【2022】NFTビジネスで気を付けるべき著作権とは?事業を行う際に注意すべき法律
近年、NFTに関するニュースを目にする機会が増えてきたという人も少なくないのではないでしょうか?
NFTについては、NFT化された絵画などが億を超えるような高値で取り引きされたなどの話題が目に留まりやすいことでしょう。そのため、NFTについて、何となく怪しいものであるとの印象を持っている人が多いかもしれません。
しかし、NFTは、うまく使えばビジネスで活用することも可能です。今回は、NFTをビジネスで活用した実例を紹介するとともに、ビジネスで活用する際に注意すべき著作権などについて弁護士が詳しく解説します。
目次
NFTとは
NFTとは、「Non-Fungible Token」の略称です。これを直訳すると、「代替不可能なトークン」となります。
まず、「トークン」には「しるし」や「象徴」などの意味があり、インターネット上で付される刻印のようなものであると考えると良いでしょう。また、ビットコインなどの暗号資産そのものを指して「トークン」と呼ぶ場合もあります。
まず、ビットコインなどの暗号資産は、NFTではありません。Aさんが持っている1BTC(ビットコイン)をBさんが持っている他の1BTCと交換をしても価値は同じであり、代替性があると考えられるためです。現実世界の現金も1万円札を別の1万円札と交換しても価値は同じであり、これと同様であると考えると良いでしょう。
一方、現実世界の絵画、たとえば「モナリザ」の絵はあの1枚のみであり、たとえば「モナリザ」を精巧に複写したものや「モナリザ」を最新技術で精巧にコピーしたものは、本物の「モナリザ」の絵画とは別物であり、価値も大きく異なります。これを、「代替不可能」といいます。
しかし、はじめからインターネット上に存在する作品は、キャンパスに描かれた「モナリザ」を複製することと比較にならないほど容易に複製ができてしまいます。また、多量に複製された結果、どれが「本物」なのかといわれても、その判断は困難でした。
そこで活躍するのが、NFTの仕組みです。NFTを活用することで、インターネット上の絵画や音楽、漫画などの作品に、デジタルの刻印を付けることが可能となります。
作品のコピーをされてもその刻印まではコピーがされないため、どれがオリジナルでどれが複製なのかといったことや、どれが正規品でどれが違法コピー品なのかという検証が容易となるわけです。
このように、インターネット上の作品をNFT化することで作品の唯一無二性を担保することが可能となり、インターネット上の作品の価値を高めることへとつながります。
NFTをビジネスや事業で活用した事例
NFTをビジネスや事業で活用した事例としては、次のものが存在します。他にも、非常に多くの実例が日々生まれていますので、興味のある方は調べてみると良いでしょう。
ナイキがNFTのスニーカーを販売した事例
スポーツ用品メーカーであるNikeが2022年4月、NFTスニーカーコレクションである「RTFKT x Nike Dunk Genesis CRYPTOKICKS」の販売を開始しました。
このスニーカーはNFTであるため、現実世界で実際に履くことはできません。しかし、このスニーカーの一部が約5,700万円もの高値で落札されたとして、話題となっています。
Nikeのように熱狂的なコレクターがいるメーカーにおいては、現実世界で使用できない商品であっても、このように高額で取り引きされる可能性があるでしょう。
NFTによるデジタル付録を活用した書籍の事例
株式会社メディアドゥと株式会社トーハンは、全国の書店においてNFTを活用した「デジタル付録」の展開を開始しました。
書店における紙の書籍の販売において、NFTを活用した限定のデジタル付録を提供する取り組みです。NFTを活用した付録は場所を取らないほか、コレクターによる書籍の購入を促す効果が期待できるでしょう。
すでに、NFT上のファンアイテムがランダムで付与される写真集などが発売されています。
NFTトレーディングカードを販売した事例
株式会社テレビ朝日と株式会社テレビ朝日メディアプレックスは、NFTを活用したデジタルトレーディングカードへの本格参入を発表しました。すでに、「超電磁ロボ コン・バトラーV」「ビデオ戦士レザリオン」などロボットアニメの名シーンをデジタルトレーディングカードとして発売しています。
唯一無二性が担保されるNFTは、無断コピーの流通が障害となるデジタルトレーディングカードのとの相性が非常に良いとされています。過去にも、NBA(National Basketball Association)プレイヤーたちの名プレーをテーマにしたカードが高値で取り引きされるなど、NFT化したデジタルトレーディングカードの販売市場は今後ますます広がりを見せることでしょう。
GMOアダム株式会社による漫画や映像などへのNFT付与サービス
GMOアダム株式会社は、漫画や映像などへNFTを付与するサービスを開始しました。
これまで、インターネット上で流通する漫画などは海賊版の違法流通に悩まされてきました。紙で発行された漫画を違法にコピーして販売するには、印刷や流通などに手間がかかります。また、紙質や印刷技術の甘さなどから違法コピー品であることが一目瞭然であることが多いでしょう。
一方、そもそもデジタル上に存在する漫画作品などはコピーが容易であり、品質も正規品と差がありません。そのため、デジタル上で作品を購入できるようにして広く作品を流通させようとすると、違法コピーが出回ってしまうというジレンマに陥ることとなっていたのです。
そこで、インターネット上で流通する漫画作品などをNFT化することで、正規品と違法コピー品との区別が付きやすくなり、違法コピー品の流通を防ぐことへとつながる効果が期待されています。
NFTをビジネスに取り入れる際に知っておきたい著作権と所有権
NFTをビジネスに取り入れる際には、著作権と所有権について理解しておく必要があります。それぞれの権利の概要は次のとおりです。
所有権とは
所有権とは、法令の制限内において、自由にその所有物の使用や収益、処分をする権利です。所有権には物を排他的に支配する権利であるとの性質があり、仮に所有権の円満な行使が妨げられたときには、返還請求や妨害排除請求、妨害予防請求などをすることができます。
また、所有権は、時効により消滅することはありません。
著作権とは
著作権とは、人の思想や感情を創作的に表現した著作物を保護するため権利です。ひとくちに著作権といっても、その権利は細分化しており、多数の権利の束となっています。
まず、著作権は、狭義の「著作権」と「著作者人格権」とに大きく分けられます(他に「著作隣接権」もありますが、ここでは割愛します)。このうち狭義の「著作権」は財産権とも言われ、他者へ譲渡したり相続したりすることが可能です。
一方、「著作者人格権」は著作をした人に帰属する権利であり、どのような契約を交わしたとしても他者への譲渡などはできません。
狭義の著作権(財産権)の中には、次の権利が含まれています。なお、これらの権利を分けて、たとえば「複製権」のみを譲渡することなども可能です。
複製権:著作物を印刷、写真、複写、録音、録画などの方法によって有形的に再製する権利
上演権・演奏権:著作物を公に上演したり演奏したりする権利
上映権:著作物を公に上映する権利
公衆送信権・公衆伝達権:著作物を自動公衆送信や放送をしたり、有線放送したりする権利。また、それらの公衆送信された著作物を、受信装置を使って公に伝達する権利
口授権:言語の著作物を朗読などの方法により口頭で公に伝える権利
展示権:美術の著作物と未発行の写真の著作物の原作品を公に展示する権利
頒布権:映画の著作物をその複製物により頒布する権利
譲渡権:映画以外の著作物の原作品または複製物を公衆へ譲渡する権利
貸与権:映画以外の著作物の複製物を公衆へ貸与する権利
翻訳権・翻案権等:著作物を翻訳、編曲、変形、翻案などする権利
二次的著作物の利用に関する原著作者の権利:二次的著作物の原著作物の著作者が持つ、その二次的著作物の利用に関して二次的著作物の著作者が有するものと同一の権利
一方、「著作者人格権」には次の3つの権利が含まれています。
繰り返しとなりますが、著作者人格権は譲渡することなどができません。ただし、契約において著作者人格権を行使しないよう制限することは可能です。
公表権:まだ公表されていない著作物を公表するかしないか、公表するならいつどのような方法で公表するかを決めることができる権利
氏名表示権: 著作物を公表するときに、著作者名を表示するかしないか、するとすれば実名か変名かを決めることができる権利
同一性保持権:著作物を自分の意に反して勝手に改変されない権利
NFTを購入したら所有権も移転する?
たとえば、NFT化されたアート作品を購入したら、そのアート作品の所有権も移転するのでしょうか?
結論をお伝えすると、NFT化されたアート作品を購入しても、その作品の所有権は取得できません。なぜなら、所有権の対象となるのは「物」のみであるためです。その本質がデータであるNFTアートは、所有権の対象とはなりません。
NFTを購入したら著作権も移転する?
NFTアート作品を購入したら、その作品の著作権も購入者へ移転するのでしょうか?
こちらは、順を追って解説していきましょう。
NFTを購入しても著作権は原則として移転しない
原則として、NFTアート作品を購入しても、著作権までが移転するわけではありません。これは、たとえば書店で通常の漫画を購入しても、その作品の著作権までを買ったことにはならないことと同様です。
書店で正規に漫画作品を購入したとしても、たとえばその作品のコピーを勝手に販売したり、その作品の一場面をTシャツにプリントして販売したりするなどの二次利用までが認められたわけではないでしょう。
これと同様に、NFTアート作品を購入しても、原則として著作権までは移転しません。つまり、NFTアート作品の購入とは、そのNFTアート作品の利用権を購入しているに過ぎないということです。まずは、この原則を知っておいてください。
NFTの利用内容は利用規約による
ただし、NFTアートの購入時に著作権が移転する場合もあります。それは、契約や利用規約で著作権や著作権の一部が移転すると定められている場合です。
多くの場合、NFTアートに関する契約はNFTの売買を仲介するプラットフォームの規約に準拠していますので、プラットフォームの利用規約をあらかじめよく確認しておくと良いでしょう。
利用規約によってもNFTの著作者人格権は移転できない
著作権の項目でも解説をしたとおり、たとえ契約などによりNFTアートの著作権が移転する場合であっても、著作者人格権までが移転するわけではありません。そもそも、著作者人格権は他者へ譲渡できない性質のものであるためです。
そのため、仮にNFTアートの著作権を取得した場合であっても、著作者人格権(公表権、
氏名表示権、同一性保持権)を侵害する利用は原則として認められませんので、注意しておきましょう。
ただし、契約によって、著作者が著作者人格権を行使しない旨を定めているケースは存在します。
NFTをビジネスで活用する際に今後起きうる法律問題
NFTをビジネスで活用するにあたって、今後次のような法律問題が発生する可能性があります。これらについては、自社のみで対応すべき問題というよりも、NFT全体に共通する今後の課題であるといえるでしょう。
具体的にこれらが問題となった際には、利用規約などと照らし合わせながら解決方法を模索していくこととなりますので、早期に弁護士へご相談ください。
NFTが転売された際にも利用規約は継続適用されるのか
NFT作品の購入というと、たとえば現実で絵画を購入するように、その作品の所有権を取得したように思い込んでしまいがちでしょう。
しかし、先ほどもお伝えしたように、NFT作品の購入とはあくまでも作品の利用権を付与されたに過ぎない、非常に脆弱な権利です。そして、その認められた利用権の内容は、プラットフォームの利用規約で定められていることが一般的です。
では、その後当初利用したのとは異なるNFTプラットフォームでNFT作品を転売した場合、転売によってNFTアート作品を購入した人にも、元のプラットフォームで定められた利用権の内容が継続して適用されるのでしょうか?
この点についてはその利用規約を個別で検証する必要があり、今後問題となるケースが生じる可能性がありそうです。
当初の宣言を超えた数のNFT発行
NFT作品の希少性を担保するため、発行するNFTの数をあらかじめ宣言するケースが見られます。では、仮に当初宣言された数を超えてNFTが発行された場合、当初の宣言を信じてNFT作品を購入した人は、どのような対応が取れるのでしょうか?
これも、現在の法的枠組みの中で解決をすることが難しい課題の一つです。
NFT不正利用時の対応
仮にNFTアート作品が第三者に不正利用された場合、NFTアート作品の購入者は何らかの法的対応が可能なのでしょうか?この点も、今後問題となり得ることでしょう。
所有権の対象となる物を購入した場合と異なり、NFTアートの購入者はそのアートの排他的権利を取得したわけではありません。また、著作権も取得していないことが一般的です。
そのため、原則としてNFTアートの購入者のみでは、不正利用者への対応が困難となる可能性が高いためです。
まとめ
NFTをビジネスに活用することへは、まだまだ無限の可能性があります。特に、コピーコンテンツ対策としては、今後さらに広く活用されていくことでしょう。
ただし、NFTをビジネスで活用する際には、その性質は法的課題にも注意しておかなければなりません。特に、NFTの購入者には原則として作品の所有権や著作権がないことは、よく理解しておくべきでしょう。
たきざわ法律事務所では、NFTなどインターネット法務に詳しい弁護士が在籍しております。NFTについてお困りの際や、NFTをビジネスへ活用しようと検討している際には、ぜひたきざわ法律事務所までご相談ください。