【2025】共有物分割請求とは?流れ・注意点を弁護士がわかりやすく解説
共有不動産は、トラブルの原因となりかねません。不動産が共有である場合、売却や大規模改修、用途変更などの処分行為をするためには、原則として共有者全員の同意が必要です。共有者の意見が必ずしも一致するとは限らず、共有不動産に関して円滑な意思決定をすることは容易ではありません。
そこで選択肢に挙がるのが、共有物分割請求です。不動産の共有状態を何らかの方法によって解決することで、共有不動産にまつわるトラブルから解放されます。
では、共有物を分割するには、どのような方法があるのでしょうか?また、共有物分割請求はどのような手順で進めれば良いのでしょうか?今回は、共有物分割請求の概要や共有物の分割方法、共有物分割請求の流れ、共有物分割請求訴訟の注意点などについて弁護士がくわしく解説します。
なお、当事務所(たきざわ法律事務所)は不動産法務に強みを有しており、共有物分割請求についても豊富なサポート実績を有しています。共有物分割請求についてお悩みの際は、たきざわ法律事務所までお気軽にご相談ください。
目次
共有物分割請求とは?
「共有」とは、1つの物(ここでは、土地や建物の不動産)を複数人で所有する状態を指します。誤解も少なくないものの、200㎡の土地をAとBの2名が2分の1ずつの割合で共有している場合、「Aが100㎡、Bが100㎡を持っている」わけではありません。AもBも200㎡の土地全体について、「その持分に応じた使用」が可能です(民法249条)。
イメージとしては、200㎡全体をAが1年のうち6か月使い、Bも6か月使うという方が近いでしょう。とはいえ、現実的には半年ごとに不動産の使用者を変えることは現実的ではありません。そこで、Aが200㎡の土地全体を使用しつつ、Bに一定の使用料を支払うなどで対応することが一般的です。また、土地全体を第三者に貸して賃料を分ける場合もあります。
しかし、冒頭で解説したように、共有状態の不動産の使い勝手は良くありません。そこで検討したいのが「共有物分割請求」です。
共有物分割請求とは、共有となっている不動産の共有状態を解消するために行う請求のことです。民法では「各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる」として、共有者による分割請求の権利を定めています(同256条)。
とはいえ、共有物の分割は一部の共有者の独断で実現できるものではありません。共有を解消するには、原則として他の共有者の同意が必要です。同意が得られない場合には、裁判所に申し立てることによって解決をはかることとなります。

共有物分割請求をする2つのケース
共有物分割請求には、主に2つのパターンが想定できます。ここでは、共有物分割請求をする2つのケースについて概要を解説します。
- 相続によって発生した共有状態を解消する場合
- 共同購入した不動産の共有状態を解消する場合
相続によって発生した共有状態を解消する場合
1つ目は、相続によって発生した共有状態を解消する場合です。たとえば、父が亡くなり長男と長女の2名が相続人となった場合、父の持っていた不動産は、自動的に長男と長女の共有となります。
しかし、共有のままでは使い勝手がよくありません。そこで、遺産分けの話し合い(「遺産分割協議」といいます)を行い、遺産の共有状態を解消することとなります。たとえば、「土地と建物は長男が相続し、預貯金はすべて長女が相続する」などです。このような遺産分割協議がまとまれば、法務局へ登記申請をすることで、父の遺産である土地と建物は晴れて長男の単独所有となります。
しかし、協議がまとまらないなど、何らかの事情から故人名義のままで長年放置されるケースもあります。このような場合において将来的に共有状態を解消するには、原則として遺産分割協議での解決をはかることとなります。名義人の相続発生から長期が経過している場合には、相続が繰り返された結果として潜在的な共有者が非常に多数に上る可能性があり、解決には相当の労力を要するでしょう。
また、「平等に分けよう」との思いから、遺産分割協議の結果としてあえて長男と長女の共有として登記申請をする場合もあります。この時点では兄弟間の仲が良好であったとしても、長男や長女に相続が起きた場合には長男の子と長女の子などによる共有となり、これらの人の関係が良好であるとは限りません。そこで、共有物分割請求の方法によって解決をはかることとなります。
共同購入した不動産の共有状態を解消する場合
2つ目は、共同購入した不動産の共有状態を解消する場合です。
友人同士などで、不動産を共同購入する場合があります。たとえば、別荘用の土地建物を共同で購入し、趣味のために使うことなどが想定できるでしょう。
しかし、その後何らかの原因によって関係性が悪化した場合に共有解消をはかるため、共有物分割請求をすることがあります。また、共同購入をした当事者同士の関係は良好であっても、相続が発生してつながりの薄い次世代同士の共有となった場合に、共有物分割請求をする場合もあります。

共有物を分割する3つの方法
共有物の分割には、主に次の3つの方法があります。
- 現物分割
- 換価分割
- 代償分割
ここでは、X土地をA、B、Cの3名がそれぞれ3分の1ずつの割合で共有している場合を前提に、共有物分割の方法を解説します。
なお、それぞれの分割方法には一長一短があり、状況によって最適な共有物分割の方法は異なります。共有物の分割についてお困りの際は、たきざわ法律事務所までご相談ください。
現物分割
現物分割とは、「現物」のまま不動産を分割する方法です。たとえば、X土地が600㎡である場合に、土地を200㎡ずつの3筆に分筆したうえで、分筆後の3筆の土地をA、B、Cがそれぞれ単独で所有する場合などがこれに該当します。
もっともシンプルな方法に見えるものの、同程度の価格へと土地を分筆するのは容易ではなく、分筆する場合の「線の引き方」が問題となる可能性があります。また、元のX土地が広くない場合には分筆することで使い勝手の悪い土地となる可能性が高く、現物分割ができるケースは限定的であるといえるでしょう。
換価分割
換価分割とは、不動産を第三者に売却し、これによって得た対価を共有持分に応じて分ける方法です。A、B、Cの3名が協力してX土地を売却し、これによって得た900万円の対価を300万円ずつ分ける場合などがこれに該当します。
代償分割
代償分割とは、一部の共有者が他の共有者の持分を買い取る形で共有を解消する方法です。たとえば、AがBとCに対価を支払って持分を取得し、X土地をAの単独所有とする場合などがこれに該当します。
この場合には、対価の額について各共有者との意見のすり合わせが必要となります。また、AもBもX土地を単独所有したいと考えている場合など意見が真っ向から対立する場合などには、この方法をとるのは困難です。

共有物分割の進め方
共有物を分割したい場合、共有物分割請求はどのように進めればよいのでしょうか?ここでは、一般的な流れを解説します。
弁護士へ相談する
共有物の分割を検討している場合、他の共有者に話を切り出す前に、まずは弁護士へ相談するのがおすすめです。弁護士へ相談することで、状況や希望に応じた最適な分割方法を検討でき、他の共有者への初期の提案内容をまとめやすくなるためです。
共有物分割請求について相談できる弁護士をお探しの際は、たきざわ法律事務所までお気軽にご連絡ください。
当事者同士で話し合う
当初の提案内容がまとまったら、これを念頭に置き、まずは当事者同士で話し合います。この時点で無事に話し合いがまとまったら、合意内容の書面化や登記申請、対価が発生する場合にはその支払いなど、共有解消に向けた具体的な手続きを進めます。
共有物分割調停を申し立てる
当事者間での話し合いがまとまらない場合には、調停を申し立てて解決をはかります。調停とは、裁判所で行う話し合いであり、調停委員が当事者から交互に意見を聞く形で話し合いの調整を行います。
共有物分割は調停前置ではないため、訴訟前に調停を経ることは必須ではありません。しかし、調停によって解決が図れる可能性がある場合にはまずは調停を申し立てることで、訴訟より柔軟な解決をはかりやすくなるでしょう。
共有物分割請求訴訟を申し立てる
調停によっても解決に至らなかった場合や、そもそも調停による解決が困難であると考える場合には、共有物分割請求訴訟を申し立てて解決をはかることとなります。
訴訟では、裁判所が諸般の事情を考慮して共有物分割の具体的な方法を決定します。当事者間での話し合いによっては埒が明かない場合であっても訴訟を申し立てた場合には何らかの決断が下されるため、共有物分割の最終手段といえるでしょう。
共有物分割請求訴訟の注意点
共有物分割請求訴訟には、注意点があります。ここでは、訴訟を申し立てる前に知っておきたい主な注意点を3つ解説します。
- 希望通りの判決が出るとは限らない
- 他の共有者との関係が悪化するおそれがある
- 解決までに時間がかかりやすい
希望通りの判決が出るとは限らない
1つ目は、申立人が希望したとおりの判決が出るとは限らないことです。
裁判所は必ずしも申立人の味方ではなく、申立人の希望とは異なる判決が出る場合もあります。たとえば、申立人としてはその共有不動産を代償分割して最終的に自分が単独所有したいと考えている場合であっても、換価分割をすべき(共有不動産を売却して、得た対価を分けるべき)との判決が下る場合もあるということです。
また、競売(けいばい)によって換価すべき旨の判決が出る場合もあります。競売とは、裁判所を通じた強制的な売却のことです。不動産が競売された場合には相場相当での売却は困難となり、相場の7割から5割程度の価格での売却となることが多いでしょう。
加えて、自分の意に沿わない判決が出たからといって、申立人だけの都合で「判決をなかったことにする」ことなどもできません。
そのため、実際に共有物分割請求訴訟を申し立てる前にはそのケースにおいてどのような判決が出そうであるか弁護士とともに想定したうえで、訴訟を申し立てるか否かを慎重に検討すべきでしょう。
他の共有者との関係が悪化するおそれがある
2つ目は、他の共有者との関係が悪化するおそれがあることです。
共有物分割で訴訟にまで至った場合、相手方との関係が悪化し、修復困難となる可能性があります。そもそも不動産の共有に至っている以上は相手方とまったく無縁の他人であるケースは稀であり、親族関係にあったり親同士が友人であったりする場合も多いでしょう。
そのような相手と訴訟にまで発展してしまって良いのか、訴訟の提起前に一歩立ち止まって検討することをおすすめします。
解決までに時間がかかりやすい
3つ目は、解決までに時間を要しやすいことです。
共有物分割請求訴訟を申し立てた場合、解決に至るまでには半年から1年程度はかかることが一般的です。なかには、さらに長期化し、2年前後の期間がかかる場合もあります。
訴訟を申し立てたからといって、すぐに解決に至るわけではありません。そのため、共有物分割請求訴訟を申し立てる際は、ある程度長期戦になることを覚悟しておく必要があるでしょう。
共有物分割請求は、たきざわ法律事務所へご相談ください
共有物分割請求をご検討の際は、たきざわ法律事務所へご相談ください。最後に、当事務所の主な特長を4つ解説します。
- 不動産オーナー様からの相談・サポート実績が豊富である
- フットワークが軽い
- 難しい用語を使わない
- 状況に応じた最適な解決策を提案する
不動産オーナー様からの相談・サポート実績が豊富である
たきざわ法律事務所は不動産オーナー様の味方であり、不動産オーナー様への豊富なサポート実績を有しています。共有物の分割請求以外にも、不動産にまつわる困りごとは当事務所にお任せください。
フットワークが軽い
たきざわ法律事務所の弁護士は比較的年齢の若いメンバーから構成されており、フットワークの軽さを自負しています。「できるだけすぐに相談したい」などの要望にも可能な限りお応えするため、ご要望がある際はお気軽にお伝えください。
難しい用語を使わない
せっかく弁護士へ相談しても難しい法律用語を並べられて十分に理解ができなければ、不安や不満が残ってしまうことでしょう。そのような事態を避けるため、たきざわ法律事務所はできるだけ難しい言葉を使わずにアドバイスしています。
状況に応じた最適な解決策を提案する
共有物について困りごとが生じている場合、その解決方法は1つではありません。裁判所に共有物分割請求を申し立てて解決をはかるのが最良である場合もある一方で、時間をかけてでも当事者間の話し合いで解決をはかるべきケースも存在します。
たきざわ法律事務所は決まった型に当てはめて解決をはかるのではなく、状況やクライアント様のご希望に応じた最適な解決策を提案します。
まとめ
共有物分割請求の概要や共有物分割請求をする流れ、共有物分割の方法や共有物分割請求訴訟の注意点などを解説しました。
共有物分割請求とは、不動産などの共有状態を解消するための請求です。共有状態の解消には、主に現物分割と換価分割、代償分割の3つの方法があります。
共有物分割請求はまず当事者間の話し合いによって解決をはかり、解決に至らない場合に調停や訴訟を申し立てることとなります。そのケースにおける最適な解決策を検討するため、まずは不動産法務に強い弁護士へ相談したうえで、自身が希望する「落としどころ」を定めることから始めるとよいでしょう。
たきざわ法律事務所は不動産法務に力を入れており、共有物分割請求についても豊富なサポート実績を有しています。共有物分割請求をご検討の際は、たきざわ法律事務所までまずはお気軽にご相談ください。


