雇止めとは?失敗するとどうなるの?使用者側で抑えておきたいポイントと雇止めする際の注意点を解説
あらかじめ有期期間で雇用契約を締結した労働者について、契約期間満了をもって更新を拒否したい(いわゆる雇止め)。
と思いながらも、雇止めを簡単に行って良いのだろうか?
そもそもどういったときに雇止めが成立するのだろう?と悩まれている使用者は多いでしょう。
基本的な考えとして、有期期間で労働契約を締結している労働者に対して更新を拒否するのは問題ありません。
なぜなら、あらかじめ特定の期間に対して働いて欲しいという契約であり、その期間満了を持って契約終了するのが当然と考えられるからです。
しかし実際には、雇止めが無効と判断されるケースも少なくはありません。単に雇止めとはいっても、
そのケースごとに判断されるため、一概にすべての雇止めが無効・有効と判断することができません。
そこで今回は、雇止めとは何か?についてお伝えするとともに、正しく雇止めをするためのポイントについてお伝えします。
本記事は、有期期間で労働者を雇用する使用者にとって、雇止めを行う上での参考になるはずです。
目次
雇止めとは?抑えておきたい3つのポイント
雇止めとは有期労働契約を締結している労働者に対して、契約期間の満了を持って更新を拒否することを言います。
通常、契約期間に定めがある以上は、契約を更新するか否かは使用者・労働者双方にあるはずです。
しかし、労働者が当然に契約を更新されるものと思っていたときなどは、雇止めが違法とみなされてしまう恐れがあります。
万が一、契約社員との契約更新拒否が違法とみなされてしまうと、地位確認請求(裁判)や損害賠償請求をされてしまう恐れがあります。
有期契約労働者を正しく雇止めするためにも、まずは雇止めとは何か?について下記3つのポイントに分けてお伝えします。
有期労働契約者との契約を更新しない
雇止めは原則「違法」にはならない
雇止め法理の法定化
まずは、雇止めとは何かについて詳しくお伝えします。
①:有期労働契約者との契約を更新しないこと
雇止めとは「有期労働契約者との契約更新を拒否すること」を言います。
つまり、「契約期間をもってあなたとの労働契約は終了します。契約の更新も行いません」というのが雇止めです。
よって、労働者側から「契約期間の満了を持って契約更新を行いません」と伝えられ、更新を拒否されたとしても雇止めには当たりません。
使用者が自由に雇止めを行えてしまうと、労働者が生活の糧となる収入源を突然失ってしまうため、問題(トラブル)に発展するケースも珍しくはありません。
しっかり正しい知識を持って雇止めを行うことが使用者には求められるでしょう。
②:雇止めは原則「違法」にはならない
そもそも雇止めの問題になる「有期労働契約」とは、あらかじめ雇用期間を定めてその期間において労働契約を締結するものです。
よって、使用者が契約期間の満了を持って更新を拒否すること自体に何ら違法性はありません。
「更新を拒否する」というよりも、
有期労働契約を締結した時点で大前提として「あなたはこの期間働いてください。この期間が満了したら終わりですよ」ということを伝えて、承諾されて締結する契約です。
上記のことからも、雇止めをしたところで使用者が咎められたり違法として地位確認請求権や損害賠償請求をされたりしてしまうこと自体おかしな話です。
ではなぜ、雇止めによる争いが頻発するのか?その理由には労働契約法第19条が大きく関係しています。
労働契約法第19条では、労働者の地位を守る目的から下記のことがあったときは、雇止め(契約更新の拒否)に対する制限をしています。
有期労働契約が反復継続的に行われたことによって、実質的に無期労働契約と同視できるとき
有期労働契約者が契約の更新がなされると思う合理的な理由があるとき
つまり、有期労働契約を複数回更新した過去がある。労働者が「当然に契約更新されるもの」と思える合理的な理由があるときは、
雇止めが違法になる恐れがあるということです。
その他、違法になるか否かは過去の判例(判例法理)によって定められています。
基本的な考え方としては、雇止めに違法性はないけど、労働者が勘違いをしてしまっているときは危険と思っておけば良いでしょう。
③:雇止め法理の法定化
雇止めが認められるか否かは過去の判例をもとに一定のルールが設けられています。
これを雇止め法理と言いますが、労働契約法の改正によって雇止め法理が法定化されました。
雇止め法理の法定化は先ほども簡単に触れた「労働契約法第19条」です。
このことによって、雇止めが無効と判断される基準を明確化されています。
実際にはケースごとに個別に判断されることを前提としていますが、有期契約労働者の契約を何度も更新していたとき。
有期労働契約者自身、契約更新がされるものと考える合理的な理由があるときは、雇止めが無効と判断されるので注意してください。
雇止めをする際の注意点とは?
有期労働契約である以上、使用者が更新を拒否することは自由です。
とは言っても、労働者の生活や働く環境を保護する目的からも、ある程度規制をする必要があるとのことでした。
使用者が正しく雇止めをしなければ、後にトラブルに発展してしまう可能性は十分に考えられます。
次に、雇止めをする際の注意点について詳しくお伝えします。
雇止めが認められるためには合理的な理由が必要
労働契約法第19条では「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められないときは雇い止めが無効」とされています。
つまり、雇止めが認められるためには、社会通念上相当と認められる合理的な理由が必要です。
たとえば、臨時性のある職務で有期労働契約を締結し、契約更新をしない場合。このようなケースでは雇止めが有効とされるでしょう。
一方で、継続的な職務であって何度も契約更新をされているようなケースでは雇止めが無効になる恐れがあります。
具体的な無効有効の判断は過去の判例をもとに判断されますが、「客観的に見て合理的な理由」にはどのようなケースが該当するのか。もう少し詳しく見ていきましょう。
- 職務怠慢・素行不良
- 能力不足(厳しく審査をすることが求められます)
- 経営不振
上記のことを理由に契約の更新を拒否するのは、合理的な理由と認められる可能性が高いでしょう。
反復継続的に契約更新をしていたときは危険
雇止めに関する過去の判例等を確認すると、反復継続的に契約を更新していたときは、雇い止めが無効と判断されるケースが多いです。
とくに、無期労働契約と同等と認められるときには注意しなければいけません。
万が一、有期労働契約者の職務内容や更新回数等を確認した結果、無期労働契約者と同等と判断された場合は、通常解雇と同等の理由が必要です。
たとえば、著しい職務怠慢が見受けられる等の理由がなければ雇止めは無効と判断される可能性が高いでしょう。
たとえ有期労働契約者であっても「必要なくなったから」など、簡単な理由で雇止めをしてしまうと、無効になる恐れがあるので注意してください。
雇止めが認められないとどうなる?
万が一、有期労働契約者として働いていた労働者が、雇止めに納得がいかなかったときは下記のことが起こり得るでしょう。
地位確認請求を起こされる
損害賠償請求を求められる
地位確認請求等が発生すると、会社ブランドのイメージにも大きく関わってきます。
また、損害賠償請求も少なからず会社へ与える影響はあるでしょう。
次に、雇い止めが認められなかったときに起こり得ることについてお伝えします。
地位確認請求を起こされる
雇止めをされた有期労働契約者が納得できなければ、裁判所に対して地位確認請求を行うでしょう。
地位確認請求とは、自分の地位を確認するための訴訟であり、裁判所に申し立てることで起こり得ます。
地位確認請求によって雇止めが無効と判断されれば、使用者が行った雇止めそのものが法的に無効になります。
その結果、労働者は当然に会社の従業員としての地位を回復することになります。
損害賠償請求(給与補償)を求められる
地位確認請求によって雇止めが無効になった場合には、使用者が当該労働者に対して損害賠償を行うよう判決が下ります。
有期労働契約者からすれば、当然得られたはずの給与が雇止めによって得られなくなってしまったため、使用者が金銭を支払うのは当然です。
しかし、地位確認請求によって雇止めが有効とされたときには、労働者の復権や損害賠償を行う必要はありません。
よって、使用者に求められることは、正しい知識を持って雇止めを行うことでしょう。
正しく雇い止めをするために押さえておくべき3つのポイント
有期労働契約者を雇い止めしたあとのトラブルを回避するためには、正しい雇止めをすることが求められます。
では、正しい雇止めとは何か?下記3つのポイントとともに詳しくお伝えします。
雇用内容の確認
雇止め理由と経緯の合理性を確認
労働者への説明(説得)
雇止めをするときのポイントについて見ていきましょう。
①:雇用内容の確認
まずは、雇用内容の確認を行ってください。
大前提として、契約期間内の契約解除はできません。
仮に、契約期間が満了したときでもその契約内容によっては、雇止めが認められないことがあるので注意してください。
たとえば、その業務内容の臨時性はどうか?という点はよく確認しなければいけません。
有期労働契約者を雇用した目的が、ある特定の業務を臨時的に依頼するためであって、その業務の必要がなくなったための雇止め。というケースであれば、労働者も理解し雇止めも認められやすくなるでしょう。
一方で、日常的な業務を行ってもらうために有期労働契約者を雇用し、過去に雇止めをしたことがないようなときは、無効の判断をされる可能性が高いです。
よく雇用契約を確認したうえで雇止めを行うようにしてください。
②:雇い止めの理由と経緯の合理性を確認
雇止めをする理由が雇止め法理に照らし合わせてどうか?をよく確認したうえで行ってください。
また、雇止めをしなくても良い方法(契約を更新する方向)が他にないのか?も確認しなければいけません。
雇止めをするにあたって、合理的な理由があると認められるときは、その事情を労働者に伝えたうえで雇止めを行うと良いでしょう。
③:労働者への説明
雇止めによるトラブルを回避するためには、当然、労働者の理解を得なければいけません。
使用者が合理的な理由を持って雇止めを行ったとしても、労働者が納得できなければ地位確認請求等を起こされてしまう恐れがあるためです。
仮に、雇止めが有効と判断されても、その労力を考えれば無駄でしかなく、できるだけトラブルを回避するための方法を模索しなければいけません。
有期期間労働者へ雇止めを伝える際には、下記のことを抑えておくと良いでしょう。
最低でも1か月以上前に伝えること
必要に応じて示談交渉
説得して理解してもらうことも大切
まずは、契約期間満了前1か月前までには、労働者に伝えなけなければいけません。
労働者自身もあらゆる準備をするために、早めに報告してあげるのは使用者の責任と言えるでしょう。
そして、労働者がなかなか納得してもらえないときは、できるだけ寄り添ったうえで説得をし、必要に応じて示談交渉を行うことも検討してください。
雇止めをするための合理的な理由があることや、雇止め法理から見ても有効である可能性が高いことなどを交えて伝えてあげられればなお有効でしょう。
まとめ
今回は、雇止めとは何か?についてお伝えしました。今回お伝えしたことをまとめると下記の通りです。
雇止めとは「有期労働契約者との契約更新を拒否すること」。基本的に違法性はないが、労働者を保護する観点からある程度のルールが設けられている。現在では、雇止め法理が法定化しているので注意が必要
雇止めが認められるためには、客観的に見て合理的な理由が必要。実際はケースバイケースですが、過去の判例によってある程度予測が可能。万が一、雇止めが無効になれば、地位確認請求や損害賠償請求の対象になり得るので要注意
雇止めによるトラブルを回避するためには、合理的な理由を持ってしっかり労働者に説明をすることは必要不可欠。そのうえで、労働者を説得したり示談をしたりなど、ある程度の譲歩も必要不可欠
雇止めとは、有期労働契約者との更新を拒否すること。ということでした。
そもそもの契約内容を考えれば、有期で雇用契約を締結しているので雇い止め自体に違法性はないとのことでした。
しかし実際には、労働者が勘違いをしてしまうような行為があったときには、契約を更新しなければいけないという縛りがあります。
一時的な有期労働契約であり、すぐに更新拒否をするなら問題はありませんが、その実態が無期労働契約と同等なら難しいでしょう。
雇止めの実際は、さまざまな判例法理によってある程度確立されています。
今回お伝えしたことや、過去の判例等に照らしながら、これから行おうとしている雇止めが有効か無効かを判断すれば良いでしょう。