【2023】NFTのビジネス活用方法は?活用事例や注意点を弁護士がわかりやすく解説
NFTとは「Non-Fungible Token」の略称であり、「非代替性トークン」などと訳されます。
NFTに関してはインターネット上のNFTアートが数億円で落札されたなどの情報が目立つため、詐欺まがいのものであるとか怪しいものであるなどの印象を持っている人も少なくないかもしれません。しかし、本来NFTは投機に使うための仕組みではなく、ビジネスの課題解決に活用し得る画期的な仕組みです。
そこで今回は、NFTをビジネスに取り入れた事例を紹介するとともに、NFTをビジネスで活用するメリットや注意点などについて弁護士が詳しく解説します。
NFTとは
NFTとは、「非代替性トークン」などと訳され、「Non-Fungible Token」の略称です。では、NFTとはどのようなものなのでしょうか?はじめに、NFTの概要について解説します。
一般的なデジタルデータとの違い
NFTと一般的なデジタルデータとの最大の違いは、独自の「刻印」の有無です。
一般的なデジタルデータ(たとえば、デジタルアート)は、簡単に、しかも大量にコピーをすることができます。また、現実世界のアート作品とは異なりデジタルアートはいくらコピーしても劣化せず、元のデータとの違いもありません。
そのため、これまでは、デジタルアート作品の取引は現実的ではありませんでした。せっかくデジタルアート作品を購入してもコピーが大量に出回ってしまう可能性があるばかりか、自分が真の購入者であることの証明も難しかったためです。
そこで注目されているのがNFTです。デジタルアート作品などのデジタルデータをNFT化することで、その作品のデータに固有の「刻印」がなされます。
そして、たとえそのデジタルアートがコピーされても、固有の刻印までは複製されません。つまり、デジタルアートのNFT化によって、デジタル上の作品に唯一無二性が付加されることとなります。
これにより、自身がそのデジタルアートの真の購入者であることの証明が可能になります。作品に唯一無二性が付加されることでデジタルアートの転売が可能となるほか、転売の過程を確認することも可能となります。
NFTと暗号資産との共通点
NFTと似たものに、ビットコインなどの「暗号資産」が存在します。これらはいずれも、「ブロックチェーン」技術を活用している点で共通しています。
ブロックチェーン技術とは、「取引履歴を暗号技術によって過去から1本の鎖のようにつなげ、正確な取引履歴を維持しようとする技術」です。つまり、流通の記録を技術的に記録することで、二重譲渡など不正な取引ができないような仕組みを構築しています。
ただし、NFTと暗号資産とは、その「代替性」の有無に大きな違いがあります。
NFTは「その」デジタルアートを重視するため、唯一無二性を付加するものです。一方、暗号資産は必ずしも「その」1BTC(ビットコイン)である必要はなく、代替性トークンも呼ばれます。
NFTを現実世界の絵画(別のものでは代替できない)、暗号資産を現実世界の1万円札(別の1万円札でも構わない)と考えると、違いがイメージしやすいのではないでしょうか。
NFTをビジネスに活用した事例
NFTは、すでに多くのビジネスで活用されています。NFTをビジネスに活用した主な事例は次のとおりです。
デジタルアートの販売
NFTの活用としてもっともメジャーなものは、デジタルアート作品の販売です。
NFTアート作品に数億円の値が付いたとのニュースを記憶している人も少なくないでしょう。このような高値が付くことは稀とはいえ、デジタルアート作品の販売の可能性は無限大です。
たとえば、企業が人気のあるアーティストとコラボレーションをしてオリジナルNFTを制作し、これを販売することなどが考えられます。単にアート作品の販売収入を得るのみならず、このNFTアートの所有者を専用コミュニティに招待して自社の「ファン化」を図ることなども検討できるでしょう。
最近では北海道余市町などふるさと納税の返礼品としてNFTアートを活用した事例もあり、2023年には約50の自治体がNFTアートをふるさと納税に取り入れる見込みです。
メタバース上での不動産やアイテム販売
メタバースでは仮想空間上の「土地」が売買されており、これを転売して収益を得ることが可能です。また、メタバース上に土地を所有していれば、そのうえで自社のビジネスやイベントを展開することができるほか、他者へ貸し出して「賃料収入」を得る道もあります。
他にも、メタバース上の建物を「設計・建築」して販売したり、アバターやアバターが身に着けるアイテムを販売したりすることも可能です。株式会社ビームスなど、メタバース上のアバターが着用するファッションアイテムを販売して収益を上げる企業も増えてきました。
また、ナイキはメタバース上でのバーチャルシューズの販売に力を入れており、バーチャルシューズに数千万円もの値が付いた例も存在します。
トレーディングカードの販売
トレーディングカードとは、それぞれ異なる図柄が印刷されたカードです。ファンはこれを収集したり、自身が持っていない図柄のカードを得るために他者と交換したりして楽しみます。一方、稀少なカードは高額で取引されることもあり、転売目的でカードを収集するケースも少なくありません。
このトレーディングカードをバーチャル化するために欠かせないのが、NFTの技術です。トレーディングカードをNFT化することで、不正コピーを避けつつリアルなカードのように収集したり転売したりすることが可能となりました。
トレーディングカードをNFT化した事例は非常に多く、NBA選手のトレーディングカードや吉本興業による所属芸人のトレーディングカード、SKE48のトレーディングカードなど、枚挙にいとまがありません。変わり種を挙げれば、トランプ前米大統領が自身の姿を描いたNFTトレーディングカードを発売した例も存在します。
また、最近では岡山市の観光スポットと故手塚治虫氏の代表作である「鉄腕アトム」がコラボレーションしたデザインのNFTトレカ発売され、即日完売しています。
入場チケットのNFT化
イベントやコンサートの入場チケットをNFT化する例も増えています。日本でも、株式会社ローソンエンタテインメントが運営する「ローチケ」などではすでに多くの記念チケットNFTが販売されており、決して特殊なケースではありません。
入場チケットをNFT化することで来場の証明ともなり、その後有名になったアーティストの初期のライブへ参戦した証拠ともなるなど、いわゆる「推し活」との相性が良いとされています。
NFTをビジネスに取り入れるメリット
NFTをビジネスに取り入れることには、どのようなメリットがあるのでしょうか?主なメリットは次のとおりです。
新たな顧客層にアピールできる
NFTをビジネスに取り入れることで、これまで自社ではアプローチが難しかった新たな顧客層にアピールできる可能性があります。
たとえば、オンラインでのNFTアイテム販売の場合、リアルな商材の流通が難しい海外のユーザーにも購入してもらうことが可能です。また、メタバース上のアバターが身に着ける衣装をNFT化して販売することで自社ブランドを認知する人を増やし、リアルでの衣料品販売などにつなげることなども検討できます。
オンラインで完結するとしてもオンラインからリアルへとつなげるとしても、目的への導線をしっかりと設計することで、新たな収入の柱とすることが期待できるでしょう。
ファンビジネスとの相性が良い
NFTは、ファンビジネス(いわゆる「推し活」)と非常に相性が良いといえます。ファンビジネスを展開している事業者がNFTを取り入れることで、収益の増加やさらなるファン層の獲得につながることが期待できるでしょう。
たとえば、NFTを取り入れることでファン歴やイベントの参戦履歴を可視化したりファン限定で限定NFTを配布したりするなど、よりファンの熱量を高める仕組みとして活用することなどが考えられます。
違法なチケット転売を抑止できる
人気アーティストのコンサートや人気イベントなどのチケットは、しばしば高額転売の対象とされます。高額転売目的でチケットを買い占めるいわゆる「転売ヤー」については不正転売禁止法により規制されているものの、今も根絶には至っていません。
転売チケットでは入場できないとの取り扱いをするイベントも増えているものの、紙のチケットでは確認しきれないこともあり、イベント開催側も手を焼いていることでしょう。
そこで、NFTが救世主となるかもしれません。チケットをNFT化することでそのチケットを誰が入手し、誰に譲渡されたのかの記録が残ります。これにより運営側がチケットの二次流通(転売)を管理しやすくなるため、転売を抑止したり、転売で得た収入が運営側に入る仕組みを構築し転売ヤーのメリットをなくしたりすることなどが考えられます。
二次流通時に収入を得る設計が可能
一度購入した漫画本を古本屋に売るなど、二次流通はさまざまな業界で広く行われています。上で挙げた「転売ヤー」とは異なり、自分で読んだ本を古本屋に売ったり自分が使い終わったゲームソフトを中古店に売ったりすることは、違法ではありません。
しかし、アーティストや発行者側からすれば、二次流通も頭の痛い問題の一つでしょう。なぜなら、二次流通ではアーティストや発行者側に収入が入らないためです。
一方、NFTを活用すれば、この問題が解決できるかもしれません。NFTでは、二次流通にあたって発行者やアーティストが一定の収入を得る設計をすることが可能であるためです。
NFTをビジネスに取り入れる際の課題と注意点
NFTをビジネスに取り入れる際には、課題や注意点も存在します。ビジネスでNFTを活用する際には、次の点に注意しましょう。
法令の整備が十分ではない
NFTに関する法令の整備は、まだ十分であるとはいえません。そのため、たとえ平常時にはさほど問題とならなくても、いざトラブルとなった際に思わぬ損失を被る恐れがあります。
そのため、NFTをビジネスに取り入れる際にはNFTに詳しい弁護士にあらかじめビジネスモデルのリーガルチェックを受けるなど、トラブル予防やリスクの把握に努めることが必要です。
著作権にまつわる誤解が多い
NFTについては、著作権にまつわる誤解が少なくありません。そのため、NFTをビジネスに取り入れる際には、NFTの著作権について十分に理解しておくことが必要です。
そもそも、NFTを購入したからといって、その著作権までが得られるわけではありません。これは、漫画本を購入したからといって、その漫画本の著作権まで移転するのではないことと同じです。
たとえば、ある漫画を正規ルートで買ったからといって、その漫画を勝手にインターネット上にアップロードしたり勝手にTシャツに印刷して販売したりした場合には、著作権侵害となるでしょう。
著作権について誤解があれば著作権侵害をしてしまい、大きなトラブルへ発展する危険性があります。著作権について不明な点がある場合には安易に自己判断するのではなく、あらかじめ弁護士へ相談することをおすすめします。
価格が乱高下しやすい
NFTは一般的に、価格が乱高下しやすい傾向にあります。そのため、NFTをビジネスに取り入れる際には、取引価格の決定において難しい判断を迫られることもあるでしょう。
また、価格が乱高下しやすいとの特長を踏まえ、運営側が信頼を損ねる行為をしないよう留意しなければなりません。
たとえば、「限定10部」として販売したNFTは、その部数を前提とした価格で売買されます。そうであるにもかかわらず、その後運営側が十分な説明もないままに追加販売してしまえば市場が混乱する可能性があるほか、運営側への信頼が大きく失墜してしまいかねません。
詐欺が横行している
NFTを用いた詐欺は少なくありません。たとえば、偽造NFTの販売や不正な価格操作、有名アーティスト(「絵師」など)へのなりすましなどです。
ビジネスでNFTを活用する際には詐欺の被害に遭わないよう十分に留意すべきであることはもちろん、リテラシーの不足から加害者の片棒を担がされてしまうことのないようにも注意しなければなりません。
マネーロンダリングの温床となる可能性がある
マネーロンダリングとは、犯罪行為などで得た資金を、出所がわからないように「洗浄」する行為です。NFTは国をまたいで多額の資金を瞬時に送金できるため、マネーロンダリングの温床となるリスクが指摘されています。
ビジネスにNFTを取り入れる際には、マネーロンダリングに巻き込まれることのないよう留意しなければなりません。たとえば、信頼性が不明な取引所から暗号資産やNFTを購入しないことや、ウォレットが乗っ取られてしまわないようパスワードを厳重に管理することなどです。
「怪しいもの」とのイメージを持っている人もいる
NFTが詐欺やマネーロンダリングに使われる可能性があるとはいえ、NFT自体が法的に問題のあるものというわけではありません。しかし、中にはNFT全般に対して「怪しいもの」や「詐欺である」とのイメージを持っている人も存在します。
そのような人はNFTをビジネスに取り入れている企業自体に対しても、同様のイメージを持つ可能性があります。そのため、ビジネスへのNFTの活用がすべての人にとってプラスに捉えられるわけではないことは留意しておく必要があるでしょう。
まとめ
NFTとは、デジタルデータに唯一無二性を付加する仕組みです。NFTをうまくビジネスに取り入れることで不正転売の防止につながるほか、二次流通時にアーティストや発行者が収益を得られる仕組みを構築することも可能です。
その一方で、著作権侵害のリスクや詐欺などに巻き込まれるリスク、思わぬ法令違反となるリスクなど注意点も少なくありません。思わぬリーガルリスクを避けるため、NFTをビジネスに取り入れる際には、あらかじめ弁護士へ相談しビジネスモデルの検証を受けることをおすすめします。
たきざわ法律事務所は、インターネット法務に強みを持つ弁護士事務所です。NFTをビジネスに取り入れるにあたってリーガルサポートが必要な際には、たきざわ法律事務所までお気軽にお問い合わせください。