルーム経営など、様々な用途に活用できるため、買い手が付きやすく、高い査定額が期待できます。
また、空き家の管理を必要としないため、近隣トラブルになりにくいです。
一方、更地にすると建物がないため、固定資産税が高くなります。
不動産会社に買取してもらう
不動産会社に直接買取してもらう方法もあります。
不動産買取会社が査定し、条件面で合意すると、即現金で買取してもらえるところもあります。
空き家買取の流れ
まずは、空き家買取業者に相談する
空き家が古くなって困っている。
相続した空き家に家財などが放置したままになっている
空き家が遠方にあり、なかなか現地に行けない
などといった、それぞれの事情を不動産屋に相談します。
空き家の査定
対象物件の立地や状態など、調査・査定を行います。
買取業者が実際に現地へ向かい、査定することが多いです。
Webサイトから無料で査定依頼ができる不動産業者も多くあります。
査定金額の掲示・打ち合わせ
調査の内容や市場価格を勘案した上で、査定金額が提示されます。
その査定された金額を元に必要書類の説明やスケジュールなどの打ち合わせを行います。
身分証明書、実印、印鑑証明書、住民票
登記済権利証または登記識別情報
固定資産税納税通知書および固定資産税評価証明書
建築確認済証・検査済証
物件の間取り図・設備の仕様書
土地測量図、建物図面
購入時の売買契約書・重要事項説明書など
空き家買取のメリット・デメリット
空き家買取のメリット
短期間で売却・現金化できる
買取の交渉がスムーズに進むと、登記手続き等を経て早期に売却することができます。
一般的には、約1週間~1カ月程度の期間で売却することが可能となります。
即現金化が実現できるので、急な転勤、住み替え、相続問題などの解決につながります。
仲介手数料が不要
不動産業者が買取することで、仲介などの販売活動をすることなく売却ができます。
仲介業者との媒介契約を締結することがなく、仲介手数料も不要となります。
ちなみに、仲介手数料は宅地建物取引業法で上限が定められており、以下の通りになっています。
取引価格(税別) | 報酬額 |
200万円以下 | 取引金額×5% |
200万円超〜400万円以下の金額 | 取引金額×4%+2万円 |
400万円超 | 取引金額×3%+6万円 |
周囲に気づかれず売却ができる
不動産会社に仲介を依頼すると、レインズや物件情報サイト、広告に物件が掲載されます。
さらに購入希望者には内覧をしてもらわなければなりません。買取の場合は内覧の必要なく、広告にも掲載されません。
契約不適合責任が免除される場合もある
契約不適合責任は、民法改正前(債権法)に瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)と規定されていたものです。
「契約不適合責任」とは、売買契約や請負契約で引き渡された目的物の種類・品質・数量が契約内容に適合しない場合に担保責任を負うことです。
民法改正により2020年4月1日から新設されました。
(契約不適合の例)
雨漏り、給排水管の故障、シロアリ被害
新築一戸建てにひび割れが見つかった
全部のリフォームが一部しかされていない
土地の面積が小さい(150㎡の予定が100㎡しかなかった)
つまり、契約書に書かれている通りではなかった場合に「契約不適合責任」が生じる可能性が高いです。
瑕疵担保責任と契約不適合責任の違い
これまでの「隠れた瑕疵」という要件がなくなりました。
隠れた瑕疵に限らず、債務不履行を追求することでき、買主の請求できる権利が増加しました。
契約内容に適合しない場合は、
買主は、目的物の①追完請求(562条1項目)、②代金減額請求(563条1項)、③損害賠償請求(415~416条)、④契約の解除(541~542条)をすることができます。
買主が種類・品質の不適合を知ったときから1年以内に売主に通知する必要があります。
ただし、売主が不適合を知り(悪意)又は重大な過失(重過失)によって知らなかったときは、この責任期間の適用はありません。(566条)
なお、数量不足の場合には、こちらの566条自体の適用がありません。
瑕疵担保責任と契約不適合責任の比較表
瑕疵担保責任 | 契約不適合適任 | |
法的 | 法定責任説 | 契約責任説 |
責任対象 | 隠れた瑕疵 | 隠れた瑕疵を問わない |
売主の責任 | 無過失責任 | 損害賠償は過失責任 |
契約解除 | 契約の目的が達成できない場合に限り解除が可能。 | 契約の目的が軽微なものでない限り解除は可能。 |
損害の範囲 | 信頼利益のみ | 信頼利益、履行利益含む |
追完請求と代金減額請求、契約解除は、売主の帰責事由(責められるべき落ち度、過失)はなしです。
請負契約においても、契約内容不適合の担保責任の規定が準用されています。
不動産の買取は、不動産会社が買主であるため、契約内容不適合に関して免責とする契約条件も多いです。
しかし、必ず免除してもらえるわけではありません。
空き家買取のデメリット
相場より売却価格が安くなる
買取の場合は仲介での売却に比べると、市場価格より低くなるケースが多いです。
低くなる理由として、買い取った物件を「再販」することが考えられます。
リフォームやリノベーションなど、物件に付加価値を付けて再販するため、その費用を考慮した買取となります。
条件による買取制限がある
物件の状況、需要のないエリア、築年数が古い、再建築不可の物件など、条件面で買取に応じてもらえない場合もあります。
空き家買取に向いている物件
築古物件
築年数が30年以上など、建物の老朽化が進んでいる場合は、
内装の汚れや設備状況を見て購入希望者がなかなか現れにくいことが推測できます。
空き家が遠方にある場合
仲介で売却する場合は、不動産屋に足しげく通うことになります。
遠方に物件がある場合は、交通費も多くかかります。
不動産業者の買取であれば、査定後に売却することが可能となります。
空き家の所有者が複数人いる場合
空き家を相続した場合、所有者が複数人になることがあります。
この状態で売却するには、共同相続人全員の同意が必要となります。
しかし、不動産買取業者が適正な売却価格を提示すると、同意が得られやすくなります。
事故やトラブルのあった物件
心理的瑕疵や物理的瑕疵がある物件やトラブルが起きた物件などは、
仲介では買い手が付きにくいため、買取で売却できるケースが多いです。
中には、訳あり物件専門の不動産買取業者もあります。
2.不動産業者の選び方
不動産買取で重要なのは、買取してもらう「業者選び」にあります。
実績や信頼できる業者を選ぶ
信頼出来る不動産業者を選ぶことが最低限必要です。
担当者の対応やその会社の実績、口コミ、サービスの充実など、業者選びのポイントを押さえておくことが大切です。
業者のホームページで実績や各種サービスを確認しておきましょう。
査定金額が高い業者を選ぶ
不動産買取会社を選ぶには、査定額を高く提示してくれるところ優先します。
1社だけで査定すると、安く売ってしまう可能性もあります。
複数の業者を比較して相見積もりを取っておきましょう。
地域密着型の不動産業者を選ぶ
特定のエリアに詳しく、担当者が丁寧に対応し、適正な価格で高く購入してくれる可能性もあります。
3.どうしても空き家が売れない場合は?
空き家が売れない場合は、
地方公共団体が運営するホームページに情報提供する「空き家バンク」というサービスがあります。
「空き家バンク」とは、空き家を売りたい人や貸したい人などが物件情報を登録し、
買いたい人や借りたい人が購入や賃貸の申し込みができるというシステムです。
地域の定住・移住や地域の活性化を図ることを目的としています。
地方公共団体は、物件の交渉、契約等に関して仲介をすることはありません。
一方、「空き家バンク」では、売却、購入などを行うと、自治体によって補助金を出しているところもあります。
4.空き家買取後の活用法
事業展開を行う
コインパーキングや駐車場、古民家でカフェを営業する、農地にして農業を行うといった
様々な事業展開が期待できます。
レンタルスペースとして活用する
ワークショップやギャラリー、コミュニティースペース、各種イベントなど、
地域の活性化や交流の場として空き家の需要が高まっています。
リースバックを利用する
不動産業者の買取後は、リフォームやリノベーションを施し再販売することが多いですが、
自宅に住みながら、業者に買い取ってもらう「リースバック」というサービスがあります。
「リースバック」は、自宅を売却しても売却先と賃貸借契約を締結してそのまま借りて住む状態を指します。
まとまったお金が必要となった場合や住宅ローンの返済に困ったなど、様々な理由で
「リースバック」が検討されます。また、将来買い戻しをする予定の際にも有効な手段となります。
5.まとめ
本記事では、空き家買取のメリットやデメリットから、
不動産買取業者の選び方、空き家買取後の活用方法までを解説しました。
空き家買取では、短期間で売却可能、すぐに現金化できる、仲介手数料なしなど、メリットも多いですが、
信頼と実績のある不動産会社を選ぶことも重要となります。
1社に絞らず、複数の不動産会社を比較することが大切です。
また、空き家を売却するかどうか迷ってる方は、
一度、買取を得意とする専門の不動産会社に相談してみても良いでしょう。
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