夫の不倫で「離婚」するためのポイントは?注意点を弁護士がわかりやすく解説
夫の不倫を知った場合、妻としてはすぐに離婚を検討することも考えられます。しかし、感情に任せて即座に離婚を申し出るのは避けたほうが良いでしょう。
夫の不倫で離婚をしようとする際は、どのような点に注意すればよいのでしょうか?また、離婚まではどのような流れとなるのでしょうか?
今回は、夫に不倫をされた場合における離婚の流れや注意点などを、弁護士がくわしく解説します。
目次
夫の不倫で離婚したい場合に夫と話をする前にすべきこと
夫の不倫に気付いた場合、頭に血がのぼってその場で離婚を切り出したくなるかもしれません。しかし、長期的な視点で見れば、その場の勢いで離婚を切り出すことは避けたほうがよいでしょう。はじめに、夫の不倫に気付いた際に、夫と話す前にすべき準備について解説します。
本当に離婚するかどうかの検討
1つ目は、本当に離婚するかどうかを検討することです。
原則として、不倫をした夫側の独断で離婚をすることはできません。夫が離婚を希望しても、妻が同意しない場合には調停や訴訟で解決が図られることがありますが、夫婦関係の破綻が認められなければ離婚は成立しません。
夫の不倫を許せず、すぐに離婚したいと考えることもあるでしょう。しかし、今後の生活を考慮すると、必ずしもすぐに離婚することが得策であるとは限りません。離婚をして一時的に慰謝料を受け取るよりも、まずは別居をして、継続的に婚姻費用を受け取るほうが生活が安定しやすくなります。
夫婦は相手を自身と同等レベルの生活をさせる義務を負っています。この義務を果たすため、別居期間中は原則として、収入の多い側がもう一方に生活費を支給しなければなりません。これを「婚姻費用」(別居中でも収入の多い方が支払う生活費のこと)といいます。
まずは一呼吸を置き、本当に離婚をするのか冷静に検討することをおすすめします。
夫の不倫の証拠の確保
2つ目は、夫の不倫の証拠を確保することです。
いくら不倫が疑わしくても、決定的な証拠がない場合、夫に不倫を否定されれば、慰謝料請求や妻側からの一方的な離婚は困難となります。なぜなら、夫が任意に慰謝料の支払いや離婚に応じない場合は、最終的には訴訟で決着をつけることとなるものの、訴訟では何より証拠が重視されるためです。そのため、夫に離婚を切り出すのは、不倫の証拠を掴んでからとすべきでしょう。
なお、慰謝料請求や一方的な離婚の原因となる不倫は、基本的に「不貞行為」と呼ばれる性的関係がある場合に限られます。ただし、不貞行為に至らない場合でも、不貞行為と疑われる行為(例:かなり親密なメールのやりとりなど)が証拠として考慮されることがあります。2人きりで食事をしていたり手をつないだりしているだけでは証拠としては弱いため注意が必要です。
請求できる金銭の確認
3つ目は、離婚となった場合に夫に請求できる金銭を確認しておくことです。
請求できる金銭を把握しておくことで今後の生活の見通しが立てられ、離婚するかどうかを判断しやすくなります。夫の不倫が原因で離婚をする場合、夫に対して請求し得る主な金銭は次のとおりです。
慰謝料:相手の不法行為(不倫)により生じた精神的苦痛を慰謝するための金銭
養育費:未成年の子どもがいる状態で離婚をする場合、親権を持たなかった側の親から親権を持った側の親へ定期的に支払う金銭
財産分与:婚姻期間中に積み上がった夫婦の潜在的な共有財産を、離婚にともない原則として2分の1ずつに分けること
それぞれ具体的な適正額は状況によって異なるため、あらかじめ弁護士へご相談ください。なお、養育費と財産分与は「不倫をした側から相手方に支払うもの」ではないため、状況によっては妻から夫へ支払う必要が生じる可能性があることに注意が必要です。
弁護士への相談
4つ目は、弁護士へ相談することです。
弁護士に相談すれば、請求できる金銭の目安や必要な対応を冷静に判断でき、証拠に関するアドバイスも受けられます。
さらに、相手と直接交渉することに不安がある場合でも弁護士に依頼することで、相手方との交渉や訴訟となった場合の対応などを任せることが可能となります。
離婚後の生活の検討
5つ目は、離婚後の生活の検討です。
自身に十分な収入がない場合、勢いで離婚をしてしまうと、今後の生活に困窮する事態となりかねません。収入が少ない場合、住む場所を探しても審査に通らず物件を借りられない可能性があります。
収入に不安がある場合は、離婚前に新しい仕事や住む場所を見つける準備をするべきです。このような場合には、すぐに離婚するのではなく、離婚せずに別居をして継続的に婚姻費用を受け取ることも有力な選択肢となります。
夫の不倫で離婚したい場合の流れ
夫の不倫によって離婚をしたい場合には、どのような流れで進めればよいのでしょうか?ここでは、基本的な流れを解説します。
不倫の証拠をつかむ
夫の不倫によって離婚を検討する場合、まずは不貞行為の証拠を掴まなければなりません。先ほど解説したように、証拠がなければ、夫が不倫を否定した際に一方的な離婚や慰謝料請求などが困難となるためです。
たとえば、ラブホテルに出入りする写真や、性的関係があったことを示すLINEのやり取りなどがこれに該当します。現在掴んでいる情報が不倫の証拠として十分かどうか判断に迷う場合には、弁護士へご相談ください。
離婚問題に強い弁護士へ相談する
不倫の証拠を掴むことと並行して、弁護士へ相談します。弁護士に相談することで、現在つかんでいる証拠で十分かどうかの判断がしやすくなるほか、請求できる慰謝料の額などの目途が立てられ、離婚を申し入れるかどうかの判断をしやすくなります。
また、依頼した場合には夫への離婚の切り出し方のアドバイスを受けられるほか、離婚交渉を代理してもらうことも可能となり安心です。
離婚や慰謝料請求について夫と直接話し合う
弁護士へ相談して戦略を練ったうえで、離婚や慰謝料請求について直接夫と話し合います。当事者間で離婚へ向けた話し合いがまとまらない場合などには、弁護士が代理で交渉することもあります。
妻側の請求(金銭的な請求やどちらが親権者となるのかなど)を夫がすべて飲み離婚に応じた場合には、この時点で解決となります。
離婚へ向けた合意がまとまったら、合意内容を記した離婚協議書を作成しましょう。
養育費など継続的な給付を受ける場合には、公正証書とするのがおすすめです。公正証書とすることで、万が一支払いが滞った際に強制執行がしやすくなるためです。
裁判所に離婚調停を申し立てる
離婚交渉がまとまらない場合は、調停を家庭裁判所に申し立てて解決を図ります。離婚調停とは、調停委員の立会いのもとで行う話し合いです。話し合いといっても当事者が直接対峙するのではなく、調停委員が双方から交互に意見を聞く形で話し合いを調整します。
調停を経て離婚へ向けた合意がまとまった場合には調停調書が作成され、これをもって離婚届の提出が可能となります。
離婚訴訟を提起する
調停で合意が得られない場合、離婚訴訟を起こすことになります。訴訟では、裁判所が状況を考慮し、離婚や慰謝料の支払いについて判断します。
判決が送達されてから2週間以内にいずれも控訴をしなかった場合には、その時点で判決が確定します。
夫の不倫で離婚したい場合にやってはならないこと
夫の不倫で離婚したい場合に避けるべき対応には、どのようなものがあるのでしょうか?ここでは、妻がやってはいけない対応について解説します。
証拠が揃っていない段階で夫や不倫相手を問い詰める
避けるべき対応の1つ目は、証拠が揃っていない段階で夫や不倫相手を問い詰めることです。不倫が妻に知られていることが夫や不倫相手に伝わると、その後警戒されて証拠を集めづらくなる可能性が高くなります。
早期に家を出る
避けるべき対応の2つ目は、早期に家を出ることです。
家を出て別居を開始してしまうと、不倫の証拠を掴むことがより困難となります。そのため、別居をするのであれば、少なくとも不倫の証拠を十分集めてからとすべきでしょう。
相手の言い値で慰謝料の承諾をする
避けるべき対応の3つ目は、相手の言い値で慰謝料の承諾をすることです。
慰謝料の適正額は、状況によって異なります。夫から提示された慰謝料の額が一見高額であるように感じても、婚姻生活を破綻させられた代償としては少ないかもしれません。
そのため、相手の言い値で承諾してしまうのではなく、あらかじめ弁護士へ相談することをおすすめします。
違法な方法での復讐を試みる
避けるべき対応の4つ目は、違法な方法での復讐を試みることです。
違法な復讐とは、たとえば夫の不倫を実名でSNSに暴露したり、自分も不倫し返したりすることなどが挙げられます。違法な復讐をすると、慰謝料の請求が難しくなるおそれが生じるほか、反対に夫側から慰謝料を請求されるリスクも生じます。
他の選択肢を検討しないまま早期に離婚する
避けるべき対応の5つ目は、他の選択肢を検討しないまま早期に離婚をすることです。
先ほど解説したように、生活の状況などによっては早期に離婚するのではなく、当面の間は別居をして婚姻費用を受け取るほうが得策かもしれません。感情に流されて離婚を決めず、今後の生活を踏まえ、自身にとって最良の方法を冷静に検討することをおすすめします。
夫の不倫が原因で離婚する場合の注意点
夫の不倫が原因で離婚をする際は、どのような点に注意する必要があるのでしょうか?ここでは、妻が知っておくべき主な注意点を3つ紹介します。
親権者は必ずしも妻になるとは限らない
未成年の子どもがいる場合、離婚をする際にはどちらかを親権者として定めなければなりません。どちらを親権者とするのかは原則として夫婦間の話し合いで定めるものの、合意がまとまらない場合には最終的には訴訟で決めることとなります。
この場合、夫の不倫が離婚原因であっても、必ずしも妻が親権者となるわけではないことに注意が必要です。どちらが親権者として相応しいのかは、これまでの子どもとの関わりや今後の生活環境、経済力、健康状態などから、子どもの福祉を重視して総合的に判断されます。
不倫をしたことだけをもって親権者として選ばれる可能性がゼロになるわけではないため、誤解のないようご注意ください。
慰謝料請求できない場合がある
夫が不倫をした場合でも、慰謝料請求ができない場合があります。慰謝料の請求が難しいのは、次の場合などです。
夫が不倫をする前から夫婦関係が破綻していた場合
決定的な証拠がない場合
時効期間(不倫の事実を知ってから3年)が過ぎた場合
このように、夫が不倫をしたからといって、必ずしも慰謝料請求ができるとは限りません。また、慰謝料請求ができる場合であっても、妻側にも非があれば一定程度減額される可能性もあります。
慰謝料請求できるか否か、そのケースにおける慰謝料の適正額が知りたい場合などには、弁護士へご相談ください。
収入の状況によっては妻から夫へ財産分与すべき場合がある
先ほど解説したように、離婚原因を問わず、離婚をする際には原則として財産分与が発生します。この財産分与は、夫婦のうち婚姻期間中に積み上がった財産の多い側がもう一方に対して支払うものであり、不倫など離婚原因を作った側が支払うものではありません。
そのため、夫の不倫が原因で離婚をする場合であっても、妻のほうが収入が多いなど婚姻期間中に築いた財産が妻のほうが多い場合には、妻から夫への財産分与が必要となる可能性があります。
夫の不倫で離婚したい場合はたきざわ法律事務所へご相談ください
夫に不倫をされて離婚をご検討の際は、たきざわ法律事務所までご相談ください。最後に、たきざわ法律事務所の主な特長を3つ解説します。
状況に応じて最適な解決策を提案する
夫が不倫した場合における最適な解決方法は、すべてのケースで同一ではありません。離婚が最適な場合もあれば、別居して婚姻費用を受け取り続けるほうが良い場合もあります。
たきざわ法律事務所は、画一的な解決をはかるのではなく、ご相談者様のご希望を十分にヒアリングしたうえで、状況に応じた最適な解決策をご提案します。
難しい言葉を使わない
弁護士へ相談しても、難しい用語を並べられ、理解できずに不満が残ることもあるようです。たきざわ法律事務所では、できるだけ難しい言葉を使わずサポートするため、法律に関する知識がない場合であっても安心してご相談いただけます。
フットワークの軽さがウリである
たきざわ法律事務所は、フットワークの軽さを自負しています。「夜間しか相談できない」「すぐに対応してほしい」などのご要望にもできるだけお応えするため、ご要望がある際はお気軽にお伝えください。
まとめ
夫の不倫により離婚をしようとする際の注意点や流れなどを解説しました。
夫に不倫をされた場合、早まって離婚を伝えることはおすすめできません。離婚しないほうが妻にとって得策である可能性があるほか、十分な証拠を掴む前に不倫に気付いていることを知られてしまえば、離婚や慰謝料請求などが困難となるおそれがあるためです。
夫に不倫をされて離婚をご検討の際は、夫に離婚を切り出す前に弁護士へ相談することをおすすめします。
たきざわ法律事務所では夫婦間トラブルの解決に力を入れており、夫の不倫にまつわるトラブルについても多くの解決事例があります。夫に不倫をされて離婚をご検討の際は、たきざわ法律事務所へお気軽にご相談ください。