たきざわ法律事務所

不当解雇は「慰謝料請求」が可能?事例別の慰謝料相場と会社・労働者が取るべき対応

この記事を書いた弁護士は…

 

 

 

 

 

慰謝料とは「精神的被害に対する損害賠償金」の意味を持ちます。不当解雇による精神的被害は人によっても異なりますが、相場はいくらくらいなのでしょうか?

 

今回は、不当解雇による慰謝料を請求する際の相場について、労働者目線・使用者目線でお伝えします。実際に不当解雇をされた方や不当解雇として訴えられている方は、参考にしてください。

 

不当解雇による慰謝料請求は可能?相場はいくら?

解雇通知

 

誤った方法で労働者を解雇してしまうことで、使用者は不当解雇として慰謝料請求をされる恐れがあります。逆に、労働者は不当解雇を理由に使用者を相手取って慰謝料請求が可能です。

 

慰謝料は「精神的被害に対する損害賠償金」であるため、実際に受けた精神被害に応じて慰謝料の金額が決定します。

 

しかし、身体的なものに対する請求ではないため、どの程度の被害を受けたのかを客観的に把握することが難しいです。そのため、ある程度の慰謝料相場が設定されています。

 

まずは、不当解雇による慰謝料の相場はいくらなのかについてお伝えします。

 

不当解雇による慰謝料相場は10万円〜100万円程度

 

不当解雇による慰謝料請求の相場は10万円〜100万円程度です。ただし、不当解雇であることを理由にかならず慰謝料を請求できるとも限りません。

 

慰謝料とは「精神的被害に対する損害賠償金」であることは前述のとおりです。つまり、不当解雇の中でも比較的違法性が高いと認められるケースに限って、慰謝料の請求が可能となるでしょう。

 

実際、過去の判例を見ると慰謝料請求が認められているケースもあれば、慰謝料請求のみ認めない判決が下っていることもあります。いくつかの判例をもとに、どのようなケースでは慰謝料請求が可能なのか?についても見ていきましょう。

 

【東京セクハラ事件(東京地裁 H11.3.12 労判760.23)】

慰謝料請求額 300万円
判決結果 30万円

20万円

合計:50万円

 

この事件では、セクハラ被害を使用者に訴えたにも関わらず、使用者が加害者側の意見を軽信し、被害者・加害者の私的争いであり社内秩序を乱した。そのため、両者を解雇したという事件です。

 

被害者は精神的苦痛を訴えて会社に300万円の慰謝料請求をしましたが、最終的には合計50万円の慰謝料で判決が下されました。

 

 

50万円の内訳を見ると、「安定した給与収入を失い、今後も就職できるか不安に陥った」ことを理由に30万円の支払命令が下ります。そして、「セクハラ被害を訴えた労働者は、使用者に相談をすることで、適切な処置を講じられることを規定していた。しかし、使用者が私的な争いと決めつけ、解雇するに至った精神的苦痛に対する慰謝料」として、20万円の支払命令が下りました。

 

この事件では、被害者が実際にセクハラ被害に遭っていたにも関わらず、使用者が正しく調査や処置を講じることなく、不当に解雇したため50万円の支払命令が下りました。被害者の精神的苦痛を考えれば、察するに余りある事案といえるでしょう。逆に、このような事件であっても50万円程度の慰謝料しかもらえないのが現状です。

 

参照元:解雇を不法行為と構成する損害賠償請求に係る裁判例(P.2)

 

【日鯨商事事件(東京地裁 H22.9.8 労判 1025.64)】

慰謝料請求額 100万円
判決結果 0円

 

この事件では、海外勤務として雇用されていた労働者が、一時(無断)帰国と同時解雇されたと主張するものです。

 

裁判所の判決では、解雇権の乱用であり被告側に過失があったものとして認める一方で、精神的苦痛に対する慰謝料は認められませんでした。その理由として「この事件によって被った精神的苦痛は、財産的損害の賠償で足りる」という判断が下されています。

 

原告側である労働者は複数回の転職回数があることや、英語力が堪能であることから、再就職も容易であるという判断もあります。

 

参照元:解雇を不法行為と構成する損害賠償請求に係る裁判例(P10)

 

上記2つの判例を見てみると、不当解雇による慰謝料の請求は「今後にどの程度影響を与えるか」がポイントになると考えられるでしょう。

 

たとえば、「一方的に解雇されたことによって、今後就職できるか不安」という状況が認められれば、精神的苦痛による慰謝料が認められやすいです。一方、有能な社員であって転職も経験しているような労働者であれば、「就職できるかな?」などの不安(精神的苦痛)を感じることはないため、慰謝料請求が認められにくい傾向です。

 

雇用形態に関わらず不当解雇が認められれば慰謝料請求は可能

 

アルバイトやパート社員等、いわゆる非正規雇用の労働者も不当解雇が認められれば、慰謝料請求が可能です。ただし、アルバイトであっても有期雇用契約である場合には、雇い止めとして不当解雇が認められないケースもあります(長期にわたって契約を更新されている場合は除く)。

 

全体を通していえることは、「雇用形態に関わらず、不当解雇であれば慰謝料の請求が可能」ということです。慰謝料請求権は労働者が持つ当然の権利でもあるため、不当解雇を訴える際には、併せて慰謝料請求も行いましょう。

 

不当解雇で慰謝料以外に要求される(できる)金銭はある?

不当解雇で慰謝料以外に要求される(できる)金銭はある?

 

不当解雇が発生した場合には、慰謝料以外にも下記の金銭を請求したりされたりする可能性があります。

 

  • 未払い賃金

  • 解雇予告手当

  • 退職金

  • 和解金・解決金

 

次に、慰謝料請求と同時に請求される(できる)金銭についてもお伝えします。

 

未払い賃金の請求が可能

 

不当解雇が認められることによって、解雇自体が無効になります。その結果、解雇してからその日に至るまでの賃金が発生するため、かならず未払い賃金が発生するのです。

 

たとえば、1月1日付で労働者を解雇したとして、半年後の6月末日に不当解雇が認められたとしましょう。不当解雇が認められた時点で、過去に遡って解雇自体が無効になります。よって、1月1日から6月末までの未払い賃金も合わせて請求が可能です。

 

実際、裁判所でも半年程度の賃金支払いを命じる判決が出るケースが多いです。

 

解雇予告手当

 

使用者が労働者を解雇する際には、30日以上前に解雇を予告する義務があります。万が一、解雇予告が30日満たない中で解雇する場合、解雇までの残日数分の解雇予告手当を使用者が労働者に支払わなければなりません。

 

たとえば、使用者が労働者に対して「あなたは今日付で辞めてもらいます」と言った場合には、1日の平均賃金×30日分の解雇予告手当支払い義務が発生します。

 

労働者は不当解雇であっても最終的に解雇を受け入れる場合は、解雇予告手当の請求が可能です。解雇予告を受けた日から実際に解雇された日までの日数の差額分がある場合には、きっちり請求すれば良いでしょう。

 

退職金

 

本来、就業規則に記載がある場合は、懲戒解雇された際の退職金を支給しなくても良いことになっています。しかし、不当解雇が認められた時点で懲戒解雇が無効になるため、満額の退職金を支給する義務があります。

 

和解金・解決金

 

不当解雇による争いをやめ、使用者・労働者双方でお互いに譲歩する際には、和解金(解決金)を支払います。使用者としては訴訟で判決が下った場合よりも少額で解決できる可能性が高くなるため、経済的メリットは大きいです。

 

一方、労働者は確実かつ早期に金銭を受け取れることがメリットです。もっとも、労働者自身が不当解雇を訴えたところで、敗訴する可能性も残されています。裁判をする以上は裁判官の判断に委ねられてしまうため、リスクを背負うよりも確実に金銭を受け取って和解したい方は、和解金(解決金)の受け取りを目指しましょう。

 

なお、和解金には慰謝料や退職金、未払い賃金等が含まれています。和解をする際には「すべてまとめて和解金」と認識しておいてください。

 

【労働者】不当解雇による慰謝料を請求するための手順

不当解雇による慰謝料を請求するための手順

 

労働者が不当解雇を受けた際に慰謝料を請求する手順は下記の通りです。

 

  • 証拠を集める

  • 不当解雇に該当するか確認

  • 職場復帰・金銭解決に向けた交渉を開始

 

労働者個人で慰謝料請求をしても良いですが、理想は弁護士などの専門家へ相談することです。専門的な見知から判断したうえで、確実な和解・判決を目指します。

 

手順1:不当解雇に関する証拠を集める

 

ご自身が使用者から解雇された場合は、「解雇理由証明書」の発行を依頼してください。解雇理由証明書には、ご自身を解雇した理由が記載されているため、不当解雇を裏付ける証拠になり得ます。

 

また、労働者が相手に対して解雇理由証明書の請求をした際には、使用者はかならず発行しなければなりません。万が一、発行を拒否してしまえば労働基準法違反として、使用者が罰則を受けることになります。

 

なお、不当解雇の事実発生日から2年で解雇理由証明書の発行義務が消滅することには注意が必要です。不当解雇を裏付ける証拠になるため、遅滞なく請求をするように注意してください。

 

手順2:不当解雇に該当するか確認する

 

手順1で受け取った解雇理由証明書をもとに事実関係を確認し、その理由が事実であれば、それが正当な解雇事由に該当するか否かを確認してください。たとえば、「本人の著しい能力不足」と記載されていた場合は、不当解雇になり得ます。

 

実際、解雇は相当な理由がなければ認められません。仮に本人の著しい能力不足があったとしても、改善の余地がないことや再三の改善策を提案したにも関わらず、本人が努力しないなどの事情がなければなりません。

 

よって、解雇理由証明書に記載されている事実だけでは判断が難しいのが現実です。たとえば「整理解雇」であっても、その有効性が認められるためには相当な事情が必要です。

 

実際に行われた解雇が「不当」と認められるためには、本人の意志や改善に向けた努力等が求められます。その解雇が不当か否かの判断が難しい場合は、弁護士等へ解雇理由証明書を持って相談すると良いでしょう。

 

手順3:職場復帰・金銭解決に向けた交渉を開始

 

不当解雇である可能性が高い場合は、職場復帰もしくは金銭による解決へ向けた準備を進めてください。不当解雇が認められれば、解雇自体が無効になるため職場復帰も可能です。

 

とはいえ、不当解雇をされた会社に戻るつもりがないという方がほとんどでしょう。そうなれば、金銭による和解や裁判による不当解雇の訴えを提起することになります。

 

確実な和解を目指すためにも、弁護士へ相談したほうが良いでしょう。不当解雇に該当するか否かの判断から、和解交渉等まで含めてしっかり対応します。

 

【使用者】不当解雇で訴えられたときの対処法

不当解雇で訴えられたときの対処法

 

解雇した労働者から不当解雇として訴えを起こされた際は、すぐに弁護士へ相談されることをおすすめします。自社内で解決を図ろうとしても、「正しく解雇した」という意見と「不当解雇をされた」という意見で対立してしまうからです。

 

ほとんどの場合は、労働者側も弁護士に依頼をしているため、使用者側も弁護士に依頼をしたうえで、第三者のアドバイス等を聞いて参考にすれば良いでしょう。

 

ここでは、不当解雇として企業が訴えられた場合の対処法についてもお伝えします。今後起こり得るリスクとして、ぜひ参考にしてください。

 

すぐに弁護士へ相談する

 

使用者側は、不当解雇を訴えられた時点で弁護士へ相談することをおすすめします。労働者が不当解雇を訴えてきた時点で意見が対立しているためです。

 

労働者を解雇するためには、相当な理由が必要です。弁護士等へ相談したうえで労働者を解雇したのであれば、同じ弁護士へ相談すれば良いでしょう。一方、会社の独断で労働者を解雇した場合は、実際に不当解雇に該当して慰謝料を請求される恐れがあります。弁護士に相談することを強くおすすめします。

 

不当解雇に当たるなら和解に向けた準備を行う

 

元の労働者から不当解雇を訴えられて調査した結果、不当解雇に該当するのであれば、和解に向けた準備をしてください。この時点で、弁護士等の第三者を間に挟んで準備を進めておくことをおすすめします。

 

不当解雇が認められる場合には、訴訟に発展すると会社側が不利になります。そのため、できる限り和解に向けた交渉を行うべきでしょう。このとき、経験や知識を持って労働者と交渉をしてくれる強い味方がいれば、被害を最小に抑えられます。

 

まとめ

 

不当解雇による慰謝料請求についてお伝えしました。

 

不当解雇が認められた場合の慰謝料相場は10万円〜100万円程度です。しかし、不当解雇が認められた場合には、未払い賃金や解雇予告手当等の金銭を要求したりされたりすることもあるでしょう。

 

慰謝料とは「精神的苦痛に対する損害賠償金」であることから、実際に被った精神的被害に対して金銭の支払い義務が生じます。

 

一度雇用した労働者を解雇するのは容易ではありません。使用者が正しく解雇をしたつもりでも、不当と認められる可能性はあります。不当解雇をされたとき、不当解雇として訴えられたときは、第三者に相談して和解を目指した方が良いでしょう。

 

本件を始めとした労務トラブルは、企業経営に大きく影響しかねない重要な問題です。もちろん裁判になってからの対応も可能ですが、当事務所としては裁判を起こさない「予防」が最重要だと考えております。

 

労務関連で少しでもトラブルがある企業様、不安のある企業様は、まずは当事務所までご相談下さい。訴訟対応はもちろん、訴訟前の対応や訴訟を起こさないための体制づくりのサポートをいたします。

 

 

 

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