【2024】転職会議の口コミは削除できる?投稿者の特定方法も弁護士がわかりやすく解説
転職会議とは、企業の現社員や元社員が企業に関する口コミなどを投稿するサイトです。口コミが投稿されることで求職者が企業の情報に触れる機会が増え、求人への応募が増える効果が期待できます。しかし、その反面、企業にとってマイナスイメージとなる内容の口コミが投稿されることもあります。
では、転職会議になされた口コミは、削除できるのでしょうか?また、虚偽の内容や悪質な内容の口コミが投稿された場合、投稿者の特定は可能なのでしょうか?
今回は、転職会議の口コミ削除や投稿者の特定などについてくわしく解説します。
転職会議とは
公式サイトによれば、転職会議とは「転職総合サイト」です。企業の基本情報や求人情報が掲載されていることに加え、「口コミ」を見ることもできます。
口コミの登録者は現社員や元社員であり、企業の評判や年収、面接対策などが記載されています。口コミを登録するには転職会議に会員登録しなければならず、会員ではないユーザーが口コミを登録することはできません。
転職会議の口コミは削除できる?
転職会議には、自社にとって都合の悪い口コミが投稿されることもあります。企業にとってマイナスとなる内容の口コミが転職会議に投稿されると、求人活動において不利となるおそれがあるでしょう。
では、そのような口コミを企業側が削除することはできるのでしょうか?ここでは、口コミの削除について順を追って解説します。
簡単に削除することはできない
転職会議に投稿された口コミは、たとえそれが企業にとって都合の悪い内容であっても、そのことだけを理由に削除してもらえるわけではありません。転職会議の運営社に連絡さえすれば不都合な口コミを消してもらえるわけではないことには注意してください。
権利侵害がある場合は削除してもらえる可能性がある
投稿された口コミが企業の名誉を毀損するものであるなど法的権利を侵害するものであれば、一定の手続きを踏むことで削除できる可能性があります。転職会議の口コミを削除する方法は、次でくわしく解説します。
転職会議の口コミを削除する流れ
続いて、転職会議の口コミを削除する方法と、削除請求の主な流れを解説します。
送信防止措置の申出手続きを確認する
はじめに、転職会議が設けている「送信防止措置の申し出」手続きを確認します。
転職会議に投稿された口コミの削除は、企業自身または代理人である弁護士から、所定のフォームに連絡をして行うこととされています。これを、転職会議では「送信防止措置の申し出」と呼称しています。
転職会議に送信防止措置の申し出をする際は、次の書類を添付しなければなりません。
「侵害情報の通知書 兼 送信防止措置依頼書」(転職会議の定型フォーマット)
弁護士経由ではなく企業からの請求の場合、3か月以内に発行された印鑑登録証明書
ただし、フォームから削除請求をしたからといって、必ずしも口コミの削除に応じてもらえるとは限りません。削除が認められるのは、転職会議が「権利侵害にあたる可能性のある投稿」と判断したものに限られます。また、公式ホームページでは、具体的な削除箇所や判断基準や判断過程などについては一律回答しない旨が明記されています。
なお、転職会議では口コミの削除ではなく、企業による返信での対応を推奨しているようです。企業にとって不都合な内容ではあるものの権利侵害とまではいえない口コミは、削除対象とはなりません。
そのため、このようなケースでは、丁寧に返信することで印象の低下を最小限に抑えることも検討するとよいでしょう。
必要に応じて弁護士へ相談する
送信防止措置申し出手続きの内容を確認したら、必要に応じて弁護士へ相談します。弁護士へ相談することで、その投稿の削除が認められそうかどうか、具体的事案に応じて見通しを立てることが可能となります。また、依頼した場合は、手続きを代理してもらうことも可能です。
所定のフォームから削除依頼をする
弁護士へ相談した内容を踏まえ、企業自身または弁護士から、送信防止申し出手続きを行います。削除依頼をする際は、後ほど解説する発信者情報開示請求をするかどうかについても検討しておくとよいでしょう。
削除されない場合、裁判所に削除の仮処分を申し立てる
転職会議に所定の方法で削除を求めても口コミが削除されない場合は、裁判所への仮処分申し立てを検討します。仮処分とは、早急に対応すべき事情があるときに、正式な裁判によることなく裁判に勝訴したときと同じ効果を得られる手続きです。
「仮」の処分とはいえ、裁判所から仮処分命令が出た段階で、サイト運営者は削除に応じることが一般的です。そのため、削除の仮処分命令が出た後で正式な裁判をすべきケースは、実際にはほとんどありません。
とはいえ、裁判所に削除の仮処分命令を出してもらうためには、権利侵害の存在が必要です。仮処分の申立てには専門的な知識が必要であるため、弁護士へご相談ください。
転職会議の口コミで誹謗中傷した者を特定できる?
転職会議の口コミ投稿者を、企業が特定することはできるのでしょうか。ここでは、投稿者特定の可否と、特定するまでの流れについて解説します。
権利侵害があれば特定できる可能性がある
転職会議への口コミ投稿者は、原則として特定することはできません。投稿は匿名で行われるうえ、転職会議に連絡をしても、通常は口コミ投稿者の個人情報を教えてくれることはないためです。
ただし、口コミには性別や年代、担当業務などが掲載されるため、比較的規模の小さい企業であれば投稿者がある程度推測できることはあるでしょう。
一方で、口コミの内容が誹謗中傷であるなど企業の権利を侵害するものである場合は、投稿者を特定できる可能性があります。とはいえ、この場合であっても、転職会議に直接連絡をしたところで開示に応じてもらえる可能性はほとんどありません。投稿者の特定は、裁判所を介して行うことが原則です。
裁判所を介して投稿者を特定する手続きを、「発信者情報開示請求」といいます。また、2022年10月に施行された改正プロバイダ制限責任法で、非訟手続きである「発信者情報開示命令」も新設されました。
これらの手続きを活用することで、投稿者の特定が可能となります。投稿者の特定は原則として、次の2段階で行います。
- 転職会議から、投稿のIPアドレスやタイムスタンプなどの情報を得る
- 1の情報をもとに、投稿者が投稿に使ったプロバイダ(SoftbankやNTTなど)からプロバイダ契約者の住所や氏名などの情報を得る
ただし、これらの手続きによって投稿者を特定するためには、権利侵害があった旨を裁判所に書面で説明し、証拠を提示しなければなりません。書類のフォームを埋めるだけで開示が受けられるようなものではないため、お困りの際は弁護士へご相談ください。
転職会議の口コミで誹謗中傷した者を特定する流れ
転職会議の口コミで自社を誹謗中傷した者を特定するための一般的な流れは、次のとおりです。
投稿の証拠を残す
転職会議に自社の権利を侵害する内容が投稿されていることに気付いたら、すぐに投稿の証拠を残しましょう。なぜなら、発信者情報開示請求などを行うためには、権利侵害があった証拠を裁判所に提示する必要があるためです。
そのため、何らかの理由で問題の口コミが削除されてしまう前に、証拠を残す必要があります。
インターネット上での誹謗中傷の証拠は、スクリーンショットの撮影で残すことが一般的です。スクリーンショットは、次の内容が漏れなく掲載されるように撮影してください。
問題の口コミの内容
口コミが投稿された日時
口コミのURL
スマートフォンからの撮影ではURLが完全に表示されない可能性があるため、スクリーンショットの撮影はパソコンから行うことをおすすめします。
弁護士へ相談する
スクリーンショットで証拠を残したら、その証拠を持って、できるだけ早期に弁護士へご相談ください。
相談する際は、インターネット上での誹謗中傷対応に強い弁護士を選ぶことをおすすめします。弁護士へ相談することで、発信者情報の開示が受けられそうかどうかあらかじめ見込みを立てられるほか、依頼した場合は手続きを代理してもらうことが可能となります。
発信者情報開示請求をする
弁護士へ依頼したら、弁護士が発信者情報開示請求手続きを行います。開示が認められる場合であっても、依頼から開示までには数か月程度を要することが一般的です。そのため、あらかじめスケジュールについても確認しておくとよいでしょう。
投稿者が特定できたら、相手への法的措置を検討します。相手にとり得る法的措置としては、次のものが挙げられます。
損害賠償請求:口コミの投稿によって生じた損害を支払うよう、投稿者に金銭を請求すること
刑事告訴:口コミ投稿が名誉毀損罪などの犯罪行為にあたる場合に、警察などの捜査機関に犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求めること
どのような法的措置をとることが適切であるかは、具体的な状況や被害者である企業の希望などによって異なります。そのため、相手にとる法的措置の内容についても、弁護士へ相談したうえで検討することをおすすめします。
転職会議の口コミ投稿者を特定したい場合の注意点
転職会議の口コミで投稿者を特定したい場合、どのような点に注意する必要があるのでしょうか?最後に、投稿者を特定したい場合の注意点を3つ解説します。
必ずしも開示されるわけではない
転職会議で自社にとって都合の悪い口コミが投稿されたからといって、必ずしも投稿者の情報が開示されるわけではありません。
情報の開示が認められるのは、自社の権利侵害が認められた時だけです。開示が受けられそうかどうかの見込みをある程度立てたい場合には、弁護士へご相談ください。
削除請求の前に誹謗中傷の証拠を残しておく
転職会議になされた口コミの内容が悪質であれば、転職会議の事務局へ請求することで削除が認められる可能性が高いでしょう。
しかし、該当の口コミが消えてしまえば、投稿者の特定などの法的措置が困難となります。なぜなら、発信者情報の開示が相当であると裁判所に認めてもらうためには、権利侵害があった旨の証拠の提示が必要となるためです。そのため、口コミの削除請求をする前に、投稿の証拠を残しておかなければなりません。
スクリーンショットの撮影が不十分なこともあるため、相手への法的措置を検討している場合には、削除請求をする前に弁護士へ相談することをおすすめします。弁護士へ相談した時点で該当の口コミが残っていれば、仮にスクリーンショットに不足があっても追加で撮影することができるためです。
投稿から時間が経てば開示を受けられない可能性が高くなる
転職会議に自社の権利を侵害する悪質な口コミが投稿されたら、できるだけ早期に対応に弁護士へ相談することをおすすめします。なぜなら、投稿から時間が経てばプロバイダ(転職会議や、投稿者が口コミ投稿に使用した接続プロバイダ)でログが消えてしまい、発信者情報の開示を受けられなくなる可能性が高くなるためです。
開示命令が出た時点ですでにログが消えていれば、いくら裁判所から開示命令を出してもらっても開示を受けようがありません。
ログの保存期間はプロバイダによって異なりますが、おおむね3か月から6か月程度であることが多いでしょう。インターネット上での誹謗中傷への法的措置は、時間との勝負でもあることを知っておきましょう。
まとめ
転職会議に投稿された口コミの削除や、投稿者の特定などについて解説しました。
転職会議になされた口コミは、たとえその口コミの対象となっている企業であっても、自由に削除することはできません。口コミを削除するには、転職会議所定の方法で削除を申し入れるか、裁判所に削除の仮処分命令を出してもらうことが必要です。
また、悪質な場合には発信者情報請求を行って投稿者を特定したうえで、損害賠償請求や刑事告訴をすることが選択肢に入ります。
しかし、これらの手続きを自社だけで行い、削除や投稿者の特定にまでこぎつけることは容易ではないでしょう。そのため、転職会議に投稿された口コミの削除や投稿者の特定でお困りの際は、早期に弁護士へ相談することをおすすめします。
たきざわ法律事務所では、インターネット上でなされた企業や店舗、医院などへの誹謗中傷対応に力を入れています。転職会議の口コミに自社の悪評を書き込まれてお困りの際などには、たきざわ法律事務所までお気軽にご相談ください。