夫の不倫が発覚したら妻はどうする?対応の選択肢を弁護士がわかりやすく解説
夫が不倫していることに気づいたら、気が動転してしまうことでしょう。しかし、初期の対応を誤ると後悔する事態にもなりかねません。
では、夫の不倫に気づいたら、妻はどうすればよいのでしょうか?また、夫に不倫された場合、夫に対してどのような請求ができるのでしょうか?
今回は、夫に不倫された場合の妻の対応について解説します。
目次
夫が不倫した場合の妻側の主な選択肢
夫が不倫した場合、妻としてはどのような選択がとれるのでしょうか?はじめに、夫に不倫された場合の主な選択肢を解説します。
実際に夫に不倫されてお困りの際は、弁護士へご相談ください。弁護士へ相談することで、その状況における最良の選択についてアドバイスを受けられるためです。
夫と話し合い、関係の再構築を試みる
1つ目の選択肢は、夫と十分に話し合い、関係の再構築を試みることです。
夫と別居や離婚をしたくない事情がある場合や、夫側に十分な反省が見られ妻としても許す気持ちがある場合などには、まずはこの方法を検討することとなります。
夫と離婚せず別居して、継続的に婚姻費用を請求する
2つ目の選択肢は、夫と離婚しないまま別居することです。
夫婦間には、互いに扶助義務があります。つまり、配偶者が生活できるように支援する義務があるということです(民法752条)。
そのため、不倫をした夫のほうが妻よりも収入が多い場合、別居期間中は原則として、妻に生活を維持するために必要な費用(「婚姻費用」といいます)を渡さなければなりません。
夫や妻自身の収入状況によっては、いきなり離婚をしてしまうと、妻の生活の質が落ちてしまう可能性が生じます。そのため、あえて離婚をせず、別居して定期的に婚姻費用を請求することも有力な選択肢となるでしょう。
夫と離婚せず夫や不倫相手に慰謝料請求をする
3つ目は、夫と離婚せず、夫や不倫相手に慰謝料を請求することです。
不倫による慰謝料は、離婚しなくても請求できます。 不倫の慰謝料は、共同不法行為者である夫と不倫相手に対してそれぞれ請求できますが、二重請求はできません。つまり、慰謝料の支払いは夫と不倫相手で分担されることが一般的です。離婚しない場合には、原則として不倫相手に慰謝料請求をすることとなるでしょう。
なお、一つ上で紹介した「夫と離婚せず別居して、継続的に婚姻費用を請求する」とこの慰謝料請求は、相容れないものではありません。夫と別居して婚姻費用を請求しつつ、不倫相手に慰謝料請求をすることも可能です。
夫と離婚して夫や不倫相手に慰謝料請求をする
4つ目の選択肢は、夫と離婚して夫や不倫相手に慰謝料請求をすることです。
自身が生活していく収入のあてがあり、かつ夫との再構築を希望しない場合には、この方法が有力な選択肢となります。なお、不倫による慰謝料の額は、離婚しなかった場合よりも、離婚に至った場合のほうが高額となる傾向にあります。
夫が不倫した際に妻が避けるべき行動
夫の不倫に気づいた場合、妻が避けるべき行動にはどのようなものがあるのでしょうか?対応を誤ると、後悔することにもなりかねません。ここでは、妻が避けるべき行動について解説します。
夫の不倫を感情的に問い詰める
避けるべき対応の1つ目は、夫の不倫を感情的に問い詰めることです。
自身の考えを整理できないうちに感情的に不倫を問い詰めると、思わぬ言葉を発してしまうなどして取り返しのつかない事態となりかねません。感情的になる気持ちは十分理解できますが、まずは落ち着いて戦略を練ることをおすすめします。
証拠を確保する前に不倫に気付いているそぶりを見せる
避けるべき対応の2つ目は、証拠を十分に確保する前に不倫に気づいている素振りを見せることです。
不倫の十分な証拠がないと、夫が不倫を否定した場合、慰謝料請求をしたり一方的に離婚をしたりすることはできません。また、妻が家を出た場合、妻が夫婦の同居義務に一方的に違反したとして、夫側から慰謝料請求をされるおそれさえ生じます。
しかし、証拠を十分確保する前に不倫に気づいていることを夫に悟られてしまうと、しばらくの間不倫相手との連絡を絶つなど、証拠を掴みにくくなる可能性が高くなります。そのため、不倫の証拠を十分に確保するまでは、不倫に気づいていることを夫に悟られないよう注意するべきでしょう。
違法な仕返しをする
避けるべき対応の3つ目は、違法な仕返しをすることです。
違法な仕返しとは、たとえば夫の不倫に対抗するために自身も不倫をしたり、不倫をした夫の情報を実名でSNSに投稿したりすることなどです。このような違法な仕返しをすると、一方的な離婚や慰謝料請求が困難となる可能性が高くなります。
また、名誉棄損罪など刑法上の罪に該当する場合には、刑事告訴をされて前科がつくおそれも否定できません。
早期に家を出る
避けるべき対応の4つ目は、早期に家を出ることです。
先ほど解説したように、不倫した夫に法的措置をとるためには、証拠の存在が不可欠です。
不倫に気づいた時点では十分に証拠が集まっていなくても、同居していれば追加で証拠を確保できる可能性が高いでしょう。
同居していればスマートフォンを見る機会も生じやすいほか、外食や外泊の予定を把握しやすく、その日に不倫相手と会うであろうと予想をつけて探偵に依頼することもできるためです。
しかし、早期に家を出て別居してしまうと、不倫の証拠を集めることが難しくなります。そのため、不倫の証拠を十分に確保するまでは、別居は思いとどまったほうがよいでしょう。
よく検討しないまま早期に離婚する
避けるべき対応の5つ目は、他の選択肢を十分に検討しないまま早期に離婚をすることです。なぜなら、妻にとって、不倫をした夫と離婚することが必ずしも得策であるとは限らないためです。
後ほど解説しますが、不倫した夫と離婚した場合、慰謝料や財産分与、子どもがいれば養育費などを受け取れる可能性があります。しかし、妻自身の生活費を継続的に受け取れるわけではありません。
妻に十分な収入がないにもかかわらず早期に離婚すると、生活が苦しくなるおそれがあるでしょう。そのため、離婚を急ぐ理由がないのであれば、当面の間は別居して婚姻費用を受け取り続けることも有力な選択肢となります。
夫が不倫した場合に知っておくべきこと
夫に不倫をされて今後の対応を検討するにあたり、妻はどのようなことを知っておくべきなのでしょうか?ここでは、対応を検討するにあたって知っておいたほうがよい事項を4つ解説します。
慰謝料請求や離婚には証拠が必要である
夫の不倫を理由に慰謝料請求をしたり、夫が離婚を拒否している場合に妻の意思だけで離婚をしたりするためには、不倫の証拠がなければなりません。
なぜなら、夫が慰謝料の支払いや離婚に応じない場合は最終的に裁判へと移行するものの、裁判では証拠が重視されるためです。証拠がなければ、裁判上での離婚や慰謝料請求は困難です。
また、証拠があれば夫側にも「仮に裁判となったら負ける」との意識が働くため、裁判に至ることなく直接の交渉や調停の段階で解決に至る可能性も高くなるでしょう。
二人きりでの食事は法律上の不貞行為ではない
慰謝料請求や一方的な離婚の原因となる不倫は、「不貞行為」のみです。不貞行為とは、性的関係をともなう不倫を指し、二人きりでの食事などは該当しません。
つまり、法的措置を前提として夫の不倫の証拠を確保するのであれば、ラブホテルに出入りする写真や性的関係があったことを示すスマホ内の写真、LINEのやり取りなどが必要になるということです。
二人だけで食事をしている様子や路上で手をつないでいる様子などを写真に収められたとしても、これだけでは証拠として弱いでしょう。証拠が確保できずお困りの際は、弁護士へご相談ください。
慰謝料の金額は相手の年収などで決まるのではない
夫の年収が高い場合、不倫の慰謝料も高額になると考えるかもしれません。しかし、実際には不倫の慰謝料と相手の年収は比例しないことが原則です。
裁判にまで至った場合、不倫の慰謝料の額は悪質性の高さなどで決まります。具体的には、婚姻期間の長さや夫婦間の子供の有無、不倫の期間や頻度、反省の有無などです。
ただし、事実上は相手の年収が高ければ、高額な慰謝料の支払いに応じてもらえる可能性もあるでしょう。なぜなら、年収の高い相手は多忙であることも多く、調停や裁判にまで至って多くの時間を要するよりは、妻が請求する高額な慰謝料を支払ってでも早期解決を望む可能性があるためです。
実際に慰謝料請求をする際は、弁護士へ相談したうえで戦略を練ることをおすすめします。
慰謝料は夫と不倫相手のどちらにも請求できる
不倫の慰謝料は、夫と不倫相手のどちらに請求しても構いません。両者に半額ずつ請求することも可能である一方で、夫や不倫相手に全額請求することもできます。
ただし、両者に請求したからといって、二重取りができるわけではありません。その不倫による慰謝料の適正額が200万円である場合、両者への請求額の合計額が200万円なのであり、それぞれに200万円を請求できるわけではないということです。
また、たとえ「不倫相手を懲らしめたい」と考えて不倫相手だけに200万円全額を請求したとしても、不倫相手が夫に対して100万円を支払うよう請求する可能性はあります。なぜなら、夫と不倫相手との間では連帯債務であり、全額を負担した側はもう一方に対して求償権を行使できるためです。
不倫した夫と離婚する場合に請求し得る内容
夫の不倫によって離婚に至った場合、夫に対してどのような請求ができるのでしょうか?ここでは、請求し得る内容について解説します。なお、実際に請求できるかどうかや具体的な金額は状況によって異なるため、あらかじめ弁護士へご相談ください。
慰謝料
1つ目は、慰謝料です
慰謝料とは、不法行為によって権利を侵害された者が、自身の権利を侵害した者に対して金銭の支払いを請求することです。不倫(不貞行為)によって夫婦関係を破綻させることは慰謝料請求の原因となり、妻は夫に対して慰謝料を請求できる可能性が高くなります。
養育費
2つ目は、養育費です。
養育費とは、子どもの監護や教育に要する費用です。未成年の子どもがおり、妻が親権を獲得した場合、夫に対して継続的な養育費の支払いを請求できます。
ただし、養育費は「親権を獲得しなかった側の親が親権を獲得した側の親に対して支払うもの」であり、必ずしも不倫した側が支払うとは限りません。夫の不倫により離婚に至っても夫が親権を獲得することはあり、この場合は妻から夫へ養育費を支払うこととなります。
財産分与
3つ目は、財産分与です。
財産分与とは、婚姻期間中に夫婦の協力によって得た財産を、離婚にともない原則として2分の1ずつで清算することです。婚姻中に増加した財産のほとんどが夫名義である場合、妻は原則として、その2分の1の分与を請求できます。
ただし、財産分与は財産の清算としての意味合いを有するものであり、必ずしも不倫をした側が支払うとは限りません。妻のほうが収入が多く、妻名義の財産が多い場合などには、妻から夫へ財産分与をする事態もあり得ます。
年金分割
4つ目は、年金分割です。
年金分割とは、夫婦それぞれの婚姻期間中における保険料納付額に対応する厚生年金を分割し、それぞれ自身の年金とする制度です。
たとえば、夫が外部からの収入を得ており妻が長年専業主婦であった場合、そのまま計算すれば妻が将来受け取る年金は少なくなります。そこで、離婚の際に夫の年金記録の一部を妻に移し、将来の妻の年金額を増やすことが検討できます。
なお、年金分割には専業主婦側からの手続きで自動的に2分の1ずつに分割できる「3号分割」と、その他の割合で分ける「合意分割」があります。お困りの際は、弁護士へご相談ください。
夫の不倫でお困りの際はたきざわ法律事務所へご相談ください
夫に不倫をされてお困りの際には、一人で悩まず、たきざわ法律事務所までお気軽にご相談ください。最後に、たきざわ法律事務所の主な特長を3つ紹介します。
フットワークの軽さがウリである
たきざわ法律事務所は、フットワークの軽さを自負しております。「夜間しか相談できない」「相談したことを周囲に知られたくない」など臨機応変に対応いたしますので、初回のお問い合わせの際にお気軽に希望をお伝えください。
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弁護士に相談しても難しい法律用語を並べられてしまえば、理解できずに不満や不安が募ることでしょう。たきざわ法律事務では、難しい用語をできるだけ使わずどなたにもわかりやすいアドバイスを心がけているため、安心してご相談いただけます。
状況に応じて最適な解決を提案する
夫に不倫をされた場合における最良の選択は一つではなく、状況や妻側の気持ちなどによって異なるものです。
たきざわ法律事務所ではご相談者様の想いに寄り添い、状況に応じた最適な解決をご提案します。自身の考えを整理するためにも、お困りの際はまずお気軽にご相談ください。
まとめ
夫に不倫された場合における妻側の選択肢を紹介するとともに、夫の不倫に気づいた場合に避けるべき対応について解説しました。
初期対応を誤ると慰謝料請求が困難となるなど、後悔することにもなりかねません。夫の不倫に気づいたら、夫を直接問い詰めたり、衝動的に家を出たりする前に、弁護士へ相談することをおすすめします。
たきざわ法律事務所では男女トラブルにまつわる法的トラブルの解決に力を入れており、多くの解決実績があります。夫に不倫をされてお困りの際には、たきざわ法律事務所までお気軽にご相談ください。