たきざわ法律事務所

コピーコントロール&アクセスコントロール回避規制をわかりやすく解説します。

この記事を書いた弁護士は…

 

 

 

 

 1.     はじめに

我が国において、デジタル・コンテンツの不正複製・視聴等を防止するために用いられる「コピー・コントロール(=複製を制限)」や「アクセス・コントロール(=視聴や実行を制限)」といった技術的手段は、著作権法と不正競争防止法により保護が図られています。

本コラムでは、この技術的手段に関する現行法制度を解説します。

 2.     現行法制度の整理

2.1     著作権法による保護

2.1.1     「技術的保護手段」「技術的利用制限手段」とは

著作権法では、技術的手段として「技術的保護手段」と「技術的利用制限手段」を規定しています。「技術的保護手段」は、いわゆる「コピー・コントロール」を、「技術的利用制限手段」は、「アクセス・コントロール」を意味します。

具体的には、それぞれ以下の要件を満たすものをいいます。

 

 ★技術的保護手段(著作権法2条1項20号)

  1. 電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によって認識できない方法により、著作権等侵害する行為を防止又は抑止するものであること
  2. 著作権者等の意思に基づいて用いられているものであること
  3. つぎのa.又はb.のいずれかの方式によるものであること
  1. 著作物等の利用に際し、これに用いられる機器が特定の反応をする信号を記録媒体に記録・送信する方式(信号方式)
  2. 当該機器が特定の変換を必要とするよう著作物・実演・レコード・放送・有線放送に係る音・影像を変換して記録媒体に記録・送信する方式(暗号方式)

 

 ★技術的利用制限手段(著作権法2条1項21号)

  1. 電磁的方法により、著作物等の視聴(プログラムの著作物を電子計算機において実行する行為を含む。)を制限する手段であること
  2. 著作権者等の意思に基づいて用いられているものであること
  3. つぎのa.又はb.のいずれかの方式によるものであること
  1. 著作物等の視聴に際し、これに用いられる機器が特定の反応をする信号を記録媒体に記録・送信する方式(信号方式)
  2. 当該機器が特定の変換を必要とするよう著作物・実演・レコード・放送・有線放送に係る音・影像を変換して記録媒体に記録・送信する方式(暗号方式)

2.1.2     民事措置・刑事罰

表. 技術的保護手段と技術的利用制限手段に関する規制対象行為の比較

まず、著作権等の侵害行為を防止・抑止するための手段である「技術的保護手段」においては、「技術的保護手段を回避して行う著作物の複製」を複製権侵害とし(著作権法30条1項2号。なお、私的使用目的であっても複製権侵害に該当します。)、差止請求(著作権法112条)や損害賠償請求(民法709条)等の民事上の救済対象としています。これに対し、コンテンツの不正利用を防止する「技術的利用制限手段」では、「技術的利用制限手段を回避する行為」を、研究・開発の目的上正当な範囲内でする場合や著作権者等の利益を不当に害しない場合を除いて、著作権等を侵害する行為とみなし(著作権法113条6項)、同様に民事上の救済対象としています。

一方、当該行為に該当しない場合であっても、著作権等の侵害の蓋然性が極めて高い「技術的保護手段又は技術的利用制限手段の回避を可能とする装置・プログラム等の提供」や、「サービスの提供」に関しては刑事罰の対象としています(著作権法120条の2第1・2号)さらに、令和2年著作権法改正によりこれらの回避を行うことを可能とする「不正指令符号(ライセンス認証を回避するためのシリアルコード)の提供」がみなし侵害行為に追加され(著作権法113条7項)、民事措置と刑事罰(著作権法120条の2第4号)の対象に加わりました。

2.2     不正競争防止法による保護

2.2.1     「技術的制限手段」とは

著作権法の「技術的保護手段」「技術的利用制限手段」に対し、不正競争防止法では、「コピー・コントロールとアクセス・コントロールを含む概念」として「技術的制限手段」という言葉を用いています。

具体的には、以下の要件を満たすものをいいます(下図参照)。

 

 ★技術的制限手段(不正競争防止法2条8項)

出典:経済産業省「不正競争防止法平成30年改正の概要 (限定提供データ、技術的制限手段等)」P.14を一部改変

 

1)電磁的方法によりa.~d.のいずれかを制限する手段であること

  1. 影像・音の視聴
  2. プログラムの実行
  3. 情報の処理
  4. 影像・音・プログラム・その他の情報の記録

2)つぎのe.又はf.のいずれかの方式によるものであること

e.視聴等機器が特定の反応をする信号を記録媒体に記録・送信する方式(信号方式)

f.視聴等機器が特定の変換を必要とするよう影像・音・プログラム・情報を変換して記録媒体に記録・送信する方式(暗号方式)

 

2.1.2     民事措置・刑事罰

不正競争防止法では、コンテンツの無断コピーや無断アクセスを防止する「技術的制限手段」について、つぎの(1)〜(3)の不正行為を「不正競争」(不正競争防止法2条1項17号・18号)とし、差止請求(不正競争防止法3条)や損害賠償請求(不正競争防止法4条)等の民事措置及び刑事罰(不正競争防止法21条2項4号)の対象としています。

 

(1)営業上用いられている技術的制限手段の効果を妨げる機能を有する装置等の提供(回避装置の提供・回避プログラム等を記録した記録媒体等の提供)

例:違法な海賊版ゲームソフトを使えるようにする装置の販売等

 

(2)当該機能を有するプログラム等の提供(回避プログラムの提供・不正指令符号の提供)

例:ソフトウェア認証コードのネットオークション販売、不正に得たシリアルコードのインターネット掲載等

 

もっとも、その装置やプログラム等が技術的制限手段の試験・研究のために用いられるものである場合は、(1)(2)の行為をしても2条1項17号・18号に規定する不正競争とはなりません(不正競争防止法19条1項9号)。

 

(3)当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする役務の提供(回避サービスの提供)

例:セーブデータを改造するためにプロテクト破りを代行するサービスの提供、不正アクティベートを施したソフトウェアを内蔵するPCを提供するために、不正にアクティベートする行為

2.3     まとめ

表. 著作権法と不正競争防止法における規制対象行為の比較

  • 技術的手段の回避(単純回避)/単純回避+複製

著作権法では、「技術的利用制限手段を回避する行為」と「技術的保護手段を回避して著作物を複製する行為」をそれぞれ規制対象行為(民事のみ対象)としているのに対し、不正競争防止法ではいずれも規制対象行為とはしていません。このため、例えばレンタルDVDのコピーガードを解除してDVDをコピーしたり、有料チャンネルのスクランブルを解除して無料で映像を視聴すること自体は不正競争防止法には抵触しないものと考えられます。

 

  • 技術的手段の回避を可能とする装置、プログラム、及びサービスの提供

不正競争防止法では、技術的手段の回避を可能とする装置等の提供を民事措置と刑事罰の両方の対象としているのに対し、著作権法では刑事罰のみを対象としています。また、その刑事罰に関しても、両法で主観的要件と罰則水準が異なっています。主観的要件については、著作権法では規定がない(=故意犯)のに対し、不正競争防止法では「不正の利益を得る目的で、又は営業上技術的制限手段を用いている者に損害を加える目的(図利・加害目的)」を要件としています(不正競争防止法21条2項4号)。罰則水準については、著作権法では「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金」であるのに対し、不正競争防止法は「5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金」で、著作権法よりも厳しい水準となっています。

つぎに、具体的な行為の内容について比較すると、両法で重複するものが多いですが、片方の法律のみが適用される場合もあります。例えば、特定少数の者に対してコピープロテクション回避装置(コピーガードキャンセラー等)を譲渡する場合、不正競争防止法は適用されるのに対し、著作権法は「公衆への譲渡」を要件としていることから適用されません。

 

  • 不正なシリアルコードの提供行為

令和2年著作権法改正に伴い、ライセンス認証等を回避するための不正なシリアルコードの提供行為が両法ともに規制対象行為となりました(民事措置と刑事罰の両方)。

 

 3.     さいごに

本コラムでは、いわゆる「コピー・コントロール」や「アクセス・コントロール」の回避規制に関して、著作権法と不正競争防止法の観点から解説しました。

コンテンツホルダーの観点では、ユーザーによる回避だけでなく、回避ツール等を提供して収益をあげる事業者に対しても頭を悩ませるケースが多いと考えられます。著作権法と不正競争防止法は、ユーザーだけでなくこれらの事業者も規制対象に該当し得るため、根本的な対策を民事・刑事の両面から検討することができます。

ただ、本コラムで説明してきたように、著作権法と不正競争防止法ではカバーする範囲が微妙に異なりますし、条文自体がかなり複雑です。具体的な検討にあたっては、弁護士等の専門家に是非ご相談ください。

 

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