たきざわ法律事務所

【10月施行】改正著作権法のポイント

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はじめに

「著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律」(令和2年6月12日公布。以下「令和2年改正法」)では、以下の4点について著作権法が改正されました。

 この令和2年改正法のうち、本コラムでは青字の改正事項(2020年10月1日施行)について解説していこうと思います。

1)インターネット上の海賊版対策の強化

  • リーチサイト(侵害コンテンツへのリンク情報等を集約したウェブサイト)対策(2020年10月1日施行)
  • 侵害コンテンツのダウンロード違法化拡大(2021年1月1日施行)

2)著作物の円滑な利用を図るための措置

  • 写り込みに係る権利制限の対象範囲の拡大(2020年10月1日施行)
  • 行政手続に係る権利制限規定の整備(地理的表示法・種苗法を追加)(2020年10月1日施行)
  • 著作物を利用する権利に関する対抗制度の導入(2020年10月1日施行)

3)著作権の適切な保護を図るための措置

  • 著作権侵害訴訟における証拠収集手続の強化(2021年1月1日施行)
  • 不正使用防止のためのアクセスコントロール技術に関する保護の強化(2021年1月1日施行)

4)その他

  • プログラムの著作物に係る登録制度の整備(プログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律)(公布の日から起算して1年を超えない範囲内で政令で定める日)

 

 

リーチサイト(侵害コンテンツへのリンク情報等を集約したウェブサイト)対策

改正の経緯

近年、インターネット上の海賊版による被害が深刻化しています。

 

その背景の一つとして、「自身のウェブサイトに侵害コンテンツを掲載せず、他のウェブサイトへのリンク情報等を提供することで利用者を侵害コンテンツに誘導しているウェブサイト(リーチサイト)」や「これと同様の機能を有するアプリ(リーチアプリ)」の問題が指摘されています。

 

特に、悪質なリーチサイト・リーチアプリは侵害コンテンツの拡散を助長し、そこにおいて行われるリンク情報等の提供は著作権侵害と同視すべき大きな不利益を著作権者に与えていると言われています。

 

しかしながら、令和2年改正法施行以前では、著作物の無断アップロードする行為は著作権侵害(著作権法23条)になるものの、アップロードを伴わないリンク情報等を提供するだけの行為は著作権侵害に該当しないのが一般的であるため、リーチサイト・リーチアプリの行為を著作権侵害として差し止めや立件(刑事罰を適用)するのは困難であるという問題がありました。

 

そこで、これらを適切に対応できるように、令和2年改正法で、『リーチサイト・リーチアプリにおける侵害コンテンツへのリンク情報の提供行為や、『リーチサイト運営行為・リーチアプリ提供行為を規制する規定が新設されることになりました。

 

なお、海賊版対策としてリーチサイト対策とは別に「侵害コンテンツのダウンロード違法化拡大」も2021年1月1日に施行される予定です。両者を合わせた海賊版対策の概略図が下記になります。

 

【海賊版対策の概略図】

※③のユーザーによる海賊版のダウンロードについては、ダウンロードではなく、複製を伴わないストリーミングでの表示の場合もあり、その場合のユーザーの行為は規制対象外です。

 

 

改正の概要

Ⅰ リーチサイト・リーチアプリにおける侵害コンテンツへのリンク情報提供行為

一つ目の改正点は、リーチサイト・リーチアプリにおける侵害コンテンツへのリンク情報の提供行為を規制する改正著作権法113条2項の新設です。

 

これにより、以下の3要件をすべて満たすリンク情報提供者の行為は著作権等を侵害する行為とみなされ、民事措置または刑事罰(3年以下の懲役・300万円以下の罰金(併科も可))の対象とされることになります。

 

① リンク情報等の提供による行為であること

  • URLによる提供(URLの一部を☆等の記号に置き換えたものも含む)
  • コンテンツへの到達を容易にするボタンによる提供

② リーチサイトまたはリーチアプリにおいて他人による侵害コンテンツの利用を容易にする行為であること

③ 誘導した著作物等が侵害著作物であることを知っていたまたは知ることができたと認めるに足りる相当の理由があること

 

具体的には、以下のようなケースが想定されます。

具体例
ウェブライターが、違法アップロードされた漫画であることを知りながら、自身の担当するサイトに「人気漫画読み放題!!!!こちらをクリック!」といった誘い文句を用いて、違法アップロードされた漫画が掲載されているサイトへ飛ぶボタンを設置しているような場合

Ⅱ リーチサイト運営行為・リーチアプリ提供行為

二つ目の改正点は、リーチサイト運営者・リーチアプリ提供者がリンク情報の提供を放置する行為を規制する改正著作権法113条3項の新設です。

これにより、以下の3要件をすべて満たすリーチサイト運営者・リーチアプリ提供者の行為は著作権等を侵害する行為とみなされ、民事措置または刑事罰(5年以下の懲役・500万円以下の罰金(併科も可))の対象とされることになります。

 

① リーチサイトの運営者またはリーチアプリの提供者による行為であること

② 誘導した著作物等が侵害著作物であることを知っていたまたは知ることができたと認めるに足りる相当の理由があること

③ リンク提供行為について削除等の措置が可能であるにも関わらず放置していること

 

具体的には、以下のようなケースが想定されます。

具体例
あるサイト運営者が自身の運営するサイトに設置した他のサイトへ飛ぶボタンについて、その対象が違法アップロードされた漫画であることを知りながら、削除することができるにもかかわらず、それを放置しているような場合。

写り込みに係る権利制限規定の対象範囲の拡大

改正の経緯

Ⅰ はじめに

我々の日常生活の中で、他人の著作物を利用するような場面は数多くあります。例えば、街中で写真撮影をしていたところ、背景に著作物であるポスターが写り込んでしまうことや、そのポスターが写り込んだ写真をSNSに掲載するといったことは日常的に起こっていることだと思います。こうした写り込んでしまった著作物の利用は、通常著作権者の利益を不当に害するものではありませんが、形式的には著作権侵害となってしまうことがあります。

 

そこで、このような問題を解消し、著作物の円滑な利用を図るべく、平成24年改正で、所謂「写り込み」に係る権利制限規定(概要は下記参照)が設けられました。

 

Ⅱ 令和2年改正法施行以前(旧著作権法30条の2等)の課題

しかし、令和2年改正法施行以前では要件が厳格に設定されているため、日常生活において広く一般的に行われている行為(例:スクリーンショットやインターネット生配信に伴う写り込み)について適用が困難であるとの指摘がなされていました。

そこで、スマートフォンやタブレット端末等の急速な普及や動画投稿・配信プラットフォームの発達等の社会実態の変化に対応して、令和2年改正法で、写り込みに係る権利制限規定の対象範囲を拡大することとしました。

 

【映り込みに係る権利制限規定拡大のイメージ】

改正の概要

令和2年改正法のポイントは以下の5点になります。

①適用対象行為の拡大

令和2年改正法施行以前では、適用対象行為は写真の撮影、録音、録画に限定されていましたが、改正法では、写真の撮影、録音、録画から複製伝達行為全般(例:生放送・生配信、スクリーンショット、CG化)まで適用対象行為が拡大されます。

②創作要件の撤廃

令和2年改正法施行以前では、「著作物を創作するにあたって」との要件が課されていましたが、改正法でこの要件が撤廃されるため、著作物の創作とは評価されない行為(例:固定カメラでの撮影)も対象となります。

③分離困難性要件の撤廃・正当範囲要件の追加

令和2年改正法施行以前では、「メインの被写体(=写真の撮影等の対象となる事物等)から、分離することが困難であること」との要件が課されていましたが、改正法でこの要件が撤廃されるため、分離が困難でないもの(例:子供に抱かせたぬいぐるみ)も対象となります。

その一方で、本要件の撤廃に伴い、新たな要件として「正当な範囲内」という要件が追加されることになります。具体的には、分離の困難性の程度や付随対象著作物が果たす役割その他の要素に照らして正当な範囲内であることが課されることになります。

④軽微性判断要素の明文化

令和2年改正法施行以前では、対象となる著作物は、創作する写真等の全体のうち『軽微な構成部分』となるものに限定されていますが、その判断要素については条文上明らかにされていませんでした。

しかし、令和2年改正法において、軽微な構成部分の判断要素が明文化されることになります。具体的には、著作物の占める割合、再製の精度その他の要素に照らして判断されることが条文上明記されます。

⑤権利制限対象行為の拡充

令和2年改正法施行以前では、「複製及び翻案」のみが権利制限の対象とされていましたが、改正法で、方法を問わず利用することができるようになるため、公衆送信や上演、演奏その他の利用行為についても対象となります。

 

以上のように、一見複雑な改正のように思えますが、これにより、日常生活等において一般的に行われる行為に伴う写り込みが幅広く認められることとなります。

著作物を利用する権利に関する対抗制度の導入

改正の経緯

令和2年改正法施行以前では、著作物の利用許諾に関する規定は存在していたものの、利用の許諾を受けた著作権の譲渡があった場合の定めはありませんでした。そのため、著作権者(ライセンサー)から許諾を受けて著作物を利用している者(利用者orライセンシー)は、著作権が譲渡された場合、著作権の譲受人等に対して著作物を利用する権利(利用権)を対抗できず、利用を継続できないおそれがありました。

 

そこで、このような事態を解消し、利用者が安心して利用を継続することができるよう、令和2年改正法で利用権を著作権の譲受人等に対抗できる制度(改正著作権法63条の2)を導入することとしました。

 

改正の概要

本改正では新たに以下のような規定が新設されます(改正著作権法63条の2)。

 利用権は、当該利用権に係る著作物の著作権を取得した者その他の第三者に対抗することができる。

改正著作権法63条の2の規定により、著作物の利用者は、登録等の手続きを要することなく、著作権の譲受人等に対して利用権を継続して保有することができるようになります。すなわち、利用者が著作権の譲受人等から著作権に基づく差止請求や損害賠償請求を受けた場合、利用権を抗弁として差止命令や損害賠償命令を免れることができるようになります。これにより、利用者は訴訟リスクを恐れることなく、安心して利用を継続することができます。

さいごに

令和2年改正法のうち、10月施行の内容を解説してきました。リーチサイト対策や侵害コンテンツのダウンロード違法化拡大が主たる改正内容として報道されることが多いですが、それ以外にも多くの改正事項が含まれており、実務にも大きな影響のある改正内容になっています。

 

 

 

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