たきざわ法律事務所

動画の著作権は誰のもの?

この記事を書いた弁護士は…

 

 

 

 

はじめに

動画投稿者等により撮影された動画に関する著作権の帰属が争われた訴訟(以下、「本件」)で、裁判所は、「これらの動画の著作(権)者は、第三者が撮影した場合やテロップ入れ等の加工を行った場合であっても、それを指示した動画投稿者である」旨の判決を出しました。

 

本コラムでは、こちらの内容について解説していきます。

 

本件事案の概要

原告

平成31年11月まで「B」という店名のキャバクラ店に勤務していた者

被告

インターネット接続サービスの提供を含む電気通信事業を営む株式会社

 

 

本件は、原告の各動画※の一部を複製した画像(本件画像1~5の5種類の画像のことをいい、以下総称して「本件各画像」)を含む各記事をインターネットの掲示板サイト(以下、「本件サイト」)に氏名不詳の投稿者が投稿したことで、原告の著作権が侵害されたとして、原告がプロバイダである被告に対し発信者情報開示請求を行った事案です。

 

※原告の各動画

  • 本件元動画

原告がデジタルカメラで撮影した動画。

  • 本件動画1

本件画像1の元となった動画。本件元動画に編集業者がテロップ入れ等の加工をして完成させたもの。

  • 本件動画2

本件画像2の元となった動画。原告のスマートフォンで原告の運転手が撮影したものをインスタストーリー機能を使って文字入れ加工等を施したもの。

  • 本件動画3

本件画像3の元となった動画。原告のスマートフォンで原告の夫が撮影したものをインスタストーリー機能を使って文字入れ加工等を施したもの。

  • 本件動画4

本件画像4の元となった動画。原告がスマートフォンで本件動画1にインスタストーリー機能を用いて文字入れ加工等を施したもの。

  • 本件動画5

本件画像5の元となった動画。原告の夫のスマートフォンで原告の経営するバーの店長が撮影したものをインスタストーリー機能を使って文字入れ加工等を施したもの。

 

上記を表にまとめると以下になります。

対象 撮影者 動画加工者 SNS等への投稿者
本件元動画 原告 なし なし
本件動画1(本件画像1) 原告 編集業者 原告
本件動画2(本件画像2) 原告の運転手 原告
本件動画3(本件画像3) 原告の夫
本件動画4(本件画像4) 原告
本件動画5(本件画像5) 原告の経営するバーの店長

 

 

主な争点

本件各画像の元となっている原告の各動画の著作物性及び原告の著作権の有無

 

著作権法で保護の対象となる著作物である(著作物性を有する)ためには、以下の4要件をすべて満たすものである必要があります(著作権法2条1項1号)。

 

  • 思想又は感情を含むこと
  • 創作的であること
  • 表現したものであること
  • 文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものであること

 

具体的には、言語・音楽・美術・写真・映画・コンピュータプログラム等が著作物の例示として規定されています(同法10条1項)。

その中でも「映画の著作物」(同法10条1項7号)は、「思想又は感情を影像の連続によって表現したものを物に固定したもの」をいいます。劇場用映画がその典型例ですが、テレビドラマ、コマーシャルフィルム、ホームビデオで撮った映像も映画の著作物に当たります。このほかにも、著作権法では、「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物も映画の著作物に含む」とされているので(同法2条3項)、ゲームソフトの映像も映画の著作物に含まれることになります。

このように、映画の著作物には様々な映像表現が包含されることになるのですが、著作権法の映画の著作物に関する規定は、基本的には劇場用映画を想定して規定されたものですので、いくつか特例的な規定が設けられています。

まず、映画の著作物の著作者の帰属については、劇場用映画という性質上、その製作には多数の者が関与しており、その貢献度も様々であることから、著作者を具体的に定めるために、著作権法の創作主義の原則(著作者=創作者)の例外として、「制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者」が著作者であると規定されています(同法16条)。「映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者」は、映画に対して一貫したイメージを抱き、それを実現した者を意味するので、補助的行為をしたに過ぎない助監督やカメラ助手等はこれに含まれず、それらを指揮した監督がこれに該当します。このため、原則として映画の著作物の著作者は監督であると解されています。

次に、著作権の帰属に関しては、「その映画の著作物の著作者が映画製作会社に対し、その製作に参加することを約束した場合は、その映画の著作権は映画製作会社に帰属する」と規定されています(同法29条)。すなわち、映画の著作物の著作者である監督等が映画製作会社との間で、その映画作品の製作に参加する約束をした場合に限り、その著作権は監督等でなく、映画製作会社に帰属することになります。逆にいえば、29条が適用されない場合は、引き続き監督等がその著作権を有することになります。(本件では、29条の適用はない前提です。)

 

その他の争点

著作物性及び著作権の帰属以外には以下の2つが論点となっています。

1)複製権及び公衆送信権侵害の有無

2)引用の抗弁の成否

本コラムでは詳しく解説はしませんが、結果として裁判所は1)を肯定、2)を否定しています。

 

 

裁判所の判断

本件各画像の元となっている各動画の①著作物性及び②原告の著作権の有無

裁判所は、原告の動画ごとに著作物性と著作権帰属について検討し以下のような判断をしました。

A.本件元動画について

 ①著作物性の有無

本件元動画の著作物性については、本件元動画は、原告書籍の概要や原告書籍に対する原告の思いなどが臨場感を持って伝わるように、ストーリーや撮影方法に工夫を凝らして制作したものであるから、原告の個性の発揮によりその思想又は感情を創作的に表現したものであるとして、著作物性を肯定しました。

加えて、本件元動画は、映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現されており、原告のデジタルカメラのメモリ等に電磁的に記録されて固定されたものと認められることから、同法2条3項に規定する「映画の著作物」であると認定しました。

 ②原告の著作権の有無

映画の著作物である本件元動画の著作権の帰属については、「映画の著作物の著作者は、制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者である(同法16条)」としているところ、本件元動画においては、原告がポーズ等を決め、内容等を語り、撮影したものであることから、本件元動画の全体的形成に創作的に寄与した者は「原告」であって、原告がその著作者として著作権(複製権・公衆送信権)を有していると認定しました。

 

B.本件動画1について

 ①著作物性の有無

本件動画1の著作物性については、本件動画1は、本件元動画の複製物にテロップ、効果音等の加工を施して制作したものであるから、本件元動画同様に著作物性を有し、映画の著作物に該当すると判断しました。

 ②原告の著作権の有無

本件動画1の著作権の帰属については、本件動画1は、上記テロップ等は動画編集業者により付されたものであるものの、テロップは原告が本件元動画で発言している内容を視覚的に明らかにしたものに過ぎず、また、効果音も聴覚的な加工を部分的に施したに過ぎないものであるから、本件元動画に係る原告の創作的関与の態様を踏まえると、本件動画1の全体的形成に創作的に寄与した者は、あくまで原告であって、原告がその著作者として著作権(複製権・公衆送信権)を有していると認定しました。

 

C.本件動画2について

 ①著作物性の有無

本件動画2の著作物性については、本件動画2は、原告の食事の様子や美味しいと感じた食事の内容を、臨場感を持って伝えられるように、原告の動きや撮影の流れ等を工夫して制作したものであるから、原告の個性の発揮によりその思想や感情を創作的に表現したものであるとして、著作物性を肯定しました。

加えて、本件動画2は同法2条3項に規定する「映画の著作物」であると認定しました。

 ②原告の著作権の有無

本件動画2の著作権の帰属については、本件動画2は、原告が原告の動きや撮影の流れ等を決定し、その決定したところに従って原告の運転手が撮影したものであるから、本件動画2の全体的形成に創作的に寄与した者は、原告であって、原告がその著作者として、著作権(複製権・公衆送信権)を有していると認定しました。

 

D.本件動画3について

 ①著作物性の有無

本件動画3の著作物性については、本件動画3は、原告が原告のオフィスにおいて、原告書籍にサインをしている様子を撮影し、原告書籍の売れ行きや原告書籍に対する原告の思いが伝わるように、被写体である原告や原告書籍の配置、アングル、撮影の流れ等を工夫して制作したものであるから、原告の個性の発揮によりその思想や感情を創作的に表現したものであるとして、著作物性を肯定しました。

加えて、本件動画3は同法2条3項に規定する「映画の著作物」であると認定しました。

 ②原告の著作権の有無

本件動画3の著作権の帰属については、本件動画3は、原告が原告の動きや位置、原告書籍の配置、アングル、撮影の流れ等を決定し、その決定したところに従って原告の夫が撮影したものであるから、本件動画3の全体的形成に創作的に寄与した者は、原告であって、原告がその著作者として、著作権(複製権・公衆送信権)を有していると認定しました。

E.本件動画4について

 ①著作物性の有無

本件動画4の著作物性については、本件動画4は、原告が自己のチャンネルにアップロードした本件動画1の適宜の部分を抽出して編集した一部を原告インスタグラム上にアップロードした動画であるから、本件動画1と同様に著作物性を有し、映画の著作物に該当すると判断しました。

 ②原告の著作権の有無

本件動画4の著作権の帰属については、本件動画4は、本件動画1を元にして原告が制作しているものであるから、 本件動画4の全体的形成に創作的に寄与した者も、原告であって、原告がその著作者として、著作権(複製権・公衆送信権)を有していると認定しました。

 

F.本件動画5について

 ①著作物性の有無

本件動画5の著作物性については、本件動画5は、原告が経営するバーの店内で原告の全身を撮影し、原告が通うジムでの服装や原告の容姿を伝えられるように、原告の動き、アングル、撮影の流れ等を工夫して制作したものであるから、原告の個性の発揮によりその思想や感情を創作的に表現したものであるとして著作物性を肯定しました。

加えて、本件動画5は同法2条3項に規定する「映画の著作物」であると認定しました。

 

 ②原告の著作権の有無

本件動画5の著作権の帰属については、本件動画5は、原告が原告の動き、アングル、撮影の流れ等を決定し、その決定したところに従って店長において撮影したものであるから、本件動画5の全体的形成に創作的に寄与したのは原告であって、原告がその著作者として、著作権(複製権・公衆送信権)を有していると認定しました。

 

 

以上より、原告の各動画いずれも「著作物性あり」「著作権帰属は原告」と判断されています。上記を表にまとめると下記になります。

 

対象 撮影者 動画加工者 SNS等への投稿者 著作物性 著作(権)者
本件元動画 原告 なし なし あり 原告
本件動画1

(本件画像1)

原告 編集業者 原告
本件動画2

(本件画像2)

原告の運転手 原告
本件動画3

(本件画像3)

原告の夫
本件動画4

(本件画像4)

原告
本件動画5

(本件画像5)

原告の経営するバーの店長

 

本件のポイント

本件のポイントは以下の2点です。

  • 撮影者が原告自身ではなかったとしても著作者は原告であると判断された点
  • 動画が編集業者により加工されたものであっても著作者は原告であると判断された点

まず、1)についてですが、撮影者が別でいたとしても「被写体の動きや位置、小物の配置、アングル、撮影の流れ」といった事項を決定した者が著作者であると認定されています。もし、これらの事項を別の第三者が決定していた場合、当該第三者が著作者または共同著作者にあたるものと思われます。なお、今回は動画でしたが、写真の場合ですと「被写体の選択、シャッターチャンス、シャッタースピード・絞りの選択、アングル、ライティング、構図・トリミング、レンズ・カメラの選択、フィルムの選択、現像・焼付等に主体的に関与した者」が著作者であるとされており、一般的にはシャッターを切るカメラマンが該当するケースが多いです。

次に、2)ですが、編集業者の行った加工が「テロップ・効果音」といった程度であれば、編集業者が著作者に該当する可能性は低いということになるかと思います。

さいごに

本コラムでは、動画の著作物性と権利帰属について争われた判決について解説しました。本件は原告が個人の動画投稿者でしたが、企業においても問題になるケースはあり得ると思います。例えば、企業のPR動画を外部の業者に撮影・編集を委託して作成するようなケースですと、PR動画(とその素材)の権利帰属や利用範囲について揉めるケースがよくあります。

一般的に、外部の業者に撮影・編集を丸投げして委託するケースであれば、著作権は外部事業者に帰属しますが、撮影・編集の一部を委託するようなケースだと、本件を踏まえると委託元が著作者であるケースも十分あり得ると思われます。

ただ、結局は委託元の関与度によっても変わってくる部分だと思いますので、「揉める」ことを避けるためにも、まずは外部の業者に撮影・編集を委託する場合には、権利帰属(権利譲渡)や権利許諾についてしっかり明記された契約書を締結することが大事になるかと思います。

本件に限らず動画に関する著作権トラブルは最近非常に急増しています。「揉めない」ためにも著作権法や契約の知識が必要です。お困りの方は是非とも弁護士にご相談ください。

 

 

 

 

 

 

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