たきざわ法律事務所

転職希望者が懲戒解雇を隠すと「経歴詐称」になる!企業は経歴詐称を見抜くのは難しい?懲戒解雇を見抜くための4つのポイント!

この記事を書いた弁護士は…

 

 

 

転職を希望する労働者が「懲戒解雇の事実を隠して入社したとき」は、経歴詐称になることが考えられます。

ただ、経歴詐称に該当するからと言って、ただちに解雇できるわけではありません。

 

日本の法律は「労働者の味方」であるのが一般的です。

たとえ、懲戒解雇の事実を隠し、経歴詐称に該当したとしても「正当な理由」がなければ解雇はできません。

 

また、懲戒解雇を「隠した」事実が認められなければ、そもそも経歴詐称が認められないでしょう。

転職希望者は自ら不利になる事実を企業側へ申告する必要はありません。

あくまでも、企業側から問われたときに申告すれば事足ります。

 

つまり、企業側から「懲戒解雇の事実」を探りにいかなければ、経歴詐称は認められることはないのです。

 

そこで今回は、懲戒解雇を隠して入社しようとした転職希望者はどうすれば良いの?と悩まれている方に向けて、

下記のことをお伝えします。

  • 懲戒解雇を「隠して」入社した労働者は経歴詐称になりますが、隠していなければならない
  • 経歴詐称を理由とした解雇が認められるのは稀。実情はケースバイケース
  • 転職希望者の経歴詐称(懲戒解雇の事実)を見抜くための4つのポイント「経歴の重要性」「提出書類」「ヒアリング」「前職照会」について
  • 懲戒解雇によって退職した転職希望者を雇用するかもしれないときに注目すべきこと

転職希望者自ら「懲戒解雇になった事実」を伝える義務はありませんが、

企業側からの問いに対して偽って答えたときは「経歴詐称」に該当することがあります。

 

使用者は経歴詐称を理由に解雇をしたいと思うかもしれませんが、

一度でも雇用してしまった以上は、そう簡単に解雇できないのが実情です。

 

まずは、経歴詐称による解雇が認められる事由や、転職者自ら懲戒解雇を伝える必要はないという事実についてお伝えします。

 

 

 

経歴詐称による解雇はケースバイケース

 

一度でも雇用契約を締結した労働者を解雇することが難しいのは、よくご存知なことでしょう。

ただ、経歴詐称は「重大な詐称行為」としても認められるため、解雇できるのではないか?と思われる方も多いです。

 

しかし、懲戒解雇を隠して転職してきた労働者を解雇するには「業務に著しい影響をあたえるか」がポイントになります。

つまり、一概に「経歴詐称=解雇できる」とは言い切れません。

 

たとえば、転職者がトラックドライバーとして働いていたとき、重大な交通違反を犯して懲戒解雇になったとしましょう。

その後、この事実を隠してタクシー会社へ転職してきたとすれば「業務に影響をあたえる恐れがある」として、解雇できる可能性は高いでしょう。

 

一方で、車の運転などが一切ない事務仕事などに転職をしてきたケースであれば「業務を行う際に支障をあたえる」とは言えず、解雇は認められないでしょう。

 

その他、企業の信頼を著しく落とすことが認められるときや、重大な犯罪を行って懲戒解雇になった転職者については、解雇が認められる可能性があります。

「〇〇であれば経歴詐称で解雇できる」のような明確な定義はありません。

 

 

転職者自ら「懲戒解雇」を伝える必要はない

 

転職者自ら懲戒解雇になった事実を伝える必要はありません。

履歴書等に職歴を記載するときも退職理由は「一身上の都合」で良いことになっています。

 

ただし、履歴書に「賞罰欄」があるときには、懲戒解雇の事実を記載しなければいけないことになっています。

もしも賞罰欄に懲戒解雇の事実を記載しなければ、経歴詐称として認めることができます。

 

なお、企業側は面接時に退職をした理由や懲戒解雇の有無などを聞くことも許されています。

このときに、偽ったことを言っても経歴詐称になります。

 

転職者は「言わなくても良いことは言わない」ですが「問われたら正直に答える義務がある」この2点は覚えておいてください。

企業側から聞いていないにもかかわらず「転職者が懲戒解雇を隠していた、経歴詐称だ!」と言っても認められません。

 

当然、解雇も認められない可能性が高くなるので、前もって懲戒解雇の有無などを確認しておくようにしてください。

 

 

経歴詐称を見抜くための4つのポイント

 

懲戒解雇を隠して(偽って)転職してきた労働者であっても、1度雇用すればそう簡単に解雇はできません。

中には「〇〇な理由で懲戒解雇された人なら雇用しなかった」という事例もあるかもしれません。

 

後から気付いても企業側が何かしらのアクションを起こすと、退職推奨やハラスメントなどの違法行為に抵触する恐れがあります。

 

唯一、企業ができることは「雇用する前に懲戒解雇の事実を見抜くこと」です。

後に発覚する恐れがある経歴詐称は、下記の4つのポイントを抑えることで確実に防ぐことができるでしょう。

  • 経歴の重要性を伝える

  • 提出を求める書類に要注意

  • 面接時のヒアリングに気を使う

  • 必要に応じて前の会社に問い合わせをする

次に、懲戒解雇を見抜き、経歴詐称による被害を抑えるためのポイントについてお伝えします。

 

 

ポイント①:経歴の重要性を伝える

 

「経歴」を正しく伝えることの重要性を伝えてください。

経歴詐称に該当すれば、解雇になり得ることや損害賠償請求をされる恐れがある「重大な事項」であることをしっかりと伝えてください。

 

これは転職希望者を「脅す」わけではなく、あくまでも注意喚起の一環として伝えておくと良いでしょう。

あくまでも義務的にいつもどおりの習慣のように伝えることが大切です。

 

経歴の重要性を伝えることで、万が一嘘が発覚したときのリスクについても転職希望者が把握でき、正直な受け答えをすることでしょう。

また、後に経歴詐称が発覚したときは「解雇や損害賠償について伝えた」という事実が強みになることもあります。

 

 

ポイント②:提出を求める書類に注意する

 

応募時や面接時に求める書類を工夫することで「懲戒解雇」の事実を隠すことができなくなります。

たとえば、下記のような書類は経歴詐称を確認するうえでとても有効でしょう。

  • 退職証明書
  • 離職票

 

上記書類の提出でなぜ、経歴詐称を見抜けるのか?書類別に詳しく解説します。

 

【退職証明書】

退職証明書は労働者が退職した職場に対して請求することで発行されます。

懲戒解雇による退職のときは、懲戒解雇になった理由等事細かく記載されています。

 

退職証明書の提出を求める企業は少ないですが、懲戒解雇に関する経歴詐称を防ぐためには有効な手段でしょう。

 

【離職票】

離職票は会社を退職した人が失業保険給付を受けるために必要となる書類ですが、

転職希望者に提出を求めることで、懲戒解雇の事実について把握することができます。

 

離職票には「退職理由」の項目があるので「懲戒解雇(重責解雇)」と記載されていれば、すぐに発覚するでしょう。

ただし、就職先企業で離職票が必要となるケースはほぼありません。

 

転職希望者に離職票の提出を求めることで、理由を聞かれることもあります。

このとき「退職理由を確認するため」と答えれば、転職希望者は自分が疑われているのではないか?と思ってしまうこともあるでしょう。

本当に必要と感じるときのみ、離職票の提出を求めると良いでしょう。

 

ちなみに、賞罰付きの履歴書に「懲戒解雇の事実」を記載する義務はありません

 

企業等が面接を行うときにかならず提出を求める「履歴書」ですが、あえて「賞罰付きの履歴書」の提出を求めることで、

懲戒解雇の事実を把握しやすくなる。と考える方もいますが間違いです。

 

賞罰とはその名のとおり、賞を受けた実績や刑法犯罪によって受けた罰則について記載する欄です。

刑法犯罪とは、裁判所によって判決が下った罰金刑以上の罰を指すため、懲戒解雇は含まれません。

 

また、スピード違反等による行政処分の罰金も該当しません。

もしも賞罰欄に懲戒解雇の記載がなくても、転職希望者に記載の義務はないので経歴詐称に該当しないので注意してください。

 

 

ポイント③:面接時のヒアリング

 

面接時に「前職を辞めた理由」について聞いてみると良いでしょう。

このとき、はっきりと退職理由を述べない転職者に対しては「懲戒解雇になったことがあるのか?」と聞いてみると良いでしょう。

 

転職希望者は自ら積極的に懲戒解雇の事実を話す義務はありませんが、聞かれたときには正直に答える義務があります。

懲戒解雇の事実を偽って入社すれば、経歴詐称として解雇事由に該当したり、損害賠償請求の対象になったりすることもあるでしょう。

 

 

ポイント④:必要に応じて前の会社へ問い合わせても良い

 

書類やヒアリング等でも実情が把握しきれないときは、転職希望者が勤めていた前の会社へ直接問い合わせても良いでしょう。

これはいわゆる「前職照会」と呼ばれる手段です。

 

中には「前職照会が違法」と思われている方もいますが、ただちに違法となるわけではありません。

ただし、前職照会にて聞き取りをする「内容」によっては、個人情報保護法に抵触する恐れもあります。

 

とは言っても「懲戒解雇の事実があったか否か」程度の前職照会が違法となるケースは少ないでしょう。

 

 

懲戒解雇された転職希望者を受け入れるときに注意すべきこと

 

人としての魅力や能力的な魅力がある転職希望者が「懲戒解雇」の事実があるとき、企業としては雇用すべきか否かを悩むときがあるでしょう。

最終的な判断は企業側で行うものですが、懲戒解雇=絶対悪とも言い切れません。

 

懲戒解雇の事実を抱える転職希望者を受け入れるかどうか悩んだときは、下記のことに注目して判断してみると良いでしょう。

 

  • 懲戒解雇を受けた理由
  • 悪質性や反省度について
  • 転職希望者の業務遂行能力で最終判断

なぜ懲戒解雇を受けたのか把握しておく

 

【懲戒解雇=絶対悪】とも限りません。稀なケースかも知れませんが実際に「会社の一方的な事情で懲戒解雇にされた」労働者もいます。

このようなケースであれば、懲戒解雇の過去がある転職希望者でも受け入れて良いでしょう。

 

一方で、自分の重大な失敗等によって懲戒解雇となり、同業種に転職希望をしてきたときは雇用すべきではないでしょう。

たとえば、重大な交通違反を起こしたドライバーが同業種に転職しようとしたとき。

 

その他、会社のお金を横領して懲戒解雇となった人が金融関連会社へ転職希望してきたときなど。

懲戒解雇の理由と業種による相性次第で雇用するか否かを決定しても良いでしょう。

 

 

悪質性や反省度をよく確認

 

懲戒解雇になった理由の「悪質性」はもっとも重要でしょう。

 

懲戒解雇は企業が行う処罰の中でもっとも重たいものです。

たとえば、会社のお金を横領したとか明らかで悪質なハラスメントなど、

刑事罰にも触れかねない重要なことを行った事実があったときに初めて懲戒解雇が認められます。

 

ただ中には「精神的不調で長期間の無断欠勤をした挙げ句の懲戒解雇」等、悪質性が低いと判断できる可能性がある事由もあります。

事実、このようなケースでは裁判で懲戒解雇を無効とする判決が下ることがあります。

 

各状況や転職希望者の反省度などを考慮して、総合的に判断して雇用するかどうかを決定すると良いでしょう。

 

 

転職希望者の業務遂行能力で判断をする

 

転職希望者の懲戒解雇理由と業務遂行能力を天秤にかけたとき、能力が勝るのであれば雇用するべきでしょう。

懲戒解雇になった理由さえ把握しておけば、企業側が対策をとることもできます。企業側の利益等を総合的に考えて、判断をしてみると良いです。

 

 

まとめ

 

今回は、転職希望者が懲戒解雇の事実を抱えていたときについてお伝えしました。

お伝えしたことをまとめると下記のとおりです。

 

普通に働いていれば、懲戒解雇になることはほぼありません。

前職で懲戒解雇になったのであれば、相当な事情を抱えているのでしょう。

 

懲戒解雇の事実を報告しないこと自体は何ら問題ありませんが、問われても隠す行為が問題であるとのことでした。

懲戒解雇の事実を伝えることでただちに不採用となる可能性を考えれば、できるだけ伏せておきたいと思う転職者の気持ちもわかります。

 

一方で、企業もできることであれば懲戒解雇の事実がある人を雇用したくない。

そう思うのも当然です。転職者は勤め先を選ぶ権利があり、企業は労働者を選ぶ権利があります。

その中で互いに駆け引きが必要になることもあるのでしょう。

 

今回お伝えしたことをぜひ参考にしていただき、企業側は経歴詐称を見抜く努力をされてみてはどうでしょうか。

 

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