たきざわ法律事務所

Twitterで悪口を書かれた際の対処方法は?弁護士がわかりやすく解説

この記事を書いた弁護士は…

 

 

 

 

近年、クリニック来院前にインターネットで口コミを探す人も少なくありません。特に、X(旧Twitter)での評判をざっと検索する人も多いでしょう。近隣に、競合するクリニックが多い場合はなおさらです。

 

しかし、中には悪口を書かれてしまうこともあります。では、Twitterでクリニックの悪口を書かれてしまったら、どのように対処すればよいのでしょうか?今回は、Twitterでクリニックの悪口を書かれてしまった場合の対処法について詳しく解説します。

 

Twitterでクリニックの悪口を書かれたら法的措置をとれる?

 

X(旧Twitter。以下、この記事ではTwitterといいます)でクリニックの悪口を書かれると、これが来院者数に影響するおそれがあります。では、Twitterで悪口を書かれた場合、これに対して法的措置をとることはできるのでしょうか?

 

この結論は、悪口の内容によって異なります。なぜなら、「悪口」について法律上の定義がなく、「悪口を書いたら損害賠償の対象になる」とか「悪口を書いたら懲役〇年」などの法律は存在しないためです。

 

法的措置を検討する場面では、その悪口の内容を法的な視点から精査し、これによって法的措置の可否を検討することとなります。

 

Twitterで悪口を書かれた場合にとり得る法的措置

 

クリニックがTwitterで悪口を書かれた場合、どのような法的措置をとれる可能性があるでしょうか?ここでは、次の3つの法的措置を紹介します。

 

  • 発信者情報開示請求
  • 刑事告訴
  • 損害賠償請求

 

なお、これらはどれか一つを選ぶというものではなく、刑事告訴や損害賠償請求の前提として発信者情報開示請求を行うという位置づけです。また、刑事告訴(刑事)と損害賠償請求(民事)はそれぞれ要件などが異なり、たとえば「刑事告訴は難しいものの、損害賠償請求はできそう」など、事案によって判断します。

 

また、刑事告訴と損害賠償請求の両方の対応ができそうな場合は両方の措置を講じる場合もある一方で、時間や費用面などの都合からいずれか一方のみとすることもあります。そのため、Twitterに悪口を書きこまれたらまずは弁護士へ相談のうえ、その事案についてどのような法的措置を講じるのか見通しを立てることをおすすめします。

 

発信者情報開示請求

 

発信者情報開示請求とは、悪口の投稿者が誰であるのか特定する手続きです。Twitterは匿名で使われることが多いため、悪口を投稿したユーザーが誰であるのかわからないことが多いでしょう。

 

誰であるのかわからない相手を刑事告訴したり、損害賠償請求したりすることは困難です。そのため、刑事告訴や損害賠償請求に先立って、原則として投稿者を特定しなければなりません。

 

発信者情報開示請求は、原則として次の2段階で行う必要があります。

 

  • Twitterの運営会社に開示請求をして、投稿のIPアドレスやタイムスタンプを入手する
  • 1で得た情報をもとに、相手が接続に使ったプロバイダ(NTT社など)に開示請求をして、契約者の住所や氏名などの情報を入手する

 

とはいえ、Twitterの運営会社や接続プロバイダに対して直接開示を求めても、応じてもらえる可能性はほとんどありません。そのため、裁判所を介して請求することが一般的です。

 

なお、2022年10月1日に改正プロバイダ責任制限法が施行され、これによって先ほど紹介した2段階の手続きを1本の手続きで行うことができる裁判手続が創設されています。この手続きを使用することで、開示請求にかかる期間を大きく短縮することが可能です。

 

刑事告訴

 

刑事告訴とは、捜査機関に犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める意思表示です。この手続きの最終的な目的は、投稿者に前科をつけることです。

 

告訴が受理されると警察で事件の捜査が行われ、状況に応じて相手が逮捕されます。その後は検察に身柄が送られ、検察の判断で起訴(刑事裁判にかける)か不起訴(刑事裁判にかけず、罪を不問とする)かが決まります。起訴されると刑事裁判が開かれ、ここで有罪・無罪や具体的な量刑が決まるという流れです。

 

ただし、告訴の受理後は原則として警察や検察に捜査の判断が委ねられるため、たとえ被害者であっても逐一捜査機関に指示を出すことは困難です。また、たとえ相手に前科がついたからといって、クリニックが金銭などを受け取れるわけではありません。

 

Twitterに投稿された悪口は、その内容や態様に応じて次の罪に該当する可能性があります。

 

名誉毀損罪

 

名誉毀損罪とは、公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した場合に成立する罪です。名誉毀損罪が成立すると、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金の対象となります(刑法230条)。

 

ただし、次の3つの要件を満たす場合は、例外的に違法ではないこととされます。

 

  • 公共の利害に関する事実に係るものであること
  • その目的が専ら公益を図ることにあること
  • 真実であることの証明があること

 

そのため、特に一般個人への悪口ではなくクリニックの悪口であれば、正当は批判である以上、名誉毀損罪に問うことは困難です。

 

侮辱罪

 

侮辱罪とは、事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した場合に成立する罪です。名誉毀損罪が具体的な事実の摘示が要件とされている一方で、侮辱罪はより抽象的な表現でも成立する可能性があります。

 

侮辱罪が成立すると、1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料の対象となります(同231条)。

 

脅迫罪

 

脅迫罪とは、相手や親族の生命、身体、自由、名誉、財産に対し害を加える旨を告知して脅迫した場合に成立する罪です。脅迫罪が成立すると、2年以下の懲役または30万円以下の罰金に処されます。

 

信用毀損罪・業務妨害罪

 

信用毀損罪や業務妨害罪とは、虚偽の風説を流布し、または偽計を用いて、人の信用を毀損し、またはその業務を妨害した場合に成立する罪です。これらの罪が成立すると、3年以下の懲役または50万円以下の罰金の対象となります(同233条)。

 

損害賠償請求

 

損害賠償請求とは、相手の不法行為によって生じた損害を金銭で賠償するよう相手に対して求めることです。民事上の請求であり、最終的な目標は、原則として相手から金銭を受け取ることとなります。

 

損害賠償請求はいきなり裁判上で請求するのではなく、まずは裁判外で弁護士から書面を送るなどして行うことが一般的です。この段階で相手が謝罪し、被害者であるクリニックが納得できるだけの金銭を支払う場合は、裁判外で解決します。この裁判外での解決を「示談」といいます。

 

一方、相手が謝罪をしないなど不誠実な対応をする場合は、裁判上での損害賠償請求へと移行します。

 

 

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Twitterでクリニックが悪口を書かれた場合の初期対応

 

Twitterでクリニックの悪口を書かれた場合、どのように対応すればよいのでしょうか?ここでは、Twitterに悪口を書かれた場合の初期対応を解説します。

 

Twitterに書き込まれた悪口の証拠を残す

 

Twitterにクリニックの悪口を書き込まれたら、即座に証拠を残してください。その悪口に対してその後発信者情報開示請求などの法的措置をとるためには、証拠が必要となるためです。

 

クリニック側が何らアクションを起こさなくても、投稿者が自らコメントを消したり他のユーザーが通報したりすることで投稿が消えてしまうかもしれません。投稿が消えると証拠が消え、法的措置が困難となってしまいます。そのため、投稿が消える前に証拠を残すことがポイントです。

 

証拠は、スクリーンショットの撮影で行うことが一般的です。スクリーンショットでは、次の内容が漏れなく掲載されるよう撮影しましょう。

 

  • 悪口が描かれた投稿の全文
  • 悪口に関連する前後の投稿や他のユーザーとのやり取り
  • 投稿の日時
  • 投稿固有のURL

 

スクリーンショットはスマートフォンではなく、パソコンから撮ることをおすすめします。なぜなら、スマートフォンからのスクリーンショットでは投稿のURLが不完全となることが多いためです。

 

できるだけ早期に弁護士へ相談する

 

スクリーンショットを撮影して証拠を残したら、できるだけ早期に弁護士へ相談してください。Twitterでの悪口に対して、自分で法的措置をとることは容易でないためです。

 

また、弁護士へ相談することで法的措置が可能かどうかの見通しが立てやすくなるほか、撮影したスクリーンショットに不備があればその場で追加の証拠を残すことが可能となります。

 

早期の相談をおすすめする理由は、時間が経過するとログが消えてしまい、法的措置が困難となる可能性が高まるためです。ログの保存期間はプロバイダによって異なるものの、おおむね3か月から6か月程度とされています。

 

保存期間が過ぎてしまうと、せっかく裁判所で開示命令が認められても、開示する情報が残っていないため開示できない事態となり、法的措置が頓挫してしまいます。

 

なお、これは弁護士への相談を3か月や6か月以内にすればよいということではなく、保存期間内に裁判所からプロバイダに開示命令を出してもらわなければなりません。そうであるからこそ、Twitterでの悪口や誹謗中傷への法的措置は、できるだけ早期の相談がカギとなります。

 

 

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悪口が正当な内容の場合はクリニックでの対応を見直す

 

冒頭で解説したように、悪口がすべて法的措置の対象となるわけではありません。不当な悪口であれば法的措置の対象となり得る一方で、正当な批判であればたとえクリニックにとって耳の痛い内容であったとしても、法的措置をとることは困難です。

 

悪口の内容が誹謗中傷などではなく正当な批判である場合は、いったん冷静になってその内容を真摯に受け止め、クリニックでの対応を見直すと良いでしょう。

 

正当な批判であるにも関わらずこれに対処しないと、また同じように感じた別の人にTwitterへ悪口を書かれてしまうかもしれません。また、SNSなどに書き込まなくても同じような不満を感じる患者が多いのであれば、じわじわと来院数が減るおそれもあります。

 

正当な批判であればこれを受け止め、クリニックでの対応を改善するきっかけとすることで、クリニックの評判が向上しやすいでしょう。

 

Twitterでクリニックが不当な悪口を書かれた場合にしてはいけない対応

 

Twitterにクリニックの悪口が投稿された場合、対応を誤ると法的措置が困難となるおそれが生じたりクリニックの印象が低下したりするおそれがあります。そこで最後に、Twitterでクリニックが不当な悪口を書かれた場合にしてはならない対応を3つ解説します。

 

悪口に直接反論する

 

してはならない対応の1つ目は、悪口に対して直接反論することです。

 

そもそもTwitterは個々のユーザーが自由につぶやく場であり、クリニックにとって悪口と思われる投稿をしたユーザーもクリニックに対して直接批判を届けたかったり、世間に悪口を広めたかったりしたいと思っていないことも少なくないでしょう。

 

そうであるにも関わらず、いきなりクリニックから反論されると驚いてしまい、さらに嫌な印象を持たれてしまうかもしれません。場合によっては、悪口や誹謗中傷がエスカレートしたり、SNSではないリアルの場でじわじわと悪評が広まったりするリスクもあります。

 

また、Twitter上でのやり取りは周囲からも見ることができることが一般的です。事情を知らないユーザーがそのやり取りを目にした場合、クリニックに対してよくない印象を持たれてしまいかねません。

 

むしろ、悪口そのものよりも印象の低下につながってしまうおそれがあります。反論した内容によっては、法的措置をとるにあたって不利となる可能性も否定できません。

 

このように、Twitter上での悪口に対して批判すると、さまざまなリスクが生じます。そのため、たとえ言い返したいと感じても、直接の反論はしない方が賢明です。

 

焦って削除請求をする

 

してはならない対応の2つ目は、焦って削除請求をすることです。

 

Twitterに悪口が投稿された場合、これが他者の目に触れる機会をできるだけ減らしたいと考えることでしょう。Twitterでは権利侵害の投稿を報告することが可能であり、報告することで投稿が削除される可能性があります。

 

しかし、焦って削除請求することはおすすめできません。削除請求によって投稿の削除が認められると、証拠である投稿が消えてしまうこととなるためです。

 

そのため、まずは悪口が書かれた投稿の証拠を残し、証拠に不備がないことを弁護士に確認してもらったうえで削除請求を検討することをおすすめします。

 

対応について長期間悩む

 

してはならない対応の3つ目は、対応について長時間悩むことです。

 

先ほど解説したように、悪口や誹謗中傷への法的措置は時間との勝負であるといっても過言ではありません。対応が遅れてログが消えるまでに間に合わないと、もはや相手の特定ができず法的措置が困難となってしまうためです。

 

そのため、自分で対応に長期間悩むのではなく、できるだけ早期に弁護士へ相談するようにしてください。

 

 

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まとめ

 

Twitterでクリニックの悪口が書き込まれたら、まずは早期にインターネット法務に詳しい弁護士へご相談ください。法的措置が可能かどうかはその悪口の内容によって異なっており、弁護士へ相談することで対応の見通しが立てやすくなるためです。

 

悪口への法的措置は、早期の対応がカギとなります。プロバイダでのログは永久に保存されるのではなく3か月から6か月程度の一定期間が経過することで消えてしまい、これを過ぎると相手の特定が困難となるためです。

 

たきざわ法律事務所ではクリニック様の誹謗中傷対応に力を入れており、これまでも多くの解決実績があります。Twitterに悪口を書き込まれてお困りの際は、たきざわ法律事務所までまずはお気軽にご相談ください。

 

 

 

 

 

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