貸したお金(貸付金)を回収する方法は?注意点やポイントを弁護士が解説
経営者仲間や知人などにお金を貸したものの、期限を過ぎても返済されずお困りの方は少なくないようです。
では、貸したお金を回収するには、どうすればよいのでしょうか?また、将来トラブルとならないため、お金を貸す際はどのような点に注意する必要があるのでしょうか?
今回は、貸したお金を回収する方法やトラブルを避けるポイントなどについて、弁護士が詳しく解説します。
目次
貸したお金が返してもらえないとの悩みは多い
友人や経営者仲間から「絶対に返すから」などと言って泣きつかれ、まとまったお金をやむなく貸してしまったが最後、期限までに返済されずに返済を引き延ばされている……このような悩みは少なくないようです。
返済を求めても、「そのうち返す」とのらりくらりとかわされたり、返済を要求している側を非難するようなことを言われたりすれば、精神的にも疲弊してしまうことでしょう。
貸したお金の返済期限はいつ?
そもそも、貸したお金の返済期限はいつなのでしょうか?ここでは、ケースごとに解説します。
返済期限を定めた場合
たとえば、「月末には返して」や「1年以内に返して」など具体的な返済期限を定めた場合、その定めた期限が返済期限となります。
返済期限を明確に定めていなかった場合
「そのうち返して」や「お金に余裕ができたら返して」など、具体的な返済期限を定めずにお金を貸すこともあるでしょう。この場合、貸主は相当の期間を定めて返還の催告をすることができるとされています(民法591条1項)。
つまり、貸主が返還を希望するタイミングで「今から1週間後までに返して」と催告した場合、その期限(催告から1週間後)が返済期限になるということです。
なお、「相当の期間」がどの程度であるかについて、法律には明記されていません。現実的に考えると、「今日中に返して」は認められない可能性が高い一方で、「1週間後に返して」であれば妥当であると判断される可能性が高いでしょう。
ただし、金額が大きい場合など、もう少し期限に余裕を持たせた方が良い場合もあります。
友人や知人に貸したお金を返してもらえない場合の初期対応
友人や知人に貸したお金を返してもらえないとき、まずはどのように対応すればよいのでしょうか?ここでは、初期対応のポイントを解説します。
契約内容などを確認して証拠を集める
お金を返してもらうために訴訟などに発展した場合は、証拠が何よりも重要となります。
そのため、お金を貸した証拠を集めておきましょう。
お金の貸し借りに関する契約書や覚書などがあれば、これが非常に強い証拠となります。
また、メールやLINEのやり取りがある場合も、これを残しておきましょう。併せて、返済を求めた記録や証拠なども残しておくことをおすすめします。
弁護士へ相談する
任意の請求でお金を返してくれない場合、それ以上自分で請求をしても解決は望めない可能性があります。相手はお金を借りていることを認識しつつ、開き直っている可能性があるためです。また、「そのまま放っておけば諦めるだろう」など、軽く考えているかもしれません。
そのため、無理に自分で対応せず、早期に弁護士へ相談することをおすすめします。弁護士へ相談することで、その後の対応の見通しが立てやすくなります。
内容証明郵便を送る
次に、内容証明郵便で催告します。弁護士へ依頼した場合は、原則として、弁護士名義での内容証明郵便となります。
内容証明とは、いついかなる内容の郵便物が誰から誰に差し出されたのかを、日本郵便株式会社が証明する制度です。内容証明郵便で返済を請求することで、返済の催告をしたことが明確となります。
これにより、返済期限を明確に定めていなかった場合であっても催告したことが明確となり、相手から「催告されていない」などと主張される事態を避けることが可能となります。
また、時効が迫っている場合であっても時効を一時的に中断する効果が得られます。
ほかに、「これで返済しなかったら裁判上での請求に発展する」と相手方にプレッシャーを与えられ、裁判に至る前に自発的に返済してもらえる効果も期待できます。
貸付金の回収でやってはならないこと
貸付金の回収では、どのような対応を避けるべきでしょうか?ここでは、貸付金の回収でやってはいけないことを3つ解説します。
返済請求を長期間放置する
避けるべき対応の1つ目は、返済請求を長期間放置することです。
お金を貸したことが事実であっても、一定期間が経過すると、返済を受ける権利が時効によって消滅してしまいます。貸付金の原則的な時効は、民法改正前後でそれぞれ次のとおりです。
2020年3月31日以前の貸付金:いずれかが商人なら5年、いずれも商人でなければ10年
2020年4月1日以降の貸付金:5年
また、この起算日は、ケースごとにそれぞれ次のとおりです。
返済期限を定めていた場合:返済期限の翌日
返済期限を定めていない場合:貸した日の翌日
この期間が経過して、相手が時効を援用(「時効が完成したから、もう返しません」という意思表示)をすると、貸付金を回収することができなくなってしまいます。ただし、相手が債務を承認するなどすればその時点で時効がリセットされる(「更新」といいます)ほか、裁判上で請求すれば一時的に時効の完成が猶予されます。
そのため、お金を課したら長期間放置することは避け、一定期間ごとに返済を求めてください。そのうえで、相手が応じない場合は裁判上の請求に移行するなど、時効の完成を防ぐ対策をとる必要があるでしょう。
「月末には払う」などの発言の証拠を残さない
避けるべき対応の2つ目は、返済猶予などの話し合いを行った際、その証拠を残さないことです。
たとえば、相手が「月末には返済する、あと〇円の借金が残っていることは知っている」などと言ったのであれば、可能な限りその旨の覚書を取り交わすと良いでしょう。書面など証拠が残っていなければ、月末になっても支払われず請求した際に、相手から「そんなことは言っていない」などと主張され反論が困難となるおそれがあります。
また、相手のこのような発言は債務の承認にも該当し、時効の更新効果をもたらします。証拠を残していなければ、相手が後から「そのような発言はしていない」などと主張して、時効が完成してしまうかもしれません。その点からも、相手の発言の証拠を残しておくことをおすすめします。
相手の私物を勝手に持っていく
避けるべき対応の3つ目は、相手が返済しないからといって、相手の私物を無断で持ち去ることです。
相手が借金を返さない場合、自力で回収しようと考えるかもしれません。しかし、相手の私物を無断で持ち去ることなどは、絶対に避けるべきです。
たとえ貸付金を返してもらえないなどの事情があったとしても、このような行為をすれば窃盗罪などに該当し、刑罰の対象となるためです。日本では自力救済は禁止されているため、ご注意ください。
お金を課す際、将来のトラブルをできるだけ避ける対策
友人や知人にお金を貸す際、将来のトラブルを避けるためにはどのような対策を講じればよいのでしょうか?ここでは、主な対策を3つ解説します。
返済してもらえない可能性を踏まえて貸付額を検討する
友人や知人にお金を貸す場合、返済してもらえないリスクは低くありません。なぜなら、そもそも正当な借金であれば金融機関から借りればよいところ、それを友人や知人に頼んでいる時点で何らかの問題がある借金である可能性が高いからです。
たとえば、ギャンブルで作った借金であるなど家族に話せないものである可能性や、金融機関では融資が受けられないほど信用力が低下している可能性が否定できません。
また、金融機関でない限り、相手の返済力を正しくはかることは困難でしょう。たとえ相手がそれなりの規模の会社の経営者であっても、会社の実情は火の車かもしれません。
このように、友人や知人へのお金の貸付けは、そもそもリスクの高い行為です。そのため、返済してもらえない可能性が高いことを念頭に置き、貸すか否かを決めるべきだといえます。また、貸すとしても、「返してもらえなければ自分が困る」ほどの額は貸すべきではないでしょう。
契約書を取り交わす
たとえ友人や知人であっても、お金を貸す際は必ず契約書を取り交わしましょう。
友人や知人から借金をするほどであれば、相手は相当お金に困っている可能性が高いといえます。そのような状況で、仮に契約書がなければ、後から「借りたのではなく、もらった」「仕事の対価として受け取った」など、貸付自体を否定されるおそれがあります。
また、貸付日や金額、返済期日などについて齟齬が生じる可能性もあります。そのような事態を避けるため、たとえ親しい相手であっても契約書は必ず取り交わすようにしてください。
返済期日を明記する
友人や知人が相手である場合、貸付けにあたって返済期日を明確に定めないこともあるようです。しかし、返済期日は定めておくべきでしょう。
なぜなら、返済期日が定まっていないと、相手が任意に返済しない場合、いつ返済を請求すべきか貸した側が迷ってしまいやすいためです。また、返済を請求しても、相手から「もう少しの間貸してもらえると思っていた」などと主張され、返済をずるずると引き延ばされてしまうかもしれません。
そのような事態を避けるため、お金を貸す時点で返済期日を明確に定め、これを契約書に明記しておくことをおすすめします。
返済期日を過ぎたらすぐに請求する
相手が友人や知人であっても、返済期日までに返済されない場合は、できるだけ早期に返済を請求してください。
期日を過ぎても請求しないと、「多少遅れてもよい」と相手に思われてしまう可能性があり、分割返済の場合に次回以降も常に返済を遅延される可能性が生じます。また、期日後直ぐに請求することで、時効にかかるリスクを避けやすくなるでしょう。
期日後に返済を請求しても相手が返済に応じない場合は、弁護士へご相談ください。弁護士から内容証明郵便を送ることで、貸付金を回収できる可能性があります。
仮差押えに備えて口座情報を確認しておく
知人や友人にお金を貸す際は、相手が預金を多く有している金融機関を確認しておくことをおすすめします。口座情報を有していれば、返済期日までに返済されない場合、「仮差押え」ができる可能性があるためです。
仮差押えとは民事保全手続の一つであり、相手が相手の銀行口座からお金を引き出すことができない状態とする手続きです。
貸付金の回収を求める訴訟などを提起して裁判所がこれを認めても、相手にお金がなければ強制執行をすることはできません。これを逆手に取り、訴訟の提起などを予見した相手が、お金を引き出して隠してしまう可能性があります。そのような事態を避けるには、仮差押えが有効です。
しかし、相手の口座がわかっていなければ仮差押えをすることはできません。そのため、お金を貸す時点で口座情報を確認しておくとよいでしょう。
貸付金の回収でお困りの際はたきざわ法律事務所へご相談ください
貸付金の回収でお困りの際は、たきざわ法律事務所までご相談ください。最後に、たきざわ法律事務所の特徴を4つ紹介します。
医院やクリニック、医師からの相談に特化している
たきざわ法律事務所は、医院やクリニック、医師からのご相談に特化しています。
悪質な口コミやいわゆるモンスタークレーマーへの対応、スタッフとの労使問題など業務上の課題はもちろん、友人にした貸付金の回収や不動産投資に関するご相談など、個人的なご相談のサポート経験も豊富です。
難しい用語を使わず解説する
法律用語には、難解なものが少なくありません。せっかく弁護士へ相談しても難しい用語を並べ立てられれば、理解しきれず消化不良となる可能性があります。
たきざわ法律事務所では、難しい法律用語を使わず、わかりやすい解説を心がけています。
状況に応じて最低な対応方法を個別に検討する
たきざわ法律事務所では、ご相談者様の状況に応じて最善の方法をご提案します。無理にプランなどの型にあてはめるのではなく、サポート内容を個別に検討することで、納得のいく解決につながりやすくなります。
ご依頼者様からの満足度が高い
たきざわ法律事務所では、多くのご依頼者様から「相談して良かった」「依頼して良かった」とのお声を頂いています。お困りの際は一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。
まとめ
貸付金の回収に関する初期対応や、お金を貸す際の注意点などについて解説しました。
友人や知人へした貸付金の回収でお困りの方は、少なくありません。請求してもいっこうに返済してくれない場合、事態を自分で進展させることは困難でしょう。
たきざわ法律事務所では、貸付金の回収に関するご相談について、多くの解決実績があります。貸付金の回収でお困りの際は、たきざわ法律事務所までお気軽にご相談ください。