たきざわ法律事務所

著作権法からみる「パクリ」「盗作」とは? 

この記事を書いた弁護士は…

1. はじめに

これまで著作権法講座では、著作者の権利である著作財産権及び著作者人格権、さらには著作者と著作権の関係について学んできました。

そして、今回と次回のコラムでは、これまでの知識を踏まえ、コンテンツやプログラム等を作成・利用する際に、「どんなことをした場合に著作権侵害となってしまうのか?」を2回に分けて解説していきたいと思います。

そこで、著作権侵害の1回目となる今回は、「パクリ」や「盗作」と呼ばれて問題となる事案の多い、「複製権」と「翻案権」侵害です。

2. 複製と翻案の違い

まずは、これらの権利の対象行為である「複製」や「翻案」の意味からおさらいしましょう。

複製権における「複製」は、「印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的再製すること」をいい(2条1項15号)、その概念は、既存の著作物への依拠性と、同一性・類似性のあるもの(その内容及び形式を覚知させるに足りるもの)を作成することと解されています(最判昭53.9.7「ワンレイニーナイトイントーキョー事件」)。

これに対し、翻案権における「翻案」は「著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案すること」をいいます(2条1項11号)。

複製と翻案をどこで線引きして区別するかは、非常に難しい問題ではありますが、判例の考え方に基づくと以下の2つの考え方に大別することができます。

 

(1)内面的形式利用説

著作物の要素を「内容」と「形式」に分け、形式のうち「外面的形式」を利用するものを「複製」とし、「内面的形式」を利用するものを「翻案」とする考え

(2)二次的著作物作成

翻案を「既存の著作物を基にして利用し、新たな著作物を(二次的著作物)を創作すること」と捉え、既存の著作物等に新たな創作的表現(創作性)が認められる場合が「翻案」で創作性が認められない場合を「複製」とする考え

 

これにつき、最高裁では(2)の二次的著作物作成説をとることを明らかにしています(下記参照)。

 

「言語の著作物の翻案(著作権法27条)とは、既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう。」(最判平13.6.28「江差追分事件」)

 

すなわち、複製と翻案を“新たな創作性の有無¨で区別する二次的著作物作成説では、既存の著作物に対する修正、増減、 変更等の有無やその大小によって以下のように区別されることになります。

※なお、既存の著作物への修正、増減、変更等の有無によっては同一性保持権侵害にも該当し得ますが、本コラムでは複製権と翻案権に絞って解説するため、同一性保持権については言及しません。

 

出典:岡村久道「著作権法 第5版」(民事法研究会、2021)p180を一部改変

 

ここまで、複製と翻案の違いについて解説してきましたが、実際のところは複製権侵害にせよ翻案権侵害にせよどちらにせよ著作権侵害という意味では一緒であり、その効果自体は変わりません。

そのため、本コラムでは敢えて複製権侵害と翻案権侵害とを区別せずに、「どこまで似てしまったら著作権侵害と判断されてしまうのか?」というイメージを掴むことを目的として、侵害の判断手順から実際の裁判例まで見ていきたいと思います。

 

3. 複製権・翻案権侵害の成立要件

まず、一般に著作権侵害は以下の手順を踏んで判断されます。

この中でも、裁判では主に①と③が争点となります。

 

①権利の目的となる著作物であるか

権利の目的となる著作物とは、著作物(2条1項1号)のうち、6条各号(我が国の著作権法で保護を受ける著作物)に該当するものであって、かつ、13条(権利の目的とならない著作物)に該当しない著作物を指します。

 

③支分権の対象となるものか

支分権の対象となるには、(A)依拠性と(B)同一性・類似性の2つの要件が課されることになります。

 

(A)依拠性(被告作品が原告作品に依拠していること)

複製権・翻案権侵害が成立するためには、被告作品が原告作品に依拠して作成されたことが必要となります。

依拠性の認定については、類似の程度のほか、創作の先後、著作物の著名性、対象となる著作物に接する機会があるかどうか、被告の社会的立場、創作性の高低等を総合的に勘案して判断されます。

 

(B)同一性・類似性(被告作品が原告作品と同一又は類似すること)

同一性・類似性については、原告作品のうち創作的な表現と認められる部分のみを判断対象として、これと被告作品の共通する部分について、上記原告作品部分の『表現上の本質的な特徴』を直接感得しうるか否かという基準によって判断されます。

したがって、原告作品と共通する部分がある場合であっても、それが思想・感情その他のアイディア、事実もしくは表現それ自体でない部分であれば侵害は成立しません。さらに、たとえ表現部分が共通していた場合であっても、それが原告作品の表現上の創作性を有しない部分である時には侵害は成立しません。なお、創作性は表現それ自体を対象に判断されるので、思想・感情のような、表現それ自体でない部分が如何に独創的であっても、創作性は認められません。

 

実際の裁判では、この同一性・類似性を「濾過テスト」と呼ばれる方法で判断することも多いです。

具体的な判断手順は以下の通りです。

(1)原告作品と被告作品の間で同一性を有する部分がどこかを認定

(2)同一性を有する部分が表現であるか否かを検討

(3)その表現は創作性があるか否かを検討

(4)被告作品から原告作品の本質的な特徴を直接感得することができるかを判断

4. 裁判例紹介〜複製権・翻案権が争われた事件〜

 

では、最後にこの同一性・類似性の有無の判断について、実際の裁判例から見ていきましょう。

 

 

【同一性・類似性あり】

   A.東京地判H16.6.25「LECイラスト事件

 

この事件では、人形が家を持ち上げているイラストの類否が争点となり、裁判所は以下のよう述べ、類似性を肯定した上で、被告イラストは原告イラストの翻案に当たると判断しました。(下線部は筆者による。以下同じ。)

 

人形を肌色一色で表現した上、人形の体型をA型にして手足を大きくすることで全体的なバランスを保ち、手のひらの上に載せた物が見る人の目をひくように強調するため、左手の手のひらを肩の高さまで持ち上げた上、手のひらの上に載せられた物を人形の半身程度の大きさに表現するという表現方法は、原告の思想又は感情の創作的表現というべきであり、原告イラスト1の特徴的な部分である。」そして、 「被告イラスト1は、このような原告イラスト1の創作的な特徴部分を感得することができるものであるから、原告イラスト1に類似する」

 

  B.知財高判H27.5.21「実話大報事件

この事件では、被告漫画が原告記事の翻案物にあたるかが争点となり、被告漫画と原告記事とを比較した上で、裁判所は以下のように述べ、被告漫画は原告記事の翻案物に当たると判断しました。

 

被告漫画1は、原告記事1に依拠し、その記述のうちの一部を省略し、かつ、その表現形式を漫画に変更したものにすぎず、全体として、原告記事1の表現上の本質的特徴を直接感得することができるから、原告記事1の翻案物に当たるというべきである。

 

 

 

【一部同一性・類似性あり】

  C.知財高判H27.6.24「プロ野球ドリームナイン事件

 

この事件では、プロ野球トレーディングカードを題材としたSNSゲームの類似性が争点となり、裁判所は以下のように述べ、『選手ガチャ』については、類似性を否定したものの、『選手カード』については、中島選手及びダルビッシュ選手の『選手カード』に類似性を認めました。

 

  • 『選手ガチャ』について

「控訴人ゲームと被控訴人ゲームの選手ガチャは、共通する点があるとはいえ、その共通する部分のほとんどは、そもそも事実の表現又はありふれた表現であり、したがって、創作性がないか、又は表現上、特徴的とはいえない表現にすぎないそして、両ゲームの選手ガチャは、一連の 流れの中の個々の具体的な表現内容において大きく相違し、その相違点は創作性がある共通点の部分から受ける印象を大きく上回るものというべきであるから、両ゲームの選手ガチャに接する者が、その一連の動画全体から受ける印象は異なり、被控訴人ゲームの選手ガチャから控訴人ゲームの表現上の本質的な特徴を直接感得することはできないというべきである。」

 

  • 中島選手及びダルビッシュ選手の『選手カード』について

両選手カードは、表現上の本質的特徴を同一にしているものと認められ、また、その表現上の本質的特徴を同一にしている部分において思想又は感情の創作的表現があるものと認められる。

 

 

【同一性・類似性なし】

  D.東京高判H13.1.23「けろけろけろっぴ事件

 

この事件では、被告(被控訴人)のキャラクター「けろけろけろっぴ」の図柄と原告(控訴人)の図柄の類否が争点となり、裁判所は以下のように述べ、類似性を否定した上で、被告図柄が原告図柄の複製権又は翻案権を侵害したものではないと判断しました。

 

擬人化されたカエルの顔の輪郭を横長の楕円形という形状にすること、その胴体を短くし、これに短い手足をつけることは、擬人化する際のものとして通常予想される範囲内のありふれた表現というべきであり、目玉が丸く顔の輪郭から飛び出していることについては、我が国においてカエルの最も特徴的な部分とされていることの一つに関するものであって、これまた普通に行われる範囲内の表現である。

「独自の創作性を認めることができる本件著作物の形状、図柄を構成する各要素の配置、色彩等による具体的な表現全体に関して、本件著作物(1)、(2)、(3)①ないし⑥、(4)①及び②と、被控訴人図柄①、④及び⑤を、それぞれ個別的に対比してみると、輪郭の線の太さ、目玉の配置、瞳の有無、顔と胴体のバランス、手足の形状、全体の配色等において、表現を異にしていることが明らかであり、このような状況の下で、被控訴人図柄を見た者が、これらから本件著作物を想起することができると認めることはできないから、被控訴人図柄を、そこから本件著作物を直接感得することができるものとすることはできないというべきである。」

 

  E.知財高判H28.12.8「しまじろうのわお!事件

 

この事件では、幼児向けテレビ番組「しまじろうのわお!」のダンス用楽曲の公募で採用となった被告楽曲と不採用となった原告楽曲との類否が争点となり、裁判所は以下のように述べ、類似性を否定した上で、被告楽曲が原告楽曲の複製権又は翻案権を侵害したものではないと判断しました。

 

「楽曲についての複製、翻案の判断に当たっては、楽曲を構成する諸要素のうち、まずは旋律の同一性・類似性を中心に考慮し、必要に応じてリズム、テンポ等の他の要素の同一性・類似性をも総合的に考慮して判断すべきものといえるから、原告楽曲と被告楽曲のテンポがほぼ同じであるからといって、直ちに両楽曲の同一性が根拠づけられるものではない。そして、上記で述べたとおり、両楽曲は、比較に当たっての中心的な要素となるべき旋律において多くの相違が認められることから、被告楽曲から原告楽曲の表現上の特徴を直接感得することができるとは認め難いといえる。他方、両楽曲のテンポが共通する点は、募集条件により曲の長さや歌詞等が指定されていたことによるものと理解し得ることから、楽曲の表現上の本質的な特徴を基礎づける要素に関わる共通点とはいえないのであって、上記判断を左右するものではない。したがって、控訴人の上記主張は理由がない。」

 

 

  F.知財高判H24.8.8「携帯電話機用釣りゲーム事件

この事件では、携帯電話機用釣りゲームにおける魚の引き寄せ画面の類否が争点となり、裁判所は以下のように述べ、類似性を否定しました。

 

「原告作品の魚の引き寄せ画面と被告作品の魚の引き寄せ画面とは、水面より上の様子が画面から捨象され、水中のみが真横か ら水平方向に描かれている点、水中の画像には、画面のほぼ中央に、中心からほぼ等間隔である三重の同心円と、黒色の魚影及び釣り糸が描かれ、水中の画像の背景は、水の色を含め全体的に青色で、下方に岩陰が描かれている点、釣り針にかかった魚影は、水中全体を動き回るが、背景の画像は静止している点において共通するとはいうものの、上記共通する部分は、表現それ自体ではない部分又は表現上の創作性がない部分にすぎず、また、その具体的表現においても異なるものである。

「被告作品の魚の引き寄せ画面は、アイデアなど表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において原告作品の魚の引き寄せ画面と同一性を有するにすぎないものというほかなく、これに接する者が原告作品の魚の引き寄せ画面の表現上の本質的な特徴を直接感得することはできないから、翻案に当たらない。」

 

5.さいごに

本コラムでは、複製権・翻案権侵害の要件とそれに関する裁判例をご紹介しました。ご覧いただいた方はお分かりになるかと思いますが、実際の複製権・翻案権侵害の判断(特に同一性・類似性の判断)のボーダーラインは非常に微妙で難しいところがあります。

もし皆さんが複製権・翻案権侵害に関するトラブルに巻き込まれた場合には、専門家の判断を仰ぐことが望ましいでしょう。