たきざわ法律事務所

土地の相続手続きの流れは?自分でできる?必要書類やかかる費用を弁護士が解説

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土地を持っていた人が亡くなり土地を相続すると、さまざまな手続きが必要となります。しかし、土地の相続手続きなどは慣れていない人が大半で、何から手を付けたら良いのか迷ってしまう場合が多いのではないでしょうか?

 

今回は、土地を相続する際の流れや必要書類を弁護士が詳しく解説します。

 

土地の相続とは?放置するデメリットは?

土地の相続とは?放置するデメリットは?

 

 

土地の相続とは、土地の所有者が亡くなった際に、その土地の名義を相続人などへと変更することです。この手続きを、「相続登記」といいます。

 

土地の相続登記を放置すると、次のデメリットが生じます。

 

土地を売ったり担保に入れたりすることができない

 

土地の名義が亡くなった人のままであれば、その土地を売ったり担保に入れてお金を借りたりすることができません。すぐには土地を売らない場合であっても、いずれ売却の必要性が生じた際にまずは相続登記を経る必要があります。

 

年月が経過してから相続登記をしようとすれば、すぐに相続登記をする場合と比べて煩雑となってしまう可能性が高いでしょう。なぜなら、当初の相続人の中に亡くなる人や認知症の人が生じるなど、相続人の状況が変わる可能性が高くなるためです。

 

第三者に売られてしまうと取り戻すことが困難になる

 

たとえ相続人同士の話し合いで自分が土地を相続することに決まっていたとしても、土地の相続登記をしないままでは、第三者に対してそのことを主張することができません。

 

仮に他の相続人が自分の相続分を勝手に第三者に売却してしまったとしても、相続登記をしていなければ、売られてしまった持分を第三者から取り戻すことは困難だということです。

 

改正法施行後は罰則の対象となる可能性がある

 

相続登記がなされないまま長期にわたって放置され、もはや誰が所有者なのかわからなくなってしまった「所有者不明土地」が社会問題となっています。この問題を受けて、2021年に不動産登記法などの改正がなされました。

 

この改正により、相続で土地を取得したことを知った日から3年以内の相続登記が義務付けられています。また、正当な理由なく期限内に申告をしなかった場合には、10万円以下の過料に課される可能性があるとされました。

 

この改正法は、2024年度4月1日までに施行される予定です。

 

土地の相続手続きの流れ

遺産分割協議書

 

土地の相続手続きは、次の3ステップでおこないます。それぞれのステップについて詳しく解説していきましょう。

 

ステップ①:土地を相続する人や相続の方法を決める

 

はじめに、土地を相続する人や相続の方法を決定します。土地の相続の方法については、後ほど詳しく解説します。

 

土地を相続する人や相続の方法を決める手段は、主に次の2つです。

 

遺言

 

遺言とは、遺産の分け方などについて、被相続人が生前に決めておくことです。法律上有効な遺言をするには、民法に記載されたルールにしたがって作成しなければなりません。

 

亡くなった人(「被相続人」といいます)が有効な遺言をのこしており、遺言の中で土地の取得者を決めていた場合には、原則として遺言の内容に従って土地の取得者が決まります。

 

遺産分割協議

 

遺言がない場合や遺言があっても土地の取得者が定められていなかった場合には、遺産分割協議で土地の取得者を決定します。遺産分割協議とは、相続人全員で行う遺産分けの話し合いのことです。

 

相続人全員が納得するのであれば、必ずしも民法で指定された法定相続分で分けなければならないわけではありません。たとえば、相続人が妻と長男、二男である場合に、妻が全財産を相続するという偏った内容の遺産分割協議を成立させることも可能です。

 

ただし、遺産分割協議は多数決で成立させることはできず、原則として相続人全員の同意が必要となります。一人でも納得しない相続人がいる場合には、遺産分割協議を成立させることはできません。

 

また、認知症や行方不明の人が相続人の中にいる場合であっても、これらの人を無視して遺産分割協議を成立させることはできません。この場合には、原則として成年後見人や不在者財産管理人など、これらの人の代わりに遺産分割協議に参加をする人を家庭裁判所で選任してもらう必要があります。

 

ステップ②:土地の相続登記に必要な書類を準備する

 

土地の取得者が決まったら、土地の相続登記に必要となる書類を準備します。相続登記の必要書類は非常に多いため、後ほどまとめて解説します。

 

ステップ③:土地の相続登記を申請する

 

必要書類の準備ができたら、土地の相続登記を申請します。

 

相続登記の申請先は、その土地の所在地を管轄する法務局です。どこの法務局でも良いわけではないため、あらかじめ管轄を確認しておく必要があります。

 

相続登記の申請には次の3つの方法がありますが、慣れていない場合には窓口への持ち込みを選択すると良いでしょう。窓口での申請であれば、仮に不備が見つかった場合、軽微なものであればその場で修正できる可能性があるからです。

 

  • 法務局の窓口へ持ち込んで申請する

  • 郵送で申請する

  • オンラインで申請する

 

このうち、オンラインでの申請は、自分の登記を数回程度行うのみであればおすすめできません。システムの準備などに手間がかかるからです。

 

土地を相続する4つの方法

土地の相続の方法

 

土地を相続する方法には、次の4つが存在します。それぞれメリットやデメリットがありますので、どの方法を取るのか慎重に検討しましょう。

 

迷う場合には、弁護士へ相談してください。

 

現物分割

 

現物分割とは、財産それぞれを各相続人に割り当てる形で分割する方法です。たとえば、「長男が自宅の土地建物とA銀行の預金を相続し、二男が貸駐車場の土地を相続し、長女がB銀行の預金とC証券口座の有価証券を相続する」という場合などがこれに該当します。

 

非常にシンプルな方法であり、よく使われる遺産分割の形であるといえます。しかし、ちょうど分けやすい内容で財産が残っているとは限らず、法定相続分どおりに平等に分けることは難しい場合が多い点がデメリットです。

 

代償分割

 

代償分割とは、一部の相続人が評価額の大きな財産を相続する代わりに、その相続人から他の相続人に対して金銭を支払う形で分割する方法です。たとえば、「長男が主な遺産である自宅の土地建物を相続する代わりに、長男から二男と長女にそれぞれ1,000万円の現金を支払う」という場合などがこれに該当します。

 

金銭で調整をするため、細やかな調整がしやすい点がこの方法のメリットです。しかし、評価額の大きな財産を取得する人(例でいうところの長男)が代償金を支払えるだけの金銭を持っていなければ、この方法の選択は困難でしょう。

 

換価分割

 

換価分割とは、財産を売ってお金で分ける方法です。たとえば「主な遺産である貸アパートとその敷地を売却して、その売却で得たお金を長男、二男、長女で均等に分ける」という場合などがこれに該当します。

 

得たお金を分けるため、平等に分けやすい点がこの方法のメリットです。一方で、せっかく被相続人が遺した財産を手放すことが大きなデメリットの一つでしょう。

 

また、売却に際しての意見がまとまらず、争いに発展してしまう可能性も否定できません。

たとえば、長男は早く買ってくれるなら8,000万円でも売りたいと考えている一方で、長女としては1億円以上でなければ売りたくないと考えている場合などです。

 

共有分割

 

共有分割とは、財産を共有する形で相続する方法です。たとえば、「主な財産である貸アパートとその敷地を、長男、二男、長女でそれぞれ3分の1の割合で共有する」という場合がこれに該当します。

 

一見平等なように見えますが、共有分割は問題の先送りにしかならず、原則としておすすめできません。

 

たとえば、このアパートが老朽化して建て替えるには原則として全員の同意が必要となりますが、意見がまとまらず争いになってしまう可能性があるでしょう。また、将来共有者が亡くなった際には、その配偶者や子が相続人となり、代替わりを重ねるごとにより関係性の遠い人同士での共有となってしまいます。

 

共有分割には問題が少なくありませんので、原則としてできるだけ避けたい分割方法です。

 

土地の相続登記に必要な書類

登記申請書

 

土地の相続登記をするには、さまざまな書類が必要です。必要書類は状況によって異なりますが、ここでは遺産分割協議書で土地の取得者を決めた場合に一般的に必要となる書類を解説します。

 

登記申請書

登記申請書は、相続登記のメインとなる書類です。穴埋め形式で必要事項を書くのではなく、原則として一から作成しなければなりません。

 

法務局のホームページに記載例が載っていますので、参考にすると良いでしょう。

 

遺産分割協議書

 

遺産分割協議書とは、遺産分割協議の結果をまとめた書類です。登記する対象である土地について全部事項証明書(登記簿謄本)どおりに正確に記載をしたうえで、誰がその土地を相続することになったのかを明確に記載します。

 

相続人全員が協議内容に納得していることの証拠として、相続人全員の実印での捺印が必要です。

 

相続人全員の印鑑証明書

 

遺産分割協議書に押した印が実印であることの証明として、相続人全員の印鑑証明書が必要です。

 

被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等

 

被相続人の相続人を確定するため、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本が必要です。それぞれ、その時点で本籍を置いていた市区町村役場から取り寄せる必要があります。

 

被相続人の相続人が兄弟姉妹や甥姪である場合には、これに加えて被相続人の両親それぞれの出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本も提出しなければなりません。

 

被相続人の除票

 

被相続人の最後の住所を確認するため、被相続人の除票が必要です。これは、被相続人の最後の住所地であった市区町村役場で取得することができます。

 

相続人全員の戸籍謄本

 

相続人が存命であることを確認するため、相続人全員の現在の戸籍謄本が必要です。

 

土地を相続する相続人の住民票

 

新たに土地の所有者となる人の情報を正しく登記するため、土地を相続する相続人の住民票が必要です。

 

相続登記をする土地の固定資産税評価証明書

 

相続登記をする際には、法務局で登録免許税という税金を納めなければなりません。土地の相続登記にかかる登録免許税は、原則として次の式で算定されます。

 

  • 相続登記の登録免許税=相続登記をする土地の固定資産税評価額×1,000分の4

 

この登録免許税を正しく計算するため、相続登記をしようとする土地の固定資産税評価証明書が必要です。

 

固定資産税評価証明書は、その土地が所在する市区町村役場で取得することができます。窓口の名称は市区町村によって異なりますが、「固定資産税課」や「税務課」などであることが多いでしょう。

 

土地の相続手続きはどのような場合に自分でできる?

土地の相続手続きはどのような場合に自分でできる?

 

土地の相続手続きは、司法書士などの専門家へ依頼することが一般的です。しかし、土地の相続登記を自分で行うことが禁止されているわけではありません。

 

次の条件を満たす場合には、相続登記を自分で行うことも検討できるでしょう。

 

相続争いが起きていない

 

自分で相続登記をするための1つ目の条件は、相続争いが起きていないことです。

 

相続争いが起きている場合には、そもそも相続登記を申請する段階へたどり着くことが困難な場合が多いでしょう。この場合には、まず弁護士へ相談をして相続争いを解決してから、相続登記を進めることとなります。

 

また、何とか当人同士で話し合いをまとめることができたとしても、相続人同士の関係性が良くないのでれば、仮に遺産分割協議書などの記載が誤っていた際に再度押印をもらうことは容易ではありません。

 

そのため、相続人同士の関係性が良くない場合には無理に自分で登記を行おうとせず、専門家に依頼したほうが安心です。

 

数次相続が起きていない

 

数次相続とは、複数の相続が相次いで起きている状態を指します。たとえば、土地の名義人である祖父は10年前に他界しており、1年前に祖父の子である父も亡くなったような場合です。

 

この場合には、相続登記に必要な書類が多くなるほか、登記申請書の記載方法も特殊となります。そのため、数次相続が起きている相続登記を自分で行うことは容易ではありません。

 

平日の日中に何度も時間を取ることができる

 

相続登記の申請先である法務局は、平日の日中にしか開庁していません。自分で相続登記をする場合には、申請時のみならず、申請前の登記相談や申請後の修正などで何度か法務局へ出向く必要が生じるでしょう。

 

また、相続登記の添付書類の請求先である役所も、通常は平日の日中のみの開庁です。そのため、平日の日中に何度も時間を取ることができる場合でなければ、相続登記を自分で行うことは難しいといえます。

 

相続登記の完了を急いでいない

 

自分で相続登記をする場合には、一つひとつ調べながら行うため、専門家へ依頼した場合と比べて時間がかかる傾向にあります。そのため、たとえば相続登記の後ですぐに売却を控えているなど、相続登記を急ぐ必要がある場合には、無理に自分で相続登記を行うことは避けたほうが良いでしょう。

誰が土地を相続するか話し合いがまとまらない場合

 

遺言書がない場合には、原則として遺産分割協議で土地の取得者を決めることは、先ほど解説をしたとおりです。では、誰が土地を相続するかの話し合いがまとまらない場合には、どうすれば良いのでしょうか?

 

ここでは、当人同士で遺産分割協議がまとまらない場合に取り得る方法を紹介します。

 

調停をする

 

当人同士で話し合いがまとまらない場合には、まず調停へと移行します。調停とは、家庭裁判所で行う話し合いのことです。

 

家庭裁判所で行うものであるとはいえ、調停では裁判所が決断を下すことはありません。調停では、調停委員の立会いのもと当人同士で話し合いを行い、話し合いでの解決を図ります。

 

相続人全員で無事に合意ができたら、その時点で調停は終了します。

 

審判へ移行する

 

調停でもなお結論が出ない場合には、審判へと移行します。審判とは、遺産分割の内容について裁判所が決断を下す手続きです。

 

審判では諸般の事情は考慮されるものの、原則として法定相続分にしたがって分割されることとなります。

 

まとめ

 

土地の相続を進めるには、まず相続人全員での遺産分割協議を成立させる必要があります。この段階で揉めてしまうと、手続きを先に進めることはできません。

 

特に、土地が遺産の大半を占める場合には平等に分けることは容易ではなく、争いに発展するリスクがあるでしょう。

 

遺産分割や土地の相続についてのトラブルでお困りの際には、ぜひたきざわ法律事務所までご相談ください。たきざわ法律事務所には土地の相続に詳しい弁護士が多数在籍しており、土地に関する相続問題の解決を全面的にサポートいたします。

 

 

 

 

 

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