たきざわ法律事務所

【2022】パワハラで訴えられたらどうする?会社の対応方法と防止対策

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「業務において必要な指導や注意をしただけなのに、部下からパワハラだと言われた」このような事例が増えています。

こういったケースの多くが、いわれのないパワハラでしょう。だからといって、放置すべきではありません。たとえ、それがいわれのない訴えだとしても、法律に沿って毅然とした対応を取ることが求められます。

では、パワハラに関してどのような法律があるのでしょうか?そして、どのような対応が適切なのでしょうか?今回は、「パワハラだ」と訴えられた場合に、企業が取るべき適切な対応について解説していきます。

 

パワハラ(パワーハラスメント)とは

パワハラとは

 

 

職場におけるパワハラ(パワーハラスメント)とは、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えるまたは職場環境を悪化させる行為をいいます。

 

パワハラは、働く人が能力を十分に発揮することの妨げになります。企業にとっては、職場秩序の乱れや業務への支障が生じたり、貴重な人材の損失につながったり、社会的評価にも悪影響を与えかねない大きな問題です。

 

職場のパワハラについては、「職場のハラスメントに関する実態調査(厚生労働省2020年)」によると、過去3年以内にパワハラを受けたことがあると回答した人は31.4%にのぼり、パワハラ対策は喫緊の課題となっています。

 

そこで、労働施策総合推進法に基づき、「パワーハラスメント防止措置」が施行されました。中小企業に対する職場のパワーハラスメント防止措置についても、令和4年(2022年)4月1日から義務化されています。

 

パワハラの定義

 

まず、パワハラの定義をしっかりと確認しましょう。厚生労働省では、パワハラを次のように定義しています。

 

職場のパワハラとは、職場において行われる

 

  • ①優越的な関係を背景とした言動

  • ②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの

  • ③それらによって労働者の就業環境が害されるもの

であり、①から③までの3つの要素をすべて満たすもの。

 

そして、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワハラには該当しないことも明示されています。

 

誤解を招きやすいのは、「①優越的な関係」です。優越的な関係といえば、上司から部下へのパワハラを想起しやすいためです。しかし、それ以外にも「優越的な関係」が認められれば、状況によっては、同僚同士や部下から上司という関係においてもパワハラは成立します。

 

職場におけるパワハラの類型

 

職場におけるパワハラの状況にはさまざまなものがありますが、代表的な言動の類型としては次の6つの類型があります。

 

  • ①身体的な攻撃(暴行・傷害)

  • ②精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)

  • ③人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)

  • ④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)

  • ⑤過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)

  • ⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

 

ただし、パワハラはその類型に限られるものではありません。そして、個別の事案の状況等によって判断が異なることに留意し、職場におけるパワハラに該当するか微妙なものも含め広く相談に対応するなど適切な対応が必要です。

 

パワハラにならないための指導のポイント

 

パワハラは、白黒の線引きが難しいものです。そして、自分の言動がパワハラであると、(多くの場合)部下から訴えられた(多くの場合)上司が、そのことを自覚していないのです。

 

それは、部下が適切に業務を遂行できていなかったり、ミスが目立ったりしており、その改善を目的としているためです。上司は、指導をしているに過ぎないと考えており、その結果無自覚なことが多いのです。

 

指導とは、相手のことを思いながら伝える行為です。つまり、相手が具体的にどの点について指摘され、どう改善すればよいのか明確に伝えられるかが、指導とパワハラの境目といえます。

 

たとえば、何度も遅刻を繰り返す部下に「バカ」と言っても、具体的に何をしたら良いのか伝わるとは限りません。遅刻を繰り返していることを問題だと考えていることを明確にし、遅刻をすることの問題点、会社での評価等を伝えるようにしましょう。

 

厚生労働省の資料では、次のようにパワハラにならない指導のポイントが5つ挙げられています。

 

  • ①問題となる具体的な行動や内容に焦点を絞る

  • ②感情的にならない

  • ③人格や性格を否定しない

  • ④どのように改善すべきかを伝える

  • ⑤部下にどのように伝わったか確認する

パワハラで訴えられた際に企業が問われる法的な責任

パワハラで訴えられた際に企業が問われる法的な責任

 

企業内でパワハラがあると訴えられたにもかかわらず、放置していると多大なリスクが発生します。

 

それは、労働者の方々のモチベーション低下や、離職者が発生するリスクだけではありません。安全配慮義務違反や使用者責任を問われ、会社に対して損害賠償を請求されてしまうことも考えられます。

 

安全配慮義務

 

労働契約法5条では、次のように定められています。

 

使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

 

つまり、使用者には安全配慮義務が課せられており、職場の環境を整備し、労働者が安心して働くことができるように配慮しなければならないのです。この規定から、使用者にはパワハラ等の防止策を講じる義務があり、これを怠った場合には、使用者は損害賠償責任が問われる場合があります。

 

企業の安全配慮義務違反の判断が下された判例としては、ゆうちょ銀行において、たびたび叱責されていた労働者Aが自殺したゆうちょ銀行事件(徳島地判平成30年7月9日労判1194号49頁)があります。Aの相続人が、Aの他の従業員からパワハラを受けて自殺したと訴えました。

 

なお、Aの上司は、Aが体調不良や自殺願望を訴えていることを把握し、たびたびAを叱責している事実がありました。この事件の判決では、上司がAを叱責した行為自体は違法といえるほどのものではなく、やむを得ないものと判断を下しています。

 

一方で、上司との人間関係や所属部署から辞められないことを思い悩んで衰弱していくAに対し、ゆうちょ銀行が改善に向けた対策を講じなかった責任については認め、安全配慮義務違反を理由に、慰謝料など総額で約6,142万円の支払いを命じています。

 

使用者責任

 

使用者責任について、民法715条において次のように規定されています。

 

ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う

 

つまり、会社の社員が会社の業務にあたってトラブルや事故を起こしたとしても、会社が損害賠償請求をされることがあるのです。パワハラについても、この使用者責任が問われるケースがあります。

 

ザ・ウィンザー・ホテルズインターナショナル(自然退職)事件(東京高判 平25.2.27)では、パワハラを行ったその行為者が不法行為責任を問われるだけでなく、会社も使用者責任が問われました。被告人である上司Bは、部下からパワハラだと訴えられました。

 

部下のアルコール耐性が低いにもかかわらず、居酒屋およびホテルの部屋で執拗にBは飲酒を強要しました。その翌日、部下が前日の飲酒による体調不良を訴えたものの、Bは運転を強要しました。

 

また、遅い時間に怒りを露わにした内容の留守番電話およびメール等を送信したこと、夏期休暇取得中に出社するよう命じ、それを拒んだ部下に対し「ぶっ殺すぞ」などと罵り、辞職を強いるかのような内容の留守番電話を残したことが、不法行為に該当すると判断されました。

 

Bに対する法的責任については、当然の判決でしょう。しかし、判決ではBへの責任にとどまらず、会社に対しても使用者責任により、パワハラの行為者と連帯して慰謝料の支払を命じています。

 

パワハラで訴えられたら会社への報告を行う

会社への報告

 

業務上の指導について、部下と揉めごとが生じたときは、まず会社に状況を報告することを社内で徹底します。そのためには、会社に相談しないことのリスクと、会社が公正な判断でトラブルに対応することを伝えることが重要です。

 

部下に対する注意や指導は、業務として会社のために行っていることです。「パワハラだ」と訴えられたら、すぐに会社に報告すべきです。会社に相談せずに、トラブルの生じた部下と解決しようとすると、会社に密告されてしまい、より大きな問題になることも考えられます。

 

また、トラブルを会社に報告しなかったことが、パワハラの隠ぺい工作だと評価されてしまい、裁判で不利になるかもしれません。このことを労働者の方々に周知しましょう。

 

そして、会社側が客観的に正しい判断をすることも伝えます。トラブルの早期解決のためには、自分から会社側に事情を説明し、会社とともにトラブルに対処しようと思える体制を作るのです。

 

パワハラで訴えられた場合の対応と解決への流れ

パワハラの相談

 

パワハラで訴えられた場合の対応は、その相談からスタートします。そのためには、相談窓口を設置しなければなりません。

 

そして、事実関係を正確に確認し、もしパワハラがあったのならば、被害者に対する配慮を行い、行為者に対する適正な措置を取るといった流れになります。最後に、再発防止措置を講じることも忘れてはならないポイントです。

 

相談窓口を設置する

 

パワハラで訴えられた場合の対応策として、相談窓口を設置することが挙げられます。

 

もしパワハラが起きてしまったとしても、できるだけ初期の段階で把握することが大切です。気軽に相談できる仕組みを作ることで、大きなトラブルへの発展を阻止することができます。

 

被害を受けた方が萎縮してしまい、相談を躊躇する例もあります。この点も踏まえ、相談者の心身の状況や言動が行われた際の受け止めなどその認識にも配慮しながら、パワハラが発生のおそれがある場合や、パワハラに該当するか否か微妙な場合まで、広く相談に対応しましょう。

 

そして、相談窓口担当者が、相談の内容や状況に応じ適切に対応できるような仕組みとしなければなりません。そのためには、

 

  • 相談窓口の担当者が人事部と連携を図ることができる人材とする

  • あらかじめ留意点などを記載したマニュアルを作成する

  • 相談窓口の担当者に対し、相談を受けた場合の対応についての研修を行う

 

などが求められます。

 

事実関係を正確に確認する

 

社内でパワハラがあったと訴えられたり、相談があったりした場合も、まずは正確な情報の把握に努めましょう。指導なのか、それともパワハラに該当する言動なのか、また受け手によって認識が異なることもあり得ます。

 

正確に事実関係を把握することで、パワハラがあったのか、またはパワハラに該当するか否かの認定も行うことができます。

 

正確な情報を把握するために、相談窓口の担当者や人事部門等が、相談者および行為者の双方から事実関係の確認を行います。相談者と行為者の間で事実関係に関する主張に不一致があり、事実の確認が十分にできないときには、第三者からの話も踏まえて事実関係の把握に努めます。

 

被害者に対する配慮を行う

 

事実関係の正確な確認を行った結果、会社内でパワハラが生じていた事実が認められた場合は、被害者に対する配慮の措置を速やかに行います。

 

配慮の措置には、行為者から被害労働者への謝罪や人事異動、行為者に対する注意・指導といったことが挙げられます。被害者の希望もしっかりと聞き、人事担当部署も連携して対応に当たりましょう。

 

なお、事実関係の確認を行った結果、パワハラ被害を訴えた相談者に問題があった場合や認識の違いがあった場合には、この相談者に対しても納得がいくように説明が必要です。

 

行為者に対する適正な措置を取る

 

職場においてパワハラが生じた場合には、被害者だけでなく、行為者に対する措置も適正に行いましょう。その取り組みとしては、事案の内容や状況に応じ、パワハラの被害者と行為者の関係改善に向けた援助、被害者と行為者を引き離すための配置転換、行為者の謝罪等の措置があります。

 

あらかじめ就業規則や服務規律等で、行為者に対して必要な懲戒を定めておき、処分を行うことも検討します。行為者へ制裁を課す場合には、公正なルールに基づいて行うことが重要です。

 

そして、行為者に対して懲戒規定に沿った処分を行うだけでなく、行為者の言動がなぜパワハラに該当し、どのような問題があるのかを真に理解させることが大切です。

 

再発防止措置を講じる

 

再発防止措置は、改めて職場におけるハラスメントに関する方針を周知・啓発する等の再発防止に向けた措置を講ずることです。

 

パワハラ防止対策として実施済みかもしれませんが、改めて次の①②を実施しましょう。

 

  • ①職場におけるパワハラに関する意識を啓発するための研修、講習等を実施する

  • ②パワハラを行ってはならない旨の事業主の方針及び職場においてパワハラを行った者について厳正に対処する旨の方針を、社内報、パンフレット、社内ホームページ等に改めて掲載し、配付等する

 

なお、職場におけるハラスメントが生じた事実が確認できなかった場合でも、同様の措置を講ずると良いでしょう。経営者として、パワハラについて毅然とした対応をすることが労働者の方々に伝わります。

 

社内のパワハラ対策の取り組み

弁護士へパワハラへの相談

 

以前は、「もしパワハラ事案が発生した場合にどのように対処するか」が重視されていました。しかし、今では、「パワーハラスメント防止措置」が施行されました。パワハラ対策が義務となったことは、パワハラを防止する企業の体制づくりから始めるべきことを意味しています。

 

パワハラを防止するため事業主が必ずすべき措置

 

パワハラを防止するために、国は企業の体制づくりも重視しています。そして、パワハラを防止する企業の体制づくりから、パワハラ事案が発生した場合の対処まで、事業主が必ず講じなければならない措置が定められています。

 

(ア)事業主の方針等の明確化および周知・啓発

①職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること

②行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等文書に規定し、労働者に周知・啓発すること相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

 

(イ)相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

③ 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること

④ 相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること

 

(ウ)職場におけるパワハラに関する事後の迅速かつ適切な対応

⑤ 事実関係を迅速かつ正確に確認すること

⑥ 速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと

⑦ 事実関係の確認後、行為者に対する措置を適正に行うこと

⑧ 再発防止に向けた措置を講ずること(事実確認ができなかった場合も含む)

 

(エ)併せて講ずべき措置

⑨ 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、その旨労働者に周知すること

⑩ 相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取り扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

 

パワハラの防止に向けた望ましい取り組み

 

以下の取り組みは義務とはなっていません。しかし、パワハラ対策として、積極的な対応が求められています。

(1)各種ハラスメントの一元的な相談体制の整備:パワハラはセクハラやマタハラなどと、複合的に生じることも想定されます。よってあらゆるハラスメントの相談について、一元的に応じることのできる体制を整備すること。

(2)職場におけるハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための取り組み:パワハラの原因や背景となる要因を解消するため、コミュニケーションの活性化や円滑化のために研修等の必要な取組を行うことや適正な業務目標の設定等の職場環境の改善のための取組を行うこと。

(3)労働者や労働組合等の参画:雇用管理上の措置を講じる際に、社内でアンケート調査や意見交換等を実施するなどにより、その運用状況の的確な把握や必要な見直し。

 

外部専門家の活用

 

パワハラについて、同僚や上司には相談しにくいと考える労働者の方もいます。そういったケースを想定して、外部相談窓口を検討すると良いでしょう。

 

外部相談窓口とは、弁護士など社外の専門家に相談できる窓口のことです。外部相談窓口を設けることで、相談者の対応をしてもらえるメリットだけでなく、専門的な内容にも回答してもらえることが期待できます。

 

また、パワハラ防止のための勉強会や運営方法、相談者への対応方法など、専門家ならではのサービスを提供していることもあるので検討しましょう。特に、弁護士のような法律の専門家であれば、パワハラで訴えられたときに、解決に向けて迅速な対応ができるようになる強みがあります。

 

 

最適解を提案します

 

最適解を提案します

まとめ

 

パワハラで訴えられたり、相談を受けた経験をされたりする経営者の方々が増えています。そして、「パワーハラスメント防止措置」は、事業主の義務とされています。経営者の方々はこの措置を実施することで、パワハラの防止に努めたい、そしてもしパワハラがあったと訴えられてしまったときには迅速な対応をしたいとお考えのことでしょう。

 

しかし、パワハラは白黒の線引きが難しく、経営者の方だけで正確にパワハラの有無を判断することや、具体的な対策を立てるのは一筋縄ではいきません。そこでパワハラについて、さまざまな企業の取組みや過去の判例も熟知した弁護士の知見は、経営者の方々のお役に立つことでしょう。

 

たきざわ法律事務所では、次のような観点から、企業様へのアドバイスや体制づくりもサポートしております。

 

  • ① 風通しの良い社風、上司・部下の円滑なコミュニケーション

  • ② 就業規則などの体制の整備と毎日の適切な労務管理

  • ③ トラブル発生時の正確な情報収集と迅速な対応

 

パワハラについて訴えられたときの迅速な対応から、その防止策についても対応も可能です。ぜひお早めに、たきざわ法律事務所にご相談ください。

 

 

 

 

 

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