「戸建て」の隣人トラブルの対処法は?困ったら弁護士へ相談
せっかく一戸建て住宅を手に入れたにも関わらず、その住居周辺で隣人トラブルに巻き込まれてしまうことは、誰しも避けたいことでしょう。今回は、一戸建てで起きうる隣人トラブルを紹介するとともに、隣人トラブルを避けるための予防策やトラブルになってしまった場合の対処法まで詳しく解説します。
一戸建ての場合の隣人トラブルの事例
一戸建て住宅での隣人トラブルには、次のようなものが存在します。まずは、起きうるトラブルを知っておきましょう。
騒音に関するトラブル
一戸建て住宅は、マンションなどの集合住宅とは異なり、隣家との隔たりが壁一枚のみというわけではありません。そのため、マンションと比較すれば騒音トラブルは起きづらいといえるでしょう。
しかし、一戸建てであるからといって騒音問題と無縁であるとまでは言い切れません。たとえば、楽器の音などは周囲に響きやすいため、演奏する時間帯に注意が必要です。
継続的に楽器を演奏したい場合には、防音構造とするなどの対応が必要となるでしょう。また、遅い時間にまで窓を開けて大声で騒いだり、頻繁に大勢で庭に集まったりすることなども騒音の原因となり得ます。
においや煙に関するトラブル
屋外でタバコを吸ったりBBQ(バーベキュー)したりすることで、周囲ににおいや煙が生じて隣人トラブルに発展する可能性があります。
BBQなどは楽しいものですが、たとえば頻繁なBBQのせいで隣人が洗濯物や布団を外に干せないなど、不満を感じているかもしれません。屋外でにおいや煙を生じさせる行為をする場合には、周囲への配慮を忘れないように注意しましょう。
自動車に関するトラブル
一戸建てならではの隣人トラブルとして、自動車に関するトラブルがあります。たとえば、来客が頻繁に路上駐車をして通行を妨げていれば、近隣住民は迷惑に感じることでしょう。
また、改造した自動車で深夜帯に出入りをする場合には、騒音トラブルの原因となる場合もあります。
道路の使用法に関するトラブル
道路の使用法に関するトラブルも、一戸建てでよくある隣人トラブルの一つです。
たとえば、路上で子供を遊ばせたり大人も一緒になって道路上で過ごしたりする行為は、通称「道路族」などと呼ばれ、周辺住民にとって非常に迷惑です。交通事故の危険もあるため、避けるべき行為であるといえるでしょう。
また、道路上に植木鉢などの私物を並べる行為がトラブルの原因となる場合もあります。道路は私物でも公園でもないことを理解したうえで、お互いに節度ある利用を心がけることが重要です。
ゴミ出しに関するトラブル
ゴミ出しのルールについて、隣人トラブルに発展する場合があります。
たとえば、指定日以外にゴミを出すなどルールを守らない行為によって、ゴミ収集所の近隣に住む住民がにおいや害虫、害獣などに悩まされることからトラブルに発展するケースなどです。
ゴミ出しのルールは自治体ごとに定められていますので、ルールを守って出すようにしましょう。
ペットの飼育に関するトラブル
一戸建てであれば、原則としてペットの飼育は自由です。しかし、周囲への配慮のないままペットを飼ってしまえば、トラブルに発展する可能性があります。
たとえば、放し飼いをしている猫が頻繁に隣家へ立ち入り花壇を荒らすなどすれば、近隣住民としては不満を感じることでしょう。また、毎日のように深夜や早朝に犬が吠えていれば、周辺住民の安眠を妨げてしまいます。
散歩時の糞の持ち帰りなど基本的なマナーを守ることはもちろん、ペットを飼育する際には、周囲への配慮を心がけましょう。
境界線に関するトラブル
一戸建て特有の隣人トラブルとして、境界線に関するトラブルが挙げられます。
たとえば、隣人が境界を越境して塀を構築してしまっていたり、境界付近に植えた樹木が頻繁に越境したりしている場合には、トラブルに発展する可能性が高いでしょう。
隣人トラブルを避ける一戸建て購入前の予防策
せっかく購入をした一戸建てで隣人トラブルとなってしまうことは、誰しも避けたいことかと思います。では、隣人トラブルを防ぐために購入前にできる対策としては、どのようなものがあるのでしょうか?
ここでは、3つの予防策を解説します。
境界をよく確認しておく
1つ目の予防策は、購入前に現地に訪れた際に、境界付近をよく確認しておくことです。その際には、次の点に注意して観察しましょう。
境界標はきちんと設置され、掘り起こさなくても見える状態となっているか
越境して塀などが建築されていないか
隣人が、購入予定の隣地を私物化していないか
隣家の樹木の管理は適切か(伸び放題で越境していないか)
1つでも気になる点があれば、それは購入後にトラブルの火種となる可能性があります。特に、境界を越えて塀などが建築されている場合には、その土地の購入自体を見送ることも有力な選択肢となるでしょう。
時間を変えて何度も現地へ出向く
購入予定の土地には、時間帯を変えて何度も出向くと良いでしょう。なぜなら、昼間は静かな住宅地に見えても、夜間は近隣の居酒屋帰りの客が住宅付近にたむろしてうるさくなるなど、昼と夜では状況が異なる可能性があるためです。
また、公園に隣接した土地の場合、日中は子供の遊ぶ声が適度に聞こえて良いと感じても、購入予定者がまだ寝ている予定である早朝の時間帯からお年寄りが集まって大声で会話をするなどの可能性もあります。
さらに、休日には庭でBBQなどのレジャーを楽しみたい人にとっては近隣住民が休日にBBQをしていることはプラス要素となる一方で、庭でのBBQを迷惑に感じる人にとっては、そのような土地での生活はストレスになってしまうことでしょう。
その土地が自分のライフスタイルに合っているかどうかを確認するには、時間帯や曜日を変えて何度か出向く必要があるといえます。
近隣住民と挨拶をする
購入前に、近隣住民と挨拶をしておくと良いでしょう。挨拶をして会話を交わすことで、近隣住民の家族構成や人となりがわかりやすくなるためです。
また、購入を検討していることを伝えることで、近隣住民から地域の情報を聞くことができる可能性もあります。
一戸建てで隣人トラブルに発展した場合の対処方法
では、一戸建てで隣人トラブルに発展してしまった場合には、どのように対応すれば良いのでしょうか?主な対応方法は、次のとおりです。
当事者同士で誠実に話し合う
一戸建てでは引越しの可能性も比較的低く、隣人とは長い付き合いとなる間柄です。そのため、よほど悪質な嫌がらせや明らかな違法行為の被害を受けているケースなどでない限り、いきなり他者を介入させるのではなく、まずは当事者同士で誠実に話し合うと良いでしょう。
たとえば、隣家の住民が頻繁に庭で喫煙をすることで洗濯物ににおいがついて困っているような場合であっても、隣家の住民は迷惑をかけていることに気がついていない可能性があります。困っていることを伝えることで、煙が流れにくい位置で喫煙をするなど、今後配慮をしてもらえる可能性が高まるでしょう。
市区町村役場や自治会などへ相談する
当事者同士での話し合いを避けたい場合や、当事者同士での話し合いに適さない事情がある場合などには、市区町村役場や自治会などへ相談すると良いでしょう。
たとえば、ゴミ出しマナーを守らない住民がいる場合や、いわゆるゴミ屋敷となり近隣に悪臭を放っている家がある場合などには、役場や自治会へ対応方法を相談したほうが良いといえます。
警察に相談をする
近隣住民の迷惑行為の内容によっては、警察に相談することも選択肢の一つとなります。
たとえば、路上への迷惑駐車や常軌を逸したレベルの深夜の騒音などの場合には、対応してくれる可能性が高いでしょう。
なお、「110番」は緊急の事件や事故などを受け付ける緊急通報用電話番号です。緊急でないにもかかわらず110番をしてしまうと、急を要する事故や事件への対応が遅れ、取り返しのつかない事態となってしまうかもしれません。
生命に危険が迫っているなど緊急の場合を除き、110番ではなく警察相談専用電話である「#9110」へ電話するようにしましょう。
弁護士へ依頼して法的に解決をする
隣人から嫌がらせを受けている場合や、隣人が境界を越えて無断で構築物を建てるなど、悪質な場合には弁護士へ相談してください。
弁護士は、法律の専門家です。法的な観点から、隣人トラブルの解決をサポートします。
一戸建てでの隣人トラブル解決の法的な考え方
一戸建てでの隣人トラブルについて、法的にはどのように考えれば良いのでしょうか?法律では、次のように対応することとなります。
明らかな法律違反は厳正に対処する
たとえ隣人間のトラブルであったとしても、明らかな法律違反がある場合には、厳正に対処することとなります。
たとえば、隣家の住人が不在時に勝手に侵入して庭の水道から水を盗んでいる場合や、嫌がらせのために車に傷を付けたり塀に落書きをしたりする場合などです。このような場合には、損害賠償請求の対象となる可能性が高いでしょう。
境界問題は法律どおりに対処する
境界に関するトラブルは、民法など法律のルールに従って対応することとなります。たとえば、隣家の樹木の枝が越境している場合の対応は、その竹木の所有者にその枝を切除させることができると民法で規定されていますので、その旨を請求することとなります。
また、建物を築造するには境界線から50センチメートル以上の距離を保たなければならないとのルールがあり、さらに「これに違反して建築をしようとする者があるときは、隣地の所有者は、その建築を中止させ、又は変更させることができる。ただし、建築に着手した時から1年を経過し、又はその建物が完成した後は、損害賠償の請求のみをすることができる」との規定もあります。
そのため、隣人が境界ギリギリに建築した場合には、これに則って対応することとなるでしょう。
においや騒音などは「受忍限度論」で考える
においや騒音などは、一方が迷惑に感じたからといって、必ずしも法的に対応が可能であるとは限りません。なぜなら、どの程度の行為を迷惑に感じるかどうかは、人によって異なるためです。
たとえば、ある人にとって日中に庭で遊ぶ子供の声がうるさいと感じるからといって常にこの主張が法的に認められてしまえば、非常に窮屈な世の中になってしまうことでしょう。
そこで、法律上は「受忍限度論」という考え方がしばしば用いられます。
受忍限度論とは、「その事案についての具体的な事情を総合的に考慮して、被害が社会生活上受忍すべき限度を超えている場合に初めて違法であると評価される」とする考え方です。
つまり、ある一人が「うるさくて迷惑だ」と感じるからといってただちに違法となる(=損害賠償請求や差し止め請求が認められる)わけではなく、社会生活上受忍すべき限度を超えていると判断されて、はじめて違法であると判断されるということです。
社会生活上受忍すべき限度を超えているかどうかは、個別事案に応じて、最終的には裁判所が判断することとなります。ただし、通常は騒音規制法などの法令やその地域の条例の基準を超えるかどうかが一つの重要な基準となるでしょう。
まとめ
一戸建てで隣人トラブルに発展することは、できれば避けたいことでしょう。トラブルをできるだけ予防するため、購入前には何度も現地を訪れるなどしてその地域の状況を把握しておくことをおすすめします。
また、気付かないうちに自分が迷惑行為をしてしまっている場合もゼロではありません。一戸建てとはいえ周囲に人が住んでいるのであれば、適切な配慮をしながら生活をすることで、良好な隣人関係を築くことへとつながります。
万が一近隣トラブルとなり、当人同士での対処が難しい場合には、ぜひたきざわ法律事務所までご相談ください。トラブル解消に向けて全力でサポートいたします。