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著作権にはどのような種類があるのか その2(著作権法解説第2回)

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1. はじめに

前回 (https://takizawalaw.com/1511/)から「著作財産権」に関して解説してきました。今回はその第2回になります。

著作財産権の内容は著作物の利用態様に応じて支分権として規定されており、その最も基本的な権利が前回解説した「複製権」です。

複製権は著作物を有形的に利用するときに働く権利ですが、これに対し第2回の今回解説する「上演権・演奏権」「上映権」「口述権」「展示権」「公衆送信権」「公の伝達権」は著作物を無形的に利用するときに働く権利です。

なお、これらの権利はいずれも行為後に何も残らないことから、誰かが勝手に行った場合であっても権利侵害防止の度合いが異なると考えられています。そのため、複製権とは異なり「公衆(公)に」という限定が付されています。

※「公衆」は著作権法上「不特定又は多数」の人を相手とすることを意味します(2条5項)。

 

 

それでは、残りの支分権についても見ていきましょう。

2. 著作財産権の内容

(8) 上演権・演奏権(22条)

まずは、「上演権・演奏権」について説明します。

上演権・演奏権は、「無断で著作物を公衆に上演・演奏されない権利」です。

ここでいう、「上演」は「演劇やダンスパフォーマンスを演じること」を、「演奏」は「音楽作品を演奏したり歌唱したりすること」をいいます。さらに、上演・演奏には、CDやDVD等の録音・録画物を再生したり、著作物の上演・演奏を離れた場所にあるスピーカーやディスプレイに送信して見せたり、聞かせたりすることも含まれます(2条7項)。

ただし、上演権・演奏権は上述の通り、「公衆に」対して行われる上演・演奏でなければ権利の対象とはなりません。そのため、例えば家の中で流行りの曲に合わせて歌ったり踊ったりしていたとしても、上演権・演奏権の対象とはなりません。しかしながら、それをライブハウスやコンサートホール等の場で報酬を得て行った場合には、公衆に見聞きさせる目的での上演・演奏となるため、上演権・演奏権の対象となります。

なお、コンサートの開催前に行うリハーサルについては、公衆に見聞きさせる目的とは認められないため、上演権・演奏権の対象とはなりません。

(9) 上映権(22条の2)

つぎに、「上映権」について説明します。

上映権は「無断で著作物を公衆に上映されない権利」です。

ここでいう「上映」とは、「著作物を映写幕その他の物に映写すること」をいいます。さらに、映画の著作物においては、映画の上映と同時に劇中歌を再生する行為も上映となります(2条1項17号)。

したがって、例えば映画館で劇場用映画を無断上映すると上映権に抵触することになります。

その一方で、上映権も上演権・演奏権と同様に「公衆」相手の行為のみに働くため、例えば家庭用大型モニターを使用して、家族や友人間で映画鑑賞をしているような場合には上映権の対象とはなりません。

 

(10) 口述権(24条)

つぎに、「口述権」について説明します。

口述権は、「無断で言語の著作物を公衆に直接聞かせるために口述されない権利」です。

ここでいう「口述」とは、「朗読その他の方法により著作物を口頭で伝達すること(実演に該当するものを除く)(2条1項18号)」をいいます。具体的には、小説や詩等の朗読や講演、講義等が該当します。

さらに、口述にはCD等に録音された著作物を再生することや、著作物の口述を離れた場所にあるスピーカー等に送信して伝達することも含まれます(2条7項)。したがって、例えば問題集等の書籍に付属されているCDを再生すると問題集等(言語の著作物)の口述に該当することになります。

ただし、上述の通り口述からは実演に該当する役者の舞台でのセリフや、歌手の歌唱、その他演ずる要素が含まれる行為は除かれる上に、公衆に対する口述のみを対象としていることから、実際のところ口述権の対象となる行為は多くないと考えられています。

 

(7) 展示権(25条)

つぎに、「展示権」について説明します。

「展示権」は、「無断で美術の著作物又は未発行の写真の著作物の原作品を公衆に展示されない権利」です。

文字通り、展示権の対象は「美術の著作物」「写真の著作物」「原作品」であって、写真の著作物については「未発行」であることが条件となります。これは、写真の著作物の場合、原作品となるのはネガではなくネガから作成されたポジであると解されるため、写真のオリジナル作品は美術のオリジナル作品と異なり多数存在する可能性があるからです。

つまり、まだ世に出ていない写真(ポジ)については展示権の対象となりますが、既に公開してしまった写真については展示権の対象とはなりません。同様に、美術の著作物の原作品である絵の原画については展示権の対象となりますが、その複製画や言語の著作物である俳句等は展示権の対象とはなりません。

 

なお、展示権もこれまでの権利と同様に公衆に対するものに限定して働くため、例え美術の著作物の原作品であって公衆に対する展示でなければ展示権は働きません。

 

(11)公衆送信権(23条1項)

つぎは、昨今の電子技術の発達に伴い、大変重要なものとなっている「公衆送信権」について説明します。

公衆送信権は、「無断で著作物を公衆に送信されない権利」です。

ここでいう「公衆送信」とは、「公衆によって直接受信されることを目的として無線通信又は有線電気通信の送信を行うこと(2条1項7号の2)」をいい、その内容を表にすると以下のようになります。

この中でも、インターネット上で著作物を創作・利用する際に注意しなければならないのが③の自動公衆送信(送信可能化を含む)です。

一般に、あるコンテンツをインターネットで発信しようとする場合、その情報をデジタル化してこれを(A)サーバに蓄積(複製)し、(B)インターネットに接続(アップロード)して、(C)送信・配信する、といった手順を踏みます(※通常は(A)と(B)は同時に行われます。)。そのため、無断でデジタルデータ(著作物)をサーバに蓄積すれば、その時点で複製権が働き、それをインターネットに接続すれば送信可能化されるので、仮に送信・配信(公衆送信)されていない段階であってもその時点で公衆送信権が働きます。

したがって、例えば著作権者に無断で動画投稿サイトに動画ファイルをアップロードしストリーミング配信したり、音楽ファイルをサーバにアップロードしておき、不特定多数にダウロードさせると公衆送信権が働くことになります。

(12)公の伝達権(23条2項)

つぎに、「公の伝達権」について説明します。

公の伝達権は、「公衆送信される著作物を無断で受信機により公に伝達されない権利」です。(公衆伝達権と呼ばれることもあります。)

文字面だけ見ていてもよく分からないと思いますが、具体的には無断でテレビ受信機等によって番組を公衆に見せる行為が該当します。ただし、公の伝達権は公衆に直接見せ又は聞かせる「生伝達」のみに働くため、例えばテレビ番組等の生放送は伝達権の対象となりますが、一旦録音・録画した放送は対象となりません(なお、録音・録画物を見せる行為は上映権の対象となり得ます。)。

 

3. さいごに

本コラムでは、著作財産権の第2回目として「上演権・演奏権」「上映権」「口述権」「展示権」「公衆送信権」「公の伝達権」の6つの支分権について解説しました。

特に、公衆送信権はインターネット等の普及に伴い、文章や写真等の様々な著作物がデジタルデータとして扱われるようになったことで、複製権と並んで著作権上問題となる事例が増えています。

その背景には、他人のデジタルデータを利用する場合であっても、「個人ページに掲載する用だから」「営利目的ではないから」といった理由で、大丈夫だろうと安易に考えしまっている部分も多くあるようです。しかし、インターネットで他人の著作物を利用する場合には、どのような経緯であろうとも、インターネットに接続した時点で公衆送信権が働いてしまう可能性があります。ですから、トラブルに巻き込まれないためにも、きちんとそのことを認識する必要があります。
 

 

 

 

 

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