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【2023】未払い残業代の請求の時効はいつまで?請求のポイントを弁護士が解説

この記事を書いた弁護士は…

 

 

 

会社が定めた所定労働時間を超えて労働した場合には、残業代の支給対象となります。しかし、会社によっては、適正に残業代が支払われていないこともあるようです。

 

そのような場合には、過去の残業代をさかのぼって請求することができます。これを「未払い残業代の請求」などといいます。

 

しかし、あまりにも古い残業代を請求することはできません。なぜなら、残業代を含む賃金の請求には、時効があるためです。今回は、未払い残業代を請求する際の時効について、弁護士がくわしく解説します。

 

残業代請求とは

残業代請求とは

 

従業員が、会社で定めた所定労働時間を超えて労働した場合には、原則として残業代が発生します。しかし、本来であれば支給されるべき残業代が、適正に支払われていない場合もあるようです。

 

この原因はさまざまで、会社が「仕事が遅いのは従業員の責任なのだから、残業代なんて払わない」などと誤った認識を持っている場合もあれば、単に計算方法や法令の理解を誤っている場合などもあるでしょう。

 

いずれの場合であったとしても、本来支給されるべきであるにも関わらず受け取っていない残業代については、会社に対して請求することが可能です。この請求のことを、「残業代の請求」や「未払い残業代の請求」などといいます。

 

支払義務がある主な残業代

残業代未払いで起こるリスクと今後の対応方法

 

一口に「残業代」といっても、これには次の種類が存在します。いずれに該当するのかによって割増しの有無や割増率が異なりますので、整理しておきましょう。

 

法定内残業の残業代

 

労働基準法で定められている労働時間の上限は、「1日あたり8時間、1週間あたり40時間」です。これを、「法定労働時間」といいます。

 

一方、これとは別に、会社で労働時間を定めている場合があります。これを、「所定労働時間」といいます。

 

法定内残業は、そもそも「所定労働時間」が「法定労働時間」よりも長い場合や、同じ場合には発生しません。一方、たとえば所定労働時間が「1日あたり7時間」である場合には、所定労働時間(7時間)は超えているものの法定労働時間(8時間)を超えていない部分の残業が発生する可能性があります。これを、「法定内残業」や「法内残業」といいます。

 

この法内残業分についても、残業代の支払いは必要です。ただし、次から解説するような割増しの対象ではなく、割増しするかどうかなどについては就業規則などで会社ごとに定めることとなります。

 

法定労働時間を超過して労働した分にかかる残業代

 

1日8時間という法定労働時間を超えて残業した分にかかる残業代は、通常の賃金に対しての2割5分以上の上乗せをして支払わなければなりません。

 

たとえば、通常の1時間あたりの賃金が1,000円である労働者の場合には、法定労働時間を超過した残業について、1時間あたり1,250円以上の残業代を支払う必要があるということです。

 

なお、1か月あたりの残業時間が60時間を超えた場合には、60時間を超えた部分にかかる割増率を5割以上としなければならないとの改正がなされており、中小企業でも2024年4月1日から施行されることとなっています。

 

参照元:

 

深夜労働分の残業代

 

深夜時間帯(原則22時から5時)に労働した場合には、通常の賃金に対しての2割5分以上の上乗せをして給与を支払わなければなりません。また、法定労働時間を超過し、かつ深夜労働である場合には両者が重複して適用されるため、結果として5割(2割5分+2割5分)以上の割増賃金の支払いが必要です。

 

たとえば、通常の1時間あたりの賃金が1,000円である労働者が、深夜時間帯に法定労働時間を超過した残業をした場合においては、1時間あたり1,500円以上の残業代を支払う必要があるということです。

 

休日労働分の残業代

 

労働基準法では、毎週少なくとも1回または4週のうち4日の休日を与えなければならないとされています。この週に1回の休日に労働をさせた場合には、3割5分以上の上乗せをして給与を支払わなければなりません。

 

たとえば、通常の1時間あたりの賃金が1,000円である労働者について休日労働をさせた場合には、1時間あたり1,350円以上の賃金を支払う必要があるということです。また、休日労働が深夜労働となった場合にはこれらが重複適用されるため、6割以上(3割5分+2割5分)以上の割増賃金を支払う必要があります。

 

残業代請求の時効は何年?

残業代請求の時効は何年?

仮に残業代を請求しないまま退職してしまったとしても、退職後に残業代請求をすることは可能です。ただし、残業代請求には時効があるため、早期に取り掛かる必要があるでしょう。残業代の時効は次のとおりです。

 

残業代の時効は3年に伸長された

 

記事を執筆している2022年12月現在、残業代の時効は3年です。これは、2020年4月1日に施行された改正法によるものであり、これ以前の時効は2年とされていました。

 

今後は5年に伸長される可能性がある

 

割増賃金(残業代)などについて定めている労働基準法115条によると、残業代を含む賃金請求の時効は、原則として5年とされています。

 

ただし、同じ労働基準法の143条において、当面の間は退職金以外の賃金請求権(残業代など)の時効は、3年とするとの規定があります。そのため、上で記載をしたとおり、現時点における残業代請求の時効は3年というわけです。

 

これは、もともと2年であった時効が民法の改正にともなって伸長されるにあたり、いきなり5年となってしまうと企業への負担が大きくなりすぎるとの要望を受け、当面の間は3年とする形で落ち着いたとの経緯によるものです。

 

ただし、3年とするのはあくまでも「当面の間」の経過措置であるため、今後はこの経過措置が削除され、5年とされる可能性が高いでしょう。

 

残業代請求の時効の考え方

 

残業代が発生した時期ごとの残業代の考え方は、それぞれ次のとおりです。

 

2020年3月以前に発生した残業代

 

改正法が施行される2020年3月31日以前に発生した残業代は、2年で時効にかかります。そのため、記事を執筆している2022年12月時点では、原則としてすでに請求することができません。

 

ただし、残業代の不払いが悪質であり不法行為に該当する場合には時効が3年に伸長されるため、一部についてまだ時効にかかっていない可能性があります。

 

また、時効はあくまでも相手(会社側)が「時効が経過しているので支払いません」との意思表示(「時効の援用」といいます)をして、はじめて成立するものです。そのため、会社が時効の援用をせず任意に支払う場合には、2年以上前の分についても支払いを受けられる可能性があります。

 

ただし、未払い残業代の請求をした場合、会社は弁護士などの専門家へ相談することが一般的です。そのため、会社側が時効期間の経過を知らずに支払うようなことは考えにくいでしょう。

 

2020年4月以降に発生した残業代

 

2020年4月以降に発生した残業代の時効は、3年です。そのため、2022年12月現在では、これ以降の分については全額を請求することができるでしょう。

 

ただし、今後も3年という時効の経過とともに、順次時効にかかってしまいます。そのため、残業代の請求をお考えの際には、できるだけ早期に取り掛かることをおすすめします。

 

残業代請求の時効をとめる方法

時効成立前の残業代を請求する手順と対策

 

発生した残業代は、時間の経過とともに、順次時効にかかっていってしまいます。

 

では、残業代の時効を止めるためには、どうすれば良いのでしょうか?「時効の更新」と「時効の完成猶予」とに分けてそれぞれ解説していきましょう。

 

時効の更新

 

時効の更新とは、これまで進行してきた時効を止めて、改めてはじめから時効のカウントをスタートさせることです。時効の更新の効果が得られる行為としては、次のものなどが挙げられます。

 

 

  • 裁判上の請求等(裁判上の請求・支払督促・起訴前の和解・調停・破産手続参加)

  • 強制執行等(強制執行・担保権実行・形式競売・財産開示)

  • 債務の承認

 

つまり、裁判上や調停で残業代を請求して確定判決が得られた場合や、会社が債務(残業代の支払い義務があること)を承認した場合には、そこから新たに時効がスタートします。

 

なお、裁判上で請求などをしても権利が確定しなかった場合には、そこから6か月間のみ時効の進行が停止して、その後は残りの時効期間のカウントが再開されます。

 

時効の完成猶予

 

時効の完成猶予とは、一時的に時効の進行が停止して、その後は残りの時効期間のカウントが再開されることです。時効の完成猶予の効果が得られる行為としては、次のものなどが挙げられます。

 

  • 仮差押え等(仮差押え・仮処分)

  • 協議を行う旨の書面による合意

  • 催告

 

これらを行うことで、そこから6か月間は時効の完成を猶予できます。

 

このうち、もっとも使いやすいのは、会社に対して残業代を支払うように請求する「催告」でしょう。

 

ただし、催告をして時効の完成が猶予されている間に再度催告をしても、さらに停止期間を伸長できるわけではありません。そのため、催告をしても会社が未払い残業代の支払いに応じない場合には、裁判上の請求をするなど次の手段を取る必要があるでしょう。

 

 

最適解を提案します

 

最適解を提案します

 

時効前に残業代請求を行うポイント

 

時効前に残業代請求をするためには、どのような点に注意すれば良いのでしょうか?主なポイントは次のとおりです。

 

残業の証拠を集める

 

残業代を請求したい場合には、あらかじめ残業に関する証拠を集めておきましょう。

証拠となるものは、次のものなどです。

 

  • タイムカードや勤怠記録

  • 業務用パソコンのログイン記録

  • 業務に関するメールやLINE

  • 交通系ICカードのデータ

  • 日記や手帳

  • 作業日報

 

ただし、すでに退職している場合など、証拠を集めるのが難しい場合もあるでしょう。そのような際であっても対応できる場合がありますので、諦めずに弁護士へご相談ください。

 

弁護士へ相談する

 

未払い残業代の請求を自分で行い、支払いを受けることは容易ではありません。また、会社に対して直接請求をしたり交渉をしたりすることに、ストレスを感じてしまう場合も少なくないでしょう。

 

そのため、未払い残業代の請求をする際には、弁護士へ相談することをおすすめします。弁護士へ依頼をすることで、弁護士が代わりに請求手続きを行います。また、弁護士が代理して対応することで、会社が請求に応じる可能性も高くなるでしょう。

 

内容証明郵便で請求する

 

会社に対して未払い残業代を請求する場合において、特に時効が迫っている場合には、内容証明郵便で請求することをおすすめします。なぜなら、会社に対して未払い残業代の請求をする行為は、上で紹介をした「時効の完成猶予」の効果をもたらす催告に該当するためです。

 

催告の効果自体は、口頭や普通郵便などであっても生じます。ただし、催告による時効の完成猶予を主張した際に、口頭や普通郵便などの場合には「聞いていない」や「届いていない」などと反論されてしまう可能性があるでしょう。

 

一方、内容証明郵便は、いついかなる内容の郵便物が誰から誰あてに差し出されたのかという記録が残るため、このような言い逃れを防ぐことが可能となります。

 

ただし、内容証明郵便に不用意なことを書いてしまえば、相手に対して有利な証拠を与えることにもなりかねません。そのため、内容証明郵便の作成は弁護士へ依頼するなど、慎重に行う必要があるでしょう。

 

まとめ

 

残業代の時効は、退職後であってもすることが可能です。ただし、残業代は原則として3年で時効にかかってしまいますので、未払い残業代の存在に気が付いたら、できるだけ早期に請求を行うことをおすすめします。

 

しかし、自身で残業代を請求しても、会社が支払いに応じない場合もあるでしょう。また、残業をしたことの証拠が足りず、不利となってしまう可能性もあります。そのため、未払い残業代の請求は、弁護士への依頼がおすすめです。

 

たきざわ法律事務所では、未払い残業代の請求など、労使問題に力を入れています。未払い残業代の請求をお考えの際には、時効にかかってしまう前に、ぜひたきざわ法律事務所までご相談ください。

 

 

 

 

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サンカラ

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