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創業計画書の書き方は?押さえるべきポイントを日本政策金融公庫の様式をもとに解説

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創業時に融資など資金調達を申し込む際には、創業計画書の提出を求められることが多いでしょう。では、創業計画書はどのように作成すれば良いのでしょうか?

 

今回は、日本政策金融公庫の様式をベースとし、創業計画書の書き方や融資審査時に重視されるポイントなどについて詳しく解説します。

 

創業計画書とは何?

創業計画書

 

創業計画書とは、どのようなものを指すのでしょうか?まずは、創業計画書の概要について整理しておきましょう。

 

創業計画書とは

 

創業計画書とは、新たに事業を始める際に作成する、事業の方針や進め方、収支見込みなどを記載した書類です。創業融資などを申し込む際に、金融機関から求められて作成することが多いでしょう。

 

創業計画書と事業計画書との違い

 

創業計画書と似たものに「事業計画書」があります。実は、創業計画書と事業計画書とはほとんど同じものであり、異なるのは作成のタイミングのみです。

 

創業計画書は、創業前や創業から間もない時期に作成します。一方、事業計画書は、すでに行っている事業についての計画書を指すことが一般的です。

 

ただし、創業時の計画書までをひとくくりにして事業計画書と呼ぶこともあります。

 

創業計画書は何のために作成する?

創業計画書は何のために作成する?

 

創業計画書は、何のために作成するものなのでしょうか?創業計画書の作成目的は、主に次の4点です。

 

  • 創業者の思考整理と事業内容のブラッシュアップのため

  • 従業員や関係先と創業計画を共有するため

  • 補助金申請時の添付資料として提出するため

  • 融資申込時に金融機関へ提出するため

 

創業者の思考整理と事業内容のブラッシュアップのため

 

創業計画書は、創業者が思考を整理する目的や事業内容のブラッシュアップなどの目的で作成することがあります。

 

創業者であれば、頭の中にこれから行っていく事業の青写真はあることでしょう。しかし、これを改めて創業計画書に落とし込んでみると、詰めの甘かった点や検討が足りていなかった点などに気づきやすくなります。

 

創業前や創業間もない時期にこれらに気付くことができれば、不足していた事項について改めて検討することができ、事業の成功により近づきやすくなることでしょう。そのため、特に外部に提出する予定がなかったとしても、創業時にはぜひ創業計画書を作成してみることをおすすめします。

 

従業員や関係先と創業計画を共有するため

 

創業者の頭の中には事業の見通しの計画が存在したとしても、それを口頭のみで他者と共有することは容易ではありません。しかし、これを創業計画書に落とし込むことで、他者との共有がしやすくなります。

 

特に創業期は、自身の事業についてどれだけの味方を作れるのかが重要なポイントとなるでしょう。そのため、従業員や取引先などの関係先と共有をするために創業計画書を作成することも1つです。

 

補助金申請時の添付資料として提出するため

 

補助金とは、国や地方公共団体から返済不要な資金を受け取ることができる制度です。補助金には非常に多くの種類が存在し、それぞれに目的や要件などが定められています。

 

創業時には資金が不足することが多いため、仮に補助金を受け取ることができれば大きな強みとなることでしょう。

 

ただし、補助金の多くは要件を満たして申請をしたからといって必ずしも受け取れるわけではありません。他の多くの申請の中から採択がされて、はじめて受給の権利が生じます。

 

補助金を申請する際には、創業計画書や事業計画書の添付が求められることが一般的です。そのため、補助金を申請するために創業計画書を作成する場合も少なくないでしょう。

 

融資申込時に金融機関へ提出するため

 

創業計画書を作成する目的としてもっとも多いものの一つが、創業融資の申し込みです。

 

創業時の融資では、ほぼ間違いなく創業計画書の提出が求められると考えておくと良いでしょう。創業計画書の内容を中心として融資の可否が判断されますので、融資において創業計画書は非常に重要な書類の一つとなります。

 

最適解を提案します

 

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創業計画書に書き方や様式の決まりはある?

 

創業計画書には、決まった書き方やフォーマットはあるのでしょうか?ここでは、創業計画書の書き方やフォーマットなどについて紹介します。

 

創業計画書に原則として書き方や様式の決まりはない

 

原則として、創業計画書に決まった書き方や様式があるわけではありません。創業者の思考整理や従業員などとの計画の共有が目的であれば、作成者が作成しやすいフォーマットで作成すると良いでしょう。

 

また、融資の申し込みに使用する場合であっても、任意の様式で良いとされる場合が少なくありません。

 

創業計画書の書き方が決まっていることもある

 

融資の申し込み先や申請する補助金などによっては、創業計画書のフォーマットや書き方が指定されている場合があります。中でも、創業時に融資を受けることの多い日本政策金融公庫では創業計画書の様式が指定されていますので、所定の様式に沿って作成するようにしましょう。

 

日本政策金融公庫様式の創業計画書の書き方

日本政策金融公庫の創業計画書

 

創業計画書は、どのように作成すれば良いのでしょうか?ここでは、最もよく使用されていると考えられる日本政策金融公庫の様式に沿って、創業計画書の書き方を解説します。

 

創業の動機

 

創業の動機として、4行の記載欄が設けられています。ここには、なぜその事業を創業するのかという想いを、熱意を込めて記載してください。

 

どこかから借りてきたようなことばではなく、自らのことばで記した方が、想いが伝わりやすくなります。創業することで何を実現したいのかといった内容のほか、これまでに準備してきたことや今創業することとなった理由などについて、詳しく記載しましょう。

 

自らの想いを実現するため、主体性を持っての創業であることを説明することがポイントです。記入欄が狭いため、スペースが不足する場合には別紙を追加しても構いません。

 

ただし、あまりにも長いと主張がブレてしまいやすいため、どれだけ長くてもA4用紙1枚程度に収めると良いでしょう。

 

経営者の略歴等

 

経営者の略歴は、創業者の過去の経験や資格などを記載する欄です。創業する事業に関連する経歴や資格に重きをおいて記載しましょう。

 

これまでの経験と同じ業種での創業や創業に役立つ資格を持っているのであれば、創業した事業について土地勘や知識があることのアピールとなります。

 

また、他業種からの創業であっても、過去の経歴とまったく関連のない業種で創業するケースはさほど多くないかと思います。一見関係のない事業のように思われても、今回の創業に役立つ何らかの経験や何らかのつながりがあるはずであるため、その点に焦点を絞って記載してください。

 

可能であれば、創業の動機ともリンクをさせて記載すると良いでしょう。当然ですが、たとえ経験が不足していると感じたとしても、嘘の記載はご法度です。

 

取扱商品・サービス

 

「取扱商品・サービスの内容」欄には、今後取り扱う商品やサービスについて具体的に記載しましょう。この欄は、融資審査において特に重要となります。

 

商品やサービスに優位性や独自性がなければ、軌道に乗りにくいと判断されてしまうかもしれません。せっかく良い商品やサービスであっても、ことばが足らないことでありふれたものに見えてしまう可能性があります。

 

たとえば、美容院の場合「気軽に入りやすい雰囲気を演出する」など抽象的でありふれたことばでは、魅力がなかなか伝わらないでしょう。そのため、より具体的な言葉で自社商品やサービスのアピールしてください。

 

たとえば、「子育て世代のママが気軽に来店しやすいよう、店内に託児スペースを設ける。店内は白と緑を基調とした明るい配色とし、大きな窓で解放感のある構造とする。料金はカット〇〇円から、カラー〇〇円からと、無理なく通える設定とする。」などです。

 

記載欄が狭いため、書ききれない場合には別紙を添付しても構いません。

 

取引先・取引関係等

 

「取引先・取引関係等」の欄には、販売先や仕入先、外注先などについて具体的に記載しましょう。仕入先や外注先の確保は、その事業の実現性を判断するうえで非常に重要となります。

 

たとえば、飲食店であれば食材や飲料の仕入先、建設業であれば仕事を請けてくれる外注先になど、業種ごとに通常必要となる関係先を明確に記載してください。仕入先や外注先が具体的に決まっていないからといって、融資の申し込みができないわけではありません。

 

しかし、必要な仕入先や外注先の確保は、きちんと準備をしたうえで創業しようとしていることのアピールともなります。そのため、少なくとも事業の根幹で最低限必要となる仕入先や外注先は確保してから融資を申し込んだほうが良いでしょう。

 

販売先については、商品の納入先や建設の元請け業者が定まっている場合には、それらを記載します。個人への販売である場合には、単に「一般個人」などとだけ書くのではなく、年齢や性別、居住地域や属性など、できるだけターゲットを絞って具体的に記載すると良いでしょう。

 

従業員

 

従業員の欄は、継続雇用をする予定の従業員数を記載してください。正社員のみではなく、パートのスタッフについても記載します。

 

融資の可否に大きく影響するところではありませんが、仮に人員が必要とされる業種において明らかに人数が不足している場合には、実現性に疑問が持たれる可能性があります。

 

また、後ほど解説する「事業の見通し」において、必要な従業員の給与が支払える内容になっていることも確認しておきましょう。

 

お借入の状況

 

この欄には、創業者の現在の借入の状況を正確に記載してください。日本政策金融公庫から審査の際に個人信用情報機関で融資の状況が確認されることがありますので、たとえ借り入れが多い場合であっても、虚偽の記載は絶対にしないようにしましょう。

 

車のローンなどについても、忘れないように記載してください。

 

必要な資金と調達方法

 

創業にあたって必要となる資金と、その資金の調達方法について記載する欄です。この欄は、融資の審査において非常に重要な判断材料となります。

 

特に、自己資金の割合が大きなポイントです。自己資金は預金先の通帳などで証明を求められますので、水増しをすることなく正しく記載してください。

 

タンス預金などは証明が難しいため、あらかじめ金融機関の口座へ入金しておくと良いでしょう。

 

また、一時的に残高が多いように見せかける「見せ金」は厳禁です。日本政策金融公庫は自己資金の蓄積過程などについて通帳の記録などから細かく確認することが多く、嘘が発覚した場合には、融資の可能性が格段に下がってしまうことでしょう。

 

必要資金は、特に大きなものについてはあらかじめ見積もりを取り、具体的な金額を記載します。必要資金の見積もりが甘いと、いざ創業してから資金繰りに窮することにもなりかねません。

 

事業の見通し

 

この欄では、創業後の収支の見込みを記載します。

 

この欄で重要となるのは、事業が軌道に乗った際に借入金の返済や創業者などを含む従業員への給与の支払いなどが無理なくできる計画になっているのかという点です。原価率や外注先への支払いなどを踏まえ、計算根拠を明確に示して作成しましょう。

 

また、各指標が同業他社と大きく乖離していないかどうかもチェックのポイントとなります。企業ごとに特性が異なるため、必ずしも同業他社と近い数字になるとは限りません。

 

しかし、日本正確金融公庫が公表している「 」を確認のうえ、同業他社と大きく数値が異なる箇所があれば、大きな差が生じている理由を説明できるようにしておきましょう。

 

融資審査時に創業計画書で特にチェックされるポイント

 

融資審査時において、創業計画書で特にチェックされるポイントは次のとおりです。これらのポイントを踏まえて創業計画書を作成することで、希望した融資の実現につながりやすくなります。

 

  • 記載内容が具体的で一貫性があるか

  • 借り入れの返済が可能か

  • 記載内容に実現性があるか

  • 創業者の想いが反映されているか

 

記載内容が具体的で一貫性があるか

 

創業計画書の全体をとおして、記載内容に一貫性があることが求められます。いったん作成をした後で全体を見直し、矛盾が生じている箇所がないかどうかよく確認するようにしましょう。

 

また、各項目が具体的であるかどうかも重要なチェックポイントとなります。

 

借り入れの返済が可能か

 

事業が軌道に乗った後でも借り入れの返済ができない計画であれば、融資を受けることは困難です。また、たとえ融資が受けられたとしても返済が難しいような事業であれば、始める前から失敗が見えていると言っても過言ではありません。

 

借り入れの返済が可能な計画となっているかどうかをよく確認したうえで、仮に返済が難しい計画となっているのであれば、創業計画自体を見直す必要があるでしょう。

 

記載内容に実現性があるか

 

いくらバラ色の創業計画に見えたとしても、実現できない内容では意味がありません。そのため、融資審査においては、創業計画書の内容が現実的で実現可能かどうかという視点からもチェックされます。

 

実現可能性を示すために、実現への道筋や実現するための能力、人的資源や関係先の確保などを具体的に説明するようにしましょう。

 

創業者の想いが反映されているか

 

創業時には、決算書などの目に見える過去の実績を示すことができないことが一般的です。そのため、より創業者の想いや熱意が重視されるといえるでしょう。

 

創業者の想いや熱意を伝えるため、創業計画書はきれいに作りこむことだけを目指すのではなく、想いの伝わることばや内容で作成することをおすすめします。

 

当事務所を含め、創業計画書の作成支援をおこなっている専門家は多く存在します。しかし、専門家はあくまでも創業計画書の作成をサポートする立場であり、計画の策定からすべてを丸投げできるわけではありません。

 

専門家へ丸投げをして作成してもらった計画では、創業者の熱意は金融機関に伝わらないでしょう。創業計画書では、創業者の想いを大切にしましょう。

 

そのうえで、その想いをより正確に文書化したり検討が不足している事項を再考するためのアドバイスをしたりする役割として、専門家を活用してください。

 

まとめ

 

創業計画書は、創業融資を受ける際などに欠かせない書類です。融資時の審査で着目されがちなポイントを踏まえ、創業者の想いがしっかりと伝わる創業計画書を作成しましょう。

 

たきざわ法律事務所では、融資時などの創業計画書の作成をサポートしております。創業計画書や事業計画書の作成でお困りの際には、ぜひたきざわ法律事務所までお気軽にご相談ください。

 

 

 

 

 

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