たきざわ法律事務所

【今注目の新しい働き方】みなし労働時間制とは?メリットやデメリット関連法律まで詳しく解説

この記事を書いた弁護士は…

 

 

新型コロナウイルス感染症が世界中で蔓延した2020年、新しい働き方としてテレワークが注目を集めました。

 

あらゆる感染症対策として、人との接触を減らすことはとても効率的です。また、新型コロナをきっかけに多くの企業では、テレワークでも業績が変わらないことに気付いたはずです。

 

「むしろ、生産性が向上した」という声も聞こえてきそうです。しかしながら、在宅ワークに切り替えてからというもの、「労働時間管理が難しくなった」と感じる企業も多いはず。

 

労働時間を決めておいても、在宅であるからこそ時間外労働を見抜くことすらも難しい。そう思っている企業も多いはずです。

 

そこで注目を集めている働き方がみなし労働時間制です。みなし労働時間制はもともと1988年(昭和63年)に制定された制度です。

 

制定当時は、外回り営業職の方や海外乗務員等、労働時間の把握が困難な職種の人を対象とした制度でした。しかし、みなし労働時間制が制定されてから数十年が経過し、徐々に現代にも馴染んできたように思います。

 

本稿では、

  • みなし労働時間制とはなにか

  • みなし時間労働制の関連法律

  • みなし労働時間制のメリット・デメリット

について詳しくお伝えしていこうと思います。

 

みなし労働時間制の導入を検討されている企業等は、是非参考にしてみてください。

 

みなし労働時間制とは

みなし労働時間制とは、実際に働いた時間の把握が難しい場合に適用される労働時間制で、実際に働いた労働時間ではなく、あらかじめ決めておいた“みなし労働時間”を所定労働時間として算定する制度です。

 

「法定労働時間1日8時間・1週間では40時間が上限である」というのは基本中の基本です。しかし職種によっては、1日8時間1週間40時間以内という働き方に縛られないほうが、働きやすい職種もたくさんあります。

 

例えば火災が発生すれば誰よりも早く駆けつける“消防士”という職種の方は、2部交代制という珍しい勤務形態を採用していることは有名です。24時間いつ・どこで発生するかわからない火災等にすぐに対応できるよう、24時間交代の勤務形態を導入しています。

 

実際には24時間のうち、食事休憩や仮眠休憩を挟むため実労働時間は1日16時間(出動があれば別)となります。

 

このように、職種によっては1日8時間1週間40時間以内という働き方に縛られないほうが、柔軟な対応ができる職種が多くあるわけです。

 

そこで新たな働き方の労働時間制度として“みなし労働時間制”が注目され始めているのです。みなし時間労働制では原則として所定労働時間労働したものとみなすものです。

 

1週間に40時間以内というみなし労働時間が決められていたとしても、35時間しか労働しない方もいれば、45時間働く方もいます。

あくまでも“みなし”であるため、時間に縛られない働き方が、みなし時間労働制であると考えてください。

みなし労働時間制の種類

みなし労働時間制は大きく分けて

  • 裁量労働制

  • 事業場外みなし労働時間制

の2種類があり、さらに裁量労働制の中には専門業務型企画業務型の2種類があります。

 

それぞれ“みなし労働時間制”というくくりでは同じですが、細かく分ければ全く別物ですので、詳しく解説いたします。

裁量労働制

裁量労働制には、専門業務型と企画業務型の2種類があり、それぞれ該当する職種が異なります。

専門業務型

専門業務型は、業務の性質上厚生労働省令および厚生労働大臣告示によって定められた業務の中から定められています。該当する職種は下記のとおりです。

 

  1. 新商品や新技術の開発や人文科学や自然科学研究に携わっている者
  2. 情報処理システムの分析や設計を行う者
  3. 新聞もしくは出版の事業における記事の取材もしくは編集の業務等に携わるもの
  4. デザイン考案業務に従事する者
  5. 放送番組・映画等のディレクターおよびプロデューサー
  6. コピーライター
  7. システムコンサルタント
  8. インテリアコーディネーター
  9. ゲーム用ソフトウェアの創作業務
  10. 金融工学等の知識を持った者が行う金融商品の開発業務
  11. 証券アナリスト
  12. 学校教育法の規定にある大学教授の研究業務
  13. 公認会計士
  14. 弁護士
  15. 建築士
  16. 不動産鑑定士
  17. 弁理士
  18. 税理士
  19. 中小企業診断士

なお専門業務型裁量労働制を導入するためには、所轄労働基準監督所長宛に届け出を行わなければいけません。

企画業務型

企画業務型裁量労働制は企業などにおいて、企画・立案・調査・分析を行う労働者に対して適用できる労働制度です。

 

企画業務型裁量労働制は専門業務型裁量労働制と比較して、複雑な手続きが必要となります。

導入までの大まかな流れは、下記のとおりです。

 

  1. 企画業務型裁量労働制を導入できる対象業務があるか確認
  2. 労使委員会を組織
  3. 企画業務型裁量労働制の実施のために労使委員会で決議
  4. 決議に従い企画業務型裁量労働制を開始

企画業務型裁量労働制では、労使委員会の組織や決議を必要とするため、複雑な手続きが多くなってしまいます。しかし、創造性に優れる人材を自由な環境下で労働させることこそが、企業にとってもプラスに働く可能性が高いです。

 

優秀な人材を自由に活動させるためにも企画業務型裁量労働制の導入検討をしてみても良いでしょう。

事業場外みなし労働時間制

事業場外みなし労働時間制とは、簡単に言えば「事業場以外で働く労働者のための労働時間制度」です。

 

職種によっては外回り営業がメインで、会社(事業場)にいることのほうが少ない方も多いでしょう。

中には、直行直帰をメインとしているビジネスマンもいるかもしれません。また最近では、在宅ワーク(テレワーク)を行う企業も増えてきており、事業場外みなし労働時間制が注目を集めています。

 

上記のような働き方をされている方の労働時間管理は容易ではなく、あくまでも自己申告で管理を行うしかありません。

 

ところが事業場外みなし労働時間制を導入することで、所定の労働時間働いたということを“みなす”ことができ、労働時間管理が簡単になります。

 

なお、事業場外みなし労働時間制を導入するためには、下記の2つの要件を満たしていなければいけません。

事業場外みなし労働時間制を導入するための要件
  • 労働者が労働時間の一部もしくは全部の時間について事業場外で業務を行ったこと
  • 労働時間の算定が難しいこと(使用者の指示管理が及ばないこと)

事業場外みなし労働時間制では、上記2つの要件を満たしていなければいけません。

よって、複数人グループでの外回り営業を行う労働者の中に、時間管理を行う者がいた場合には、事業場外みなし労働時間制は適用されません。

 

その他、使用者と労働者がスマートフォンなどを用いて逐一、報告し合える状況にあれば「労働時間の算定が容易」と判断される可能性が高いです。

みなし労働時間制関連法律

みなし労働時間制は、労働基準法の根拠に基づいて定められています。

 

みなし労働時間制 関連法律
専門業務型裁量労働制 労基法第38条の3

労基則第24条の2の2

企画業務型裁量労働制 労基法第38条の4

労基則第24条の2の3

第24条の2の4

第24条の2の5

第66条の2

事業場外みなし労働時間制 労基法第38条の2

労基則第24条の2

 

その他みなし労働時間制の注意点・関連法律として「残業代問題」があります。

みなし労働時間制では基本的に「残業」という考え方がありません。このことを利用した、いわゆるブラック企業も存在しています。

 

しかし、法定労働時間を超過して働いた時間分や休日・深夜労働を行った場合の割増賃金請求は可能です。また、みなし労働時間制と固定残業代(みなし残業代)も別ですので、混合せずに考えておいてください。

 

みなし労働時間制のメリット・デメリット

みなし労働時間の内容や関連法律についてみてきましたが、最後にみなし労働時間制のメリット・デメリットについても詳しくお伝えいたします。

メリット

それぞれ詳しくお伝えいたします。

時間に縛られることなく新しい働き方ができる

みなし労働時間制を導入することで、時間的自由度の高い新しい働き方が可能です。

 

みなし労働時間はあくまでも“みなし”であるため、必ずしも所定の時間業務に従事する必要がありません。

 

依頼された業務に必要な労働時間が一般的に「8時間」だったとすれば、みなし時間が8時間として、8時間分の対価(給与)が支払われます。しかし実際に受けた仕事を行ってみた結果6時間で終了した場合であっても、8時間分の対価を得られます。

 

余った時間はプライベートな時間として利用できるのもみなし時間制のメリットでしょう。

 

また、1週間40時間というみなし労働時間であれば、1日10時間勤務を4日間続けて3日休みという変則的な勤務も可能です。

労働者の能力・生産性の向上が見込める

みなし労働時間制は、最初から労働時間をみなしているため、時間いっぱいまで働く必要もありません。

早く業務を終わらせられればプライベートな時間が増えますし、ダラダラと仕事をこなしていれば、プライベートな時間が減っていくだけです。

 

結果として労働者の意識が変わり、企業全体の業績底上げ、生産性の向上に繋がります。

 

本当に必要な仕事をいかにして早く終わらせるかを考え、行動をするため、企業にとってのメリットは大きいでしょう。

デメリット

  • 労働管理の難しさ

  • 導入手続きの手間

みなし時間労働制はメリットも多いですが、デメリットもあります。

みなし時間労働制のデメリットについて詳しくお伝えいたします。

労働管理が難しい

みなし時間労働制は、労働管理が難しいです。

 

みなし時間労働制は、何時から何時までという時間で決められた勤務形態ではありません。

中には、労働時間を大幅にオーバーしながらも、与えられた仕事を淡々とこなしてしまう方もいるかもしれません。

 

長時間労働は、健康に対する被害も甚大になります。企業としては、各個人の能力を把握した上で、みなし労働時間を設定したり、与える仕事を調整したりしなければいけません。

 

とくに外回り営業の方や在宅ワークを導入したてで慣れていない企業などは、労働管理の目が届きにくい環境下ではあります。

労働管理が難しいがゆえに、貴重な人材を失ってしまう可能性もあるかもしれません。労働者に対してヒアリングを行うなど、管理体制の構築も大切でしょう。

導入手続きが面倒

みなし時間労働制は、導入しようと思って簡単に導入できるものではありません。

 

企画業務型裁量労働制の導入の流れについては、先にご紹介しましたが、導入手続きが非常に面倒です。

 

企画業務型裁量労働制では、労使委員会の組織や決議が必要でした。一方で裁量労働制を導入するためには、労使協定の締結や、労使協定を労働基準監督署長宛に遅滞なく届け出を行わなければいけません。

 

通常の時間制労働とは異なる制度であるため、求められる届け出要項や導入手続きが複雑です。ただ、確実な手続きを行った上で、みなし時間労働制を導入すれば、メリットが多いのも事実です。

 

メリット・デメリットを把握した上で、みなし時間労働制について考えてみてはいかがでしょうか。

まとめ

今回、みなし時間労働制についてお伝えしました。

本日のまとめ
  • あらかじめ労働時間を決めておき、定められた時間分労働したと「みなす」制度

  • みなし労働時間制は大きく分けて、「裁量労働制」と「事業場外みなし労働時間制」がある

  • みなし労働時間制は労働時間管理が困難であることが必要

  • みなし労働時間制だからといって、残業をさせても良いわけではない

  • 時間に縛られることなく、自由な働き方が可能であり、生産性が向上するがメリット

  • 手続き・管理体制構築の手間がデメリット

みなし労働時間制度は自由度の高い働き方であるため、労働者にとってもメリットの多い働き方です。一方で、時間が定められていないため、いつまでも労働をしてしまう労働者がいるかもしれません。

 

時間管理が楽になる一方で、労働管理は徹底しなければいけません。

個人の裁量を把握し、適切なみなし労働時間を与える必要がありますので、注意しましょう。

 

 

 

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