【2022】ビジネスに「メタバース」は使える?企業の活用事例をわかりやすく解説
メタバースを、ビジネスに活用することはできるのでしょうか?実は、メタバースをビジネスに取り入れる企業は増加傾向にあります。
メタバースをうまく活用することは、ビジネスを成長させることへとつながります。他社の事例を参考に、ぜひ自社で取り入れることも検討すると良いでしょう。
今回は、企業がメタバースをビジネスに活用した実際の事例を紹介するとともに、企業がメタバースを活用する方法やメリットなどについて詳しく解説します。
目次
メタバースとは?
メタバースとは、インターネット上に作られた仮想空間のことです。
メタバース空間にログインすると、そこには自分のみではなく、他のユーザーのアバターも存在しています。そのため、他のユーザーと交流したり、仮想空間上で多くの人が集まるイベントに参加したりすることも可能です。
また、メタバース空間内にあるオフィスに「出社」して、同僚など他のユーザーのアバターと交流をすることもできます。メタバースはいわば、インターネット上に広がるもう一つの生活空間というわけです。
メタバースのビジネスでの主な活用方法
ビジネスでメタバースを活用するには、どのような方法があるのでしょうか?ここでは、メタバースをビジネスで活用する主な方法を紹介します。
イベントへの出展
メタバース上では、日々さまざまなイベントが開催されています。たとえば、後ほど解説をする就活フェスや、音楽フェスなどがその代表例です。
このようなイベントへ出展することで、これまで自社とは接点の薄かった新たな顧客や人材と出会える可能性が高まります。
イベントの開催
メタバースの活用に慣れてきたら、他社が主催するイベントへ出展するのみならず、自社でメタバース上のイベントを開催するのも良いでしょう。
メタバース上で開催できるイベントの可能性は、無限大です。たとえば、都心の街中で大規模イベントを開催することは交通規制などの関係もあり、リアルでは難しいでしょう。
しかし、メタバース上であれば、たとえば大阪梅田の街を再現した空間での大規模イベント開催など、リアルの規制に縛られないイベントの開催も可能です。自社でイベントを開催することで新たな収益源となる他、新たな顧客との接点や企業イメージのアップなどへもつながる効果が期待できます。
広告の出稿
メタバース上には、企業が広告を出稿することも可能です。メタバース上の都市へ広告を出稿することで、新たな顧客層からの企業認知向上につながるでしょう。
また、街中に出稿するリアルな広告とは異なり、広告の反応を計測しやすい点もメリットです。
バーチャルオフィス化
ビジネスにおけるメタバースの活用方法は、対顧客のみに限られるわけではありません。たとえば、メタバース上に自社オフィスを構えるバーチャルオフィスの活用も、メタバース活用方法の一つです。
オフィスをバーチャル化することにより、居住地などを問わず優秀な人材を採用することが可能となる他、感染症蔓延時の影響を最小限に抑えることが可能となります。
NFTアイテムの販売
NFTとは「Non-Fungible Token」の頭文字を取ったものであり、日本語でいえば「非代替性トークン」となります。
インターネット空間で取り引きされるものには実体はなく、いわば「データ」そのものでしかありません。データである以上は、簡単にコピーができてしまいます。
しかし、NFTでは個々のアイテムに固有のトークン(しるし)が付いているため、無断でコピーしたものなどではなく、正式に購入したものであるとの証明が可能です。この仕組みを利用して、インターネット上におけるデジタルアートなどの売買が活性化されてきました。
このNFTの仕組みを利用して、メタバース上でNFTアイテムを販売する企業が登場しています。たとえば、メタバース上のアバターが身に着ける衣服を、NFTで販売するなどです。
中でも、メタバース上で販売されたナイキのスニーカーが高額な値を付けたことは、記憶に新しいかもしれません。
参考:ナイキのNFTスニーカー、高額で取引中–1700万円のレア物も(CNET)
メタバース上の土地運用
メタバース上の土地はデータ(NFT)でしかありませんが、現実の土地と同様に、人が集まる場所の土地は高額で取り引きされています。この土地を貸したり転売したりすることで、利益を上げることも可能です。
ビジネスとして、このようなメタバース上の土地運用に乗り出すことも選択肢の一つとなるでしょう。ただし、これは投資というよりも投機(ギャンブル)的な側面が強いため、行うとしても資金的に無理のない範囲に留めておくことをおすすめします。
ビジネス活用も検討できる主なメタバースプラットフォーム
メタバースをビジネスで活用するためには、原則として何らかのメタバースプラットフォームを使用する必要があります。ビジネスで活用できる、代表的なメタバースプラットフォームは次のとおりです。
なお、導入するメタバースプラットフォームは一つに絞るのではなく、目的に応じて複数のプラットフォームを導入しても良いでしょう。
cluster
「cluster(クラスター)」とは、クラスター株式会社という日本企業が提供しているメタバースプラットフォームです。スマートフォンやPC、VR機器など様々な環境からバーチャル空間に集ってイベントに参加したり、友達とコンテンツを楽しんだりすることが可能です。
企業の要望に応じてオリジナルの会場やアバター、演出などの制作などを一括して請け負ってくれるため、これからメタバースへ取り組む企業にとっても参入しやすいといえるでしょう。
VRChat
「VRChat」とは、VR空間内にアバターでログインし、多人数でコミュニケーションを取ることができるアプリケーションです。VR上に設けられたさまざまな空間を移動して、その空間にいる他のユーザーと音声チャットなどをすることができます。
後ほど紹介をする日産自動車による新車お披露目イベントなど、多くの企業イベントがこのVRChat内で開催されています。
oVice
「oVice(オヴィス)」とは、バーチャルオフィスやイベントスペースの提供に特化したデジタルプラットフォームサービスです。バーチャルオフィス空間としての利用に特化しており、同僚など他のユーザーに対して、まるで同じ空間にいるかのように話しかけることができます。
既に多くの日本企業が導入していますので、バーチャルオフィスの導入を検討する際には候補の一つとすると良いでしょう。
メタバースをビジネスに取り入れた事例
メタバースをビジネスに取り入れた代表的な事例には、次のようなものが挙げられます。
なお、メタバースを活用したビジネスには日々新しい事例が誕生しています。そのため、ビジネスへのメタバース活用を検討している場合には、定期的に新たな事例を調べておくと良いでしょう。
新車のお披露目イベントを開催した事例
日産自動車株式会社は、以前よりメタバース空間上にバーチャルギャラリーを展開しており、メタバースを比較的早期からうまくビジネスに取り入れている企業の一つです。
2022年5月には、メタバース上で新車のお披露目イベントを開催して話題となりました。また、このイベントでは新車を見るのみならず、バーチャル空間上で「試乗」をする取り組みも行われています。
参考:【日産 サクラ】メタバース上で試乗できる!…史上初、VRで新型車お披露目(Response)
バーチャルオフィスを取り入れた事例
バーチャルオフィスは、今やさまざまな企業が導入しています。
たとえば、求人サービスなどを手掛けるエン・ジャパン株式会社は、2020年11月頃に上で紹介した「oVice」を全社に導入しました。今では、全社員の過半数にあたる1,000人程度が毎日バーチャルオフィスにアクセスしているようです。
バーチャルオフィスを導入することで、居住地域を問わず優秀な人材を採用できる可能性が高まる他、自身の障害や家族の介護などを理由にリアルなオフィスへの出社が難しい人を採用しやすくなります。
また、リアルなオフィスへ出社する従業員を減らすことで広いスペースが不要となることから、オフィスの賃料などの経費を大きく削減できる点も大きなメリットの一つといえるでしょう。
メタバース上でのファッションプロデュースの事例
株式会社サイバーエージェントは、メタバース空間におけるファッションの研究や事業開発を目的に、デジタルファッションに特化した専門組織を設立しました。たとえば、芸能人のデジタルファッション商品のCG制作や販売、プロモーションなどの他、新たなデジタルファッションの企画などに取り組む予定とのことです。
参考:メタバース空間においてNFTを活用したデジタルファッションの研究・企画・制作・販売を行う「Meta Fashion Factory」を設立(株式会社サイバーエージェント)
メタバースなどデジタル空間におけるファッションは、現実で着用するファッションよりも自由度が高いといえるでしょう。そのため、今後この分野へ参入する企業が増えてくるかもしれません。
また、仮想空間上でのファッションアイテムはNFTとの相性が良いため、今後デジタル空間上でファッションアイテムを販売する企業もより増加することでしょう。
メタバース上で就活フェスを開催した事例
メタバース空間は、人が集まるイベントの開催に適しています。実際に、新型コロナ禍でリアルでの大規模イベントが制限される中、メタバース上では多くのイベントが開催されました。
メタバース上で開催されるイベントとしてまず挙げられるのが、音楽フェスです。これまでも、仮想空間上の渋谷で音楽フェスが開催されるなど、リアルでは難しい場所での音楽フェスが数多く開催されてきました。
また、最近ではこのような楽しむためのイベントのみならず、就活フェスなど実用的なイベントの開催も増加傾向です。
たとえば、メタバース人材事業などを手掛ける株式会社tenshabiは2022年4月、メタバース空間上で就活フェスを開催しました。この就活フェスへの出展企業はAIを活用したVTuberを開発する「Pictoria」や、ARフィルターを活用したクリエイティブ制作を行う「uzumaki creative」など6社であったものの、イベントへの参加者は1,000人を超える盛況を記録しています。
今後、このようなメタバース上のイベントはますます増えていくことでしょう。企業がこのようなイベントに出展することで新たな出会いが生まれる可能性がある他、新たなイベントの主催をすることも検討することも、ビジネスチャンスの一つであるといえます。
メタバース空間における設計事務所を開設した事例
2022年5月、株式会社Xがメタバース空間専門の設計事務所である「メタXINC設計事務所」を設立したと発表しました。
企業がメタバース空間に出店する例は今後も増えていくかと思いますが、その際には、メタバース空間上の店舗設計が不可欠です。しかし、メタバース空間上の店舗設計が簡素なものであったり、企業イメージをうまく表現できていなかったりすれば、ユーザーにとって残念な印象を与えてしまいかねません。
そこに目を付けたのが、株式会社Xです。これまで、メタバース空間を専門とする設計事務所は存在しなかったとされており、仮想空間上に新たに生まれるニーズにいちはやく取り掛かった事例であるといえるでしょう。
企業がメタバースを活用するメリット
企業がメタバース活用するメリットとしては、次のものが挙げられます。自社には無縁だとはじめから切り捨ててしまうのではなく、活用を検討してみると、新たな活路が見出せるかもしれません。
新たなビジネスの可能性が生まれる
メタバースは、まだまだ新しい仕組みです。先ほど紹介したような新たなビジネスが日々生まれていますが、まだどこの企業も行っていないビジネスや、1社のみが行っており競争が生まれていないビジネスは、数多く存在することでしょう。
メタバース上で新たなビジネスを展開することで、自社の新たな収益源となる可能性があります。また、自社の既存ビジネスと関連したビジネスをメタバース上で展開することで、相乗効果を期待することもできるでしょう。
場所を問わずにPRや採用ができる
メタバース上で新たなビジネス展開まではしないまでも、商品や採用の広告を出稿することも検討できます。また、上で紹介をした「就活フェス」など、他社が主催するイベントに出展することもできるでしょう。
メタバース上でこのようなPR活動を行うことで、相手の居住地域を問うことなく、自社を広くアピールすることが可能となります。
感染症蔓延時でも事業が継続しやすい
感染症蔓延時などリアル空間で集まったり会ったりすることが難しい状況下においても、メタバース上では活動を継続することが可能です。
そのため、たとえばメタバース上にオフィスを構えるバーチャルオフィスを活用したり、メタバース上で商品を販売するチャネルを持っておいたりすることで、感染症蔓延による業績への影響を最小限に抑えることへとつながります。
企業イメージが向上する
メタバースをビジネスに取り入れる企業が増えているとはいえ、まだまだ静観している企業や自社には関係がないと考えている企業も少なくありません。
そうした中でメタバースをビジネスに取り入れることで、成長を続ける先進的な企業であるとの印象を与えることが可能となります。これは、若年層など新たな顧客の獲得や、優秀な人材の採用などへと繋がることでしょう。
まとめ
メタバースをビジネスに取り入れる事例は日々増えています。自社には関係がない、自社には無理であるなどと切り捨てるのではなく、一度活用を検討してみると、新たなビジネスチャンスなどへとつながるかもしれません。
しかし、メタバースはまだまだ新しい仕組みであるため、法整備が整っておらず、判例などの事例も蓄積していないのが現状です。こうした中で、独断でビジネスを進めてしまうと思わぬ法令違反をしてしまうリスクを抱えてしまいます。
このようなリスクを避けるため、ビジネスへ新たにメタバースを取り入れる際には、あらかじめ弁護士へ相談することをおすすめします。
たきざわ法律事務所にはメタバースなどのIT法務に詳しい弁護士が在籍しており、メタバース活用などの相談も日々寄せられています。ビジネスへのメタバース活用をご検討の際には、ぜひたきざわ法律事務所までご相談ください。